真剣で私に恋しなさい!Another   作:ag260

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更新遅れてスイマセン。
今回も時間のある合間にサッと+深夜テンションで書き上げました。
そのため誤字脱字などがあるかも知れませんが、見つけたら感想に一報お願いします。


第二話 労働な日々

ドタバタの金曜集会から二日後の日曜日。

風間ファミリーのみんなは各自が決めたバイトに精を出していた。

 

 

「この問題はこの公式を使ってXに3を代入して…」

「……こうですか?」

「うん。正解だよ」

「やったぁ!」

「じゃあ、次の問題は――――っと、もうこんな時間か」

 

 

家庭教師のバイトをしていた大和は腕時計を見て、短い針が五の数字を指しているのを確かめ、授業を切り上げる。

 

「今日のところはここまでかな。ちゃんと復習しておくんだぞ?」

「はーい」

「良し」

 

素直に返ってくる返事に大和は満足げに頷く。

最初は家庭教師と言うバイトに多少不安を持っていたが、教える子は素直で理解が速く(言ってて悲しいが)一子や岳人、翔一に教えるより何倍も楽だった。

 

「では、今日はこれで失礼します」

「ありがとうね。直江君」

「先生ばいばーい」

 

バイト先の子とその母親に見送られ、家を後にする。

 

「さて、アイツらはちゃんとやってるかな?」

 

大和が他のファミリーの調子を見に行こうと、考えた時

 

「やぁーーまぁーー!!」

 

腰につけた紐からタイヤを引きずった一子が、背後に土煙を立てながら猛然とダッシュをしてきて

 

「とぉーーー!!」

 

ドップラー効果を起こしながら、大和を追い抜いて行った。

 

「……ワン子…だよな?」

 

大和は突然の事に困惑しながらもその場で少し待っていると、一子が再び猛ダッシュで戻ってきて今度はきちんと大和の前で止まった。

 

「ごめんごめん。行きすぎちゃった」

「やっぱりワン子か。そっちのバイトは新聞配達だったよな?」

「うん。朝に配達が終わって暇だったから自主トレしてたのよ!大和は家庭教師終わったの?」

「ああ、ついさっきな。これから他の皆の様子を見て回ろうと思ってたんだが、暇ならワン子も来るか?」

「行く!」

 

大和はじゃあ、行くかと言うと、前に歩かず一子の引いていたタイヤに腰を下した。

一子の方もそれを咎めることなく、むしろ大和がしっかり乗っているか確認までしている。

 

「しっかり掴まったわね?最初はどこに行くの?」

「まずは商店街かな」

「商店街って言うと、京にまゆっち、クリがバイトしてるんだっけ?」

「ああ、クリスとまゆっちはバイト未経験者だからな。何かあったらフォローもしとかないと」

「分かったわ。それじゃあ、しゅっぱーつ!」

 

元気な掛け声とともに一子は走り出す。その速度は人一人とタイヤを引きずってるとは思えない程軽快である。

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

「とーちゃーく!」

「お疲れさん」

「クリスたちはいるかしら?」

「この時間なら、店先で売り子してると思うが――――お、いたいた」

 

大和たちが辺りを見渡すと、店先に商品の『川神まんじゅう』を積んだ長机の前に白いフリルの付いたエプロンを着たクリスと由紀江が立って客引きをしていた。

 

「川神まんじゅういかがですかー!」

「い、いかかですかー」

 

クリスは物怖じしない性格が幸いし、人生初のバイトだと言うのに大きな声で通行人に呼びかけている。

由紀江も多少緊張しているものの、以外にもしっかりと呼びかけが出来ていた。

 

「クリス、まゆっちお疲れ様」

「やっほークリ、まゆっち」

「おお、大和に犬じゃないか!」

「大和さんに一子さん。どうしたんですか?」

「二人はバイト未経験だったろ?その様子見をちょっとね」

「そうだったのか。安心しろ!自分もまゆっちもちゃんとやってるぞ!」

「確かにまゆっちもしっかり声出してたわね」

 

 

一子が驚いたように言う。しかし、これには大和も同意見だった。

由紀江は人と会話するのが苦手で、人前に出ると緊張してしまう性格である。

そんな彼女が売り子のバイトをしっかりとこなしていると言う点は、失礼だが少し意外だった。

 

だが、なぜ彼女がしっかりできていたかと言う答えは直ぐに彼女の口から聞けた。

 

「は、はい。その、えっと―――」

『クリ吉が隣にいるからなー』

「ま、松風!?」

「「ああ…」」

 

 

由紀江が言いづらそうにしていた先を松風が続ける。

その言葉に大和と一子は納得したようにうなずいた。

 

「そうかそうか!そんなに自分は頼りになるか!」

 

クリス本人は前向きに勘違いをしているようだが、松風が言った本当の意味は『おっちょこちょい(クリス)が隣にいるから自分がしっかりしなければいけない』と言うものであり、大和たちもそう理解している。

実際はクリスが頼りになるどころか、その真逆の意味を持つ言葉だった。

 

「まあ、何にせよクリもまゆっちもしっかりやれているようで良かったわ」

「フフーフ、犬に心配されずとも自分は商売が得意なんだ」

「…違う世界線の武器商人が混じってない?」

 

バイト中だと言うのにも関わらず、いつも通りのやり取りを始めるクリスと一子。

そんな二人に聞こえないよう、由紀江は大和に小声で話しかけた。

 

(あ、あの大和さん)

(どうしたのまゆっち?)

(実は数時間ほど前からこの辺りに私たちを監視する気配が…)

(なんだって?)

 

由紀江の言葉に大和は眉をひそめた。

 

実は由紀江は伊達や酔狂で真剣を帯刀しているわけでは無く、それに見合った実力の持ち主なのである。

『武神』と呼ばれる百代と同じく武道四天王の一角を担っており、刀の腕前はもちろん先程の会話の通り、気配探知までもお手の物だ。

 

そんな彼女が忠告をするという事は、かなり危ない人物がこちらを監視しているのかもしれない。

大和はそう考え、すぐに最高戦力(ももよ)に連絡を入れようと動いた。

 

(じゃあ、姉さんに連絡をしといたほうが―――)

(ま、待ってください。その必要はないと思います)

(……どういう事?)

(監視している人たちはおそらく、ドイツ軍の方々です)

(ドイツ軍って―――ああ)

 

ドイツ軍と聞いて大和はなぜ監視されているか、その理由を悟った。

 

実はクリスの父『フランク・フリードリヒ』は、ドイツ軍の中将である。それと同時にものすごく娘を溺愛する親バカであり、フランク曰く『娘に手を出すのならば第三次世界大戦を覚悟しろ』とのことである。

 

そんなフランクは中将と言う地位を利用し、クリスのために特殊部隊すら動かす程だ。

おそらく今回の監視しているドイツ軍も初めてのバイトを心配したフランクが配備させたものだろう。

 

 

(ど、どうしましょうか?)

(こちらに危害を加えることは無いんだし、ほっといても良いんじゃないかな?)

(で、ですがこの近辺に三十人ほどいるんですけど…)

(…あの親バカは)

 

大和は由紀江から監視している軍の人数を聞いて天を仰いだ。

日本にドイツ軍が大人数で展開してると知られれば、国家間の問題になる。ましてやこの川神には世界有数の大財閥『九鬼』の最重要人物が複数人いるのだ。下手な事をすれば九鬼を守護する百代級の怪物従者が動く可能性もある。

そんな事になればこのあたり一帯は更地に変わってしまうだろう。

それを危惧して由紀江は大和に相談したのだ。

 

 

(…しょうがない俺から話をつけておくよ)

(で、でしたら私も一緒に)

(まゆっちはバイト中でしょ)

(で、ですが危険です!)

(大丈夫だよ。ドイツ軍って事はあの人が居るはずだから)

(確かに気配はありますけど…)

(なら大丈夫だよ。あの人はちゃんと話を聞いてくれるから)

(…分かりました。でも危なくなったら大きな声を上げてくださいね。すぐに向かいますから)

(ありがと、まゆっち)

(お気をつけて)

 

 

大和は横目で一子とクリスが会話に熱中しているのを確認し、コソコソとその場を抜け、裏の路地に入った。

 

「この辺で良いかな?おーいマルさーん!」

「気づかれていましたか」

「うおっ!?」

 

いきなり大和の背後に、長い赤髪に左目に眼帯をして軍服を着こんだ女性が現れた。

彼女の名前は『マルギッテ・エーベルバッハ』。マルギッテはフランクの部下のドイツ軍人であり、クリスの姉の様な存在でもある。

彼女は21と言う年齢だが、フランクによってクリスの監視と己自身の修行のために川神学園の二年S組に在籍している。

 

「い、いきなり背後に現れないでよ。ビックリするからさ」

「我々に気付いていたのではないのですか?」

「気づいてたのはまゆっちだけだよ。俺は教えてもらっただけ」

「ふむ。訓練した兵士たちの気配を読み取るとは…。黛由紀江、さすがは武道四天王の一人といった所でしょうか」

「それで、この辺にいる人たちってやっぱりクリスのため?」

「ええ、中将殿のご命令です。初めての社会体験をするクリスお嬢様に万が一のことが無いようにと」

「それでも、さすがに30人は多すぎでしょ」

「…こちらの作戦人数までも知られていましたか……それも黛由紀江が?」

「うん。まゆっちがそう言ってたけど」

「兵士たちの存在だけではなく、その正確な人数までも把握するとは…」

 

 

苦々しそうに表情をゆがめるマルギッテ。プライドの高い彼女からしたら、自分を含めた精鋭が簡単に気配を察知されたことが悔しいのだろう。

 

 

「それでさマルさん。このあたりにいるドイツ軍の人たちなんだけど、何とかならない?」

「それは退却させろ、と言う意味ですか?」

「まあ、端的に言えば」

「直江大和。貴方一人の意見でドイツ軍が動くことは無いと知りなさい」

「でもこのままだと九鬼が動くかもしれないよ?」

「む……」

「さすがにクリスのすぐ側で戦闘は避けたよね?」

「……少し待ちなさい」

 

ドイツ軍も九鬼と事を構えるのは控えたいのか、大和の言葉を聞いて少し考え込むと懐から携帯の様な端末を取り出した。

そのまま端末を操作し、大和に背を向けると小さな声で会話を始めた。

数分後、話が終わったのか端末を懐に戻し、再び大和に向き直る。

 

「中将殿の許可が下りました。今から我々は最低要員を残し退却します」

「ありがとうマルさん!」

「あなたの為ではありません。全てはクリスお嬢様の事を想っての事と知りなさい」

「テンプレツンデレ台詞を言うマルさん可愛いぃ!」

「な、直江大和!!」

「じゃあ、ありがとうマルさん!」

 

顔をカッと赤くしたマルギッテを背に大和はさっさと一子たちの元へ走って戻っていく。

 

「……まったく」

 

走りゆく大和の背を見る彼女の視線は、弟を見る姉の様な眼差しであり、しかしその中には姉が弟には向けない感情の類までもが混じっていた。

 

 

 

 

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ドイツ軍と話をつけ、戻ると由紀江が小走りで駆けよってきた。

 

「あ!大和さん。大丈夫でしたか?」

「ああ、向こうも最低限の人数だけ残して退いてくれるって言ってたし、もう大丈夫だと思うよ」

「それも大事ですけど、私が心配してるのは大和さんのお体の方です」

『ドイツ軍に一人でナシをつけに行くなんて、危なっかしくてオラ冷や冷やしたぜ~』

 

松風は冷やかす風に言うが、かなり心配させたことが分かる。

 

「ゴメン、心配かけさせちゃったみたいで。でもこの通り、怪我一つないから」

 

大和は両手を広げて自身の無事をアピールする。

 

「心配してくれてありがとう」

「は、はうぅ…」

 

そのまま由紀江の頭を撫でると、由紀江は顔を赤くしてすこし目をトロンとさせた。

あまり知られていないが、大和のなでなでは想像を絶する気持ち良さがある。

 

日々、飲んだくれ英雄や美少女武神などに頭を撫でることを要求され、気持ちよくないとお仕置き(物理)が待っているため、自然と大和のなでなでは気持ち良くなっていったのだ。

 

今ではそのなでなでに元気犬娘やお昼寝お姉さんも魅了されているほどである。

あがり症の気があり、ボディタッチなどが苦手な由紀江はその不意打ちのなでなでによって完全に思考停止してしまった。

 

「あー!大和どこ行ってたのよ!」

「心配したんだぞ!」

 

そんな時、一子とクリスの二人が大きな声を上げながら近づいてきた。

どうやら大和が離れている間に居なくなったことに気づき、探してくれていたようだ。

 

「ごめんごめん、ちょっとトイレにな」

「そう言うのは一言声をかけてから、行くものだぞ」

「分かったよ」

「ところで、大和。まゆっちはどうしたの?」

「え?」

 

一子に言われ大和が隣にいる由紀江の様子を見ると、いまだに思考停止(フリーズ)から回復しておらず、顔を赤らめたままボーっとしている由紀江が居た。

 

「おーい?」

 

異変に気付いた大和が由紀江の眼前で手を振ると、由紀江はようやく思考停止から回復した。

 

「……ホァ!?や、大和さん!?あの、その……はうぅ」

 

が、回復直後に大和の顔が眼前にあり、再び羞恥心から真っ赤になって思考停止してしまった。

 

「ま、まゆっち?」

「熱でもあるのかしら?」

「初めてのバイトで思ったより疲れたのかもしれないな」

 

見当違いの事を話し合う一子とクリス。大和は由紀江が思考停止(こうなった)理由に心当たりがあったが、それを言うと他の女性二名が騒ぎ出すと思い、黙っていることにした。

 

「二人はまだ他のみんなの所へ行くのだろう?」

「ああ」

「そうね」

「じゃあ、まゆっちの事は自分にまかせて二人は次の場所に行くと良い」

「でも、大丈夫か?」

「自分にまかせろ!もうすぐ人通りも少なくなる時間帯になるし平気だ!」

 

自らの胸を叩いて任せろと主張するクリス。

 

「じゃあ、まゆっちの事頼んだわよ。クリ」

「何かあったらすぐに携帯に連絡するんだぞ」

「ああ、任せておけ!」

 

周辺には最低限の人数だがドイツ軍が残っているはずだし、由紀江もじきに復活するだろう。

そう考え、大和は多少の不安はあったが、クリスに任せ次の仲間の所へ行くことにした。

 

因みに部下にクリスの働きっぷりを撮影させていた親バカ中将は、この時の映像を見て「感動した!」と某首相の様なセリフを言い、トラックいっぱいのクマのぬいぐるみを送ってきてひと騒動あったのはまた別の話だったりする。

 

 

 

 

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クリスと由紀江のバイト先の次に大和たちが向かったのは同じく商店街にある川神書店だった。

その本屋は(おもむき)がある、悪く言えばボロい店構えで少年漫画等の学生層が読む様な本はあまり扱って無いが、発行部数が少ない珍しい本やマニアックな専門書などが置いてあるので一部の根強い顧客を抱える本屋だ。

 

大和自身もこの川神書店を贔屓にしており、大和が自室で飼い愛情を注いでいるヤドカリの飼育本などはここで買っている。

 

「お邪魔しまーす!」

「失礼します」

 

此処でバイトをしている京の様子を見るため、店に入った二人を出迎えたのは、

 

「お帰りなさいませ!ご主人様!」

 

満面の笑みの京だった。

いや、それだけなら問題は無いのだが、問題なのは京が大和に向かって言った台詞とその格好だ。

京の格好はこの本屋の店構えとは全く似合わない、所謂メイド服だった。

 

「み、京!?」

「な、なんでそんな格好してるのよ!?」

 

バイト募集のチラシにそんなことは記載されていなかったが、万が一店側に強要されているのならば厳重な抗議をしなければと大和が考えていると、京本人の口から真相が語られた。

 

「さっき着替えた」

「は?」

「な、なんで?」

「大和に見てもらうためだよ?」

 

何を当たり前のことを聞くんだ、と言うような京の様子に大和は軽い頭痛を覚えた。

が、そうなるとまた別の疑問が頭に浮かんだ。

 

「…京、さっき着替えたとか言ったよな?」

「うん」

「俺、今から行くなんて連絡してないよな?」

「アタシもしてないわよ?」

 

じゃあ、なぜ来るのが分かったのか?そんな疑問が頭をよぎり京の方を見ると、京はまたも事も無げにさらっと、

 

「大和の匂いがしたから」

 

と言った。

その発言に大和は戦慄を覚え、たびたび犬と揶揄される一子ですら軽く引いたと言う。

 

「それで大和、ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?」

「それは新婚さんのセリフであって決してメイドが言うセリフじゃないから。それとどれもお断りします」

「ちぇ」

 

因みにこの時、ご飯を選べば『私を食べて!』となり、お風呂を選べば『私が隅々まで洗ってあげる!』となる。最後のわ・た・しを選んだ場合も言わずもがなである。

 

「冗談はいい加減にして着替えてこい」

「はーい」

「ちゃんと店の裏で着替えろよ」

「チッ」

「やっぱりここで着替えようとしてたか」

 

大和に考えを見抜かれ、京は大人しく店の裏へ戻っていく。

その時、店の店長とすれ違ったのか、

 

「ば、バッキャロー!何て格好で出歩いてんでぇ!ご近所様に勘違いされたらどうすんだ!?」

 

焦った様な怒鳴り声が聞こえた。

しばらくするとその声の主が店の裏側から現れる。

 

「たっく、最近の若ぇのは何考えてるのかわかんねぇな」

 

愚痴りながら出てきたのは頭に手ぬぐいを巻いた江戸っ子口調の男性でこの店の店長でもある。

この店長は大和たち『風間ファミリー』の面々を小さいころから知っており、特にキャップは店長と仲が良く普段はこの川神書店でバイトをしている。

 

「こんにちわ、店長」

「こんにちわ!」

「おう、何だ客かと思ったらお前たちか。今日はバンダナは居ねぇのか?」

「キャップなら今日は自転車タクシーの運転手してますよ」

「じゃあ、凄いスピードで爆走するってぇ噂の自転車タクシーはもしかして…」

「間違いなくキャップだね…」

「事故とか起こさないと良いけど」

「キャップの幸運値なら大丈夫だろ」

「それもそうね」

 

大和が言う様に翔一は幸運を超えた豪運の持ち主でその効力は、当たり付きのお菓子を買えばおなか一杯になるまで当たり続け、人生ゲーム等の運を必要とするゲームでは必ず一位になるほどだ。

 

「それで、今日は何の用だ?」

「京の様子を見にちょっと」

「ああ、ちゃんと真面目に仕事やってくれてたぜ。ただちょっと愛想が悪かったがな」

「ククッ。愛想を良くするほど客が来ないと言う事実に着目するべき」

「うるせぇー!余計なお世話だ、バッキャロー!」

 

着替え終わった京が戻ってくると同時に店長に向かって毒を吐く。

店長も気にはしているのか、怒鳴ってはいるが顔を苦そうにしかめている。

 

 

「ったく。おう、今日はもうそのまま上がっても良いぞ」

「…本当に客が?」

「バッキャロー!もうこの時間からは商店街も人通りが少なくなるんだよ!」

「なんだ」

「縁起でもない事言うんじゃねぇってんだ」

 

京の辛口な言葉にいつもなら諌めるはずの大和や一子は何も言わずに苦笑を漏らしている。

なぜなら、それが京と店長の平常運転だからだ。

 

読書家でもある京は、休日などに良くこの書店に訪れ立ち読みをする。

店長は立ち読みに対し文句は言うが、追い出したりすることは無く、新刊や京が好みそうな本が入荷されればそれを伝えたりもする。

それに京も気に入ればちゃんと本を買うのだ。

 

悪態をつきあうが、なんだかんだで仲のいい二人だった。

 

「店長、お邪魔しました」

「お邪魔しましたー」

「お疲れ様でーす」

「おう!今度は客として来てくれよ!」

 

 

別れのあいさつを交わし、京を伴って本屋を後にした大和たち。

外に出ると、日の出ている時間が長くなってきた時期と言えど薄暗くなっており、商店街は店長の言うとおり人通りも疎らになっていた。

 

この時間帯ならば他のメンバーはもう仕事を終わらせているかもしれない。

そう思いまず連絡を取ろうと大和が携帯を取り出した瞬間

 

『りんりん ベルを鳴らして♪とんとん ドアをたたいて♪』

 

ちょうど大和の携帯が鳴り始めた。

 

「おっと、…キャップからだ」

「バイトが終わった報告じゃない?」

「そうかもな。…はい、もしもし?」

『おう!大和か?こちらキャップ!』

「うん。どうしたのキャップ?」

『きゃ、キャップ!?自転車こいでる途中に電話しないでよ!?』

『父様、マルさん先立つ不孝をお許しください…』

『ク、クリスさん!?気をしっかり!』

「キャップ!?もしかして今運転中!?」

『その通り!超特急で秘密基地に向かうから安心してくれ!』

「何一つ安心できる要素が無いんだけど!?」

『ちょ!?ストップ!前から暴走族がバイクで向かってきてるんだけど!』

『今の俺は風!止まるなんてことはしないぜ!』

『『『わあああああああああああ!!?』』』

「ま、まってキャップ!キャップ!?………駄目だ、切れてる」

「なんか、最後にクリたちの悲鳴が聞こえたんだけど…」

「ご愁傷様…」

「…とりあえず、俺らも秘密基地に向かうか」

 

モロたちに心の中で冥福を送り、大和たちは商店街から秘密基地に向かうため脚を向けた。

 

 

 

 

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「もう!キャップのせいでひどい目に遭ったよ!」

「なんだよー、みんな無事だったんだから良いじゃねーか」

「けがは無かったが…」

「すごく体力を消耗した気分です…」

 

大和たちが秘密基地に着くと、卓也が翔一に先程の事を抗議しているところだった。

付き合いの長い卓也は翔一の奇行にも慣れており、比較的早くに回復できたのだが、ファミリーに入ったばかりのクリスと由紀江はいまだに奥のソファーでぐったりとしている。

 

「モロ、キャップ。お疲れさま」

「大和、京にワン子も。そっちもバイト終わったんだね」

「ああ、そっちはバイトどうだったんだ?」

「一応、ちゃんと仕事はこなしてきたよ。やっぱり緊張はしたけどね」

「俺はすごい楽しかったぜ!スピード上げると客が大きな声で喜んでくれてよ!」

「それって悲鳴だったんじゃ…」

 

実際に翔一の運転を体験している卓也が渇いた笑いをうかべる。

 

「おーい。美少女がかえって来たぞー」

「おーす。って全員いるのか」

 

すると、バイトが終わったのか百代と岳人がそろって秘密基地に入ってきた。

 

「姉さん、ガクトお疲れ様」

「疲れたぞー、姉を癒せー」

「ちょ、姉さん!――――ん?」

「ん?どうした?」

「いや、なんでもないや。それよりも離れてよ」

「ちぇー。釣れない弟だな」

 

入って来て早々、百代は大和に絡みだす。

大和の制止で渋々と言って風に離れるが、その後ぐったりとしているクリスと由紀江を見つけるとニヤリとした笑みを浮かべ、手をワキワキと動かしながらソファに近づいて行った。

 

「姉さん、ほどほどにね」

「ハハハ…ガクト達は隣町の工事現場だったよね?」

「おう!俺様の肉体を磨くいいトレーニングにもなったぜ!」

「こんな時間までかかるなんてけっこう大きい現場だったのか?」

 

大和の疑問はもっともだった。

大人の数倍の力を持つ岳人に加え、大人の数十倍以上もの力を持つ百代まで居たのだ。

 

重い荷物の運搬はもちろん、地面に穴を掘るなど重機類が必要な作業も百代には素手で行える簡単な作業だ。

よっぽど広い敷地の現場ですらない限り、半日も経たずに終わってしまうだろう。

大和がそう聞くと岳人は苦い顔をしながら

 

「それが聞いてくれよ。仕事自体は早く終わったんだが、休憩中にした町の噂話で盛り上がっちまってな」

「噂話?」

「ああ。そしたらなんか現場裏の山にも出るって話になったんだよ」

「出るって…」

「もちろんコレだよ、コ・レ!」

 

そう言いながら岳人は両手をだらんとしながら手の甲を相手に突きだすような、いわゆるお化けのポーズをしてみせた。

 

「でもよ、その話をした途端モモ先輩が…」

「あぁ。姉さんそっち系はダメだからね」

 

実は百代は世界最高クラスの戦闘力を持つ『武神』と呼ばれる存在ながらも、お化けや幽霊など魑魅魍魎(ちみもうりょう)の類が苦手と言う女の子らしい弱点を持っていた。

もっとも、なぜ苦手かと言えば『己の拳が効かないから』と言う豪快な答えなのだが。

 

「もしかしてモモ先輩とガクトが遅れた理由って…」

「モモ先輩が噂話聞いてパニック起こしちまってな。作業の終わった工事現場にでかい大穴あけちまってそれを埋めてたんだよ…」

「それは…ご愁傷様」

「チクショー!他の現場員は『お前の連れがやったんだからお前がやれ』って押し付けるし、モモ先輩も穴あけたらそのまま居なくなるし!俺様一人であの穴埋めるの大変だったんだぞ!」

「た、大変だったんだね」

「モロぉ!俺様の事を分かってくれるのはお前だけだぜ!卓代ちゃんになって癒してくれぇ!」

「絶対に嫌だから!サラリと変な願望言わないでよ!」

「最初は嫌々ながらも、そのうちまんざらでも無くなって行って…良い!」

「『良い!』じゃないよ京!誰も好き好んで女装なんてしないから!」

 

 

ギャーギャーと騒ぎ始めた面子を尻目に、大和はクリスと由紀江にちょっかいを出し始めていた姉貴分に声をかけた。

 

 

「姉さん。何やってるのさ」

「私の前であんな話する方が悪い」

「それはいいとしても、なんで穴開けたらどっか行っちゃったのさ。姉さんなら穴埋めるぐらい簡単でしょ?」

「そ、それは…」

 

大和の言葉に対し露骨に目を逸らす百代。

大和はその態度を見てさらに追及を強めた。

 

「それに、ガクト一人残してこんな時間まで何してたのさ?」

「…ぷ、プライベートの詮索はマナー違反だぞ」

「姉さん?」

「………」

「まさか姉さん………。ガクト、ちょっと良い?」

「おう、いいぜ」

「さっき姉さんと一緒に帰ってきたみたいだけど、どこで会ったの?」

「モモ先輩とか?えーっと、確か現場からの帰り道に前の方に歩いてたから声かけたんだよ」

「現場の方から…。と言う事は姉さんは隣町の方で何かをしてたって事か」

 

大和の呟きに百代の肩が一瞬ピクリと跳ねる。それを見た大和は己の推測を確信へと変えた。

 

「姉さん…もしかして隣町で女の子遊んでたんじゃないの?」

「な、なにを根拠に!」

「さっき姉さんに絡みつかれた時、微かに香水の匂いがしたんだ。姉さんはそんなの付けないでしょ?」

「うっ…」

「正直に白状するなら減刑の余地はあるけど?」

「しょ、証拠はないだろ!」

「確かに証拠はないよ……俺にはね」

「ほ、ほら。なら―――」

「でもね。証拠は姉さん自身がもってるんだよ」

「私が?」

「ガクト、確か工事現場のバイトは日払いだったよね?」

「!?」

「ああ、そう言えば金はどうすんだ?俺様が持っとけば良いのか?」

「いや、念のため金庫か何かに入れておこう。金庫は明日にでも俺が用意するから一応あずかっとくよ」

「おう。じゃあ、これが今日の分な」

「はい、確かに」

 

大和は岳人から給料袋を預かると、ニッコリとした笑顔を百代に向ける。

しかし顔は完璧なまでの笑顔なのに、その背後にはどこかの奇妙な冒険をするスタ〇ド使いの様な擬音が視えそうだった。

 

「ひ、ひいぃ。大和がドSな時の笑顔してるぅ」

「俺様、あの顔の大和には近づきたくねぇぜ」

「俺もだぜ」

「アタシだって」

「ガクト、キャップ、ワン子の三人はちゃんと勉強してればあの顔を見ずに済むと思うんだけど…」

 

ひそひそと話し合うメンバーを余所に大和は百代に手を差し出す。

 

「ほら、姉さんの分も預かっとくよ」

「わ、私はちゃんと自分で管理しとくから」

「姉さんが管理したら一日でなくなっちゃうでしょ。ほら早く。それとも出せない理由があるの?」

「そ、それは…」

「それは?」

「うう…」

 

百代は観念したのか、唸りながらも給料袋を大和に手渡す。

大和はそれを受け取り、中身を見ると一層笑みを深めた。

 

「ガクトの分と比べると半分もないみたいだけど?」

「……」

「女の子と遊ぶときに使ったんだね?」

「…はい」

「なんで使っちゃったのさ」

「しょ、しょうがないだろ!それしか手持ちが無かったんだから!」

「開き直らないの!」

「…スイマセン」

「なんか浮気を見つけた妻と夫みたいになってるぜ」

「給料日に遊んできちゃった夫と叱る奥さんにも見えるわね」

「どっちにしろ配役の性別が逆なんだけどね…」

「この分は旅行中の姉さんの自由行動費から引いとくからね」

「そ、それだけは!」

「姉さんが自分で使ったんでしょ!」

「あァんまりだァ~!」

 

 

 

「まゆっち、自分が寝てる間に何があったんだ?」

「わ、私もいま目が覚めた所なので、何が何だか…。京さん何があったんですか?」

「……しょーもないこと」

 

そうして百代の慟哭をBGMに日曜の夜は深けて行った。

ちなみに、百代は一子と一緒に朝の新聞配達を手伝うことによって大和に許してもらった。

 

 

 

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平日も放課後バイトに精を出しつつ、三日後の水曜日。運よくファミリー全員が秘密基地に集まっていた。

 

「皆、ちょっと良い?」

 

お菓子を食べたり、漫画を読んだり、ゲームで遊んだりなどいつもの様に過ごしている皆に対し、大和は声をかけた。

その声に反応し、皆は各々の行為をいったん中止して大和の声に耳を傾けた。

 

「そろそろ、旅行先を決めないと駄目でしょ?」

「おー。そう言えば決めてなかったな」

「忘れてたのかよキャップ…」

「そう言うガクトだって今朝僕に『まだ、旅行先って決まって無かったよな!?』とか慌てて確認してたじゃん」

「も、モロ!それは言わないでくれって!」

「はいはい!そんな話より、まずは行き先を決めるよ!」

 

大和が手を叩きながら場を仕切る。

 

 

「みんなの意見を聞いてるとキリがないからね。俺が何か所かに絞ってきたからその中から決める形で良い?」

「おう!良いぜ!」

 

大和の言葉に翔一が同意する。他のメンバーも同じなようで異を唱える者はいなかった。

 

「まず、予算的に国外は厳しいから国内旅行になるね。で、国内から何か所かピックアップしたんだけど…」

 

そう言って大和は三枚のパンフレットを取り出し、机に広げた。

 

「北海道、京都、沖縄。この三か所が良いんじゃないかなって」

「良いんじゃない?アタシまだ何処も行ったこと無いわ」

「一応パンフレット持ってきたから、それを見て自分が行きたい場所を一つ決めてくれ。後で多数決で決めるから」

「俺様も行ったこと無いからなぁ。結構迷うぜ」

「そうだね。どこも楽しそうだし」

「自分も迷うな。日本はどこも素晴らしい土地だからな」

「友人と旅行の相談…。夢にまで見ていた光景が今目の前に…っ!」

『オラ、涙で前が見えねぇ!』

「遺跡とか未開のジャングルとか無いのか?」

「私はかわいこちゃんが居ればそれでいいんだが」

「ねえ大和、部屋割りは―――」

「男女別だ」

「部屋割り――」

「男女別」

「…ちぇ」

 

 

そしてパンフレットを眺める事、数分。

 

 

「そろそろ決まったか?」

「おう!」

「大分悩んだけどね」

「じゃあ、一斉に行きたい場所のパンフレットに指を指す。良いね?」

「OK!」

「じゃあ、行くよ?いっせーのー…」

「「「「「「「「「せっ!」」」」」」」」」

 

 

北海道希望者 一子・京

 

「熊と戦えると思ったのになぁ…」

「寒かったなら大和の布団にもぐりこめたのに…」

 

京都希望者 クリス・岳人・卓也

 

「くっ!大和丸夢日記に出てくる越後屋が見たかった…」

「舞妓さんと仲良くなれると思ったのによぉ…」

「みんな理由がちょっとおかしくない!?」

 

沖縄希望者 百代・翔一・由紀江・大和

 

「フフフ、南国の果実たちをいただくとしようか」

「よっしゃ―!海底遺跡とか発見してやるぜ!」

「お、沖縄ですよ松風!」

『華麗に砂浜を駆けるぜ~!』

「一回で綺麗に決まったな」

 

多数決の結果、四人が指した沖縄に行先が決定した。

決定した途端に皆は沖縄のどこで遊ぶかなどを話し始める。

そんな中、百代は何かを思い出したかのような表情で大和に話しかけてきた。

 

「なあ、大和」

「なに、姉さん?」

「旅館なんだが…」

「その辺は俺が予算を踏まえて、ちゃんと予約しとくけど?」

「いや、そうじゃ無くて。確かウチの門下生の身内に沖縄で民宿をやってる人が居たと思うんだが、頼めば普通より安く泊まれると思うぞ?」

「それはありがたいけど、良いの?」

「たぶん大丈夫だろ。じじいの顔の広さはこういう時に使わなくちゃな」

 

 

「ぶぇっくし!!」

「総代、風邪ですカ?生徒に移さないよう気を付けてくださいヨ」

「ううむ。どこかのぎゃる達がワシの噂でもしとるのかのぉ?」

 

 

「じゃあ、お願いするよ」

「ああ。OKだったら夜にメールで知らせるからな」

「うん」

 

大和と百代が話し終えると、見計らっていたかのようにが話しかけてきた。

 

「大和!沖縄に行ったらダイビングがしたいぜ!」

「俺様はビーチに繰り出してぇな」

「タコスとか沖縄そばとかも美味しそうね!」

「自分は世界遺産の首里城に行ってみたいぞ」

「はいはい!分かったから!一応、三泊四日の予定だからそこそこは周れると思うけど、いい機会だから今の内に簡単な予定立てちゃおうか。モロ」

「ネットで検索だね。任せてよ」

「とりあえず行きたい場所の候補が―――」

 

大和はカバンから一枚のルーズリーフを取り出し、そこに観光候補地を書き込んでいく。

 

・ダイビング

・ビーチ

・グルメ関係

・首里城

・美ら海水族館

・その他観光名所

 

 

「っと。こんな感じかな?モロ、川神から沖縄までの時間って分かるか?」

「ちょっと待って………川神空港から最速で二時間ってとこかな」

「二時間か…。それなら昼前に川神を出ても初日はそんなに行動できないな。空港から近い観光名所を周るって感じになるか」

「空港から近い名所ね……それなら首里城とかがあるね」

「なら、初日はその辺の観光って感じかな。二日目には美ら海水族館に行くとして、近くにビーチとか無い?」

「美ら海水族館の周辺ね…あった!。泳げるビーチがあるよ」

「良し。じゃあ、三日目にダイビングとグルメ関係。最終日には観光やお土産を買うなりしようか。細かい所は後々煮詰めるとして、今はこんな感じかな?」

 

とりあえず簡単な予定を大和が組み上げると、翔一が大和と肩を組む。

 

「さっすが俺たちの軍師様だぜ!頼りになるな!」

「普通はリーダーであるキャップの仕事なんだけどね」

「俺にそう言うのは無理だ!」

「そんな言い切る事じゃないよ…」

 

翔一の清々しい宣言に苦笑いしながらも、大和は内心この翔一と言う男に頼られているのが嬉しかった。

 

「見つめ合う二人、そのまま二人は禁断の愛を!」

「無いから」

「そんな事よりも、行先も決まった!予定も立てた!あとはバイトを頑張るだけだぜ!」

「「「「「「「「「おぉー!!」」」」」」」」」

 

夕暮れの秘密基地にメンバーたちの大きな声が響き渡っていった。

 

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

それから風間ファミリーの面々は各々のバイトに精を出し、ついに旅行前日。

 

「ふぅ。今日でバイトも終わりか」

 

大和は最後のバイトを終え、貰った給料を金庫に入れるべく(百代の騒動があった後、大和が小型の金庫を用意し、秘密基地に設置した)秘密基地に向かっていた。

その時、大和の携帯にメールの受信を知らせる振動が走った。

 

「ん?…モロからか」

『これから秘密基地に来る?もうみんな帰っちゃって秘密基地に誰も居なくなるから、良ければ僕が金庫を持って大和の所へ行くけど』

「そうなのか。じゃあ…『ああ、お願い。商店街のモスドナルドで待ってるよ』―――送信っと」

 

メールを送ると、大和はそのまま待ち合わせ場所へ足を向ける。

モスドナルドに入るとまだ卓也は来てないらしく、大和は適当な座席に座り卓也を待つことにした。

 

 

数分ほど待っていると携帯に卓也から電話がかかってきた。

何かあったのかと不審に思いつつも大和は電話に出る。

 

「もしもし?どうした―――」

『やや、大和!?大変なんだよ!!』

「わっ!?お、落ち着けよモロ」

『あ、ご、ゴメン。ってそうじゃない!大変なんだよ!お金が!』

「お金?旅行用の資金の事か?」

『そう!そのお金が、盗まれちゃったんだよ!!』

「な、なにいいい!?」

 

モスドナルドの店内に大和の叫び声が響き渡る。

どうやら川神に吹き荒れる騒動と言う名の旋風は、大和たちを簡単に旅行には行かせてくれないらしい。




前回の更新から大分時間がかかってしまいました。申し訳ございません。
今回の話は前回投降時に感想で空行が多いとのご指摘をもらったので、少し構成を変えてみました。
一話の様な構成の方が良い、と思った方がいらっしゃればぜひ感想に一報ください。
それでは、次回の更新も遅れるとは思いますが、よろしくお願いします。
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