純黒のDVDが届いてハイになりました。初回限定盤なのでおまけつきです。安室さんと赤井さんかっこいいです。そのテンションのままシードルin純黒を書き始めちゃっていつこれ投稿すんだろうと思いました。原作突入してからになりますね、本当にいつになることやら。
ところで気がついたらお気に入り数が300超えてました。ありがとうございます。早くジンニキやライと絡ませたいのに書けません。毎日更新なんてしてみたくても夢のまた夢ですね。なんという遅筆。
今回名前付きのモブが三人出てきますが任務の標的ですので早々に退場します、ご安心ください。
引き続きバーボン視点です。
子供は僕とベルモットがきちんと座ったのを確認して、空気を変えるようにパンと一度手を叩いた。
「それじゃあ改めて! 初めまして、ボクはシードルって言います。情報関係の任務をメインにちょこちょこ暗殺もしてるよ。ライバルだけど数少ない諜報担当だし、仲良くしたいな。よろしくね!」
「バーボンです。こちらこそよろしくお願いします。」
弾けるような笑顔とともに、右手を差し出してきた。僕は今度はその手を取り、にこやかに返事を返した。そしてさり気なく子供――シードルの右手を観察する。まるで本当の子供のように柔らかく細い手だった。観察したのは一瞬で、握手はすぐに解けた。
「さて、バーボン。キミ今ボクに聞きたいことあるんじゃない?」
「なんのことでしょうか。」
「またまた〜とぼけちゃって! ボクの性別知ってんだろ? ほら、男装趣味なのとか思ったでしょ?」
「……まあ、正直に言えば。」
シードルの遠慮のない言葉に控えめに同意を示した。確かに、彼女の格好は男装と言って差し支えない。白いカッターシャツは第一ボタンまでしっかり閉め、きっちり締められたネクタイはショートタイプのようで通常のものよりも短い。シャツの上からはカマーベストを着ている。合わせがどちらか分かりづらいデザインのそのベストと穿いている細身のパンツは同じ黒色。靴はややカジュアルな革靴。どれもこれも一目で上質と分かる代物だ。
「女性らしい格好が苦手なんですか?」
「まあね。顔も中性的だし、いっそのこと性別不明目指せばいんじゃね? って思って。性別:シードルみたいな。でもシャツとかベストとかちゃんと女物なんだよ。」
分かる人には女の子だって分かるようにしてるんだと言う彼女は、どうあがいても中学生そこそこの少年にしか見えない。彼女は小柄な上に非常にスレンダーな身体つきをしているから、第二次性徴前の少年だと言われれば納得してしまう。本人が言うように顔立ちも中性的だ。
十代前半から半ば程度の容姿の彼女が、シードルのコードネームを与えられたのは五、六年前だととある下っ端組織員が言っていた。どれくらい長く組織にいるかは知らないそうだが、コードネームを貰った当時から容姿が変わっていないらしい。どういうことだ。
「お? 『お前は一体幾つなんだ』って顔してるね。」
「実際幾つなんですかあなた。ベルモットもかなり若作りですし、なんです? 組織は不老の薬でも作ってるんですか?」
「その言葉そっくりそのまま返すわ、バーボン。あなた人のこと言える立場なの?」
「確かに! キミすっごい童顔でティーンに見えるけど、二十歳は過ぎてんだよね。」
「ええ、勿論。シードルはどうなんですか? 僕より歳下に見えますけど、見た目と中身釣り合ってないんでしょう? ベルモットのように。」
「そうだよ〜。あ、少なくともベル姐さんより歳下だよ。」
「当たり前のこと言わないでちょうだい。あなたみたいなのが同年代だなんて思いたくないわ。」
どうやら自分の年齢を明かす気はさらさらないらしい。再三言うが、こちらが把握しているシードルの情報は非常に少ない。少しだけでも多く手に入れたいところだが、やはりそう安々と情報を与えてはくれなさそうだ。しかし、この容姿で自分より歳上だと言われたらどうしようか。人のこと言えないだろとか天然の年齢詐欺師めとかスコッチ辺りに言われそうだが、シードルに関しては仕方がない。見た目完全に中学生だぞ。僕はどんなに間違われても高校生程度だ。よってシードルの方が年齢詐欺である。
「まあそれはともかく! 任務のこと話さなきゃね。ターゲットのことなんだけど……」
「標的は三人、男二人、女一人よ。」
「バーボンにはこの成金オバサンの相手を頼みたいな〜。彼女の好み、丁度キミみたいなベビーフェイスのイケメンなんだよね。ぴったりじゃん。」
品の良いローテーブルにベルモットが三枚の写真を並べる。六十になったばかりくらい白髪混じりの男性、三十後半くらいの黒髪の男性、五十代くらいの女性。シードルは女性の写真を手に取り、ひらひらと顔の前で振った。歳相応の老いの見られる顔を隠すように施された厚化粧に豪奢な宝石のあしらわれたアクセサリー。年甲斐もなく若い男の腕にしなだれかかるその姿はいっそ間抜けにも思えた。
「名前はアニータ・コープランド。表向きには製薬会社の社長夫人、裏では結構やばいクスリを密売してる。夫である社長は妻にベタ惚れで言いなりなんだと。まあ、顔はそれほど悪くないし、昔は相当美人だったんだろうね。今じゃ面食い色情ババアだけど。」
彼女お得意のそういうおクスリ盛られないように口にするモンには注意しといた方がいいよ、とシードルは宣った。気に入った男にクスリを盛ってペットにするのがいつもの手口らしい。冗談じゃない。元よりパーティで何かを口にする気はないが、そんなやり口で彼女の手に堕ちる羽目になった男性達も遣る瀬ないだろう。
「ベル姐さんはこっちのビール腹オジサン、モーゼス・オールストンをお願いしたいな。典型的な美人好きの変態親父。」
「モーゼス・オールストン? 見覚えがあると思ったら、工業系の大手会社の社長じゃないですか。」
シードルはアニータの写真を置いて白髪の男性の写真を代わりに手に持った。その名前を聞いて記憶に引っ掛かり、よくよく見れば表の社会ではそこそこの知名度を誇る会社の社長に合致した。彼の会社は、てっきり完全に表の会社だと思っていたのだが。悪い意味で驚いた。
「裏の人間相手に武器の密売をやってるわよ、この男。最近じゃ人身売買にも手を出してるらしいわ。」
「え、最近? 全然そんなことないよ、こいつ昔っからやってるよ。まあ今はこいつって言うよりこいつらだけど。」
「なんですって?」
「と言うか、『こいつら』って……まさか。」
「そ。モーゼス・オールストンの息子、トバイアス・オールストンも勿論噛んでるよ。こいつが会社に入ってから、人身売買の方がちょっと増えたの。モーゼスがその筋の仕事を息子にやらせ始めてから周囲にバレてきたってことだ。そう考えると父親の方は随分と上手に浚って売ってたんだね、気づいてる人はかなり少なかったよ。だからベル姐さんが知らなかったのも無理はないさ。」
そう言ってシードルは空いている片手に最後の一枚、黒髪の男性の写真を取った。取引相手だろう女性ににこりと微笑む男性は人の良さそうな爽やかな顔立ちをしているが、シードルの話を聞いた後だと、その笑顔がどこか悍ましく思えた。全く、人は見た目に寄らない。まあそれはここにいる全員に言えることだが。
しかし、ベルモットでさえ把握していなかった人身売買をよく知っていたものだ。独自の情報網の広さは伊達じゃないということか。幼気な顔と明るい笑みとは対称的な仄暗い話をさらりとする辺り、見目に反して組織らしい人間だとつくづく思った。
「この男さあ、やっさしそーな顔してえげつないよ。父親の方がよっぽどマシな趣味してる。」
「……トバイアス・オールストンはシードルが担当するんですよね。その、口にも出したくないんですが、……」
「うん、まあ、お察しの通りショタコンですな。小学校高学年から中学生くらいの美少年が好みで、いいなと思った子を浚って手籠めにして飽きたら売り飛ばしてるみたい。父親と違ってジム通いして鍛えてて本人の腕っ節も強いって。そんな奴に組み敷かれたらそりゃ逃げらんないよなあ。」
それを聞いた僕は思わずシードルを見た。細い。袖口から覗く手首は、僕が本気で握ったらあっさりと折れてしまうのではないか。他人事のように言ってるが彼女も大の男に組み敷かれたら一溜まりもないだろう。何か格闘技でも会得しているのかと思ったが、こんな華奢な体格では全くそのようには見えない。組織はどちらかというと銃火器に長けている人物が多い。彼女もそのタイプなのだろうと推測した。
「それじゃ、皆打ち合わせ通りにね。」
「ええ。」
「了解。」
周囲に聞こえない程度の声量でシードルに短く言葉を返した。
ベルモットが差し出した三枚の招待状を従業員は確認し、何の疑いもなく会場へ案内する。それもそうだ、招待状は全て正真正銘本物なのだから。
当初僕はアルバイトとして潜入する予定で、ベルモットは偽造した招待状で会場入りする予定だった。そこに待ったをかけたのがシードルだった。もっと安全に潜入する方法があると、内緒話をする子供のように楽しげに言った。そして取り出したのが、三枚の本物の招待状。
『持つべきものは友、ってね!』
とあるツテから入手したらしい。本物があるなら、わざわざリスクが高い潜入方法を選ぶ理由はない。急遽僕達は三人でパーティに潜入することとなった。
僕とシードルは仲の良い兄弟。貿易会社の社長の子息としてのびのびと育った箱入り息子達。実母を病で喪い、数年後に他の女性が妻に迎えられた。その妻、つまり義理の母との関係は良好。今回は父親が仕事で来られないため、代わりに義母が保護者として付き添っている。という設定だ。もちろん義母役はベルモットである。そこまで決めることかと思ったが、下手に口を挟むと変に絡まれそうだったから口を噤んだ。絶対こいつ面白がってる、愉快そうに話すシードルを見て思った。
ただ、兄弟設定である僕とシードルは残念ながら全く似ていない。年齢なら兄弟でも通りそうだが、容姿は似ても似つかない。髪も、眼の色も、顔立ちも、肌の色も違う。これで兄弟ですなんて言えるわけがない。それを指摘したら、シードルは安心してと微笑んだ。
当日、シードルはウィッグを被って現れた。僕と同じ色の髪。それだけで随分印象が変わる。標的も色素薄めのが好きみたいだから丁度いい、と潜入のために用意した白のスーツに身を包んだシードルが言った。幼さを強調するためだろう半ズボンと黒のハイソックスの間から覗く膝小僧が眩しい。
ベルモットとは先程分かれた。彼女はこちらの息のかかった他の客に挨拶をしてカモフラージュをしつつ、ターゲットであるモーゼスに近づくのだ。無論僕らも後で別行動になる。今は弟に付き合う兄と、控えめながらも兄を振り回す弟を演じている。周囲に違和感を覚えられ主催者側に密告されては溜まったものではないから、こういった行動は意外と重要なのだ。
「アニータ発見。早速行くかい?」
シードルに袖を引かれ、耳を傾けてやると小声で早口に告げられた。それに明確な返事は返さなかったが、代わりに行動で示した。
「あっちのご飯が食べたいのか? じゃあ一緒に行こうか。」
シードルは嬉しそうに笑って、僕の腕を引っ張った。そして赤いドレスを身に纏ったアニータの傍で離し、一人先に行く。僕は離れる弟を慌てて追いかけるように駆け足気味になり──アニータにぶつかった。
「ちょっと何するのよ!」
「あっ、す、すみません、ミセス! お怪我はありませんか?」
目尻を釣り上げ声を荒らげるアニータの宝石の指輪だらけの手を取り、眉を下げて申し訳なさそうに心配そうに言えば、彼女は顔を赤らめ、大丈夫よと先程の勢いは何処へやらしおらしく言った。
「本当に申し訳ありません……。こちらの不注意でした。」
「い、いいのよ、誰だってこれくらいの失敗はするもの。」
「でもぶつかってしまったのは事実なので、どうかお詫びを……。」
アニータの視線が僕の頭から足先を滑り抜ける。どうやらお眼鏡にかなったようで、「じゃあこの後暫くあなたの時間をくれないかしら? 夫が今日来れなくて。」と微笑んだ。彼女の裏を知るこちらとしては、どんな笑みも気味が悪く見える。そんな感想は噯にも出さず、僕は喜んでと嘯いた。
シードルは上手くいっただろうか。見た目に不相応な年齢ということは知っているが、子供の見た目というのはどうもいけない。ついつい心配してしまう。
歯の浮くような甘い台詞を囁き、貼りつけた笑みでご機嫌をとり、任務遂行を急いだ。
シードルのイメージイラストをアップするか悩んでおります。既存キャラで一番近いのはとうらぶの薬研でしょうか、彼よりもっと目が大きくて悪戯っ子っぽい感じですが。
ジンニキに悪戯する話を早く書きたいです。筆者は安室さんと赤井さんとジンニキを推しているので三人の出番は多めかと。女の子だと哀ちゃんと世良ちゃんとベル姐さんですかね。哀ちゃんは組織の人間に敏感なので絡ませられなさそうですが、世良ちゃんとならボクっ子繋がりで結構絡ませられそう。