徒然なるままの短編集   作:タナショー

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ポケハルが行き詰ってしまったので、息抜きに書いてしまいました。

タイトルからわかるようにデジアドのSSになります。

昔書いていたものを手直ししたものですが、楽しんでもらえたら何よりです。



※注意:この話にはオリジナルデジモンが登場します。
そういうのが苦手な方はブラウザバックをしてください。








デジタルワールドストーリーズ ~アドベンチャー01~(試供版)そのいち

突然だが、俺こと“名高将人(なだか まさと)”は前世の記憶を持っている。

 

とは言っても「神様に~」っていうようなテンプレなイベントがあったわけではなく、ある日見ていた特撮番組の名(迷?)ゼリフに「聞き覚えがあるな~」と考えた瞬間に、前世の記憶が急によみがえってきた。

記憶が蘇ったって言っても激しい頭痛に襲われたりとかもなかったし、いきなり性格が変わったりとかするわけでもなく、忘れたことをふと思い出したっていう感じで特に実感は無かったけど。

 

ついでに蘇った記憶の年号が今からすると10数年ほど未来のものだったのも実感がないことに拍車をかけていた。

 

ちなみに記憶が戻って最初にしたことは父さんの持っている地図帳を開いてリリカルでとらいあんぐるな町や、魔法少女や魔法親父の存在が噂される学園都市などの、この手の話で良く舞台にされる場所を探すことだった。

まぁ、そんなものは全然見つからなかったんだけど。

 

そういうわけでその時は「なんか便利そうな知識が思い出せてラッキー」としか思ってなかったんだけど、まさかこの数年後にあんな壮大な冒険に出ることになるとは思わなかったな。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

1999年 8月 1日、今日からサマーキャンプが始まる。

 

 

前世ではインドア派だった俺はこういったイベント事にはあんまり参加してなかったから、何気に楽しみにしていたんだけど……

 

「わぁー、雪だ!!」

 

真夏なのに辺り一面銀世界っておかしいだろ!?

 

 

 

 

 

突然起きた吹雪から避難するために、一緒に近くの小屋に避難したのは俺を含めて10人。

 

「光子郎さん、繋がりました?」

 

「だめです。吹雪が止んだから繋がっても良さそうなものですけど」

 

その中で携帯を持っていた俺と“泉光子郎(いずみ こうしろう)”さんで、手分けして連絡を取ろうとしてるんだけど、ずっと圏外で一向に繋がらない。

一応、吹雪きだした時に父さんに連絡を入れといたからそこまで心配はいらないと思うけど。

 

「おーい、光子郎たちも早く来いよ」

 

外から真っ先に飛び出して行った“八神太一(やがみ たいち)”さんの声が聞こえてきた。

光子郎さんと一緒に外に出つつ、これから起きることに思考を傾けていった。

 

 

 

デジモンアドベンチャー。

 

[デジタルワールド]という異世界で繰り広げられる子供たちの冒険アニメ。

前世ではかなりハマっていたアニメだったけど、まさかこの世界への転生とは盲点だったな。

デジアドの世界観は、基本的に現代社会と同じだったからそら分かるわけないよな。

意外とすんなりこの状況を受け入れている自分に呆れつつ、これからのことを考える。

 

 

今ここにいる俺以外の9人とは初対面だったが、そのうち7人はデジアドの最初期の選ばれし子供たちだった。

ちなみにさっきの避難中に自己紹介は済ませているのであしからず。

 

閑話休題、そのメンバーに加えて俺を含めた3人のイレギュラーがここにはいる。

1人はもちろん俺で、もう1人は俺の一つ下の小2の男の子“龍宮雄也(たつみや ゆうや)”。

何だかさっきからえらく警戒されてるみたいで、時折睨まれているのが分かる。

 

最後の1人は、原作にも登場していた重要人物“八神ヒカリ”。

本来なら風邪でサマーキャンプには不参加だったはずだけど、何の影響があったのかこの場にいる。

八神兄妹と龍宮雄也は幼馴染らしく、今も雄也はヒカリちゃんのそばを離れないようにしている。

 

まぁ、いくらアニメと同じ世界観とはいえここは紛れもない現実、「アニメだとああだったから」って考え自体が間違ってるんだと思うけど。

ついでに俺は原作のことはうろ覚えだし、どっちにしても成るようにしかならないよな。

 

 

 

 

「おっ、オーロラ!?」

 

避難していた小屋から外に出て一番最初に目に入ったのは、空一面にかかる光のカーテン。

幾らなんでも非常識すぎるだろ。

 

「太一さん、あの光こっちに向かってませんか?」

 

光子郎さんともども目を丸くしていると、雄也が空を指さしていた。

その声につられて目を向けると、確かに赤い光が9つ(・・)こっちに向かって来ていた。

 

てかこのままだと直撃コースじゃね?

そう思った次の瞬間には轟音を立てて赤い光は俺たちの前に落ちていた。

 

「……大丈夫か?」

 

光が落ちた衝撃で舞い上がった雪煙の中、聞こえてきた太一さんの声にそれぞれが返事を返した。

 

「一体何だったんでしょう……っ!?」

光子郎さんが興味津々に光が落ちた場所を覗き込んでいると、その場所から光を纏った何かがの目の前に浮かび上がった。

みんなが咄嗟にそれをつかむと、光が段々おさまって四角い手のひらサイズの機械が姿を現した。

 

「何これ?」

 

「ポケベルや携帯電話じゃないみたいですね」

 

いや、それはいいんですけど……何で俺にはないんだ(・・・・・・・・・)

みんなの手の中にあるその機械は、どう見ても選ばれし子供たちの証の[デジヴァイス]。

それが俺には無いってことは、俺って選ばれし子供じゃないのか?

 

だとしたら、何で俺はここにいるんだろう?

 

 

 

次々に湧き出てくる疑問について考えてると、目の前の雪が段々盛り上がってきているのに気づいた。

雪は段々高さを増してきて、津波のように俺たちの方へ向かってきた。

 

「みっみんな、あれ……っ!」

 

俺の声でみんなもそれに気付いたが一歩遅かったらしく、俺たちはまとめてその波に飲み込まれていった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「…………く……」

 

体が揺さぶられる感覚とともに聞こえてきた声に、俺はゆっくりと目を開けた。

 

「良かった、気が付いた」

 

「良かったね、空」

 

目を開けたそこにいたのは“武之内空(たけのうち そら)”さんと頭に花を咲かせた見たことも無い生き物だった。

 

「ん……っわあ! そ、空さん。それ!?」

 

それが何なのか理解するのに一瞬の間が合った後、思わず跳び起きて距離を開ける。

 

「大丈夫よ、マサトくん。この子はピョコモンっていうのよ」

 

「わたしピョコモン、よろしくね」

 

ピョコモン? あぁ、空さんのパートナーデジモンの幼年期が確かそんな名前だったような気がするな。

成長期以上ならわかるんだけど、幼年期はさすがにうろ覚えだな。

 

だけど、それなら危険とかはないだろう。

 

「えと、名高マサトだ。よろしくな、ピョコモン」

 

 

 

この後、3人で移動して太一さんや光子郎さん、それに“石田(いしだ)ヤマト”さんとその弟の“白石(しらいし)タケル”、“城戸丈(きど じょう)”さんとそのパートナーたちと合流することができた。

 

みんなを代表するように丈さんが声を上げる。

 

「これで全員揃ったのかな?」

 

「いや、まだヒカリがいない」

 

「雄也くんも」

 

「ミミさん、“太刀川(たちかわ)ミミ”さんもです」

 

それに答えたのは太一さん、空さん、光子郎さん。

特に太一さんは、ヒカリちゃんのことが気になるのか覇気が感じられなかった。

 

まぁ、そこまで心配する必要はないと思うけど。

ミミさんにはパルモンの幼年期が一緒にいるだろうし、ヒカリちゃんと雄也にもデジヴァイスがあるってことはパートナーがいるってことなんだから、1人きりってことはないだろ。

 

とか考えてたからいけなかったのか、モチモンから衝撃の事実を聞かされた。

 

「そんなら急がんとあきまへんな。わてらは本当は9匹いたんですけど、1匹逸れてしもうてますさかい、誰かが1人きりの可能性がありまっせ」

 

『えっ!?』

 

その話を聞いて声を荒げる上級生組。

ていうか、その話が本当だと最年少組のどちらかがヤバくないか。

 

「急いで残りのメンバーを探さないと」っていう結論が出た時、悲鳴が聞こえてきた。

 

全員で悲鳴が聞こえてきた方向に向かうと、茂みの向こうからミミさんとパルモンの幼年期と思われるデジモン、それと巨大な赤いクワガタムシのデジモンが出てきた。

 

「クワガーモン!? みんな、逃げるぞ!」

 

太一さんの号令に、合流したミミさんを空さんが手を取りながら今までとは逆方向に一斉に走り出した。

 

 

 

 

「おいっ太一、あれ!」

 

クワガーモンから危なっかしく逃げ回ってると、タケルの手を引いたヤマトさんが進行方向を指差した。

その方向からは手を繋いだ雄也とヒカリちゃん、それと紫色のコロモンと同サイズのデジモンが走って来た。

 

「ヒカリ、雄也!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「みんな、こっちはダメだ!」

 

太一さんの声に返ってきたのは、2人の必死な声。

 

その様子に疑問に持ったのも一瞬だけ、すぐにその理由が分かった。

2人と1匹を追ってクワガーモンと同サイズのカマキリっぽいデジモンが木を切り裂いて現れた。

 

「あれはスナイモンや!」

 

モチモンがその正体を言い当てるが、この場では何の救いにもならない。

咄嗟に同じ方向に方向転換をしてふたりと合流。

 

全員揃ったのは良かったけど、状況は悪化してるしー!?

 

 

 

 

走りながら後ろの様子をうかがうと、クワガーモンとスナイモンは並んで俺たちを追いかけ続けていた。

 

「どうせなら同士討ちしてくれよー!」

 

その様子を見て、思わず叫んだ俺は間違ってないと思う。

 

「っ! 森を抜けるぞ!」

 

太一さんの声が聞こえたすぐ後に、急に視界が開けた。

 

そこに広がっていたのは、崖とその遥か下を流れる激流だった。

 

「くそっ。こっちはダメだ、別の道を探すんだ!」

 

「でも、別の道ってどこに行けば……」

 

「っ、来た!」

 

雄也が叫んだと同時に俺たちが出てきた場所の木が倒れ、クワガーモンとスナイモンが現れて道をふさぐ。

 

「くっそー!」

 

「あっ、コロモン!」

 

ジリジリと崖端まで追いつめられる中、コロモンたちが一斉にクワガーモンとスナイモンに飛びかかる。

けど、幼年期と成熟期の力の差は大きいらしく、全く歯が立たずに跳ね返されてしまう。

 

「お前、何でこんな無茶を……」

 

自分達の元まで飛ばされてきたパートナーを拾い上げる太一さんたち。

 

「戦わなきゃ……」

 

「え?」

 

傷だらけになったコロモンは、それでも諦めずに敵に向かっていこうとする。

コロモンだけじゃなく、ツノモンをはじめとしたパートナーデジモンたちも同じように足掻こうとしている。

 

俺はその様子を見て、なにも出来ない自分が悔しくて拳を強く握りしめていた。

 

 

 

「ぼくたちが……みんなを守るんだー!」

 

力を振り絞ったコロモンたちが再度突撃していく。

 

その後ろでパートナーの名前を力いっぱい叫ぶ太一さんたち。

その思いに応えるかのようにみんなのデジヴァイスが強く輝き出した。

 

その強い輝きに、俺は思わず目を瞑った。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

目を開けると、周りには誰もいない真っ白な場所にいた。

上も下もわからないその場所で、俺は自分でも不思議なほど落ち着いていた。

 

《ボクの声が聞こえる?》

 

突然、声が聞こえてきた。

 

それはただ聞こえてきたのではなく、頭の中に直接浮かんできたとしか言えない何とも不可思議で、それでいて自然と言い切れる不思議な感覚だった。

 

この声、だれだ?

 

周りを見渡すと、さっきまで気付かなかったのが不思議なくらい目の前に六角形の台座に乗った高さ10cmくらいの大きさのオブジェみたいなものがあった。

もしかして、さっきの声ってこれから聞こえてきたのか?

 

《ボクの名前はマスクモン。いや、君には「(げん)」のスピリットと言った方が分かりやすいと思う》

 

スピリットっ!?

スピリットって確か「フロンティア」で出てきたやつだろ。

 

けど「元」なんて属性は無かったはずだよな。

それに俺にはってどういう意味、ていうか俺の考えたことが読まれたのか?

 

《色々と聞きたいことがあると思うんだけど、時間がないんだ》

 

余りにもいきなりすぎて軽く混乱しているところに、スピリットの真剣な声が聞こえる。

 

《お願い、ボクと一緒に戦って》

 

スピリットの言葉はどこまでも真っすぐで、俺の心に届いてくる。

 

けど、いきなりそんなこと言われても困るんだけど。

大体何で俺なんだ?

 

《この世界では君が一番ボクと相性がいいんだよ》

 

《もちろん無理にとは言わない。多分ボクの力を使うことで色々と迷惑を掛けてしまうと思うから》

 

《だけど情けないことに今のボクには君に頼るということしかできない》

 

色々と気になる単語が出てきたけど、それよりも気になったのはスピリットの雰囲気。

本当に申し訳なさそうな雰囲気が目の前のスピリットから伝わってくる。

 

ほんの数瞬の間だけ考えを巡らせたが、心の奥から湧き上がった答えは一つだった。

 

「いいぜ、一緒に戦おう」

 

俺はしっかりと声を出してそう宣言した。

 

《いいの?》

 

改めて確認してくるその声にしっかりと頷く。

客観的に見たら胡散臭いことこの上ないその言葉だけど、

 

「お前のことも信じていいんだろ、マスクモン?」

 

《っ! モチロンだよ、マサトっ!》

 

不思議なほど自然と信じることができた。

 

《やっぱり目覚めが完璧じゃなかったみたい。もう時間がない》

 

その言葉と同時に目の前のスピリットが少しずつ薄れていく。

 

《ボクはまた眠りに着いちゃうけど、それでもいつでも君と一緒にいるよ》

 

「ああ。よろしくな、相棒」

 

《……うん。よろしくね、相棒》

 

そのまま、俺は最初と同じように光に包まれていった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

気がつくと、さっきまでの空間からパートナーデジモン達が戦っていた崖の上に戻っていた。

というより、さっきのは意識だけがあの空間に行っていただけで実際にはほとんど時間が経ってないみたいだ。

 

クワガーモンたちと対峙していたのはコロモンたちじゃなく、さっきの光で進化したと思われるアグモンたちだった。

 

「いくぞ、みんなっ!!」

 

アグモンの力強い声とともにクワガーモンたちに向かっていくパートナーたち。

その中には、赤いスカーフを巻いた紫色の小悪魔のようなデジモン“インプモン”がいた。

おそらくあれが雄也のパートナーデジモンなんだと思う。

 

クワガーモンとスナイモンにそれぞれ分かれて向かっていったアグモンたち。

 

しかし、原作でさえ成長期7体でやっとのことクワガーモンに対抗できていたのに、今は4体で向かっている状態。

どうしても力負けしてしまって、苦戦している。

 

 

「ねぇ、それなに?」

 

その様子を見ていると、俺と一緒に一番後ろにいたヒカリちゃんが俺のポシェットを指した。

ポシェットからはわずかに光が洩れていて、開けると携帯のディスプレイが光を発しているのが分かった。

その携帯を手に取ると、それは形を変えて白と黒の2色に彩られた機械“Dスキャナー”になった。

 

「えっ!?」

 

「っ、おまえそれ!?」

 

その様子を間近で見ていたヒカリちゃんと雄也の驚きの声が聞こえたけど、今は気にしていられない。

Dスキャナーを握りしめると、さっきの光の中での会話が思い出される。

 

「……よしっ」

 

一瞬の躊躇いの後、俺は意を決して駆け出して前にいた太一さんたちの間をすり抜け、戦っていたパートナーたちより少し後ろの位置に立ち止まる。

 

「あっ、何しているんだマサトくん!」

 

「おっおい、危ないから下がってろ!」

 

後ろから掛かってくる丈さんの声や近付いてきたことに気付いたインプモンの声に返事する余裕はなかった。

恐怖と緊張で口の中が渇き、「もし失敗したら」という考えが次々と湧いてくる。

 

でも、自分が相棒と呼んだその声を思い浮かべて覚悟を決めると、右手に持ったDスキャナーを体の左下の方に向けて構えて左手を目の前でスナップさせて右肩の前に掲げる。

 

掲げた左手を包むように光でできたバーコード“デジコード”のリングが現れたのを確認すると、体の前で斜め方向に平行に構えた両腕を動かしながら、胸の前でデジコードをDスキャナーに読み込ませ、俺は力の限り叫んだ。

 

「≪スピリット・エヴォリューション≫っ!!」

 

スキャンされたデジコードが俺の体を包み込む。

 

手が、足が、体が、自分とは違う力強い何かを纏っていく。

最後に顔が覆われ、全体を包んでいたデジコードが弾けた時、俺は[名高マサト]ではない別の存在となっていた。

 

クワガーモンやスナイモンも含めたその場にいた存在全てが注目する中、俺は自身の名前を高らかに宣誓した。

 

「マスクモン!!」

 

 




というわけで、主人公だけフロンティア設定になってしまいました。


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