キリのいいところまでということで、とりあえずここまで書きました。
掲げた左手を包むように光でできたバーコード[デジコード]のリングが現れたのを確認すると、それをDスキャナーに読み込ませて、俺は力の限り叫んだ。
「≪スピリット・エヴォリューション≫っ!!」
スキャンされたデジコードが俺の体を包み込む。
手が、足が、体が、自分とは違う力強い何かを纏っていく。
最後に顔が覆われ、全体を包んでいたデジコードが弾けた時、俺は[名高マサト]ではない別の存在となっていた。
クワガーモンやスナイモンも含めたその場にいた存在全てが注目する中、俺は自身の名前を高らかに宣誓した。
「マスクモン!!」
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マスクモン【戦士型・ハイブリット種・成長期】
様々な種類のゲームに登場する“ヒーロー”のデータが集まって生まれた希少なデジモン。
そのため、構築するデータが不安定で周りの影響を受けやすくなっている。
凄まじいポテンシャルを秘めていて、その実力は格上の相手と真っ向から戦っても決して劣るものではない。
得意技は、高速で敵に近付いてパンチを叩き込む『ソニックフィスト』。
必殺技は、空中に高く飛び上がり、急降下しながらドロップキックを叩き込む『マスクスマッシュ』。
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進化した姿がまるで本当の自分に戻ったと思えるくらい、体全体に力が漲ってくる。
これなら戦えると確信し、俺は両手のカマを振り上げているスナイモンに向かって駆けだす。
一気にトップスピードに乗っった状態で跳び上がり、ボクササイズに使うような指出しの赤いグローブに包まれた左手で、スナイモンを正面から殴り飛ばすと、思った以上の勢いで森の方へ飛んで行った。
「みんなっ、まずはクワガーモンを倒して! スナイモンは俺が何とか惹き付けるから!」
殴った感触が思った以上に硬くて1人では倒しきれそうにないが、スピードで翻弄する事は出来そうだ。
スピリットとして一体化したマスクモンの経験からそう判断すると、スナイモンの飛んで行った方へ向かった。
森から這い出てきたスナイモンの下に潜り込み、足の関節に向けてパンチを打ち込む。
スナイモンはそのまま足を蹴り出してきたが、予備動作の大きいそれをすんなりよけると飛び上がってスナイモンの下顎を昇○拳のように打ち上げる。
仰向けに倒れたスナイモンから距離を取りながらクワガーモンに目を向けると、あっちの方はそろそろ決着が着きそうだった。
「≪シャドウシックル≫っ!」
一瞬気を逸らせた隙を狙われて、黒いエネルギーの刃をまともに受けてしまう。
何とかガードだけは出来たけど、何発も食らうとさすがにヤバい。
時間稼ぎをするとしても、このままじゃジリ貧になりそうだな。
ここは賭けに出るしかないか。
一直線に突っ込んでいく俺を見て、スナイモンが勝ち誇った顔をしたのが分かった。
「≪シャドウシックル≫っ!」
再度飛んでくる≪シャドウシックル≫。だけど、そう何度も……
「喰らうかよっ!!」
その上を飛び越え、その勢いのまま驚き顔をしたスナイモンの鼻っ柱へ向けて、俺は
「≪マスク……スマーーーーーッシュ≫っ!」
渾身の必殺技を叩き込んだ。
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アグモンたちの必殺技でクワガーモンはやっつけた。
けど、あの変身したマサトが戦ってるスナイモンがまだ残ってる。
ちょうどその時、マサトたちが戦っていた方から大きな音と土煙が上がった。
その砂ぼこりの中から、少しボロボロになったマサトが出てくるのが見えた。
「マサトっ、お前無事だったのか!」
俺のその声に応えるように、マサトは右手の親指を立てて合図してきた。
「何とかってところですけど。それより……、スナイモンは完全に倒せてません…………。
急いで……ここ……を……」
そこまで言うとマサトの体が光に包まれて元の姿に戻り、そのまま倒れてしまった。
「おい、マサトっ!? しっかりしろっ!」
「そんなに揺らしちゃダメだっ!」
いきなりのことで慌てた俺を丈が止めて、そのままマサトを地面に寝かせると何かをし始めた。
「……うん、大丈夫。気を失っているだけだよ」
丈の一言で、みんなが安心したように息をつく。
「けど、こいつがさっき言ってたのが本当ならここにいると危ないんじゃないか?」
「そうですね。とりあえずここから離れましょう」
ヤマトと光子郎の言葉に頷いて、俺は気絶したままのマサトを背負う。
ヒカリと雄也のことは空に任せようとしたら、空は何も言わず二人の手を引いてくれていた。
「よし、みんなっ! いく……っ!?」
急いでこの場を離れようとした時、森の方から大きな音が聞こえてきた。
音が聞こえてきた所からはスナイモンがゆっくりとこっちに向かって来ていた。
「みんな、こっちだよっ!」
「みんな走れっ!」
アグモンと俺の声で一斉に走り出す。
少しずつ距離を詰められるけど、何とか森まで逃げ込めそうだと思った瞬間、俺たちの前に大きな影が現れた。
影の正体はクワガーモン。
咄嗟に逃げる方向を変えたけど、結局さっきまでの崖に追いつめられただけだった。
「絶体絶命……ってやつか?」
「ヤマト……」
「もういやー!」
「ミミ、おちついて!」
また同じ状況になったけど、今はアグモンたちも疲れてるから、さっきのように勝てるとは限らない。
どうすればいいんだ。
「太一、僕たちなら大丈夫だよ」
そんな俺の考えが分かったのか、アグモンはそう言うと力強くうなずいた。
そしてまた、クワガーモンとスナイモンに向かっていこうとした時、2体はその大きなハサミとカマを振り下ろしていた。
思わず目を閉じたけど、何も起きなかったため目を開けると、2体の攻撃は地面に深く突き刺さっていた。
何をしたいんだと不思議に思ったけど、段々俺たちが立っているところがあいつらより低くなっていき、次の瞬間には音をたてて崩れ、俺たちは崖の下へ放り出された。
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体全体を揺さぶられる感覚に、段々と意識がはっきりしていく。
目を開けると、その先にはたくさんの木々が見えた。
ここは……?
「あ、目が覚めたんだ」
「ミミ……さん?」
何でこんな……って!?
「みんな無事なんですかっ!? ていうかここは……っ!?」
「おっおい、いきなり暴れるなって」
視界に入ってきたのは大きく逆立った髪の毛。
そこで俺は初めて太一さんに背負われてる事に気付いた。
「あっ、すみません太一さんっ」
慌てて太一さんの背中から飛び降りたけど、力が入らずに膝をつく。
「まだ無理するなって。ほれ」
しゃがんで背中を差し出してくる太一さんに、申し訳なく思いながらも自分で歩くのも難しそうなので再びお世話になる事になった。
あの後の事を聞いてみると、クワガーモンたちに崖から落されてそこから川を下ってここまで来たところらしい。
ていうか、そんな目にあって良く無事だったよな。
「そこはオイラの力『マーチングフィッシーズ』のさっ」
「そっか。ありがとな、ゴマモン」
そのまま川沿いに歩いていると、潮の香りがし始めた。
上空からあたりをうかがっていたテントモンからも海が見えると報告があり、みんなかけ足になりつつもそちらの方へ向かった。
海岸は小さな入り江のようになっていて、いくつかの電話ボックスが並んでいた。
何て言うか、ミスマッチ過ぎるよな。
「ほら、やっぱりここには人が居るんだよっ!」
興奮気味に叫ぶ丈さんに対して、みんなの視線は若干冷たい。
デジモン達も俺たちが初めての人間だって言うし、そもそもここがどこかを知っている身としては同意はしづらい。
「まぁ、電話を掛けてみればわかるだろ。光子郎、10円持ってないか?」
「それならテレフォンカードがありますよ」
「太一さん、それなら俺は降ります」
太一さんの背中から降りると、少しふらついたけどさっきよりはマシになっていた。
一斉に電話ボックスへ駆けていくみんなを見送って、砂浜に腰を下ろす。
多分進化の影響だと思うけど、随分と体力を消耗するな。
手に取ったDスキャナーの画面には、[元]の文字をもとにデザインされたシンボルが浮かんでいる。
改めて考えても謎だ。
そもそもスピリットはこことは違うデジタルワールドの存在だし、その数は10種類でその中に[元]何て属性は無かったはず。
まぁ、どこぞの機動戦士なZZのオープニングが言うように、ここはアニメじゃなくて現実の世界で何でもかんでも原作のようになってるって考えるのも違うだろうし。
その最たる例が俺の存在だもんな。
しばらくすると、みんな諦めて戻ってきた。
「ダメでしたか?」
「ええ、掛けてもまったくデタラメな事しか言い返してこないんです」
まぁ、ここは予想通り。
とりあえずは昼食にしようという事になり、まずはお互いの持ち物を確認しあった。
太一さんの単眼鏡やら、ヤマトさんのハーモニカやらこの場では役に立ちそうなものもあったが、何とか丈さんの非常食とミミさんのキャンプセット、後はタケルのお菓子がこの場では救いだった。
ちなみにヒカリちゃんが首から下げたホイッスルで雄也が缶ドロップを持っていた。
で、俺たちはというと
「えーと、父さんから借りてきた十徳ナイフと釣り針にテグス、後はビニール袋」
とりあえず食べれそうなものは無かった。
それに食料はあった事はあったけど、流石にこの人数に対しての量と考えると少なすぎる。
この先どう動くかにもよるけど、何処かに腰を据えて準備してからじゃないと厳しいよな。
「あーっ、何してるんだ!」
いきなり上がった大声に何事かとその発生源を見ると、丈さんと太一さんがもめていた。
隣にいた光子郎さん曰く、アグモンに勝手に非常食の一部を食べさせていた太一さんに丈さんが苦言を言っているらしい。
確かに直感派の太一さんと几帳面な丈さん、あの2人あんまり相性良くなさそうだしな。
そんな中、雄也が周りを気にするように視線を巡らせていた。
なにか気になることでもあるのかと思って声をかけようとしたとき、突如轟音が鳴り響いたかと思うと、背中に大きな巻貝を背負ったピンク色のデジモンが現れた。
「あ、あれはシェルモンやっ!」
既にデジモンの解説ポジションについてるテントモンの一言で、パートナーたちは戦闘態勢に入った。
俺も続こうと立ち上がろうとすると、空さんからそれを遮られた。
「だめよっ、まだ無理しちゃ!」
「でも空さん!」
「いいから」
どうしても行かせてくれそうにないんで、すぐに飛び出せるようにだけはしておとなしく座る。
パートナーたちは既にシェルモンと戦ってはいるが、何か様子がおかしい。
さっきからアグモンとインプモン以外の攻撃が発動せず、ほぼ一方的にやられている。
何が起きてるんだ?
「多分、何も食べてないから力が出ないんだと思う」
「インプモンには俺とヒーちゃんの分を少し分けたからまだ大丈夫だと思うけど」
そんな疑問に答えたのは、ヒカリちゃんと雄也。
それなら納得できるけど、逆に言うと今戦えるのはアグモンとインプモンだけっていう事になる。
仕方ない、後で怒られるしかないな。
空さんからのお説教を覚悟して飛び出そうとした時、俺より先に前に出た影があった。
「「太一兄(お兄ちゃん)っ!?」」
飛び出した太一さんはどこからか拾った鉄パイプを振りかざしてシェルモンへ突撃していた。
ていうか無茶しすぎだってっ!
「≪スピリット・エヴォリューション≫! マスクモン!」
すぐさま進化して太一さんの後を追う。
しかし、そこへシェルモンが俺へと目掛けてインプモンを弾き飛ばし、それを受け止めたことで完全に出遅れた。
その間に太一さんはシェルモンの頭から生えている触手に捕まり、アグモンもシェルモンによって地面に押さえつけられていた。
「まずい、行くぞインプモンっ!」
「おうよっ!」
太一さんたちの救出のため、唯一動けるインプモンに声をかけた時、太一さんの腰のデジヴァイスから光が放たれ、アグモンがその光に包まれた。
「アグモン進化っ、グレイモン!」
シェルモンとほぼ同サイズにまでなったグレイモンは、手の下から脱出してシェルモンと組み合う。
その衝撃で、太一さんは触手から解放されて投げ出されるけど、
「うわっ!?」
「ふぅ、間一髪」
地面に叩きつけられる寸前で何とか受け止めることに成功。
「まったく、無茶し過ぎですよ」
「へへっ、悪かったな。いっけーっ、グレイモン!」
グレイモンは、シェルモンの下へ潜り込む様にしてその巨体をすくい投げると、空中で身動きが取れないシェルモンに追撃を放つ。
「≪メガフレイム≫っ!」
≪メガフレイム≫を受けたシェルモンはそのまま沖まで飛ばされていき、グレイモンはアグモンへと退化した。
「やったな、アグモンっ」
「太一~♪」
嬉しそうにはしゃぐ2人。
進化を解くと少しふらついたけど、さっきのように倒れる程ではなかった。
今回はそこまで力を使ってないからかな?
「みなさん、またシェルモンが戻ってくるかもしれませんから急いで離れましょう」
光子郎さんのその言葉にみんな賛成し、俺たちは荷物を纏めると急いでその場を後にした。