Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
「という訳で、遅れながら織斑君クラス代表おめでとう!」
次々と鳴らされるクラッカーの音に一夏は混乱していた。
「・・・・なんなんだよ、一体」
クラス代表就任パーティーと書かれた紙が置かれている。
「まぁ、せっかく開いてくれたんだし邪険にするものじゃないだろ?」
「そうだけどよ・・」
他のクラスからも集まっているようで、それぞれが友人同士のお喋りで盛り上がっている。
「とにかく楽しんでおかないと損だぞ?一夏」
「それもそうか」
どうやら少しは乗り気になったようだな、よかった。
「なぁ?赤野」
「なんだ?」
「シャナ=ミアさんって、放課後とか何してるんだ?すぐに帰っちゃうみたいだけど」
ピキッ・・・。
一瞬だけ俺は殺気を強くしてしまった。いけないな、冷静になって答えなきゃ。
「彼女は放課後の時間を使って、フー=ルーさんに特訓してもらってるんだよ。ISの戦闘経験なんて全くないからな」
「へえ・・・一緒に特訓してみたいな」
ピキキッ・・・。
コイツ、俺が一番話してるのが長いだけで根掘り葉掘り・・・!っと、まただ!抑えなきゃな。
「放課後はフー=ルー先生とのマンツーマンだから無理だぞ?一緒にとか言ったところで追い返されるからな」
「本当かよ?」
「乗り始めて1週間の奴が教えられるか?」
「なら、一緒に特訓するのはできるだろ?」
「話を聞いていたか?フー=ルー先生とのマンツーマンの特訓は彼女の必要課題なんだ。フー=ルー先生が所属する会社から学園に提出してたって聞いてるし、邪魔はできないからな」
「そっか、機会があれば一緒に特訓したいな」
「そうだな・・・」
政征は手に持っていたオレンジジュースを一気に煽った。
一夏の視線の先には友人達と楽しく談笑しているシャナがいた。
クラス代表となった一夏の話題で持ちきりではあるがシャナだけは別の話のようだ。
「ふん、人気者だな?一夏」
「そう思うか?これが」
箒と話している時のテンションがさっきまでとは違いトーンが下がっていた。
「オレンジジュース取ってくる」
そういって政征は立ち上がり、紙パックからコップにオレンジジュースを注ぐ。
「気があるからって俺に聞くなよ、全く」
少しだけ独り言を言うように愚痴ると席へ戻った。
「はいはい、新聞部でーす。話題の男性操縦者二人にインタビューしに来ました!」
「私は二年の黛薫子っていうの、よろしくね?はいこれ名刺」
この人は本気でジャーナリストを目指してるんだな、名刺がすごく本格的だ。
「まずは織斑一夏君から」
「え?えっと・・精一杯自分がやれることを頑張りたいと思います」
「もう少しいいコメントちょうだいよ。まだ足りないよ~?そんなんじゃ」
「自分、不器用ですから」
「うわ、前時代的。まあ、このあたりは捏造するから良いとして」
いや、それは可笑しいだろ。というツッコミをしたくなったが堪えた。
「それじゃ、次に赤野政征君、お願いしまーす!」
「そうですね。きっと一夏はいい代表になると思いますよ」
「あれ?赤野君、雰囲気違うね?ISで戦ってる時はこう・・・戦士みたいな口調だったのに」
「アハハ、あれはクセみたいなもので高揚しちゃうと出ちゃうんですよ」
「なるほどね、それじゃ、次はフー=ルー先生との激戦後のコメントをちょうだい!」
「この次はきっと勝ちたいですね」
「おお、文句なし。それじゃ男性操縦者二人の写真をちょうだい!」
黛先輩がデジタルカメラを取り出して写真の許可を求めた。
「わかりました、赤野は?」
「構わない、先輩の頼みならね」
そう言って一夏と一緒に並ぶ。
「そうそう、それじゃ撮るよ?35×51÷24は~?」
「えっと・・2?」
「74・375」
「織斑はブー!赤野君はせいか~い!」
パシャっとシャッターが切られると一瞬でクラス全員が写った。
「おいおい」
「オルゴン・クラウドでも使ったのかな?今の」
男性二人は女性陣の行動の速さに驚いていた。
「まぁまぁ」
「クラスの思い出にぴったりでしょ?」
そう言われてしまえば反論はできない。
パーティは10時近くまで行われ、お開きとなった。
政征とシャナ=ミアは自室へと戻り、軽い雑談をしていた。
「楽しそうだったね?シャナ」
「はい、同年の友人が出来た事が嬉しくて!」
「そうだろうな、同年の友達って出来ると嬉しいから」
「本当ですね、今まで見えてなかった所も参考になったりします」
雑談するのも良いが明日に響くため、就寝の準備をする。
「あの・・政征。お願いがあります」
「なんだい?」
「一緒に就寝してくれませんか?」
「っっ!!!!///」
あの日からシャナは積極的になってきていて、俺の理性が危なくなっている。
当然、一線は越えていない。越えたら・・・うん、想像したくない。
「わかったよ、けど・・・二人きりの時だけだよ?」
「はい!!」
笑顔で嬉しそうに返事されたら折れるしかないじゃないか・・・。
朝、起きた時は抱き締めた状態だったとだけ言っておくよ。
◇
朝になり朝食を済ませ、教室へと入るとかなり賑やかな様子だ。
「あ!シャナさん、赤野君!おはよう」
「おはようございます」
「おはよう」
挨拶を交わしていると袖がダボダボの状態で来ている女の子に挨拶された。
「あ~ミアミアとユッキーだ~、おはよ~」
「おはようございます、本音さん」
「おはよう、のほほんさん」
彼女の名前は布仏本音、通称のほほんさん。間延びした喋り方と独特の愛称で相手を呼ぶ子だ。
シャナに対してはシャナ=ミアだからミアミアと呼び、俺に対しては赤野政征だからユッキーといういかにもという呼ばれ方をしている。
「はい、本音さん。約束していたマロングラッセですよ」
「ほんと~!?わ~い!」
「シャナ・・いつの間に・・」
「乙女の秘密ですよ、ふふ」
うん、でもこういったシャナも新鮮だな。
先程、挨拶を返してくれたクラスメイトが俺とシャナに話しかけてきた。
「知ってる?二人共!今日、転校生が来るんだって!!それも二人よ!」
「転校生か、珍しいね?こんな時期に」
「新しい方が来るのですね、どんな方なんでしょう」
シャナも転校生と聞いてどこか嬉しそうだ。
「一人は中国の代表候補生で、もう一人は大企業の代表候補に選ばれてるんだって!」
「へえ・・なら二人共かなりの実力者って事か」
「政征、戦いたいのは分かりますが心を静めてください」
「おっと」
自分でも無意識に顔へ出ていたようだ。
フー=ルー先生との戦い以降、シャナの特訓や自主訓練ばかりで戦いが無い事に退屈していたようだ。
未熟だな。戦って勝つ事も大切だけど戦わずに済ます事も大切だ。
「中国か・・・」
いつの間にか一夏やセシリア、箒達も集まってきていた。
「わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら」
「セシリア、それは傲慢というものだよ?それで負けてしまった事を忘れたのかい?」
「あ、いえ・・それは」
政征の指摘にセシリアは少しだけ慌て始めた。正論であるために言い返す事が出来ない。
「自分以上の実力者はたくさん居るんだから、気を付ける事だよ?セシリアはそれさえ気をつければ強くなれるし、それだけの実力を持ってるんだから。忘れそうになったら初心を思い返せば大丈夫」
「は、はい!分かりましたわ。気をつけます」
政征のアドバイスにセシリアは自分の悪癖に対して反省を心がけた。
「(っ・・寒気が!)」
正体は知っている。シャナが俺を笑顔で見ていた、この時のシャナは本気で怖い。
「(アドバイスしただけだよ)」
「(なら、いいですけど)」
聞こえないように小声でシャナに本当の事を話す。どうやら納得してくれたようだ。
「けど、みんな一夏には期待してるんだから応えないと」
「・・・え?」
どうやら一夏はボーッとしていたようだ。理由はわかるから口には出さない。
「そうだよ!優勝賞品はスイーツフリーパスなんだから!」
「専用機持ちは1組と4組だけだし、優勝はもらったね!!」
「その情報、古いよ!」
いきなりの大きな声で思わず教室のドアの方を向くと、髪をツインテールに結った女の子が八重歯を見せて立っていた。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの、そう簡単に優勝出来ないんだから!」
「お、お前・・・鈴、鈴か?」
どうやら一夏の知り合いのようで、女の子は軽く笑みを浮かべた。
「そう、中国代表候補生
なるほど、彼女は天性型の人間だ。無意識に物事を荒削りながらに理解してしまう、それだけに吸収が早い。
IS学園には努力型と天性型、いわゆる天才型しかいない。
天才と呼ばれる人間も己を磨くために研鑽するし、努力型の人間も天才を追い抜こうと研鑽する。
要は質の違いでしかない、サイトロンのおかげとは言えこんな事を知ってどうするのか。
「それで、一夏。アンタの隣にいるのが二人目の男性操縦者と転入生?」
「ああ、俺は赤野政征。よろしく」
「シャナ=ミナ・フューラといいます。よろしくお願いしますね」
二人が自己紹介を済ませると、鈴は何かを感じたように二人へ笑みを浮かべた。
「二人共、羨ましい位に仲が良いのね?」
「え!?」
「まあ、な?シャナとは付き合いが長いから」
鈴の言葉に動揺してるシャナをフォローにするために、政征はやんわりと関係を隠した。
「ふーん、それじゃ。また後でね?特に一夏!逃げないでよ!?」
そう言って鈴は自分のクラスである二組へと戻っていった。
「おい・・・」
「ん?」
振り返ると一夏が気に入らないと言いたげな目で政征を睨んでいた。
「どういう事だよ?シャナ=ミアさんと付き合いが長いってのは!?」
「お前が篠ノ之さんと付き合いが長いのと一緒さ、それだけの事になんで俺が責められなきゃならないんだ?」
「う・・それは」
「貴様!一夏に向かって!」
箒が会話に割り込もうとしたが意外にもそれを咎めたのはシャナだった。
「篠ノ之さん、ここは政征が正しいと思います。貴女も一夏さんとの事を責められたら嫌でしょう?」
「な・・・ぐっ」
「お前達、何をしている?SHRが始まる時間だ、席に付け」
「皆様もお静かにお願いしますわ」
フー=ルーさんは日数を満たし、一組の副担任補佐としてIS学園の教師となった。
山田先生もいるが彼女を手助けする事と勉強も兼ねて補佐になっている。
「では、授業の前に重大な発表がある。本日このクラスに三人目の男性操縦者が来ることになった!」
千冬の発表にクラスの中が騒がしくなり始める。
「お静かに!織斑先生の話は終わっていませんわよ!」
フー=ルーの声にクラスは静けさを取り戻した。
「今、廊下で待たせている。入ってこい」
「はい」
教室のドアが開き、その人物が入ってくる。
青い長髪を一本に纏めており、左頬にはフューリー特有の紋様がある。
平均男性よりも高い身長、鍛えられた筋肉、それだけでもかなりの実力者である事が伺える。
彼の纏う雰囲気は政征とは違った性質の騎士の雰囲気そのもの。
政征を「動」の騎士。炎のような荒々しさで表すのであれば、転校生の彼は「静」の騎士。湖のように静かな力強さを表す事ができる。
「青葉、自己紹介を」
「はい。青葉雄輔といいます。趣味は読書とゲーム、それに鍛錬。嫌いなのは女尊男卑と漬物。これから同じクラスとして仲良くしてくれると嬉しい。よろしく」
「き・・・」
「あ、やばい!シャナ、早くこれ着けて!」
「え?は、はい」
「「「「「キャアアアアアアアアアアアアア!!」」」」
耳栓が間に合ってハウリングボイスを聞かないで済んだようだ。
「男子!三人目の男子よ!!」
「青い髪って神秘的でいいわ~!」
「それに背も高くてクールな雰囲気!」
「ああ、お母さんありがとう!本当に!」
「今年は捗るわ!織斑、赤野、青葉の3Pじゃああ!!」
またよからぬことを考えてる輩がいるような気がするな。
耳栓を外すとシャナもそれに習い、耳栓を外した。
「席はちょうど赤野とフューラの間が空いているな。そこに座れ」
「分かりました」
雄輔は指定された席に座り、二人に挨拶した。
「二人共、よろしく」
「ええ、よろしくお願いします」
「ああ、よろしくな?」
おかしい、俺は何処かでコイツを知っているような気がする。青葉・・・雄輔、雄輔・・まさか!?
「それでは授業を始める」
◇
授業終了後、赤野と青葉はシャナを交えて話をしながら食堂へ向かっていた。
「まさかの再会じゃねーかよ!本当に嬉しいぜ!雄輔!!」
「ああ、こっちもだ!政征!!」
二人は拳を軽くぶつけ合い、再び友情を確かめ合っていた。
「あの、政征。この方は一体?」
シャナは少しだけ不安そうに政征に訪ねてきた。
「あ、ごめん!シャナ!!コイツは俺の親友だよ。ちょうど5年くらい前から連絡取れなくなって少し疎遠になってたんだ」
「今更だがな、こうして再会できたのが本気で嬉しいんだ」
「そうだったのですね、確かに5年という時間は長いものですもの」
シャナも納得し会話の中で笑顔を見せるようになっていた。
「なあ?政征、もしやと思ってたがお前、シャナ=ミア様と付き合ってるのか?」
「ああ、今はまだ公表してないけどな。シャナと俺は恋人関係だ」
男性二人は小声で周りに聞こえないように話を勧めている。
「そうか、おめでとうよ。俺は二人を応援するからな」
「ふふ、ありがとうございます」
「はは、俺は本当に最高の友を持ったよ」
食堂へ着くと一夏達はちょうど食券を食堂の人達に出している所だった。
「さて、俺は味噌鯖定食にするか」
「じゃあ・・俺はおろしハンバーグ定食」
「私はパスタにします」
食券を買い、お盆を用意して食券を食堂の係の人達に渡す。
それぞれの食事の用意が出来ると席を探したが、一夏達の席しか空いていないようだ。
「みんな、悪いが相席頼めるか?」
「あ、政征さん。ええ、わたくしは構いませんわ」
「俺も良いぞ」
「私も構わない」
「私もよ!」
承諾を貰うとそれぞれが席に着いた。
「あ、雄輔じゃない!アンタ、1組になったのね」
「鈴か。ああ、今日から正式にIS学園の生徒だ」
「?青葉の事知ってたのか?鈴」
「知り合ったのは今朝なんだけどね?お互いにこの学園の受付が分からなくて一緒に行ったのよ」
一夏の疑問に鈴は普通のことに様に説明する。
「なるほどな」
一夏は周りに気づかれないようわずかな間だけ、視線をシャナに向けていた。
「で、ちょっと!聞いてるの!?一夏!!」
「え?ああ、悪い。特訓だっけ?」
「そう、私が見てあげようかって言ってるの!」
シャナを見るのに集中していたようで一夏は鈴の話を半分しか聞いていなかったようだ。
「おお、それは助か」
「一夏はの特訓を見るのは私だ!一夏に頼まれたからな!」
「そもそも貴女は二組でしょう?わたくしが見ますわ!!」
箒とセシリアが立ち上がって鈴に敵意を向けていた。
そんな中、政征達は食事を終えて立ち上がるところだった。
「喧嘩するのもいいけど、昼食の時間が終わるよ?」
「遅刻してもいいなら止めないけどな」
「私も行きますね」
三人は食器を片付け、雄輔を中心に政征とシャナは左右に並んで出て行った。
「(・・・ああ、行っちまった)」
三人が喧嘩している中で一夏だけは静かに気落ちしていたのだった。
嫉妬の嵐だよ!これ!!
一緒に寝ても抱きしめてるだけだから一線は越えてないよ。
越えたらアル=ヴァンさんとフー=ルーさんが合体攻撃してきちゃうよ。
狙ってる女の子がすぐ近くの男子と恋人関係だって知ったらどうなるのか?
次はシャナの特訓風景、一緒に特訓を持ちかけてくる一夏達
その現場を兎は静かに見ている。
兎のもとに現れる、灰色の騎士機。それを駆る騎士は兎に頼み込む。
「君の技術を貸してもらいたい」
作業用BGMにMDアレンジの[Fate]かけると捗るのは何故?