Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
鈴、テストパイロットになり格闘武術を学ぶ
箒が束に力を要求する
シャルロットの機体名が判明
以上
[推奨BGM Revenger MDアレンジ]
ラウラを取り込み、形作ったのは織斑先生の姿。
あれがかつて世界最強と言われた、当時の織斑千冬なのだろう。
「当時の織斑先生、どれほどの力が」
政征が立ち合おうとした瞬間、その間を抜けて突撃する影があった。
「うおおおおおおお!!」
その正体は白式を纏った一夏だった。
怒りに任せて突撃したのだろう、複製の織斑千冬に軽くあしらわれてしまった。
「ぐあああ!くそっ!!お前がその剣を使うんじゃねえええええ!!!」
「一夏!!闇雲に向かって行ってもやられるだけだぞ!落ち着け!!」
政征は冷静になるよう声をかけたが、一夏は聞く耳を持たなかった。
「うるせえ!!あれは千冬姉だけの剣だ!だから俺がやらなきゃいけないんだよ!」
「愚か者が!冷静になれ!今のお前ではあれに勝つことは出来ん!!」
「それでも、俺がやるんだよ!!」
忠告を無視し、一夏は再び複製の千冬に向かっていく。
闇雲ながらに互角に戦っているように見えるが、それは戦いを経験していない者からの視点だ。
剣以外の無手による体術を駆使し、複製の織斑千冬は白式のエネルギーを削っていた。
「やはり、ここに来ていたか!あの大馬鹿は!」
「雄輔!」
遅れて現れたのは待機していた雄輔だ、その身にはラフトクランズ・モエニアを纏い政征の近くへ降り立つ。
「政征、今の状況は?」
「もう、終わる頃だ・・・」
「うああああああああ!」
政征が呟いた瞬間、一夏は複製の千冬が繰り出した斬撃によって叩きつけられ、白式のエネルギーがゼロになり解除されてしまった。
「く・・・くそ!まだ!」
「もう充分だろう、これ以上は無理だ」
雄輔は一夏に近づき、警告を促した。
複製の千冬が攻撃してこない所を見ると、一定の間合いに入った場合のみ迎撃するのだろう。
「まだだ!アイツを一発殴らなきゃ気が済まねえ!」
「どうやってだ?お前の機体のエネルギーはゼロ、武器も使えない状態で何が出来る?」
「だったらエネルギーを補給して!」
「そんな時間があると思うのか?その間、あれに取り込まれているラウラは命が危うくなる。見殺しにする気か?」
「そんなことはしねえ!必ず助けるんだ!その上で!!」
雄輔は一夏の言葉に珍しく静かに怒りを覚えていた。
相手は分単位で命の危険がある状態。一刻も早く助ける必要がある状況の上、ISのエネルギー補給には最低でも三十分を要する。
それが終わってから助けるなど不可能であり、理想すぎる机上の空論にも等しい。
「・・・・・」
言い終える前に雄輔はクローシールドをアリーナの地に突き刺し、一夏の延髄を手刀で殴った。
「がっ!?ゆ・・す・・・け、おま・・え」
「今は眠れ、お前の理想論に付き合う気はない」
雄輔は一夏を担ぐと政征とシャナに向き直った。
「俺はコイツを運ぶ、一刻も早くラウラを救ってやってくれ!」
「わかりました」
「任せておけ!」
「頼んだぞ、二人共!」
雄輔はクローシールドの側に寄り、一夏を担いだままクローシールドを巻き込む形でオルゴン・クラウドの転移を使って安全なアリーナの外に出た。
◇
「だが、どうすればいい!?」
政征は一夏の戦いを見ていた限りでの予想を立てていた。
ラウラを確実に助けるには接近戦しか無い。
しかし、相手は紛い物とはいえ世界最強の力を模倣している。
下手に仕掛ければこちらが手痛い反撃をくらって、助ける事が不可能になってしまう。
『・・・・け・・・て』
「!?」
政征が戦略を考えている最中、シャナは何かの声が聞こえていた。
弱々しく、助けを求める声が。
『た・・・す・・け・・て・・・わ・・・た・・が・・・ぬ・・り・・つ・・・ぶ・・さ・・れ・・・い・・や・・だ』
それは中に取り込まれたラウラの声だった。
己の存在が塗りつぶされていく、私はまだ存在していたいという意志なのだろう。
サイトロンがISのコアに干渉したせいなのだろうか?シャナはそう思ったが原因が解らないまま政征に声をかけた。
「政征!急いで下さい!このままではラウラさんが完全に!」
「分かっている!だが、どうすれば!?」
政征は焦っていた、時間経過の危険性もあるが助けるにはバスカー・モードを使う必要がある。
しかし、ライフルでは時間が足りなくなり、ソードでは中に取り込まれたラウラごとダメージを与えてしまう。
「政征、落ち着いてください。私の祈りを貴方に」
シャナは政征のラフトクランズに手を添え、祈るように目を閉じた。
「!?クローシールドが・・・そうか!クローか!シャナ、離れてくれ。賭けになるがラウラを助け出す!!」
「はい、貴方を信じます」
シャナが離れるとクローシールドにオルゴンエネルギーが集中していく。
「行くぞ!クロー展開!バスカー・モード!起動!!」
機体からオルゴンが溢れ出し、リベラのツインアイが輝き、機体色に色合いの強い紅色が混じり合う。
そのまま急上昇するとクローを展開したまま複製の千冬へと急降下していく。
「うおおおおお!!」
複製の千冬は迎撃しようと黒い雪片を振るうが、それ以上のスピードで背面を引き裂かれ、更には前面も引き裂かれる。
「捉えた!そこだ!!」
展開したままのクローで複製の千冬を上空に投げ飛ばす。
「出よ!オルゴナイト・ミラージュ!!」
ラフトクランズを形取った四体の分身が広がるように現れ、上空にいる複製の千冬へ向かっていく。
四体の分身は四肢をそれぞれ掴み、そのまま結晶化して閉じ込めた。
「これで!オルゴン・マテリアライゼーション!!」
クローがオルゴナイトに覆われ、更に巨大な爪を作り出すとそのまま飛び上がった。
「消えよ!偽りの世界最強よ!!」
急上昇の速度を利用し、複製の千冬を切り裂いた。
切り裂かれた複製の千冬はそのまま元の姿であるシュヴァルツェア・レーゲンへと戻っていた。
政征は上空から降りてくるとゆっくり着地し、その先にはシャナが待っていた。
「政征、ラウラさんは?」
「助け出した、ギリギリのところでだ」
政征は何故かラウラを見ないように横を向いたまま、立っていた。
「どうしたのですか?」
「シャナ、すまないが何か覆うものを頼む・・。出ないと俺はずっとこのままだ」
「え?あ・・・!」
そう、助け出されたラウラは今、衣服を纏っていない生まれたままの姿になっている。
ラフトクランズの腕の中で安らいだ表情で気絶しているのだ。
「政征・・・見ましたか?」
「見ていない」
「本当ですか?」
「本当だ」
「嘘はついてませんよね?」
「ついていない」
「分かりました、先生にお願いしてきます。そのままでいてくださいね?」
これは拷問以上に拷問だ。ずっと横を向いていると首がまずいことになる。
その後、織斑先生とフー=ルー先生がやってきて、ラウラに大きなタオルをかけ保健室に連れて行った。
織斑先生からは「待っている間は目を閉じておけば良かったんじゃないのか?」と言われた。
俺の首はかなり痛くなったとだけ言っておこう。
◇
「う・・うう」
「目が覚めましたか?」
「貴女は・・・フー=ルー教諭、それに教官まで」
ラウラは目を覚まし、起き上がろうとしたがフー=ルーがそれを制した。
「今の貴女は全身打撲、筋肉疲労、それに腹部に僅かな裂傷があります。跡は残りませんが動くと傷口が開くので寝てなさい」
「フー=ルー先生の言う通りだ、そのまま横になっておけ」
「はい・・・。一体、何が起こったのですか?」
ラウラは視線だけを二人の教員に向けると、自分に何が起こっていたのかを質問した。
「織斑先生、ここは貴女が説明するべきでしょう」
「分かった、最重要機密だが仕方あるまい。VTシステムは知っているな?」
ラウラは視線で頷くとその内容を口にした。
「はい・・・正式名称はヴァルキリー・トレース・システム・・。過去のモンド・グロッソの優勝者の動きをトレースするシステム、確かあれは」
「そうだ、IS条約によって全ての国家間で研究・開発・搭載使用が禁止されている物だ。それがお前の機体に搭載されていた」
それを聞いたラウラは無言になってしまった、条約禁止の装備を自分の国が使おうとしたショックだろう。
「巧妙に貴女の機体へ搭載されていました。恐らく機体の状態、パイロットの心理的願望、それらの条件がトリガーになっていたのでしょう。ドイツに調査が入ると思いますが、表立っては出てこないでしょうね」
フー=ルーの説明にラウラは瞳を閉じた後、天井を見ながら口を開いた。
「私が望んだからですね、教官の強さを得るために」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
「は、はい!」
「お前は誰なんだ?」
「え・・・わた・・私は」
ラウラは千冬に名を呼ばれ、その先が出てこない。自分という存在を全く考えてこなかったゆえに答えがないのだ。
「誰でもないならお前自身になるといい、まだまだ時間はあるのだからな」
「(ふむ、精神的ケアに関して今回は良いみたいですわね)」
千冬の言葉を聞いていたフー=ルーも優しげな笑みを浮かべていた。
「ラウラさん、私からも。憧れの方にどんなに近づく事は出来ても、その方と全く同じ事を自分が出来るとは限りません。どんなに近づいても貴女は貴女なのです」
「私は・・私」
「そうですわ。器が無いならこの学園で作りなさい。ラウラ・ボーデヴィッヒという器を」
「っはい・・・!」
フー=ルーと千冬の言葉にラウラは年相応の笑顔を見せていた。
「それと教官、フー=ルー教諭・・・私は気を失っている間、不思議な夢を見ていました」
「夢?」
「はい、シャナ=ミア・フューラと騎士のような姿の赤野政征が何かを訴えている夢です。私はそのまま黒い何かに覆われて、助けを求めていたらシャナ=ミアが私を引っ張ってくれたのです」
「・・・・」
「そこから赤野政征が巨大な爪で黒い何かを引き裂いたと同時に目が覚めて」
「そうか・・・」
そういって、千冬は立ち上がりフー=ルーも扉へと向かっていく。
「身体が起きれるようになったら、その二人に礼を言っておけ。お前を助け出した恩人だからな」
「今は自分の身体を労わりなさい。それからでも遅くありませんわ」
二人の教員が去るとラウラは睡魔に襲われ、ゆっくりと眠りに落ちていった。
◇
ラウラの事件によってタッグマッチトーナメントは中止となり、一回戦のみを行う事になった。
優勝が無くなった事で女生徒のほとんどが泣いていたが、あのデマを信じきっていたんだろう。
そんな中、俺とシャナは雄輔とシャルロットの一回戦を見に来ている。
シャナはラウラを助けた後が原因でしばらく不機嫌だったが、俺からのキスで機嫌を直してくれた。
物凄い恥ずかしかったし、周りに人が居ないで良かった。
そろそろ始まるようでアリーナに視線を向ける。相手は打鉄が二体か、相手方がどれだけ食らいついてくるのかが気になるな。
「シャルロット、それがお前の機体か?」
「うん、カルヴィナ義姉さんの機体データを流用して、リヴァイヴⅡを更に強化カスタムした。ベルゼルート・リヴァイヴだよ」
「カルヴィナ義姉さんって・・・あのカルヴィナさんか!?」
雄輔の驚きの表情にシャルロットも驚いていた。
「え?義姉さんを知ってるの?」
「知ってるも何も、俺に射撃訓練をしてくれた教官だ」
「不思議な事もあるんだね、カルヴィナ義姉さんの生徒に会えるなんて」
「ああ、俺も驚いた」
「それじゃ、行こう」
「分かった」
二人は同時にアリーナへ飛び出し、試合が開始された。
ラフトクランズ・モエニアとベルゼルート・リヴァイヴの連携はそれは凄まじいものだった。
シャルロットが使う「砂漠の逃げ水」と言われる技術はオルゴンエネルギーを放つ、Bライフルと実弾を放つ通常のNライフルを両手に持ち、相手に隙を与えない。
シャルロットの間合いを制しても、そこから雄輔が駆るラフトクランズ・モエニアの援護射撃や得意とする接近戦で確実に相手を追い詰めていく。
「なんだろう、容赦ないな・・・」
「政征も人の事を言えませんよ」
雄輔とシャルロットのペアの勝利が放送され、試合は終わった。
◇
その日の放課後、鈴はアシュアリー・クロイツェル社へと呼ばれていた。
IS学園には話が通っているらしく、帰ってくる期間まで公欠に扱いにすると伝えられている。
「話は聞いてたけど本当に大きいのね・・・アシュアリー・クロイツェル社って」
中に入る前に受付で用件を伝え、しばらく待つと一人の男性がやってきた。
「君かね?甲龍の操縦者であり、中国の代表候補生の」
「はい、凰鈴音といいます」
「私は紫雲セルダという。早速で悪いが機体のある場所へ向かおう」
「はい!」
セルダの後に着いて行き、ラボらしき場所に入るとそこには。龍砲が無い状態の甲龍がハンガーに置いてある状態で修理されていた。
「甲龍が直ってる・・・」
鈴は感激のあまり、言葉を失っていた。
修理は不可能に近いとまで言われていた自分のパートナーが帰ってきたのだから。
「鈴音君、君に伝えなければならないことがある」
「何でしょうか?」
「甲龍の特徴である龍砲をオミットしなければ完全修復が難しいのだ」
「そ、そんな!」
龍砲を外さなければ完全には戻らないとセルダから伝えられた鈴は再びショックを受けた。
龍砲はパートナーの最大の武器だ。これが無いのは特長を無くしてしまったISとも言える。
「その代わり、これを見て欲しい」
「?」
端末の一つに甲龍の特徴を受け継いだ格闘重視の機体プランのデータが表示されていた。
「これは・・・完全な格闘重視の機体・・しかも中距離にまで対応する為に分身まで出来る」
「この両肩にあるパーツはドッキングさせる事で巨大な爪となる」
「でもこれって、操縦者が格闘が出来ること前提ですよね?」
「そうだ、それに関しては問題ない。だが、操縦感覚も変わる為に慣れるのに時間も掛かるだろう」
「機体の名前は?」
「甲龍あらため、
名前を聞いて鈴は迷っていた。
自分の思いだけでパートナーの姿を変えてもいいものかと。
「甲龍に触ってもいいですか?」
「構わないよ、思入れもあるだろうからね」
「ありがとうございます」
鈴は甲龍が置いてあるハンガーへ入ると甲龍に直接触れた。
「良いのかな?甲龍・・・アナタを勝手に変えちゃって」
その時、僅かに甲龍が動いた。それはまるで鈴に意志を見せているようだ。
「甲龍、うん・・・そうよね!アナタもまだまだ戦いたいわよね!」
その言葉を肯定したのか、甲龍が一瞬だけ輝いた。
「紫雲さん!甲龍の改修、お願いします!!」
「わかった。それと君も武術格闘の訓練をする事になるが大丈夫かね?」
「はい、私も強くなりたいですから!」
この日から鈴は三週間、格闘の訓練と生まれ変わった甲龍である爪龍の機体調整を行うことになった。
◇
同じ日の放課後。ある一室で電話を掛ける者がいた。
数回のコールの後、電話相手が出る。
「はい、絶好調の束さんだよ~!!」
「切りますよ?」
「それならそれで別に良いけど、何の用かな?」
電話をしているのは箒であり、連絡先は自分の実の姉である束だった。
「姉さん・・・私にISを下さい。私だけのISを」
「構わないよ、だけど一つだけ条件があるよ」
「なんですか?」
「模擬戦だよ。自由か城壁の騎士とのね」
「それなら構いません」
「じゃあ、臨海学校の時に持って行くからまたねー!」
会話を終えて箒は喜びに震えていた、これで自分にも力が手に入ると。
「ふふ、これで・・・これで私にも絶対的な力が手に入る!自由と城壁の騎士など知らんが蹴散らして、あの女にを成敗してやる!」
この時の箒は気づいていなかった。自由と城壁の騎士、このうちの一人は自分に屈辱を与えた一人だということを。
◇
時間は夜、ジャンクマニアが居そうな商店街を一夏は歩いていた。
それはある物を購入するためであった。
「これが一番いいかな」
それを購入した後、誰もいない場所で軽く試運転する。
「これで・・準備は出来たな、ふふ」
どこか上機嫌で歩く一夏は笑みを浮かべていた。一夏はそのまま帰宅し、購入した物を厳重に仕舞った。
「シャナ=ミアさん・・・・」
自分の隣にいることを想像した後に就寝についた。
この後に彼は最大の禁忌を犯し、一人の騎士と龍の逆鱗に触れる事になる事を知るはずもなかった。
このところ、書きすぎてて眠るのが深夜3時になってる作者です。
思いつくと止まらないから仕方ないね!
シャルロットの機体は直球な名前ですが、武装とスラスターを強化し稼働エネルギーをオルゴンに換えただけで本体はラファールのままです。
ラウラの別方向への行動は次回に
鈴は改修された機体へ乗り換え!爪、格闘、分身、ショルダーパーツ。ここまで言うと察しの良い方は解ってしまうかと。
箒が勝てる相手?今のままじゃソ=デスにも勝てないよ。
一夏が購入した物、ヒントは護身用です。