Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:アマゾンズ

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戦士への導き手との戦い

シャルロットの新たな決意

以上



※注意書き

今回は少しだけ龍が如く成分があります。


愛憎と親愛(シャルロット編・その3)

謎の勢力と初めて戦ってからシャルロットはナデシコの食堂で食事をしながら自分の中に違和感を感じていた。戦闘時に起こる不安に似た何かが心の奥からせり上がってくる感覚が支配してくるのだ。

 

「なんだろう・・?あの時のモヤモヤは」

 

シャルロット自身もそれが何なのか正体は掴めないが戦闘の時だけに出てくるとなれば厄介なことに変わりはない。

 

「・・・わかんないなぁ」

 

そんな様子を見て危険を察知していたのがミスリル所属のマオだった。あらゆる戦場の経験がある彼女はシャルロットが抱える心の問題を見抜いていた。

 

「(あの子、・・・マズイかもしれないわね)」

 

マオの不安はシャルロットが戦場で潰されないかという事だ。彼女は確かに優れたパイロットであり、その強さを裏付ける実力も持っている。

 

もしも、何かのきっかけでシャルロットが戦場で快楽を見出し、そこへ正義感や義務感などが加われば間違った正義感を振りかざす快楽殺人者となってしまう。

 

それだけは避けたいのがマオの考えだ。戦場の狂気は敵味方に関わらず伝染しやすい、それが味方であれば最もあってはならない事だ。

 

「ボクは・・・」

 

シャルロットは自分の中で考えが纏まらないうちに食事を終えてしまい、自室へと戻る。そこから二時間ほど経った後に艦内の風呂に向かう途中でカルヴィナと出会った。

 

「シャルロット、アンタも風呂かしら?」

 

「うん、汗は流しておかないといけないから」

 

「そう、ならご一緒させてもらうわ」

 

「え?」

 

「たまには友好を深めようと思ってね」

 

カルヴィナと共に風呂の脱衣所へと入り衣服を脱ぎ、裸体となると浴室へとはいる。とても戦艦の内部に作られたとは思えない程の大浴場で、寧ろ銭湯と言ってもいい位の広さだ。

 

「すごい・・・」

 

「全くね、逆に呆れるくらいよ」

 

二人は会話がないまま身体と髪を洗い、身を清めると広い湯船に身を沈める。程よい暖かさの湯が身に染み入り二人は軽く息を吐いた。

 

「一つ、指摘していいかしら?」

 

「何?カルヴィナさん」

 

「アンタ・・・人を撃ちたくないんでしょ?いくら機体があるとはいえどね」

 

「!!」

 

カルヴィナの指摘にシャルロットは驚くがどこか納得出来ていた。自分の中で溢れていた違和感の正体を教えてもらえたような気がしたからだ。

 

「正直に言いなさい、今は私達だけしかいないんだから」

 

「(世界は違っても、やっぱりカルヴィナ義姉さんだ・・こうして何気なく聞いてくれるだもの)うん、正直言って人を殺すのは嫌だよ」

 

「そう、それなら死を悼む気持ちを持ち続けなさい。今の私が言える事じゃないけど、アンタは潰れることはない。殺したくないなんて当たり前の感情よ、私は別だけどね」

 

「っ・・・うん、ありがとう。カルヴィナさん」

 

「何故かしらね、アンタの事が放っておけないのよ。カティア達三人に詰め寄っていたのを止められてから」

 

シャルロットはこの世界のカルヴィナを受け入れ始めていた。自分の知っているカルヴィナと何一つ変わらない、違うとすれば復讐者になっている事だけだ。それでもこの時だけは自分に厳しくもアドバイスをくれる義姉だとシャルロットは信じた。

 

 

 

二人が風呂を堪能している同時刻、どこかの訓練施設では牢獄から出された一人の準騎士が従士数名相手に一人で戦っていた。その姿は楽しんでいるというより任侠物の映画やゲームなどで出てくる相手への示しのような感じだ。

 

「な、なぜ・・あれだけ攻撃を受けてるはずなのに・・・!」

 

「お前等に一つ良い事を教えてやる。男ってのはな、喧嘩や試合に負けた奴が敗者になるんじゃねえ・・最後まで"意地を張り続けられなかった"奴が負けなんだよ」

 

その姿は騎士という称号が全く似合わない。従士達に殴られ続けたのか全身が青痣や切り傷まみれであり、唇すら切っている。さらに物言いは力でのし上がる世界に身を置いていたかのようだ。

 

「俺はなぁ・・・誰が士団長になろうが、牢獄に投獄されようが、称号を剥奪されようが構いやしねえ」

 

従士達はその眼力と凄みのある声に怯んでいた。目の前にいる準騎士の男は本気でそう思っており自らの意地と執念を持って従士達に近づいてくる。

 

「命ある限り、何度だって這い上がってやる・・・だからよぉ」

 

「てめえらみてえな半端な奴らが・・・一番腹立つんだよ!倒れろや!ボケ共がぁああ!」

 

「うわああああああ!」

 

男は握り拳を作り、そのまま振り下ろすが誰かに掴まれ、従士に振り下ろされることはなかった。

 

「そこまでだ、この者達を殺す気か?お前のカンを取り戻すための体術訓練だろう?」

 

「・・正当な準騎士の登場か」

 

「ふん、機体は出来ている。さっさと行け」

 

先程まで暴れていた準騎士の男はもう終わったと言わんばかりに部屋を出て行き、もう一人の準騎士は従士達を運び、治療を担当する者に任せた。

 

「何故、アイツが・・・」

 

もう一人の準騎士は不満を言葉を口にしていた。先程の男は騎士としての精神が無く自由奔放で態度も粗暴だ。だが、それでもその自由な態度と任侠心溢れる行動に憧れを持ち、人を惹きつけていることも事実だった。

 

「出撃の準備をしないとな・・・。もう、あの頃には戻れないのか?」

 

何かを懐かしむように、それでいて後悔を含んだ独り言を呟くともう一人の準騎士も出て行った。

 

 

 

 

数時間後、地上へ残留する事をカルヴィナと共に選んだシャルロットは出撃の準備をしていた。カルヴィナのベルゼルートとシャルロットのベルゼルート・リヴァイヴが並ぶと同時にカティアは声を上げた。

 

「気を付けてください・・彼らが来ます!」

 

「そうか・・・わかったわ」

 

「彼ら・・・この世界で初めて戦った人達かな?あの時、見た事があった動きをした相手の手がかりが掴めればいいけど」

 

シャルロットは銀色のヴォルレントの動きが見た事がある誰かに似ているような気がしてならなかった、それも自分が知っている相手に。最初の戦い以降、彼らとは接触出来ていないため手がかりを掴めずにいた。

 

「今度こそ確かめてみせるよ!行きます!」

 

身に纏ったリヴァイヴと共にシャルロットは砂漠へ出撃し、それに続くようにカルヴィナが駆るベルゼルートも出撃してきた。

 

「アンタもアイツ等と因縁があるのかしら?」

 

「違うよ。どうしても確かめたい事があるだけ、邪魔をする気はないよ」

 

「なら、いいけどね」

 

その後、八卦衆と呼ばれる者たちが現れ、壮絶な激戦となった。人工地震や原子核破砕砲、決して地上で爆発させてはいけない核ミサイルを搭載された機体などが現れたが辛くもこれを撃破した。

 

その戦いの最中、ゼオライマーと呼ばれる機体のパイロットであった秋津マサトと氷室美久が行方不明となってしまった。そして、同じ名を持つ機体のパイロット二人は警戒を強めた。一人は復讐の為に、一人は因縁となる相手を知るために。

 

ゼオライマーの反応が消失したと同時に謎の勢力の機体が転移してくる。従士の機体が複数現れるが指揮官機はおらず、その代わりにヴォルレントが三機に増えていた。

 

「なんで、アル=ヴァン様の副官である俺がお前達と一緒なんだ?」

 

「仕方ないだろう?あの方たちの命令だ」

 

「青臭え奴だな?てめえから殺りあっても良いんだぜ?」

 

「はっ!よく吠えるぜ。恋人を政略の道具にされ、没落した武家にしてはな!」

 

「言い過ぎだぞ!ダルービ!」

 

「あ?やんのか、ジュア=ム。それとも・・・[狂って]やろうか?」

 

「よせ、我らの任務あの転移システムの調査だったはずだが、崩壊した今ではあの機体を破壊する事だ」

 

「けっ・・!喧しい奴だ」

 

真面目な性格の準騎士の一言で二人の言い争いは収まり、一斉にシャルロットやカルヴィナが所属している部隊へ視線を向ける。

 

「・・・」

 

カルヴィナは謎の勢力の機体を見続けている。その目の憎しみの輝きは薄れてはいないが比較的に冷静な様子で機体を動かし、戦闘が始まった。

 

「邪魔をするな!お前らァ!!」

 

カルヴィナの駆るベルゼルートは鬼神の如き強さを見せつけていた。リュンピーやガンジャールの接近戦を難なく避け、オルゴンライフルBやオルゴンライフルAの一撃を確実にコックピットへと撃ち込んで撃墜していく。

 

「接近戦は刃物や格闘術だけじゃないんだよ?」

 

その横に並ぶのがシャルロットのベルゼルート・リヴァイヴ、彼女は実弾や非実弾の切り替えを素早く行い、リュンピーやドナ・リュンピーの四肢や武装を破壊し、戦闘不能に追い込んでいる。

 

本来、接近戦の主流は剣や刀、もしくは素手の拳などが多い。だが、この二人においてはその常識が通用しなかった。近距離と中距離の中間に位置する距離を読み、その間合いを決して外さない。その技術を習得しているだけでも驚愕に値するだろう。

 

 

 

 

「雑魚は片付いた!後はあの機体だけだ!」

 

「先走らないで!焦ると負けだよ!?」

 

「シャルさんの言うとおりです、カルヴィナ!」

 

残ったのは三機のヴォルレントだ。だが、そのうちの二機がパーソナルカラーに塗られているらしく、一機はオレンジ色、もう一機はダークブルーに近い色で着色されている。

 

「俺が実験体の乗ったベルゼルートをやる、いいな?」

 

「それなら俺達二人でパワードスーツに似たあの機体を相手する」

 

「勝手にしな、俺は兵隊として動くだけだ」

 

それぞれが相手をする機体を決め、三機のヴォルレントが散開し向かっていく。

 

「聞こえるかよ、カルヴィナ。まだ生き残っていたなんてな!なら此処でおれが確実に始末してやる」

 

「貴様、ジュア=ムか!お前になど私がやれるものか!アル=ヴァンはどこだ!奴を出せ!」

 

「あんたのせいなんだよ、あんたが生きていたからアル=ヴァン様は!だが、安心しろよ。お前の仲間も含めて全員同じ場所に送ってやるからな」

 

ジュア=ムと呼ばれた男から発せられた挑発にカルヴィナの頭が怒りで沸騰してくる。自分が愛した男も、教え子だった目の前の相手も自分を騙していた、それだけに憎しみは大きい。

 

「まずはお前から落としてやるッ!ジュア=ム!」

 

「アンタの腕は知ってるよ?教官殿。けど生意気なんだよ!サイトロンを扱えない奴がなぁ!」

 

「ジュア=ムゥゥゥゥーーー!!」

 

 

 

 

ベルゼルートとオレンジ色のヴォルレントが戦闘を開始している間、シャルロットと二機のヴォルレントの戦闘は既に始まっていた。

 

「(やっぱり、この動き・・・あの二人に似てる!でも、どうして)」

 

シャルロットはオルゴンライフルを二丁構え、ダークブルーのヴォルレントを攻撃しながらオルゴナイトを纏ったもう一機のヴォルレントの拳を避け続けている。

 

「なんだ、コイツは・・・?俺達のクセを知っている?」

 

「だったら、リズムを崩しやイイだけだろうが、シッ!」

 

ダークブルーのヴォルレントが間合いを取ると同時に通常色のヴォルレントがボクシングのブローやラッシュをシャルロットへと放ってくる。

 

「うっ!?早い!うわああああああ!」

 

ブローを避けたと同時に懐に飛び込まれ、ラッシュを受けたシャルロットはオルゴンによって強化された絶対防御で守られたが吹き飛ばされてしまった。

 

「やっぱナマってんなぁ・・・投獄される前はオルゴンクラウドをブチ抜ける位にはサイトロン率はあったんだがよ」

 

ガラの悪い準騎士は機体の拳を動かすと再びシャルロットに視線を向ける。吹き飛ばされたシャルロットは空中で体勢を整え再び突撃して行く。

 

「もしかしたらだけど・・・やってみよう!」

 

シャルロットが試みたのはオープンチャンネル、つまり全方位通信だ。味方に聞かれてしまえば内通者として処分されてしまう可能性があるが、それだけの事をしなければこの二人の正体を掴めないと確信したゆえの行動だ。

 

「聞こえる!?そこの二機!周波数は486.610!さっき言った周波数に合わせて!」

 

「あ?」

 

「何だ?」

 

偶然にも先程の通信はカルヴィナ達の戦闘の爆発音で味方にも聞かれていなかったらしく、二人の準騎士はシャルロットが提示してきた周波数に通信を合わせた。

 

「・・・さっきの一撃、効いたよ」

 

全方位から個人通信に切り替わった事で完全に会話は三人の間だけで行える様になったが、シャルロットにとってこれが最大の誤算だった。

 

「あれくらいで調子にのるなよ?」

 

「女か。こんな時に会話を申し入れてくるとは気高い精神の持ち主なのか、無謀なのか分からないな」

 

「!!!!!!!」

 

声を聞いたシャルロットは驚愕し目を見開いた。何故ならその声は大切な友人で特訓のパートナーとして接してくれた二人と全く同じ声だったからだ。

 

「名を名乗ろう、私はユウ=スケ・ダーブルス」

 

「マサ=ユキ・フォルティトゥードーってもんだ」

 

「そ、そんな・・・」

 

名前こそ違うが確かに自分の世界の友人である二人だと確信を持ってしまった。ショックなのは隠せないが倒さない訳にもいかないという矛盾からシャルロットは動きが止まってしまっている。

 

「くっそおおお!」

 

三人が戦闘を止めてしまったと同時にジュア=ムの声が響く、カルヴィナの戦闘が終わっていたようでオレンジカラーのヴォルレントが大破している。

 

「良い事を教えてやる。機体が変わっても動きのクセまでは直せない、よく覚えておけ」

 

そういってカルヴィナは大破したオレンジカラーのヴォルレントにオルゴンライフルを付きつける。

 

その引き金を引こうとした時、また転移して現れる機体があった。カルヴィナは即座に反応し、シャルロットにもその機体は見覚えがある。

 

「ラフトクランズ・・・!っ!?リヴァイヴが反応してる?」

 

シャルロットがリヴァイヴの反応に気付くと同時にカルヴィナがアル=ヴァンに向けてオルゴンライフルを向けようとする。

 

「アル=ヴァン様!?」

 

「退け、ジュア=ム・ダルービ。いずれあれは抹消する、今は退くのだ」

 

「はっ!」

 

オレンジカラーのヴォルレントは転移で前線から退いていき、敵側で残ったのは二人の準騎士とアル=ヴァンだ。

 

「さぁ、コイツを破壊しに来い!私かお前、どちらかが倒れるだけだ!」

 

「クーランジュ、君との戦いの舞台は此処ではない。私にはそれが見えた」

 

「何だと!?」

 

「(これが、この世界でのカルヴィナ義姉さんとアル=ヴァン義兄さんの戦う姿なの?見ていられないよ・・・)」

 

シャルロットは二人の様子を見ていたが、仲の良い二人を自分の世界で見ていたが為に心苦しくなりながらも許せなくなっていた。想い合うからこそ感情が反転した時の感情は大きい、想い合っている二人を知っているからこその怒りだ。

 

しかし、カルヴィナは話を聞こうとせず、アル=ヴァンも話そうとしない。これでは平行線になるのも当然と言える。

 

「サイトロンによる未来の断片だ。君と戦った後、もう一人戦う事になる」

 

ラフトクランズ・アウルンがシャルロットに視線を向けたがすぐにベルゼルートに戻した。

 

「立っているのは君か私、どちらかだろうな。もしくは」

 

言うべき事を言い終えたのか、アル=ヴァンは転移し撤退して行ってしまい、残ったのは二人の準騎士だけだ。

 

「な!戻れ!アル=ヴァン!戻れェェェ!くそおおおお!」

 

旗艦からも撤退命令が出されたがシャルロットだけはその場に静止している。

 

「ボクはこの二人と戦ってから行きます、すみません」

 

「わかったわ、勝てないと分かったら素早く撤退しなさい」

 

もう一つの戦艦であるアークエンジェルの艦長からの言葉に笑みを見せると二人の準騎士に向き合った。

 

「さぁ、戦おう」

 

[単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『ハンター・ホワイト・リンクス』発動]

 

「良い目をしてやがる。一線は越えてねえようだが、それでも相当鍛えてきたようだな」

 

この世界のマサ=ユキが駆る銀色のヴォルレントが構えを取る。格闘戦用に調整されているようで、その基本スタイルはボクシングに近く、他の格闘技も取り入れているようだ。

 

「お前がやるのか?」

 

「コイツは俺の獲物だ、てめえは女に甘えだろうが。それにな、サイトロンでもてめえが戦う相手じゃねえんだ」

 

「っ・・!」

 

自分の甘さを見抜かれ、ユウ=スケは唇を軽く噛んだ。女性に手を出すなと教育されてきた為に手加減してしまうクセが彼には無意識に身についている。

 

「戦る前に女、てめえの名前を聞かせろ。名無しのままじゃ意味ねえからよ」

 

シャルロットに向き直った別世界のマサ=ユキは名前を聞いてきた、身体に染みつき、僅かながらに残った戦いの作法を無意識に行っていたのだ。

 

「シャルロット、シャルロット・デュノア」

 

「そうか、刻んだぜ」

 

[推奨BGM『怨魔の契り』龍が如く0より]

 

「行くぞォ!ゴラァ!!」

 

オルゴンダガーの代わりに両腕の拳の全てにオルゴナイトの結晶を纏わせ、アッパーやフックパンチを繰り出してくる。

 

「人型起動兵器でこれだけ大振りなのにキレがすごい!?うっ!」

 

見切れない速さではなかったがフックパンチがかすってしまった、その鋭さはカミソリのようで絶対防御があっても油断ならない。そもそも、目の前にいる相手は性格が違うだけで自分が知っている人物とほぼ同じなのだ、それだけに全力で戦わなければならないためシャルロットは接近戦用の銃に切り替え迎え撃つ。

 

「うぐぁ!銃撃か・・・だがよ、それだけで止まると思ってんじゃねえぞ!」

 

「っ・・・!」

 

シャルロット自身も簡単に決着がつくとは思っていない、それでも怯んでしまったのは大声で叫ばれたからではなく執念深さと諦めの悪さだ。

 

その姿は自分の世界の政征とダブってしまう、それがシャルロットに迷いを生じさせ動きを鈍くしていた。

 

「全力で来・・・っ!?」

 

ヴォルレントの拳がシャルロットの顔面を捉えようとした瞬間、突然動きが止まった。原因はサイトロンのようでヴォルレントは間合いを開いた。

 

「どうやら決着は別の場所らしい。まさか、おめえが別の世界のヴァウーラと戦う宿命を持ってるとはよ」

 

「?どういう事!?」

 

「決着を付けるのは此処でも俺でもねえって事だ。俺はただの前座、それにな・・・てめえの銃撃で腕が動かねんだよ」

 

「え?」

 

よく見れば銀色のヴォルレントの右腕から火花が出ている、シャルロットの放った銃撃が関節部の隙間に命中してしまっていたのだ。

 

「楽しみにしておけ、てめえとの決着の相手をな」

 

「ま、待って!」

 

「勝手に帰還したか、相変わらずだ」

 

準騎士の二人は砂漠から転移してしまい、シャルロットも急いで帰還したがアークエンジェルの副官にコッテリと怒られてしまった。

 

 

 

 

アークエンジェルに戻った後、シャルロットは通路を歩いていると同年代の男女が逢引している現場を偶然にも目撃してしまった。赤髪の少女と優しそうな少年の二人でシャルロットは声を掛けなかったが赤髪の少女がシャルロットに気づいた。

 

「アンタ、何でこんなところにいるのよ!」

 

「偶然だよ、通りがかっただけだから」

 

「そんな事いって、私を脅す気なんでしょ!」

 

赤髪の少女はシャルロットに噛み付くような勢いで叫びをあげている、少年はおいていかれているが声をかけられる雰囲気ではない。

 

「そんな事しないよ、もう行っていいかな?艦長さんにレポート出さなきゃいけないんだ」

 

「ふざけんじゃないわよ!」

 

少女が平手打ちを繰り出してきたが、シャルロットは少女の平手打ちを何も抵抗せずに受けた。

 

「・・!」

 

「っ・・・これで満足した?もう行くね」

 

赤髪の少女は目を見開いてその場で固まっており、シャルロットはそれを見たと同時にその場から去っていく。

 

シャルロットの実力ならば少女の平手打ちは止める事も避ける事も出来たはずだが、あえてそれをしなかった。

 

ISに乗る為の訓練や特訓を乗り越えてきた自分と一般人である先程の少女とでは、自分がケガをさせてしまうと考え抵抗しなかったのだ。

 

その後、自分の機体であるリヴァイヴや戦闘データ等を纏めたレポートを提出し用件を済ませた。ナデシコの所属とだけあって軍人扱いされないのが唯一の救いだ。

 

「ボクがこの世界で相手にしなきゃいけないのは・・・アル=ヴァン義兄さんと政征、雄輔の三人」

 

シャルロット自身もこの世界はデータだと理解している、それでも友人二人と似た人物が現れるとは思っていなかったのだ。

 

「サイトロンってホント意地悪だよね・・・別人とはいっても戦わせるんだから」

 

サイトロンのが見せる映像は乗り越えられる試練を見せる、しかしそのほとんどが大切な人や友人などの戦いだ。

 

「でも、乗り越えてみせる」

 

シャルロットはこの世界の試練を受けて立つことを改めて決意した。

 

 

 

 

数週間が経ち、敵対勢力の一つの拠点である地獄島を壊滅させ、あらゆる勢力を弱体化させていくと同時に途中でクリムゾン島で海水浴をする事にもなってしまった。

 

「シャルロットって・・・すごかったんだな」

 

「ああ、眩しすぎてたまらないぜ」

 

「あんな子が勇ましく戦うんだもんなぁ」

 

「あそこまで可愛くて素直な子が腕っ節も強いんだよなぁ、ドモンさん達レベルで」

 

以上がバカンス中に男性陣からシャルロットに向けられた水着姿の感想である。

 

バカンスを終え、次の作戦の為にへと移動している最中、謎の勢力であるフューリーの機体の一つ、ヴォルレントがたった一機、ナデシコとアークエンジェルの前に現れた。

 

「アイツは!?私が出る!アイツから奴らの居場所を聞き出してやるっ!」

 

ヴォルレントを見た瞬間、カルヴィナは出撃しようとしていたが相手側から意外な指名があった。

 

「シャルロット・デュノアを出しな!奴と一体一で戦わせろ!」

 

「何っ!?」

 

「ボクを指名してきた?」

 

「シャルロット!私を代わりに行かせなさい!」

 

カルヴィナはシャルロットに譲るように言ってきたがシャルロット自身も譲る気はなかった。

 

「悪いけど譲れないよ、ボクも戦う理由があるからね」

 

「っ!」

 

シャルロットから放たれた威圧がカルヴィナを一瞬だけ怯ませていた。その目には明確な覚悟の意思が見て取れる。しかし、すぐに笑顔になると口を開いた。

 

「必ず情報は持ってくるから」

 

そういってシャルロットは出撃しアークエンジェルの副官からは命令違反だと罵られるが、相手の要求が自分である事と要求反発は破壊されかねない事を伝え、黙らせた。

 

「来たか」

 

「うん、でもね・・・今の君ほど手強い相手もいないと思う」

 

二人の間には邪魔をするなと言わんばかりのオーラが出ている。援護しようとしていたシャルロットの仲間達のクルーは手が出せない。

 

「あ?」

 

「君はボクと決着を付けるためにここにいる・・・一つの決着を付ける事だけに命を掛ける相手はすごく手強いのを知ってるからね」

 

「ほう?女の割にはよくわかってんじゃねえか、俺を動かしてんのは男の意地だ」

 

二人は旗艦から離れるように移動していく。二人だけで決着をつけられる距離まで移動し終え、構えを取る。

 

「たった二回の戦いだけだったけど・・・この戦いで決着をつけよう、マサ=ユキ」

 

シャルロットは得意とする銃を構えず、マーシャルアーツのような構えを取っている。それを見たマサ=ユキは感心したように笑みを浮かべる。

 

「俺の流儀で来るか、いいぜ。・・・殺すつもりでかかってこいやあ!!」

 

[推奨BGM『閻魔の誓い』龍が如く0より]

 

その声が合図となり、ヴォルレントとリヴァイヴがぶつかり合う。互いの武器は相棒の拳だけ、それでも互いに退くことはない。

 

「シッ!おらぁ!」

 

ヴォルレントから繰り出される大振りのアッパーとフックパンチは相変わらず驚異的だ。そのキレは衰えるどころか更に早くなっている。

 

「っう!たああっ!」

 

シャルロットは一撃一撃を防御しながら反撃の機会を伺い、反撃に転じる。パワーは無いがその分をスピードで補い、腰が入った一撃を繰り出す。

 

「ぐはっ!ナメてんじゃねえぞ・・・!本気で来い!ゴラァ!!」

 

シャルロットからの痛烈な一撃でコックピットに強烈な衝撃が伝わり唇を切ってしまうがそれでも反撃の一撃を加える。

 

「あぐっ!まだまだぁ!」

 

お互いに防御を捨てた殴り合いを始め、絶対防御もオルゴンクラウドも衝撃を緩和する役目を果たしていない。

 

「どうしたぁ!シャルロットォ!」

 

「こんのぉ!」

 

「ぐああっ!」

 

頭部の左半分を破壊されるがヴォルレントは体勢を直すと再び殴りかかってくる。それをシャルロットは正面から挑んでいった。

 

「くそがああああ!」

 

「うわああああああ!」

 

無我夢中で放ったシャルロットのカウンターパンチがヴォルレントの動力部を捉え、決着がついた。

 

「はぁ・・はぁ・・どこまで強くなりやがるんだ、てめえは」

 

「マサ=ユキ・・・」

 

「これで、おめえはヴァウーラと戦う戦士になったって訳だ・・・」

 

「どういう事!?ヴァウーラって一体なんなの!?」

 

「破滅って言えばわかるか?オメエはそれに対抗出来る力を得たんだよ・・・」

 

「!!?」

 

破滅という言葉に更なる謎が生まれた事、自分がそれに対抗できる力が身に付いたという事が信じられなかった。

 

「だがな、オメエには戦わなきゃならねえ相手があと一人いる」

 

「っ」

 

「オーブって場所に行け、そこがテメエの最終決戦の場所だ・・・そこに奴らも必ず来る」

 

「オーブ・・・」

 

荒っぽい口調とは裏腹に導くような声にシャルロットは真剣な顔つきになった。

 

「わかってんだろうな、シャルロット。テメエは戦士として、深い所に足を突っ込もうとしてる。戦士として破滅と戦う覚悟があるんだったら・・・行けやあ!!」

 

「うん、覚悟の上だよ・・・じゃあ、行くね」

 

シャルロットは帰艦するためにマサ=ユキのいる場所から去っていった。

 

「ようやく逝けるな、お前のトコによ・・・」

 

その間、後方で爆発がありシャルロットは後ろ髪引かれるような想いを押し殺して戻った。

 

 

 

旗艦へ戻った後に戦闘報告を済ませ、カルヴィナの自室へと向かっていた。約束通り情報を伝えるためだ。

 

「それで、アイツ等に関することは?」

 

「うん、オーブって所で必ず出てくるだろうって・・・当然、カルヴィナさんが追っている人も」

 

「そう、それだけでも充分すぎるわ。ありがとう」

 

「じゃあ・・ボク、戻るね」

 

カルヴィナの自室から出て行くとシャルロットもあてがわれた部屋へと戻った。

 

「命懸けで導いてくれた・・・それを決して無駄にはしないよ」

 

友人と似たこの世界のマサ=ユキに感謝の念と哀悼を捧げ、シャルロットは祈るように目を閉じていた。




また、一万越え・・だと?

シャルロットがいるデータ世界のオリキャラ達の簡単な説明をします。

次回はアル=ヴァン戦、シャルロットは勝てるのか?


※説明↓

マサ=ユキ・フォルティトゥードー(データの平行世界の中で可能性の一つ)

純粋なフューリーであり武闘で名を馳せるフューリーの武家の出身。現在は没落している。

恋人(容姿はシャナ=ミア、性格は鈴にそっくり)を政略で別の貴族に奪われた挙句、病死している。また謀士の策略によって総代騎士から騎士の称号を受けるのを永久剥奪されてしまっている。

その後は荒れ狂い、騎士の誇りを捨て従士の愚連隊相手に暴れまわり、その後、力で纏めている。

粗暴で口が悪く、荒っぽい性格という本来の世界と真逆である。

準騎士はあくまで監視の為の名目であり、本人は自分を兵隊としてしか思っていない。

希死念慮があり常に最前線で戦う。


ユウ=スケ・ダーブルス(データ平行世界の中で可能性の一つ)

こちらも純粋なフューリーであり、フューリーの貴族出身でフォルティトゥードー家と協定を結んでいる間柄。正式な準騎士であり最も騎士に近い存在でもある。

恋人(容姿はフー=ルー、性格は織斑千冬にそっくり)がいるが互いの立場の関係上、公にしていない。

マサ=ユキとは親友だったが荒れ始めたマサ=ユキから一方的に友の縁を切られてしまっている為に嫌っているような態度を周りには見せているが、気にかけているのを隠すための仮面である。

原因である貴族の政略から友とその恋人を救えなかった事を深く後悔して無力感に苛まれており、自分だけが幸せになってはいけないという歪んだ考えを持っている。

性格は生真面目で熱血という本来の世界と真逆。
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