Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
一から精神を鍛え直す為に再び格闘技を習う
以上
政征が最初に目を覚まし、周りを見渡すとそこはどこかの街のようだが人っ子一人居なかった。
隣には雄輔が倒れており、政征は急いで声をかけた。
「雄輔、起きろ!」
「う、うう・・・此処は?」
「どこかの街みたいだが、誰も居ないんだよ・・・子供一人」
「何?」
政征は手を差し出し、それを見た雄輔は手を掴み立ち上がった。親友であるからこそ、お互いに協力と個人の使い分けが出来ているのだ。
「一体・・」
「しっ!誰か来る!隠れろ!!」
政征と雄輔は二人が隠れられる程の壁の内側へと隠れ、それと同時に歩いてくる三人の集団を見ていた。
「どうやら此処も制圧出来たようだ」
「地球人共は根絶やしにしろと総代騎士様の命令だからな」
「今やフューリーの長である、我が総代騎士様はな」
どうやらフューリーの従士達らしく、生き残りが居ないかどうか見回りをしているようだ。それを聞いている二人は飛び出したい気持ちを堪えて三人が去るまで待った。
三人が去った後、二人はラフトクランズからのサイトロンによってこの世界がどうなっているのかを理解したが詳しくは分からなかった。
「そこの二人、何してるの?」
政征と雄輔に話しかけてきたのは自分達と変わらない年齢の女性だった。フューリー特有の模様が顔にあり、髪の色が薄い緑色をしており、前髪のひと房は赤くしてメッシュに近くセットされている。
「ああ、俺達は偶然ここに迷い込んでしまって」
「何もわからないから此処で立ち往生していた訳だ」
「そう。見た所、アンタ達は同族のようだけど・・・奴らの仲間って訳じゃなさそうね」
二人は女性から言われた奴らとは先程の従士達の事だろう。フューリー同士で敵対しているのかと疑問を抱いていた。
「名前を教えていなかったわね、私はクド=ラ。クド=ラ・ダルービよ」
「え!?」
「な!?」
女性の名前を聞いて二人は驚きを隠すことが出来なかった。彼女は自分達の知識にあるキャラクターの妹であり、それだけに驚きも大きすぎたのだ。
「アンタ達の名前は?」
「赤野政征」
「青葉雄輔だ」
「そ、じゃあ着いてきて・・・私達の潜伏している場所に案内するわ」
クド=ラに案内されたのは地下の広いシェルターだった。広さは日本の東北くらいの面積だろうか?それぞれが生活している。
ほとんどがフューリーで、多いとも少ないとも言えない人数ではあるが地球人がいるのも確認できた。
「こっちよ」
案内されたのはシェルターの中心にある大きな施設だ。どうやらレジスタンスの活動拠点らしく、フューリーの準騎士、謀士、従士や地球人達までもが手を取り合っている。
「クド=ラ隊長、この者達は?」
「地上で迷ってたのを拾ったの、しかも同族よ」
「なんと!?」
「この二人にこの世界の情勢を説明したいから、お茶を用意してくれる?」
「分かりました」
副隊長らしき女性がお茶を淹れる為に部屋を出て行き、残ったのは三人だけとなった。
「じゃあ、聞きたい事があるならどうぞ?答えられる範囲でなら答えるから」
「それなら、まず俺から質問するよ。この世界は今、どうなってるんだい?」
政征からの質問にクド=ラは真剣な目で答えた。その目には嘘や偽りは言わないと訴えかけているかのように。
「この世界はフューリーが内部分裂を起こした後に穏健派が敗北して、主戦派の主導者であるグ=ランドンが全ての政権を握って地球人を滅ぼそうと生き残りを探しているのよ」
「なんだって!?」
「既に地球上の60パーセントの人類が滅ぼされているの。最もサイトロンに適合できた地球人は生かされてるけどね」
質問の答えからこの世界はフューリーの主戦派が考えていた地球人抹殺計画が遂行されかけている事でもある。
「次は俺からだ。この世界のシャナ=ミア様と三騎士は?」
「っ・・・それは」
雄輔からシャナ=ミアと聞いてクド=ラは暗い表情を表に出し、答えたくない様子だったが意を決して口を開いた。
「シャナ=ミア様は今、ガウ=ラの内部で静養中・・・というのが一般的に伝わっている事よ。でも、事実は違うの」
「え?」
「シャナ=ミア様はグ=ランドンに手篭めにされたの、噂では身重になっているそうよ。そのせいで精神的ショックを受けて失語状態なのよ」
「な・・・に!?」
話を聞いた政征は爪が肉に食い込むほど拳を握り締めた。別世界とはいえどシャナが手篭めにされたと聞いて一気に怒りの感情が湧き上がっていたからだ。
握り締めている拳からは血が流れており、床に斑点を着けている。
「それから三騎士についてだったわね?詳しく言えばフー=ルー様は行方不明、アル=ヴァン様と私の兄であるジュア=ム兄さんは殺されたわ」
「な・・・!三騎士が殺された!?」
「アル=ヴァン様は主戦派に暗殺されて、ジュア=ム兄さんはグ=ランドンに反抗した反逆者として処刑されたの・・・ジュア=ム兄さんはシャナ=ミア様に好意を持っていたから」
「・・・・っ」
頼みの綱となるであろう三騎士も全滅していた。フー=ルーが行方不明とは言っているが生きている可能性は限りなく低いだろう。
「グ=ランドンが皇女を手篭めにし、更には近衛兵の長である三騎士までも・・・」
「ふざけやがって!!」
「冷静になれ!政征、今ここで怒りに身を任せても意味は無いだろ!」
「言われなくても、んなこたぁ分かってんだよ!」
「俺もお前と同じ気持ちだ!だが、今は落ち着け!今の俺達は何も出来ないんだぞ!」
「っく・・・!」
政征は怒りに頭が沸騰しており、顔には出していないが雄輔もそれは同じであった。二人にとって最も守る存在であり、愛した者がこの世界では最悪な出来事の被害者になっていたからだ。
「アンタ達、まるで三騎士の皆様みたいね?守るべきものを命を賭けてまで守ろうとする意志がそっくりだわ」
クド=ラはどこか懐かしむかのように二人を見ていた。彼女自身も守りたい者を守れず、それでも決起するためにレジスタンスを結成したのだろう。
「もしかしてだけど、アンタ達・・・騎士の称号を受けてない?」
「それは・・・」
「もし、受けていたとしたらどうする?」
「私達に協力して欲しいわ。無論、タダでとは言わない。協力してくれれば衣食住を保証するわ」
衣食住の保証、それは二人にとっては非常に魅力的な条件だ。
「わかった。でも、こちらからも条件がある」
「何かしら?」
「道場みたいな場所はないか?なるべく訓練を怠りたくないんだ」
「道場ならあるわよ?変わった流派の拳法を教えてるところが」
二人からの意外な条件にクド=ラは肩透かしを食らったような表情をしていたが、逆にそれが好印象であり信頼に値するものだと感じている。
「その道場の流派ってなんだ?」
「えーっと、確か・・・機神拳とか」
「はっ!?」
「何!?」
流派の名前を聞いて、二人は呆気に取られた。その流派はスパロボの世界において最強の拳法であるからだ。
それを教えている道場があるとは思いもしなかったようで、二人は笑みを浮かべた。
「拳による戦闘方法か・・・学んでおいて損はないな」
「ああ、武器を失った場合を想定してな」
「アンタ達、本当に訓練の鬼なのね・・・」
クド=ラは呆れ始めていたが、二人の様子から止める事は絶対にできないと思い深く追求はしなかった。
◇
その翌日、二人はレジスタンスのメンバーに紹介された後、機神拳という拳法を教えている道場へ顔を出した。
門下生はさほど多くはないが、稽古の様子からかなり厳しめの道場だというのが伺えた。
「ん?お前達がクド=ラから紹介を受けた者達か?」
「ああ、そうさ」
「俺達も是非、鍛えて欲しくてな」
「そうか・・・だが、我が機神拳の稽古は生半可な気持ちでは着いてこれんぞ?」
「それは、望むところさ」
「俺も政征と同じ意見だ」
二人の目を見て道場の師範代は笑みを浮かべていた。鍛えがいのありそうな門下生が現れた事に嬉しさを隠せない様子だ。
「よし、ならば早速稽古に入ってもらう!」
「ああ」
「わかった」
二人は稽古が出来る服に着替えて準備運動と柔軟体操を始めた。一時間をかけて身体を解すと稽古の内容を師範代に聞き、立会いの下で稽古を始めた。
「せいっ!せいっ!」
「はぁっ!はっ!」
空手の基本稽古と似ており、最も基本の型を身に付ける事から始まるようで、突きと蹴りをそれぞれ千本だと言い渡された。
二人は汗をかきながらも一向に稽古を止めようとはしない。守れなかった悔しさを二人は稽古の中で思い返したからだ。
政征はシャナ=ミアを、雄輔はフー=ルーを、自分の未熟さで守れずに傷つけてしまい、それによって後悔と悔しさだけが残った。
あの時の思いは二度と味わいたくはない、全てを守るとは言わない自分の手に届くのであれば守る。ただ、それだけを思い稽古に集中する二人であった。
短いですが、ここまでです。
この世界はフューリーの主戦派が全てを完全に支配してしまっている状態です。
穏健派はほとんどが処断され、生き残りはレジスタンスの下にいます。
この世界のシャナは女性としての威厳と人生を奪われたと言える程の酷い方法でグ=ランドンに手篭めにされました。
フー=ルーが行方不明なのは後の展開のお楽しみです。