Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
改めて友情を誓い合う。
以上
俺達がこの世界に来てから早くも一週間が経った。今は機神拳という流派の拳法の道場で自らを鍛え直している。
今は実戦を踏まえた組手の稽古をしている。無論、手加減や安全などを考慮になど入ってはおらず、拳による殺し合いといっていいほどのレベルの組手を師範からさせられている状態だ。
「だああああ!」
「でやああああ!」
二人の拳の突きや蹴りの応酬はまさに受ければ大怪我は免れないほどに鋭い一撃が続いていた。そんな中で最初の一撃を与えたのは雄輔だ。
腹部を狙った拳が政征の支点を正確に捉えた。その一撃は重く、政征は膝を着きかけている。
「ぐ・・う!でやっ!」
僅かにフラつきながらも政征は意地で膝を着く事をしなかった。武術の経験では雄輔の方が上ではあるが、それでも食らいついていく気概を見せ、貫手を雄輔の脇腹に撃ち込んだ。
「ぐはっ!?」
反撃が来るとは思ってもみなかった雄輔も油断していた為、その貫手が強烈な一撃となって呼吸を遅らせている。
「が・・は・・!」
しかし、お互いの一撃が決まると同時に二人は同時に膝を着いてしまい、呼吸も荒くなっている。
「はぁっ・・はぁ!」
「はぁ・・はぁ・・かはっ!」
二人の目からは闘志が消えていない、二人の試合を見ている別の弟子達もそのまま硬直したように見ていた。
この戦いは野生動物の如く、荒々しくも美しき原初の争いを見ているようで目が離せないのだ。
「がああああああ!!ユウ=スケェェェェ!!」
「おああああ!マサ=ユキィィィ!!」
「それまで!」
「「っ!?」」
お互いの拳が同時に捉える寸前、師範の大声で止められてしまった。二人の目には理性が戻り、拳を下ろした。
「お前達、今日はもう帰れ」
「え?」
「何故ですか?師範」
「これ以上、殺気を放たれていては他の弟子達が稽古に身が入らん。それに」
「それに?」
「少しは自分の身体を労われ、気づいてないのかもしれんがお前達の拳などがボロボロだぞ」
師範に指摘された通り二人の拳は拳タコと皮膚が擦り切れており、ボロボロであった。過剰に稽古しすぎる傾向が二人に現れている事でもある。
「わかりました」
「では、俺たちは帰ります」
二人が道場から出ていこうとすると師範が呼びかけた。その目は二人の内にある感情を見抜いているかのようだ。
「今のお前達は冷静さを失っている、しばらくは心を休めろ」
◇
帰宅途中、政征と雄輔は一言も会話を交わさなかった。データの別世界いえど、それぞれの想い人が悲惨な目にあってしまっているからであろう。
一人は強引に手篭めにされ、望まぬ相手との子を身に宿してしまい、もう一人は生死不明の状態で生存は絶望的だからだ。
どんなに鍛えても、試合をしてもお互いに宿る怒りが消えることはなく、その怒りが復讐という感情に近くなっている事に二人は気づいていない。
歩いている途中で二人は従士らしき二人と肩がぶつかってしまう。それと同時に従士の二人は因縁をつけてきた。
「おい、コラ!人にぶつかっておいて謝りも無しか!?」
「・・・・」
「てめえら!シカトこいてんじゃねえぞ!」
「この世界の従士は気高さが無いのか、まるでチンピラだな」
「んだと!?」
「これが力で支配された結果か・・・見るに堪えない」
「俺達にそんな口を叩くとはな、身の程を教えてやる!」
そう言うと同時に従士の二人は政征と雄輔に殴りかかってきたが、二人は避けようとはせずにそのまま殴られた。
「これで」
「身を守る理由が出来た」
「何ィ・・・!?」
「そりゃあ、どういう!ぐふっ!?」
先に反撃したのは雄輔だ、自分が得意とする膝蹴りを従士の一人の腹部に打ち込んだのだ。
「て、てめぇ!ごばっ!」
「他所見してるなよ?」
政征も従士に対し胸元へ肘鉄を放った。その一撃は重く、従士達は蹲っている。二人の目には怒りの他に全てを壊してやるという危うい光もある。
「これ以上は手を出さない。だが、やるなら受けて立つぞ?」
「へ・・へへ・・・、お前達は終わりだ。今にお前達は我らフューリーの精鋭に殺されるから・・な」
「上等だよ」
そう言い残して従士は気絶してしまった。
だが、実際二人は本当に、たった一撃だけしか手を出さなかった。暴れたくとも暴れてはいけないという自制心が二人を止めていた。
「帰るぞ、政征」
「ああ・・・」
その後ろ姿は興味が無くなったと言わんばかりの雰囲気を醸し出しており、騎士としての姿は無かった。
二人は半ば八つ当たりに近いもので先程の従士達と殴り合った。どんなに戒めようと十代の青年、感情的になりやすく流されやすい。
「なぁ・・雄輔、覚えてるか?二人揃って、元の世界のある作品の言葉に共感したのを」
「ああ、覚えてるさ。Dead or Alive・・・生きるか死ぬか、喰うか喰われるか、だっけ?」
「そうさ、俺は[喰われる前に喰え、生きるというのは他の命を喰らうという事]という言葉に共感した」
政征がそう言うと雄輔は軽く笑い、政征の肩に腕を回した。
「そして俺は[一度、人に牙を向いた獣は二度と元には戻れない]という言葉に共感した」
そのまま二人は肩を並べて歩き、クド=ラから指定された平屋の一軒家へと向かった。
「俺達はこの世界のグ=ランドンに牙を向こうとしている二匹の獣だ」
「ああ、そうだ。それと以前、シャナと戦えるかって聞いてきたよな?俺はその時、倒してくれって懇願されたら倒すって答えた。雄輔、お前はどうなんだ?」
「フー=ルーの事か?俺は・・・」
「倒すとは言ったが俺自身もこの世界のシャナを殺す事はしたくないし、お前にもフー=ルーさんを殺めて欲しくない」
「政征・・・」
親友の言葉に雄輔は目を見開く。殺すと決めても実際に出来るのは狂人か殺しの経験がある者、もしくは快楽殺人者のどれかだ。
命というものは軽いようでいて実際は重い。そんな重りをお互いに背負って欲しくは無い。しかし、いつかは背負う事になってしまうのが騎士の宿命だ。
「政征・・・いつか、最後の一線を越えなきゃならない時が来たら一緒に越えてくれるか?」
「先走るような事を言ってんじゃねえよ、
「う・・・確かにな、すまない」
「謝るなって。でも、俺達のどちらかが早く一線を越える事になるかもしれない・・・それでも、お互いに止め合おう、雄輔」
「ああ、もちろんだ」
そう言って政征は拳を突き出す、それを見た雄輔も拳を握り政征の拳に軽くぶつけ合う。これは本来の世界でも行っていたお互いに決意を固く結ぶ為の行為だ。
親友同士でもいずれ離れる時が来る。再会を約束した時もこの拳のぶつけ合いをしていたのだ。
「今日はもう休もう」
「そうするか」
二人はシャワーを済ませ、簡単な食事を取るとすぐに睡眠を取った。
◇
二ヶ月ほど経ったある日、地上が襲撃を受け、地上にいたレジスタンスのメンバー全員が皆殺しに合ってしまったという事を朝早くに二人は聞かされた。
その様子を話した副隊長らしき男は顔を歪ませ、報告を聞いたクド=ラは悔しそうに唇を噛み締めている。
「また、仲間が・・・!」
「・・・・」
「行くか・・・」
政征は何も言わず、雄輔も地上へ出るための出入り口を目指そうと立ち上がった。二人からは憤怒と殺意がにじみ出ているかのように、近寄りがたい様子だ。
「貴方達!何処へ行くの!?」
「地上に行く・・・もう、これ以上蹂躙されているのを見てるのは嫌だ」
「俺も政征に同感だ」
「何言ってるのよ!?たかが一般人の貴方達が・・・・っ!?」
クド=ラは二人を止めようとしたが、二人の顔には抑えきれないくらいの怒りが明確に現れている。下手に止めれば自分が殺されてしまうと感じてしまうくらいの殺気だ。
「フューリーの汚点はフューリーが綺麗にしないといけないだろ?」
「毒を持って毒を制すの言葉があるようにフューリーの横暴は俺達が止める」
そう言い残すと二人は地上への出入り口へと向かって行ってしまい、クド=ラはその場で呆然としている。
「あの二人、同族だったのは分かってたけど・・・まさか、本当に騎士クラスの実力があるの?」
◇
[推奨BGM『Armour Zone』仮面ライダーアマゾンズより]
地上へ出た二人を待っていたのは量産型ヴォルレントを筆頭にリュンピーやガンジャールなどが女子供を手篭めにし、男や老人を殺し、街を蹂躙している様子だった。
「!隊長!アイツ等です!アイツ等が我らに反抗した愚か者です!」
「ほう?」
二人にやり返された従士二人が居たらしく、政征と雄輔を見つけると同時に隊長機であるヴォルレントに報告している。
「久しぶりだな、お前達はもう終わりだ!」
従士達が一斉に二人を取り囲んだ。絶対に逃がさず殺すと言わんばかりに。
「私の部下に危害を加えたそうだな?悪いが消えてもらうぞ」
隊長らしき準騎士の言葉に二人はそれぞれ言葉を発した。
「部下は守るが地球人は皆殺しって訳かい?」
「女子供を嬲るのがフューリーなのか?」
「ふん、我らの約束の地で勝手に増えた物を殺して何が悪い?」
話し合いは出来無い、そう感じた二人は待機状態となっているそれぞれのISを手にする。その目は獣のように鋭い。
「政征、特訓で目覚めた俺達の中の獣を解き放つぞ?」
「言われるまでもない、こいつらを喰い尽くしてやる・・・!」
明確な殺意に従士達は一筋だけ汗を流した。この二人は本気だ、本気で自分達を倒すつもりだと。
「うおおおおおお!ラフトクランズゥ!!」
荒々しい咆哮と共に政征はラフトクランズ・リベラを展開する。更には紺瑠璃色の装甲に怒りを表す赤い一本の線が両肩に現れている。
「な・・・に?」
「ラ・・ラフトクランズ!?あの機体は無くなったはずじゃ!?」
周りが驚く中、展開したのを見届けた雄輔もニヒルな笑みを浮かべた後、静かに待機状態のISを見せるように口元の近くへと上げる。
「ラフトクランズ・・・」
政征とは対照的に雄輔は冷静な状態でラフトクランズ・モエニアを展開した。ダークブルーのカラーリングに両腕には傷のような白い線が現れている。
「馬鹿な・・・失われているはずのラフトクランズがこの場に、それも二機!?」
「今の俺達は騎士じゃない・・・」
「ただ敵を倒す事しか頭に無い、獣だ!ウオアアアアアアアア!!」
政征はオルゴンクローを展開し、雄輔はオルゴンソードを手に小規模の従士の軍勢へと向かっていった。
二人のISの意志はもの悲しげにコアの内部から二人の心を感じていた。二人の怒りは悲しみからくるものであり、それを自らの内側で爆発させる事で怒りに変えている。
「主達よ・・・怒りに身を任せる時もあるのだろうが」
「それは自らを偽っているのと同義だ」
自由と城壁のコアの意志は主に届く事はなく、戦いを見守る事しか出来なかった。
今回の政征と雄輔達の八つ当たりに近い状態です。
騎士と戒めていてもやはり十代ですから暴走します。
それゆえ二人は策略に嵌められる事にもなります。
今回のISの展開の仕方は大人向けのグロテスクな描写で有名な某ライダーのオマージュです。
あれ、やっぱり何度見てもかっこよすぎます!
暴走時に使うことにします、機会は少ないかもしれませんが。
NEXT HUNT
二人の目の前に倒すべき存在が現れ、目の前で愛しい者を別世界とはいえ奪われる二人。
解放の条件は二人が殺し合う事。愛か友情か
その様子を楽しむ総代騎士。
次回、自由VS城壁