咲〈オロチ〉編   作:Mt.モロー

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12.告白

 決勝会場 観覧席

 

『と、止まりました』

『……』

『福与アナ?』

『……あ、少々、お待ちください』

 ゴキュ、ゴキュ。

『こーこちゃん、マイク!』

『プハー、中堅戦終了だー!』

『……』

『恐るべき、渋谷選手の役満連荘を止めたのは、阿知賀女子学院 新子憧だー!』

『清澄高校 竹井選手も絶妙のサポートでした』

『全く、とんでもない展開でしたね。私は渋谷選手に、先鋒戦で猛威を振るった宮永照選手と同等の恐ろしさを感じました』

『逃げ場がないという点では、宮永選手以上かもしれません。しかし……』

『はい』

『私達は、その恐怖を認識しました。今後は十分対応できます』

『渋谷選手に手を揃えさせなければいい?』

『そうです』

『その答えを得る為に、阿知賀女子は大きく失点し、瀬戸際に立たされました』

『大きな代償でした。でも、まだチャンスは有ります』

『……小鍛冶プロ、随分と判官びいきですね?』

『……そう、かもしれません』

『あ! ただ今、画面には、控室に戻る途中の渋谷選手が映し出されております』

『“渋谷ショック”とでも言いましょうか、各校に凄まじいインパクトを与えました』

『し、渋谷ショック……』

『な……なんでしょうか?』

『し、渋……クヒッ!』

 福与恒子が笑いのツボにはまってしまい、中継の音声がカットされた。放送事故同然の事態であった。画面には無音のまま、各校の中堅選手が控室に戻る様子が延々と流されていたが、そこには清澄高校 竹井久の姿はなかった。

 

 

 決勝戦 対局室

 

 竹井久は、まだ対局室に残っていた。休憩時間と同様に、椅子をリクライニングさせて座っていた。

(和が来るまで、もう少しここにいよう)

 初めてであり、最後でもあるインターハイが終わった。その結果には満足していなかったが、自分にできることはやり尽くしたと考えていた。だから後悔はなかった。

 久は、目を閉じた。脳裏に去来するものに変化があらわれた。

(不思議ね……嫌なことは思い出さなくなった……。見えるのは、仲間の顔、まこ、和、優希、咲……)

 そのまま浅い眠りに落ちた。副将戦が始まるまでの数分であったが、それは、これまでに久がしてきた、努力や忍耐、苦悩の対価として得た、安寧の時間であった。 

 

 

 白糸台高校 控室

 

「あと一歩のところで……」

 弘世菫は、悔しそうにテーブルを叩いた。

「残り18500点、誠子なら削り切れる」

 副将戦を控えた亦野誠子に、宮永照が簡潔なアドバイスをする。

「勝負は前半戦。阿知賀の点数回復を阻止しながら闘えば、他の2校はまともな勝負ができない。そうなると、誠子のスピードに勝てる者はいない」

 菫も同意見であった。亦野誠子の打ち筋は、3副露後に無駄自摸がなくなり、そのまま上がることが多い。だから、誠子が牌を晒すたびに、対戦相手は勝手にカウントダウンを初めて自滅してしまう。

(ただし、照が言ったとおりに、3人の足枷を外してはいけない。鷺森の危機状態を維持しつつ攻めきらなければ、準決勝の再現になるかもしれない)

 鳴きを多用する者は、手牌が読みやすい。準決勝ではその弱点を突かれ、大きく失点した。

(メガン・ダヴァン、原村和。2人共、誠子への直撃を狙ってくるだろう。そして、鷺森灼……スロースターターで、後半戦になるほど危険度が増す)

「前半戦の東場ですかね、全力で攻めます。だけど、力が及ばなかった場合は、原村に得点させないことを優先します。――対宮永咲の安全圏は15万点でしたよね?」

「そうだ。だけど、妥協はしないでくれ」

「承知しています。白糸台の最善は、私で終わらせることですから」

「誠子……」

 照が重々しい表情で呼びかけた。

「頼む……」

「はい」

 白糸台ナンバー5。誠子は、自分を評してそう言っていた。それは、いつメンバーから外されるか分からない不安を押し隠す為の、自虐的な言葉だと菫は思っていた。

(誠子、お前はチーム虎姫に絶対必要な存在だ。だから、ナンバー5などではない)

 走攻守が揃ってこそ、チームは最強になる。菫は、誠子に“走”の役割を期待していた。そして、今回はその狙いが嵌っていた。阿知賀の飛び終了がちらついている副将戦で、誠子のスピードは、圧倒的優位に立てる武器であった。

「行ってきます」

 誠子は、控室のドアを開けて、対局室に向かっていった。

(誠子……曲者揃いのこのチームをまとめることができたのは、お前のおかげだ)

 良く言えば個性的な、悪く言えば変人ばかりのチーム虎姫のなかで、いつも笑顔で、気さくに話しかけてくる亦野誠子は、余計な摩擦を減らす潤滑油的な存在だった。だから菫は、副将戦が誠子にとって良い結果になるように願った。それは、これまで彼女がしてくれたことへの感謝の気持を込めた願いであった。

 

 誠子が控室を出てから、1分ほど経った。菫は、ある確認をする為に、宮永照に質問をした。

「尭深で終わると思ったから、さっきは笑い飛ばしたが、状況が変わった。照、お前は中堅戦が終わった時、胸を撫で下ろしていた。それはなぜだ?」

「菫……」

 口を開いたのは、宮永照ではなく大星淡であった。

「私は照に聞いている! あとにしてくれ!」

「……はい」

 菫は部長であった。しかもただの部長ではない。絶対王者と超新星を束ねなければいけない部長なのだ。わがままは許さなかった。

「私は、このチームが好き……。だから、勝ちたいの。それは本当のことだよ」

「だから? だからだよ! 私達はその為に阿知賀を飛ばすことに全力を尽くしてきた。それが、なぜだ? なぜ尭深が止められてほっとできる? 照、お前の真意はどこにあるのだ?」

 照は、瞬きもせずに、菫を見ていた。しばらくの沈黙の後、照は、ぽつりぽつりと話し始めた。

「私は……3連覇をしたいのではない、このチームで……優勝がしたいんだよ。だけど、それに立ちはだかる者がいる。……それは〈オロチ〉と化した宮永咲……私の妹だよ」

 菫は困惑していた。照の表情は悲しみに満ちていたが、どこか嬉しそうでもあった。

(照……どんな心の葛藤があるんだ……それは、私にも話せないのか?)

「では、いいんだな? 宮永咲を決勝の舞台に上げなくてもいいんだな?」

 菫はわざと強い口調で言った。照はそれに頷いた。そして――

「もちろん、それがベストだよ。〈オロチ〉とは闘わないほうがいいに決まっている。……だけど、だけどね菫……」

「……」

「私は……宮永咲の……姉でもあるんだよ」

 同じであった。悲しみと喜びの同居した表情。菫の確認は終了した。宮永照の最大の弱点は、妹の存在そのものであったのだ。

「私達姉妹は……一生、分かり合えないかもしれない……だけど、私にとって、咲は……」

「――分かった。もういい……よく分かったよ、照」

「……ゴメン」

 照は涙を流していなかったが、きっと心の中では号泣しているのだろう、声が震えていた。そう思うと、菫も言葉が詰まってしまった。

「勝つよ……勝つしかないよね……照、淡」

 

 

 試合会場通路

 

「憧!」

 対局室までの通路で、鷺森灼は新子憧を見つけて、名前を呼んだ。思いの外、落ち込んではいないように見えた。

「灼……私が……間違ってた」

「何が?」

「渋谷尭深、とんでもない怪物だった。ごめんね……点数をこんなに減らして」

「いいよ」

 灼は立ち止り、笑顔で答えた。

「最終局、凄かった。あんなことは、憧にしかできない」

「そう……」

 唇をブルブルと震わせながら、憧は言った。

「灼……ゴメン……もう行ってくれる?」

「分かった。行ってくる」

「……頑張って」

 灼は、憧とすれ違い、前へと進んだ。

 背後から、床に膝をつく音と、小さな嗚咽が聞こえていたが、灼は振り返らなかった。振り返っても、かける言葉がなかったからだ。灼にできることはただ一つ、それは憧への約束であった。

(必ず……必ず私が、来年もここに連れてくる!)

 灼の口は、真一文字に結ばれた。

 

 

 試合会場ラウンジ

 

 メガン・ダヴァンは、雀明華と通路で出会わなかったので、少し遠回りになるが、ラウンジに来てみた。案の定、雀はソファーに座り、缶紅茶を飲んでいた。

「雀! こっぴどくやられマシタネ」

「メグ……」

 メガンはテーブルを挟んで、雀の前の椅子に座った。

 雀は、紅茶を一口飲んで、ため息交じりに言った。

「……日本のものは、大抵おいしいですが、この缶詰の紅茶は最悪ですね」

「ワタシはコーヒー派なので、よく分かりまセン」

「せっかくの香りが台無しです。缶のにおいしかしません」

 メガンは、優しく笑っていた。

「メグ……あなたの気持ちを理解しました」

「……」

「逃げる、怯える、恐れる。どれが正しい言葉か分かりませんが、私はあの怪物に対して、それを選んでしまった」

「シブヤですか?」

「そうです。世界ランカーと呼ばれて、いい気になっていた私に、渋谷は地獄を見せました」

「それは、良かった」

「良かった?」

 雀の顔が曇った。しかし、メガンは気にせずに、酷く嬉しそうに話した。

「これで、雀はまた強くなれマス」

「それはどういう意味?」

「いいデスカ、去年ワタシはリューモンブチに敗北しまシタ。でも、それは、ワタシのパワーになりまシタ」

 メガンの表情は、陽気なアメリカンの顔から、戦闘モードに突入した闘士の顔に切り替わっていた。

「見ていてクダサイ、敗北を知った者の強さを」

「分かった……頑張って」

 メガンは、立ち上がり、戦場に向かって歩いていった。

 

 

 清澄高校 控室

 

「和……きつい試合になるのう」

「いつもと同じです。私は、私の麻雀を打つだけです」

 そう言って、原村和はペンギンの縫いぐるみを持って立ち上がった。

「部長は寝ちゃっているみたいですし、そろそろ行きます」

「ああ、頼むで和」

「のどちゃん、頑張って」

 染谷まこと片岡優希の声援に、和は笑顔で頷いた。

「和ちゃん」

 宮永咲であった。咲は左手を延ばしていた。和はその手を握りたくなかった。震えているのがばれてしまうからだ。だが、和はあえて握った。そんなことは見透かされていると思っていた。自分の震えが、咲の手に伝わっていく。

 和と咲はそのまま見つめ合った。

「和ちゃん、対局室まで、一緒に行ってもいいかな?」

 和は、本音では拒否したかった。試合前のコンセントレーションは自分の大切なルーチンであった為だ。しかし、咲は、和に何かを伝えたがっていた。

「分かりました……」

 

 

 試合会場通路

 

「おかしいですよね、こんなに震えて」

「ううん、おかしくないよ。私なんかもっと酷いから」

 咲は、不器用に笑っていた。

和と咲はそのまま無言で、対局室の入り口近くまで歩いていった。

「和ちゃん……。こんな話は試合前に言うべきじゃないかもしれない。でも、私は……今、伝えておきたいの」

 突然、咲が立ち止り、悲しそうな目で和を見つめて言った。

「私はね……宮永照の影として、お母さんに育てられたの」

「影……ですか?」

 咲は下を向いて頷いた。

「お姉ちゃんを強くする為のユーティリティな対戦相手、それが私、それが私の存在価値」

「……」

「お母さんは、「照の為に強くなれ、決して負けるな」って言って、お姉ちゃん以上に私を鍛えたんだよ」

「負けてはいけないんですか?」

 束の間、咲は笑ったが、直ぐにまた、悲し気な表情に戻ってしまった。

「お母さんのいう負けは、勝負の負けじゃない。それは点数や順位が決めてくれて、だれが見ても分かる。でも、私が禁じられた負けは、見えないの……。決して勝てないという格付けを自分自身で決めてしまう真の敗北のこと」

 和は気がついていた。今目の前にいる咲は、〈オロチ〉の咲ではなく、普通の宮永咲であることを。

「でも、お姉ちゃんは天才だから……しばらくすると、全然勝てなくなった」

「……」

「それは、私の価値がなくなることを意味していた。……怖かった、どうしていいか分からなくなったの」

「咲さん……」

「だから、私は……決して負けない方法を思いついた」

(そんな……そんなことの為に……あの力が?)

「……プラマイ0ですか」

 咲は下を向いたままであった。その悲しみの表情はさらに深くなり、今にも泣き出しそうであった。

「うん……でも、それも長くは持たなかった。……だから、私は、幻影の力でお姉ちゃんに対抗したの」

「幻影……?」

「私は……本当は臆病で弱虫。だから、負けない為には、幻影の力で、それを隠さなければならなかった」

「そ、それが……」

 咲は、和と目を合わせた。咲の下瞼に溜まっていた涙がこらえ切れなくなり、頬を伝わり流れ落ちた。

「そう……それが〈オロチ〉」

 再び咲は下を向いた。僅かに間を置いて、小さな声で言った。

「そして……私は、その力で、大好きな……お姉ちゃんを……壊してしまったの」

 和は、泣いている咲を、黙ってみていられなかった。咲に近づき、手を握りしめた。

「その後、お母さんは、お姉ちゃんを連れて東京に引っ越していった。私と離す為に……」

 咲の手は冷たかった。それは、咲と初めて出会った、あの雨の日を思い出させた。

 ――あの時、咲は「麻雀が好きではない」と言った。今聞いた凄まじい過去からすると、それは当然だろう。だから、咲は今年まで麻雀を避けていたのだ。しかし、和はそれを再開させるきっかけを作っていた。

「ごめんなさい……私のせいですか?」

 咲は、うつむいたまま首を振った。

「……和ちゃん、昨日の衣ちゃんの話を覚えている? 負ける相手を探していたって」

「はい……理解できませんが」

「私にはよく分かるよ、私も見つけたから」

 そう言って、咲は和を見た。

「その人は、強く、曲がらず、決して諦めない。普通なら凌駕できるはずの私の力も、その人には通用しなくなってきている。――そして、いつの頃か、私は願うようになっていました」

 咲は目を閉じた。溜まっていた涙が次々とこぼれ落ちた。

「その人に、私を打ち負かしてほしい。私を……解放してほしいと」

 咲は目を開けて、和を見つめ、告白するように言った。

「その人の名前は……原村和といいます」

 和の目からも涙が溢れ出た。そして、和は心の中で誓っていた。宮永咲の悲痛な願いを叶えねばならないと。

 

 

 決勝戦 対局室

 

「……部長サン……」

 竹井久は、だれかの呼び声で、目を覚ました。現状把握に時間を要したが、ここは対局室、ならば、今自分を呼んだのは、原村和のはずであった。

「ゴメンね、和。少し寝ちゃったわ」

 久は椅子を起こして、背伸びをした。

「大変です。もう副将戦が始まりマスが、ハラムラがまだ来まセン」

 そう言ったのは、背の高い外国人であった。

(この人……確か、臨海の……)

 久は慌てて立ち上がった。もう亦野誠子も鷺森灼も席についており、和だけがいなかった。

「原村と宮永が話をしているのを見ました。急いでください。失格になりますよ」

 亦野誠子の情報に、久は「ありがとう」と答え、階段を急いで降りていった。

 

 

 試合会場通路

 

 和は、握っていた咲の右手を持ち上げ、2人の間に置いた。そして、涙声で言った。

「咲さん……これは、約束ではありません……誓いです」

 両手を添えて、咲の手を包み込んだ。

「誓います……あなたの願いは、私が……私が叶えます」

 咲は、泣きじゃくりながら頷いた。

「だから、咲さんも誓ってください……その時まで……決して負けないと」

「……うん」

 どちらともなく、2人は抱き合い、声を上げて泣いていた。

 

「和! 何やっているの! 急いで対局室に向かって!」

 部長の竹井久が遠くから叫んだ。和は咲からゆっくり離れ、涙を手で拭いた。

「咲さん……今日の原村和は怖いですよ……見ていてください」

 和の口元には笑みが浮かんでいた。咲も涙を拭きながら頷いた。

 久が合流した。よほど走ったのか息を切らしていた。

「和、急いで……」

「はい」

 和は顔を引き締めて歩き出した。その手には、いつものアイテムであるペンギンはなかった。

「和! エトペンは!」

「今日はいりません。お手数ですが持って帰ってください」

 ドアを開けて対局室に入った。照明が眩しく、和は目を閉じてしまった。そして、そのまま、新たな原村和が覚醒していた。

(エトペンは咲さんの幻影の力と同じもの、自分の弱さの象徴。だから、決別します。咲さんが負の力を武器にするのなら、私は正の力で立ち向かいます。――咲さん、あなたを倒すのは、私です)

 

 

 決勝会場 観覧席

 

 原村和が画面に映し出されていた。彼女の人気は不動のようで、10分ほど遅刻したにもかかわらず、会場は大歓声に包まれていた。

 

『失格直前で原村選手が入場してきましたー!』

『……』

『おや、何だか泣いているみたいですね』

『……』

『小鍛冶プロ?』

『……』

『ま、また笑ってる! 今度は何?』

『化けましたね……』

『化けた?』

『原村選手です。これまでとは違う、進化した彼女が見られると思います』

『それがおかしいの? すこやん』

『楽しみが増えました。私にとっては喜ばしいことです』

 

 

「透華……ののかが」

「ええ、もう覚醒していますわ」

 龍門渕透華は嬉しそうに言った。

「しかし、これは……衣にはよく分からない」

「私には見えましてよ、氷の装束が」

「氷の装束?」

 天江衣が、不思議そうに訊ねた。

「そうですわ、この原村和は“のどっち”ではありません“氷の天使”です」

「それって、透華の覚醒中と似たようなもんなのか?」

「それは何ですの?」

 井上純の質問に、透華は質問で返した。国広一は純を肘で突いた。

「純君、透華は自覚していないんだよ」

「あ、そうだっけ?」

 2人ひそひそ話に、透華は爆発した。

「純! 一! 何をゴチャゴチャ言っていますの!」

 興奮すると、周りが見えなくなる透華は、立ち上がって怒鳴った。それは周囲の注目を集め、新たなひそひそ話を大量生産していた。

(あれってだれだっけ? どっかでみたよね……)

(ほら、長野で清澄に負けた……)

(天江衣のいる学校の……)

 透華のイライラは更に募っていた。

 

 

 決勝戦 対局室

 

 メガン・ダヴァンは、階段を上ってくる原村和を見て右側の口端を吊り上げた。

(去年のリューモンブチをも上回るその気迫。いいデショウ、ハラムラ、アナタを葬り去ることによって、この1年の集大成としまショウ)

 和が北家の位置についた。

「遅れて申し訳ございませんでした」

 深々と頭を下げて、遅参を3人に詫びた。そして、氷のような冷徹な口調で言った。

「始めましょうか」

 メガンの口から白い歯が見えていた。

 


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