昨日、仕事の案内を受けてから部屋に戻ると医務室なる自分の部屋の状態を見て回った。これから主となる仕事の道具を確認するための見回りだったが想像よりも充実していた。薬品については簡単な風邪薬程度が並んでおり専門薬は本部へ申請が必要らしい。
その時は皇さんに頼めば申請とか直ぐに通してくれそうだな。まぁ、彼を診てみない事には何が必要かは分からないのだが……。それが分かるのも今日から分かる事だ。気合いを入れて頑張ろう。
「今日から頑張るぞ!」
そんな掛け声を一人上げ昨日纏めた道具を持ち部屋を出る。目指すは提督の執務室、皇提督の診察だ。
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慣れない廊下を歩きながら記憶を頼りに目的の部屋まで向かう。今日も今日とて日が昇って時間が経っているためか誰ともすれ違わない。単に部屋の位置がその原因だと思うが、艦娘は特に医務室は必要無いらしいし離れにあるのは仕方が無いか。
因みに朝食は眠そうな顔をした響が持ってきてくれた。夜の任務で寝ていないのに態々運んでくれたので後でお礼を考えておかないと……。
そんな考えをしていると目的の扉に着きノックをする。
「白猫です、失礼します。診察に来ました」
中からどうぞと言われ室内に入る。執務室の机に座り仕事をしている皇提督は仕事を止めこちらを見ていた。
「今日からよろしくお願いします。早速で何ですが始めても良いですか?」
こちらこそと頭を下げる皇提督に苦笑いしつつ談話用のソファの方へ座るようにお願いする。体温、脈拍、血圧、呼吸数を測定し紙にメモしていく。その後聴診器で肺、心臓、腸の音を聴き異常が無いかを確認する。
測定値は正常値内、音も問題は無い。問診をして血液取っておいて検査して貰おう。
「診たところ特に問題は無さそうですね。後は幾つかの質問と血液を取らせてもらいますが大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。でも良かった。最近は書類の処理に時間がかかって生活リズムが乱れていたんですよ」
「食事はきちんと食べている様ですが余り無理はなさらない様にして下さいね。さてと、質問をしますね。体のどこか痛みとかダルさとかありますか?」
「肩凝りと目の疲れがありますね。仕事上その程度しか無いですが」
「分かりました。他には何か気になる事とかありますか?」
「今のところは無いですね……。強いて言うならお互いもう少し砕けませんか?」
ちょっと予想外の事を言われ驚く。皇さんから言われるとは……。こちらとしても嬉しいのだが、本当に良いのだろうか。話した瞬間撃たれるとかないよな?
「じゃあ、こんな感じですけどよろしくお願いします」
「こっちもよろしく」
良かった、五体満足で生きていけそうだぞ。そんな事を考えながら素早く採血を終わらせる。その後、検体を本部へ検査を送ってもらう様に頼み医務室へ戻るために準備をする。
「この後だけど部屋の方に迎えが来ると思うからクローゼットに入っている作業着に着替えて待っていてくれ」
「了解。でも本当にタメ口で良いんですか?」
「正直、気軽に話せる機会が少ないからね。嬉しいんだよ。それじゃお互い仕事を頑張ろうか。夜になったら部屋に来てくれ」
皇提督にも色々と思うところがあるのだろうな。夜に呼び出されるとは愚痴でも話すつもりなのだろうか。肯定の意思を伝え部屋を出て医務室へ向かう。
☆☆☆☆☆
部屋に戻りクローゼットには作業着がありそれに着替える。呼びに来てくれるといっていたがここで待っていればいいのだろうか……。
「マタセタナ シゴトダ イクゾ」
そんな事を考えていたら扉の前に向かえが来ていた。よろしくお願いしますと頭を下げると俺の体を素早く上り肩の部分に座り教える様に向かえと指示される。肯定の意を伝え部屋から出て自分の知らない道を歩く。
あっちだ、次はこっちだ、と言われ指示通りに歩いていくと外に出た。少し歩くと造船場のような建物が見えてくる。結構な大きさの建物に驚いていると妖精さんは肩から降りており、着いて来いと言い先に建物に入って行く。
大人しくあとに続いて中に入ると、そこにはたくさんの妖精さんが整列していた。驚きながらも案内してくれた妖精さんの所に向かう。
「オマエラ キョウカラ シザイノホウノ テツダイニ ハイッタ シンイリダ メンドウミテヤレ」
右手に居る2列が敬礼をした。あそこが俺が手伝う資材?のほうなのだろうか。
「ナニツッタテンダ レツニクワワレ」
「すみません!」
急いで敬礼していた列の後ろに並ぶ。俺がデカ過ぎてかなり浮いているんですが……。
「キョウモ イツモドオリダ アンゼンニ サギョウヲ オコナエ イジョウダ」
整列していた妖精さんが全員敬礼するので慌てて自分も敬礼をする。この後どうすればいいのだろうか。
「オイ シンイリ コイツラニ ツイテイッテ ミテマナベ イジョウダ」
そう言い残すと別の作業の方に向かった。呆然としていると裾を引っ張られ下を見ると妖精さんが早く来いとせかしていた。周りを見ると先ほどまで並んでいた資材係(勝手に命名)はいなかった。慌てて引っ張ってくれていた妖精さんを肩に乗せ外に向かう。
外に出ると他の妖精さんはつるはしや猫車を持ち待っていた。俺はどうすればいいのか分からず肩に乗せた妖精さんに助けを求めると、やれやれとした顔で指差す。その方向を見ると普通の大きさのつるはしと猫車が置いてありそれを急いで取りに行く。俺が準備を済ませ隊に戻ると出発した。俺待ちだったのか次から気をつけないと……。
ヘルメットを被り山の中腹まで辿り着くと妖精さんは自分の持ち場に着くためかバラバラに散らばった。肩に居る妖精さんにまたも助けを求めると肩から降り歩いていく。付いていくとつるはしで横を指差した。俺の横で見て真似しなと言っているような気がしたので大人しく様子を見る。
つるはしで鉱石のような物を掘り猫車に乗せる一つの個所に纏めトラックみたいな乗り物で下まで運んでいるようだ。何となく仕事が見えてきたので自分もつるはしを持ちふるう。カンッカンッと音を立て鉱石のような物を掘る。自分の猫車に運び一杯になると俺だけ自分で下まで運ばされた。なぜなんだ……。恐らく量が多いからだと思うが。
一生懸命やっていたら裾を引っ張られ隣に居た妖精さんが周りを指差す。どうやら今日の仕事は終わりらしい。途中まで掘っていたものを猫車に乗せ帰ろうかと向かおうとすると隣に居た妖精さんが肩に登ってきた。重くもないので気にせず帰路に着く。何か先輩のような存在なので先輩と呼ぶことにした。先輩はサムズアップしていたので良かったのだろう。
造船場(後に工廠という事を聞いた)に着くと妖精さんはみんな何処かへ帰っていった。俺も自室に戻りシャワーを浴びたいな、そう考えながら自室に戻る。
と思ったが疲れもあるせいか迷子になった。ここどこだよ。記憶を頼りに歩いていると見慣れた所に到着した。執務室だ。今の時刻は日が沈んでいる状態、夜だ。皇さんに呼ばれていたことを思い出しノックをする。
「白猫です。約束通り伺いました」
中から声がかかると思ったが扉が開く。内心驚き様子を窺うと皇提督が手招きをしていた。大人しく中に入る。
「約束通り来てくれたね。ありがとう」
「あの……提督。この方が……件の方ですか?」
ふむ、提督に呼ばれたと思ったら何か艦娘がいるんだが……。俺なんかやったかな。これ殺られるんじゃないかな。そんな考えを頭一杯に巡らせていると艦娘の彼女が恐る恐るこちらに頭を下げる。
考え込む俺、慌てオロオロする艦娘、それを見てどこか楽しいそうな提督。そんな訳で俺の鎮守府での初仕事は終えた。