意識が浮上する。それと同時に耳に入ってくる鳥の囀り、草木の匂い。
何処かの森の中のようだ。
「ん……着いたみたいだな」
意識が完全に覚醒し、目も光に慣れてくる。
俺は森の中に倒れていたらしい。
「まずは、状況把握をしなきゃな」
自分の体を見てみる、どうやら少し若返ってるようだ、中学あたりの体だ。
「あの子に貰った力もちゃんとあるみたいだな」
だが、最初に貰った力はちゃんと感じられるが、そのあとに貰った物がどうしても分からない。
「まあ、そのうち分かるか」
取り合えず、移動をしよう。いつまでもここにいたって仕方がない。
そんな時だった、歩き始めた所に突如響く何かが爆ぜた様な爆音。
木の枝でよく見えないが前方から煙が上がっている。
「あそこからか……一応、行ってみるか」
もしかしたら怪我人がいるかもしれない、俺は爆音のした方へと走り出した。
「あれは……どういう状況だ?」
走って行って着いた先は、先ほどの爆発?で少し森が開けていた。そこで少女が1人、数人の男と対峙している。
少女は金色のロングヘアーに人形のように可愛らしい外見をしているが、それに見合わないような見窄らしいマントを纏っている。
なにやら訳ありのようだ。
それに対し、男達の方はファンタジー物のアニメなんかでよく見るような冒険者の様な装備だ。
「こうしてみると、本当に異世界に来たんだなって実感が湧くな……っと、そんなことしてる場合じゃなかった」
この状況、どちらに味方に付くかなんて考えなくても分かる。
そもそも、少女1人に対して数人がかりなんて、根性が気に入らない。
俺は何の躊躇いもなく少女を庇う様に男達の前に立つ。
「なんだぁ?てめぇ?」
先頭にいた男が俺を睨んでくる。
見た目からして外国人だと思ったんだが、話す言葉が分かるってことは日本語なのか?……いや、何か違う、俺の頭が勝手に相手の言葉を理解してるみたいだ。
「何だも何も無い、お前達こそ、この子になにしているんだ?」
「そんなもん、悪を討とうとしてるに決まってんだろうが!」
俺の言葉もあっちは理解出来るらしい、やっぱり俺には何時の間にか自動で言語翻訳が出来る能力が備わっていたらしい。
あの子の言った力もこの事だったのか?
「はっ、悪?この子がか?俺からしたら、こんな子供を集団で襲うお前達こそ悪だと思うんだが?」
俺の言葉に男達は舌打ちし、
何やら話し出す。
「何なんだ、あいつ?」
「構わねぇ、あいつも一緒にやっちまおうぜ。どうせあの魔女の仲間だ」
何やらブツブツ相談しているが、所々こっちにまで聞こえてくる。
魔女?この子が?
後ろの少女を見る。
「……貴様は……何で私を?」
まだ俺を警戒しているようだ、いぶかしむ様に俺を見てくる。
「そんな物、君を助けたかったからに決まってるだろ?……大丈夫だ、あんな奴ら、お兄ちゃんがすぐに追い払ってやるからな?」
そう言って少女の頭を優しく撫でる。
この子、今までこんなことが何度もあったのだろう。
何よりも、人はもう信じられないとでも言いそうな目がそれを語っている。
男達の方を振り返るともう話し合いは終わっていた様だ。
「悪ぃがテメェにも死んでもらうぜ?恨むんなら後ろの魔女を恨むんだな」
男達はそれぞれが腕を前に突き出し、何かをブツブツと唱え出す。
「魔法……か?……やっぱりこの世界にはあるのか」
「おい、貴様。私が時間を稼ぐ、その隙に逃げろ」
後ろの少女がそんなことを言ってくるが無視し、俺は男達の方へゆっくり歩いていく。
「おい、聞いているのか!?貴様は私と何の関係も無いだろう!さっさと行け!」
「はぁ、何の関係も無いだと?俺と君はもうここで出会ってるじゃないか……この世界に何の関係も無いなんて物は無い、全ての物が、あらゆる物と関係を持つことで成り立っているんだから。それに、最初に言っただろ?お兄ちゃんに任せろって」
その言葉に少女は黙る、男達も詠唱?が終わった様だ。
「喰らえ!『
男達の手から放たれる大量の光条、赤、青、白、様々な色をするその光の矢は軽くホーミングをしながら一斉に俺に向かってくる。
「始めて使うのがこんな状況か、まあ、こういう状況の方が使い方は身に付きやすいか……」
左手を前に出し、俺の中にある『力』を行使する。
俺の足元から『闇』が勢いよく噴き出し迫ってくる魔法の矢を悉く消し去る。
「なっ!」
男達、そして後ろの少女が驚きの声を上げる。
やっぱり、さっきの詠唱からすると詠唱無しでの魔法は珍しいのか?
「て、テメェ!何しやがったんだ!?」
先頭の男が喚き出す。
「そんなこと、知る必要もないだろう……それよりも、俺を殺そうとしたんだ、お前達も殺される覚悟は出来ているんだろうな?」
人を殺す……もちろん始めての経験だが、こんな世界だ、そんなことを気にしていたらこの先生きては行けないだろう。
「何故人は闇を恐れるのか、お前達は知っているか?」
そう言って前に突き出した左手を広げる。
「な、なんだこれ!?」
男達の足元に闇が広がり、俺が左手をゆっくり閉じると共にドンドン男達が沈み始める。
「くっ、そぉ!抜けられねぇ!」
「い、嫌だ!嫌だぁ!!」
抜け出られないことを知ると、男達は騒ぎ始める。
中には命乞いを始める者までいるが、闇はそんな男達を1人ずつ確実に飲み込んでいく。
「が、あぁぁぁぁ……」
さほど時間も掛からずに最後の1人も飲み込まれた。
辺りを静寂が満たす。
「ふぅ、何とかなったな。さて、多分もうこの辺りには誰もいないだろ。安心していいぞ」
後ろの少女に声をかけかけるが少女は俺を信じられない物でもみるかのような目をするだけで固まっている。
「……?」
何の反応もないので少女の目の前まで行って手を振ってみると。
「な……なんだいまのはぁぁぁ!!」
「うおっ、な、何って何がだ?」
「何って!さっきの魔法だ!私はあんな魔法知らないぞ!?」
「ああ、あれね。んー、魔法、なのか?どっちかと言うと俺の固有スキルみたいな?」
「な、めちゃくちゃな……」
そう言って放心していた少女だが、しばらくすると俺に向き直る。
「まあ、あれだ……一応、助けられたしな。その、あ、ありがとう。感謝する」
何だか慣れない様子でそう言ってくる少女は妙に笑いを誘った。
「くっ……ぷっ、あはははは!」
「な!き、貴様は!人が折角感謝してやってるというのに!」
「あははは、悪い、何か似合わねーって思ってさ」
「くっ、まあいい、それよりも貴様。さっさとここを離れるぞ、あいつら仲間が何時また来るかも分からんしな」
少女は少し歩くとそこでピタリと止まる。
「……エヴァンジェリン」
「は?」
「私の名だ、エヴァンジェリン.A.K.マクダウェル」
そう名乗ると本当にさっさと歩いて行ってしまう少女、エヴァンジェリン、ちと笑いすぎたかな?
「お、おい!待ってくれよ!?」
俺はその後を追いかける。
何だろうか、心が踊る。
エヴァンジェリンとの出会いは俺の人生を劇的に変える、そんな予感がした。
というわけで第1話でした、どうだったでしょうか?楽しんでもらえれば幸いです。
分からない所などがあったら言って下さい。
ではでは!また次回!