それでは、どうぞお楽しみください!
俺がこの世界に来て、数百年が経った。
漸く、一ヶ月ほど前に日本へと辿り着いた俺とエヴァ。
が、日本に来たからと言って特に行く場所も無く。
日本は今明治の初頭、戦も大分終結した頃で、争いごとも少ない。
まあ、いつも通り、賞金稼ぎの追手は襲ってくるだろうが。
と言う訳で、暫くは日本をブラブラすることになったのだった。
……そういえば、日本に来て2つ、面白い事があった。
まず1つ目。
ここ数百年、幾度もエヴァを狙う追手を返り討ちにしていた訳だが、とうとう俺にも賞金と二つ名が付いたのだ。
いやー、実はエヴァが『闇の福音』だなんだって呼ばれてて結構羨ましかったんだよね。
賞金額は250万ドル、まあ、妥当かな?
それで、肝心の二つ名の方なんだが。
『イレペディウス・アドウェルサ』
訳すと、歩く自然災害。
……いや、確かに武器使い出すまでは嵐起こしたり吹雪起こしたりしてたけどさ。
なんか、カッコ悪くね?
その事でエヴァとチャチャゼロに一度相談してみたんだが。
エヴァには、
「そんなもの知らんわバカ者!」
と怒られ、チャチャゼロには、
「ケケッ!ダッs、カッコイイジャネーカ!」
ってバカにされた。
泣きそうだった。
いや、いい。もうその話はいい。
気を取り直して、面白かったこと2つ目。
どうやら、この世界には魔法などの非現実の他にも、俺の元いた世界との違いがあったらしい。
それが、今俺とエヴァが来ている土地、麻帆良。
場所でいうと多分埼玉とかそこら辺だろうか?
まあ、この土地も魔法に関係があるみたいなんだが。
なぜなら……
「大きい木だな……」
「いやいや、デカ過ぎでしょ、これは」
俺とエヴァが見上げるのは、木。
唯の木ではない、種類としては広葉樹なのだが、とにかくデカいのだ。
「エヴァはこの木の事、知らなかったのか?」
「ん?ああ、始めて見たぞ。こんな物」
そう言うと、再び上を見上げるエヴァ。
「まさか、木、自身が認識阻害の魔法を使っているとは」
そう、俺達が驚いていたのは、木の大きさだけではなかった。
驚くことにこの木、大地から吸い上げた魔力を使ってこの辺りの土地をスッポリ覆う結界を張っていたのだ。
なるほど、土地ごと認識阻害を掛けることで一般人に自身の存在を正当化させているらしい。
「んー……あれだ、この星が術者だとしたら、この木は魔力媒体って感じだな」
「分かるのか?」
エヴァが聞いて来る。
「なんとなくな。一応、俺も星にアクセス出来る存在だし」
「そう言えば、そうだったな」
数百年の月日を掛けて、能力の発動と制御だけは一応出来る様になった。
そもそも能力自体がかなり強力だから、制御さえ出来れば色々と応用が効くんだよな。
魔力を必要としないから発動を感知させることも無いし、俺の負担にもならない。
なんせ身体能力だけなら超人だが、魔力量は一般人並らしいからな、俺。
それはともかく、そうして暫くの間木の下でのんびりとしていた俺達な訳だったんだが。
「ノンビリシテルトコ悪ィガ、ドウヤラオ客ミテーダゼ」
俺の頭に乗っかっていたチャチャゼロが、飛び降りながらそんなことを言い出す。
「はぁ、折角無視してたのに」
確かに、後方数キロ辺りに多人数の気配を感じる。
俺達には無関係な人達だと良いなと祈っていたんだが、ダメだったらしい。
気配は真っ直ぐ、俺達に向かって来る。
そして少しすると、気配の主達が現れた。
「貴様ら!ここが誰の土地か分かっているのか!?」
いきなりそんな事を叫びながら現れたのは、どう考えても魔法関係者な男達数名。
多分、ここら辺を管理してる魔法使いの組織とかそんな所だろう。
だが幸い、まだ俺とエヴァの正体には気付いていない様だ。
「エヴァ、ここはやり過ごそう。俺が相手するから、少し後ろに隠れてて」
そう耳打ちするとチャチャゼロを持ち上げてエヴァに渡し、俺は男達の方に進み出る。
「いやーすみません!私達は流れの魔法使いでして!風の噂で聞いた東方の巨木を一目見ようと訪れただけなんですよ!」
そう言いながらエヴァを自分の後ろに隠し、自分も男達と顔を合わせない様に出来るだけ自然に木を見上げる。
「……本当にそれだけの目的なんだな?」
1番前の男がそう聞いて来る。
……もう少しか?
「勿論です!お邪魔になる様でしたら、今すぐにでも出て行きますとも!」
そう言いながら、さっさとその場を立ち去ろうとする俺とエヴァ。
だったのだが。
「あっ!」
と、男達の中の1人が声を上げた。
その男は、俺やエヴァの顔を手に持っている紙と数回見比べると、1番前にいたリーダーっぽい男にその紙を渡しながら何やら慌ただしげに囁く。
(これは、アウトだな)
そう考えると、俺は後ろのエヴァに囁く。
「……エヴァ、逃げる準備を」
「あれぐらいの人数ならお前1人でも楽勝だろう?何故逃げる必要がある?」
……確かに、昔とは違い、強くなった今なら勝てるだろう。
だけど、違う。
「いつも言ってるけど、俺は戦わなくて済むなら、戦わない」
そう言いながらエヴァの目を見つめる。
「殺すのは勿論、痛めつけるのも、出来ればしたくないんだ。だから、今までも追手を殺しはしなかっただろ?」
この世界に来て最初に会った男達は、確かに俺が自分の意識で殺した。
が、それ以降は出来るだけ、人を殺さない様に努めてきた。
人を殺す事に慣れてしまったら、俺は俺で無くなるから。
体は変わっても、心は人で在りたいから。
「……いつか、その甘さが仇になるぞ?」
ハァッと、ため息を吐くエヴァ。
「まあ、ここは奴らの領土らしいしな。戦うよりも逃げる方が正解かもしれん」
良かった、エヴァも分かってくれたらしい。
こっちの話が終わると同時に、どうやら向こうも話が終わったらしい。
さっきまでとは違い、男達から明確な殺意が向けられているのを感じる。
「状況が変わった、少々ご同行願おうか?」
リーダーの男が、そう言ってくる。
「だが……断るっ!」
『LINK』発動。
特訓の成果か、ある程度の敵意を受けるだけで能力は使える様になった。
いつも通り、途方も無く大きな何か……いや、星と繋がる感覚。
今この瞬間〝ありとあらゆる自然〟は俺の味方になった。
「今日の天気は、大嵐だっ!」
その言葉をキーワードに、空が一瞬で暗くなる。
男達が何事かと空を見上げると、そこには何時の間にか分厚い雲が渦巻いていた。
そして、ほど無くして降り出す大雨。
「まさか!魔法の発動なんて感じなかったぞ!?」
「魔力も無しに天候操作の魔法を使うなんて!」
男達がそんな驚きの声を上げるが、次の瞬間にはその声すら雨音に掻き消される。
最早、目も開けられない大豪雨に突風。
そんな中を、俺とエヴァは走り抜ける。
雨も風も、俺達を邪魔しない。
「全く、こんな事ばかりしているから歩く自然災害なんて言われるんだ」
隣を飛ぶ様に駆けるエヴァは、呆れた様にそう言う。
「うぅ、でも仕方ないだろ?これが1番逃げるのに効率いいんだから」
ええそうですとも、自分でも自覚はしていますとも!
でもまだ手加減なんて出来る様な力量じゃないんだよ!
と、そうこうしているうちに麻帆良の土地から抜けた俺とエヴァ。
「ここまで来ればもう大丈夫だろ」
LINKを解除し、麻帆良を覆っていた雲を霧散させる。
星との繋がりが切れ、体に流れ込む力も止まる。
「あ~……この虚脱感、何度味わっても慣れないぃ~」
「オウオウ、ズイブントオ疲レダナ!」
グデ~と倒れる俺の頬を、チャチャゼロがツンツン突ついてくる。
もうやめて!ショウのHPはゼロよ!
……能力の副作用なのか、一度力を使うとどうも体が重く感じるのだ。
簡単にいうと、ものっそい怠い。
「何をダラけているんだ、さっさと行くぞ」
「えぇ~……行くってぇ、どこに?」
「とりあえず南下だ、ここから離れるぞ」
南、関西か……
ん?関西、関西ねぇ……
「そうだ、京都行こう」
「……は?」
と、なんとも○Rな理由で京都を目指す事になった俺達なのであった。
to be continued……
という訳で第5話でした!
今回は、やっとの事での日本上陸と麻帆良登場ですね。
あと、主人公の能力の説明。
分かりにくかったりしたかもしれませんが、後々詳細に明かして行く予定ではありますので、どうかご容赦を。
それでは、次回も完全に更新不定期になるでしょうが、待っていてくれると嬉しいです。
補足です! 世界樹の設定についてですが、独自設定ですのであしからず!
ではでは、また次回!