野球の神様   作:茶ゴス

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第3球目

『ここは京セラドーム大阪、まもなくオープン戦第一回戦が始まります。一塁側、阪神タイガース。三塁側、キャットハンズの試合を私、堂前英男がお送り致します』

 

 

 実況の声が聞こえる中、数多くの人がこの試合を直接、あるいはテレビを通して見守っていた。

 無論、両チームのファンが見ているということは言うまでもないが、普段野球に興味のない者や、特定のチームを支持していない者までも注目している。

 

 それは当然なのかもしれない。今年、キャットハンズがドラフト5位で獲得した若干18歳、葉羽二浪がスタメンではないものの、一軍として控えに登録されているからだ。

 リーグ戦と違い、オープン戦はチームにとって余裕がある状況。それ故葉羽二浪が出場する可能性があるのだ。他にパッとした選手のいない今年のドラフト選手で1番注目されているのは間違いなく葉羽である。しかし、その注目も選手としての期待ではなく、見世物を見ているようなものなのだが……

 

 

「ふぅ、緊張するなぁ」

 

 

 ベンチ内で深く息を吐く葉羽はどの口が言うのだと言われんばかりにチームメイトに見られるが特に気にしていない。

 キャットハンズに今年入った新人達の中で一軍の控えに入ったのはドラフト1位の佐藤と葉羽だけだった。他球団やファンたちから見てみれば疑問の残る状態。佐藤はまだわかるが、キャンプ中、練習している姿を見せなかった葉羽が控えに入ることはおかしいと思っていた……

 

 しかし、葉羽を変な目で見るものはいるものの、この場にいることにキャットハンズの選手達からは誰も文句は出ない。仕方のない事だと言わんばかりに接している姿を見ればファンたちは一体何を思うのだろか……

 

 

『先攻はキャットハンズ。本日のピッチャーは宇都宮。対するタイガースは阿畑が先発として登板します』

 

 

 阿畑やすし、猪狩守世代の一つ上の若手投手。その右腕から放たれるナックルボール。いや、あまりの変化量にアバタボールとも呼ばれるその変化球を武器に阪神の先発投手に定着している選手だ。

 猪狩守がいなければ間違いなく日本球界を代表する若手投手として持ち上げられただろう。

 

 対するキャットハンズの宇都宮投手は丁寧なコントロールが持ち味の投手だ。抑える所をきっちりと抑えるため、失点数が少ない26歳。因みに独身である。

 

 

「がんばれー!」

 

 

 若干気の抜けそうな声援を送る葉羽を横目に監督は試合の行く末を見守る。

 キャットハンズは、投手陣などの守備は他球団とも渡り合える程だが、如何せん勝つための打撃力がない。

 

 4回が終わって0-1。点差は僅かだと思えるが、キャットハンズの選手が誰も2塁を踏めていないと言うことを聞けば何とか持ってるといった方が正しいと解るだろう。

 5回の表、クリーンナップからの打順だが、3番4番と立て続けにアバタボールを打ち損じ、簡単にツーアウトになってしまう。

 しかし、5番の六道がボール球を見送り、フォアボールで出塁した。流石にここで動くべきと判断した監督は審判へとタイムをコールし、代打を送り出す。

 

 

 

 

 

『6番バッター、木下に変わりまして、背番号32、葉羽』

 

 

 ついにこの時が来たと言わんばかりに観戦者は湧く。ネットに実況としてコメントを残す者も、この場面での代打に湧いていた。

 チャンスであればもっと反応は大きかったと思われるが、どちらにせよ、このプロ野球の試合で無様を晒す可能性の高い葉羽を面白おかしく叩きたいのだろう。

 

 

『さあ、ツーアウト一塁という場面で初出場の葉羽。どのようなバッティングを見せてくれるのか』

 

 

 葉羽はヘルメットを被り、トコトコとバッターボックス近くまで来ると、二度三度バットを振るい、審判へと頭を下げた。

 その背丈の小ささに誰もが奇特な者を見るような目を送るが、本人はどこ吹く風と言わんばかりに打席に立つ。

 

 

「……(なんや?妙な存在感を持ってるやつやな)」

 

 

 相対する投手の阿畑は葉羽が放つ何かに違和感を感じつつも、打ち取るまでやと考えなおし、捕手のサインに首を縦に振って了承する。

 要求した球はアバタボール。阿畑が自信を持って投げられるその球を打てるはずがない。また、今現在一塁にいる六道は足が速くないため、盗塁の可能性はないだろう。ツーアウトなので犠打の心配もない。

 

 真っ向から勝負して叩き伏せるのがプロの先輩からの贈り物やと呟き、阿畑はボールを投げた。

 

 

 

 そして、凄まじい快音が響き渡った。

 

 

「は?」

 

『打ったぁぁぁ!!!大きい、大きいぞぉ!!』

 

 

 低めに落ちるナックルを完璧に捉えた葉羽はバットを地面においてゆっくりと走り出す。

 まるで、見なくとも結果はわかっているかのような足取りで一塁へとその歩を進めた。

 

 

「入った!入った!ホームラァァン!!ツーランホームラァァン!!初球のアバタボールを完璧に捉えたぁぁ!」

 

 

 同点に追いつくどころか、逆転となった一振り。六道もゆっくりとベースを回っていく。その顔には別段驚いた様子もない事に誰かが気付けば妙だと思うだろう。

 誰が葉羽がホームランを打つと予想できるだろうか。小さい身体で公式の野球経験は無い若手が、タイガースの一軍相手からホームランを打つなど……

 

 テレビで見ていた者もお祭り騒ぎになっている。凄まじい手のひら返しではあるが、彼らは面白ければ何でも良いのだ。代打ホームラン。プロ入り初めての打席、初球でホームランを打つ事は過去にもあった。厳密に言えばオープン戦なので、記録にも残らないし、初打席とはいえないが……それでも葉羽という選手がホームランを打つということに驚かない者はいない。

 

 ネットの掲示板にも、【キャットハンズ、まさかの神スカウト!?】と言ったように騒ぎ立てられていた。

 

 

 だが、そんな状況よりも、1番信じられなかったのは阿畑本人だろう。スッポ抜けたわけでもない、甘い所に入ったわけでもない。間違いなく打ち取れる場所に投げたボールをホームランにされた。とてもじゃないが信じられないことだ。

 

 心配して駆け寄ってくる捕手に、心配いらんと告げると阿畑は息を吐いて集中する。打たれたものは仕方ない。これ以上点を入れられないようにと気合を入れなおし、次のバッターを三振に仕留めた。

 

 

 あばたは5回の打席で代打で交代し、5回2失点の成績。対するキャットハンズも、早川あおいが登板し、きっちりと阪神打線を抑えそれ以上失点を許さなかった。

 

 

 そして、8回の表。ワンアウトランナー無しで、葉羽がソロホームランを放ち、京セラドームは凄まじい怒号に包まれた。




葉羽二浪

弾道       4
パワー   100(S)
ミート   100(S)
走力    100(S)
肩力    100(S)
守備    100(S)
エラー回避 100(S)


本日の成績
1.00 2本 3打点
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