「はぁ……嫌だな……」
俺は久々の制服に腕を通しながらため息を着く。いや制服は学生の義務だから仕方ないんだけどさ、でもさ……
「俺がスカートなんて……スッゲェ違和感しかねぇ……」
そう、読者のやつはタグで分かってるとは思うが、俺は生物学上で言えば女……♀だ。…………悲しいことにこんなに色気がないのにな。
そりゃ一時期は胸がそれなりに育てば良いな~とか考えて牛乳飲んだりしたけど、成果は実らず絶壁、寧ろ一週間ぐらいトイレのお世話になることになった。なんでこうなる。
そのうえ髪は一応ケアはしてるけど基本的にショートカットでボーイッシュ……なわけでもなくただ朝にセットするのが面倒なだけだから軽く梳かしてるぐらい。
口調に関しては…………いや、これは話しても面白くないからやめとこう。寧ろ嫌われるに決まってる。
そんなこんなを考えてるうちにトーストが焼き上がる音が聞こえ、俺はさっさとパターとブルーベリージャムを塗って食べ進める。朝のニュースは、未だにどこかで月の事件が取り上げられていて、正直見飽きた聞き飽きたという実感しかなかった。
「…………仮病で学校休もうかな――」
ボソリとそんなことを呟いたその時だった。突然家のインターホンが鳴り響く。
いや、まさか、そんなこと……誰にも聞こえないくらいに小さな声で言ったんだぞ。それがどうして――
「…………朝から何のようですか?烏間さん?」
「なに、君の性格上仮病を使う可能性がかなり高いからな。こうして迎えに来たわけだ」
チェーンロックの向こう側でドヤ顔を決めてる公務員に私は肩を落としてしまった。
「すぐに出ますよ。あ、烏間さんもトースト食べます?待ってる間暇でしょ?」
「む、では遠慮なく頂こう」
私は焼いておいたトーストに軽くバターを塗ったそれを烏間先生に渡して自室に向かう。そして教科書、体操着、さらに支給された武器を鞄に仕込んだ事を確認して再び自室から出る。
「お待たせしましたっす」
「あぁ。…………ところで何故女子の制服を着てるんだ?」
イラッブチッ!!「女が女子の制服を着ちゃいけねぇのかゴラァァァァァァァァァ!!」
~暫くお待ちください~
「ワリィ……取り乱した……」
「いや、今回は俺が全面的に悪かった……すまない」
烏間さんが運転する車の中、俺はバツが悪くそう言うと、流石に自分が悪いことを自覚してる公務員が謝る。
「しかし、普段の格好がラフすぎるのではないのか?口調と合わさってホントに男だと勘違いした」
「ちゃんと人の経歴は確認してくださいよ。一応じゃなくても公務員なんですから」
「返す言葉もない」
堅物はそういうが、まぁこのやり取りはいい加減慣れちまったから別にいいや。
「…………それで、そのタコっていうのは、
「!!」
私の言葉に堅物は急ブレーキを掛ける。お陰で私は衝撃でシートベルトの食い込む。
「…………おい、どうしてそう思う?」
「(急ブレーキしておいて謝りもなしか)……まずそいつは地球や月を破壊できる超生物……そんなやつが人間の言葉を概して、尚且つ教師なんてしてるってことは少なくても、もとは普通の人間としての姿をしてたに違いない」
「…………」
「だが人間がああいう風に突然変異するとは考えられない。そうなれば、考えられるのは唯一人体実験だけ。そしてそれをできる実験は」
「それ以上は喋らない方がいい」
烏間さんは横やりを入れる。その目は完全に殺る感じのそれだ。
「…………まぁいいや。別に相手がどんな化け物だろうが関係ないし……それに……
「…………なに?」
私の呟きに目だけではなく眉まで細める。
「だから四本、うまく行けばそれだけ今日切り裂けるよ…………あのタコの
「(…………なんなんだ、この自信は?)」
烏間さんは訳がわからないように見てる。そして私の目には、狂気に歪んでいた。
「んで?なんで山の入り口に早速で張ってるわけ?この宇宙人のなり損ない」
「ニュヤ!!初対面でいきなりなり損ないとは何ですか!!それに私は正真正銘の地球育ちですよ!!」
車から降りて旧校舎のある山に登ろうとした途端に現れた、この黄色いタコに俺はため息を付きたくなった。
「いやさ、アンタ一応世界指名手配犯なんだろ?そんなやつが、只でさえ目立つ姿なのに降りてきたらダメだろ。俺がスナイパーなら真っ先に狙うぞ?」
「その点なら大丈夫です。寧ろこんなに油断してる場面ですら決められない暗殺者に殺られると思いますか?」
「うん、そのボーダーラインがこっちの事を舐め腐ってるっていうのはよくわかったよ」
まぁ、少しは好意を持てそうな先生のようで、俺は先生に手を伸ばす。
「まぁ約一年間、よろしく頼むよ……殺せんせー」
「ヌルフフフ……こちらこそよろしくお願いします浅さん」
先生の触手の感触は、まるで人の手のそれとほぼ同じで、違和感は少しあったけどまぁ悪くはなかった。
「………ところで浅さん、女の子なのに一人称が『俺』というのは珍しいですね……しかも喋り方が男の子の口調と同じ、何か訳アリでしょうか?」
「へぇ、まぁ当然というか、やっぱりそれを聞くよね……」
俺は頭を軽く掻きながら苦笑する。
「別に訳があるわけじゃぁねぇんだけどな。まぁ知りたかったら渚やカルマ、磯貝や中村らへんは理由を知ってると思うぜ」
ただ、と俺は続ける。
「もし万が一、俺の一人称が『私』になったら絶対にクラスメイトから一時的に隔離しろ。これは俺からの忠告だ」
「?それはいったい?」
「なったら分かるよ、絶対…………殺せんせー、アンタと烏間ぐらいにしかとめられないからさ」
俺の言葉に意味が分からないような表情を浮かべたが、先生は納得して頷いた。
「ではとりあえず移動しましょう。なに、今から行けば一時間目の体育には間に合うはずですから」
「ふーん、あ、そうだ殺せんせー、今日の放課後に1時間だけで良いから殺させてよ。サシで」
「ヌルフフフ、血気盛んで宜しいですね~まぁ最も殺せると良いですがね~」
先生はそう言うと触手を俺の体に回してきて……ってこのパターンは、
「それでは移動しましょう!!」
「いやマッハ20で移動なんかされたら俺の体が空中分解しそうなんですけど?」
「いえいえ、そうはなりませんよ」
「ワタシ、オウチカエリタイ」
「授業放棄は感心できませんので、それでは」ビュン!!
「イヤァァァァァァァ!!」
俺、もう引きこもりに戻りたい。