視点 渚
彼女の噂を初めて聞いたのは、中学に上がって初めての中間テストの辺りだった。
事の発端はカルマくんが珍しくイライラしながらもニヤニヤして学内掲示板を眺めてるのが驚いたからだ。聞いてみると、学年一位が、浅野君じゃなくて別の生徒だったということだった。
僕もそれを聞いたときは驚いた。何故ならその生徒の点数はオール満点……つまり500点だったのだ。浅野君もほぼ満点の499点(どうやら証明の問題でのケアレスミスで部分点になったらしい)だったらしいが、それでもオール満点を採った彼女については色々と噂が立つことになった。
曰く『採点する教師を買収した』、曰く『カンニングをした』、曰く『本物の天才少女』、その他にも色々と噂されたが、初めて彼女を見た瞬間にその全てがぶち壊された。
見た目はかなりボーイッシュな髪型につり目で、教室に何故か学校にジャ○プを持ち込んでいたのだ。
それだけならまぁ普通の女の子なんだろうけど、彼女の場合特徴的なのは言動だった。
まず僕ら以上に男口調で話す。しかも気付かない内に論破してたり、ジャ○プ持ってきてる事を注意しに来た先生の論破した処か心をへし折り、先生を二週間ぐらいノイローゼにさせた挙げ句自主退職させたのだ。
しかもポーカーやチェス、将棋など、対人系ゲームが反則的に強い。一度僕とカルマくんでやってみたけど、絶妙なイカサマで3カードやフルハウスを揃えるカルマくんを見破った上で4カードを揃えるなんていう圧倒的な技術を持ってる。チェスに関しては一度、理事長と直接対決して引き分けにしたという程だ(理由としてはどちらもキング以外全部捕られてしまったからという判定らしい)。
けど、一番彼女の驚きは運動能力だった。
噂に聞いた話だが、高校生の不良30人をたった5分で締め上げた、鉄パイプや釘バットの直撃を受けてもケロッとしてる、柔道部や空手部の生徒に対して圧倒するなど、様々なものだった。
けど、彼女にも苦手なものがあった。それは――
「…………渚、なに呆けてるの?」
と、途端にクラスメイトの言葉で現実に戻る。
「ううん、何でもないよ」
「ホントかな~、なんか誰かを思い出してるみたいだったよ?」
茅野は首を傾げながら聞いてくる。まぁ実際そうだったから何も言えないけど。
「いや、ほら、うちのクラスって席が余計に一つあるでしょ」
「あー、そういえばそうだよね。でも、なんで?」
「うちのクラスにさ、引きこもってる女の子が居てさ……その子が何してるのかなって」
へぇ~、と茅野は言うが同時に疑問に思ったのか、再び首を傾げる。
「でもその人って暗殺について知ってるのかな?私なら知ってたらどんなことがあっても学校に来るけど」
「あはは……まぁ彼女は色々と凄いからね……」
「ふーん?」
茅野はまだ聞きたそうだったが、チャイムが鳴ってしまった為に席に戻った。と、途端に殺せんせーが教卓の前に現れた。
「ヌルフフフ!!おはようございます、みなさん!!」
「あれ?殺せんせーなんか機嫌が良いみたいだけど?」
先生の顔がにやけてるのを見て、杉野が聞いてみる。
「ええ杉野くん。何しろ今日は新しい
「へぇ~それって転校生?」
磯貝君が聞くと、殺せんせーの顔に×が浮かぶ。
「いえ、転校生じゃなくて復学する生徒です」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
殺せんせーの言葉に僕、カルマくん、磯貝くん、杉野、中村さん、寺坂くん、菅谷くん、そして
「……」
「…………」
「………………」
「ニュヤ?なんで渚くんやカルマくん、寺坂君達がどんよりお通夜ムードなんでしょうか?というか他の人たちも?」
「え、え、何この雰囲気?」
流石にこの雰囲気に殺せんせーと茅野が慌てながら聞いてくる。
「あー、いや、別に悪気があってこんな風になってる訳じゃないんだよ……」
「ただよ……アイツが戻ってくるとなったらよ、最悪犠牲者が出そうだし……特にカルマと
菅谷くんと寺坂くんのその言葉に、出された二人と茅野以外が一斉に頷く。
「ニュヤ……とりあえず彼女に入って貰いますか」
殺せんせーがそういうと前のドアが開く。そこには、僕らの想像通りの少女がそこにいた。
「あー、今日から復学?する