――なんで……みたいなのが
――気持ち悪いんだよ、……の癖に
――……、ごめん
――――死んでよ、浅
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「……くそったれ、またあの夢か」
俺は木の上で悪態をつく。丁度良く横になれるぐらいの枝を持った大きな樹を見つけて昼寝したは良いものの、いつものあの夢のせいで10分と眠れなかった。
「おやおや、こんなところで昼寝とは感心しませんね浅さん」
「ん~、殺せんせーか……」
と、いつの間にか隣の枝に腰を掛けているターゲットが声をかけてきた。その触手の一つにはかなり大きめの紙袋が絡まってる。
「女子の寝顔を除くなんか、生物失格だぞ」
「いえいえ、浅さんが魘されて起きたところぐらいしか見てませんので」
「よりにもよって、人の見られたくない所を……」
ただでさえムカつく笑顔がさらにムカついてきた。
「それで、こんなところまで来て何のようだ?てかその袋はなんだ?」
「ロッ○リアの海○バ○ガーです。どうやら昼食を取ってないようなので買ってきたんです」
「あー、悪い、俺海老アレルギーだから良いよ」
「ニュヤ!!そうだったんですか!!」
「そ、ついでに鶏肉と鶏卵も。お蔭で基本的にチョコを除いて、プリンとか洋菓子は食えないし、マヨネーズなんかもダメだからハンバーガーもあまり食えないんだよ」
この学校に入ったのも、給食制じゃなくて弁当制だからということという面も無いわけじゃない。
「……ちなみにお聞きしますが、牛肉や他の魚介は?」
「特にない、けど基本的に動かなければ鶏卵不使用の自家製食パン一枚で一日保つし」
「いけませんよ。中学生は成長期なんですから、栄養を採らなければ」
そうは言うが実際保ってしまうんだから仕方ない。
「別に良いよ……株に手を出す前は三日に一食なんてこともざらだったし」
「株ですか……ご両親は?」
「……カルマ達から聞いてんだろ?消えちまったよ、一昨年にな」
俺がそう言うと殺せんせーは少しだけ項垂れる。
「……失礼なことをお聞きしますが、ご兄弟などは?」
「…………先生、先生が生徒のプライベートに足を突っ込んだらどうなるか、それぐらいは分かるよね?」
若干の殺気を込めてそう言うが、奴は余裕綽々といった表情でその場にいる。
「当然、必要以上に干渉するつもりはありませんよ。しかし、
そう言い残し、奴は枝から降りてさっさと教室のある方に向かっていった。が、俺にはそれが一番気にくわない。
「…………俺の何を知ってるっつうんだよ」
漸く放課後になった俺は、きょうしつでとりあえず支給されたナイフと拳銃を確認していた。ナイフの方はそれなりに軽く、ジャグリングの要領で上に飛ばしてみると、案外真っ直ぐに上がる。
(ナイフは良し……ただ拳銃は微妙かな……)
授業中に試しに奴へ射つように見せかけて、時間割表の枠の一つに射ってみたが、五発射って命中は2、素人なら良い方なのかもしれないが、あの音速20の目標に当てるのは至難の技だろう。
しかもフィールドはグラウンド、遮蔽物も何もない場所で真っ正面から戦うにはかなり不利だろう。
「…………ま、四本は確実に落とすけどね」
「……浅、それは本気で言ってるのか?」
と、俺の独り言に浅野の奴が疑問系で問いかけてきた。
「愚問だね浅野、俺が落とすって言ったら確実に落とす。正攻法じゃなくて邪法でもね、お前もそれなりに知ってるだろ?」
「……そうだな。あの
「その通り、だから目標数は確実に切り落とす。だからさ浅野……」
俺はそこで、こいつにとある
「ヌルフフフ、浅さん、だいぶ遅れて登場ですね~」
グラウンドに着いた俺を奴は何時ものような余裕綽々な顔で見ていた。周りにはカルマや渚といったクラスメイト達も観戦してる。あの寺坂でさえだ。
「まぁ俺はあんたに比べたら弱者だからね。色々備えさせてもらわなきゃ勝てないわけよ」
「ヌルフフフ……なるほど、今の口ぶりからして君は知性派型の人間でしたか……」
「うん、そうだよ。体術なら浅野に負けるし、不意打ちならカルマにも劣る。けどね」
――それを補って余りある思考で、どちらも粉砕できる。
「だからさ……本気で行くよ?」
「ヌルフフフ、良いでしょう!!」
互いにフィールドで相対し、俺はナイフを両手に、奴は自慢の触手を構える。そして烏間先生がそれぞれの中央に立つ。
「ルールはノックダウン&フィールドオーバー制だ。どちらかがグラウンドで倒れるか、あるいは此方で引いている白線から出たら試合終了。また、ターゲットを殺しても試合終了だ。ターゲットは空中に飛ぶのは禁止……良いな?」
「OK、烏間先生……じゃあ……殺ろうか」
俺がそういうと、烏間先生はフィールドから出る。
「それでは……始め!!」
合図の瞬間に動いた俺は、左手のナイフを奴に向かって投げ飛ばした。ナイフ術の一つであり応用の一つ、投げナイフだ。狙うは、タコの足下の触手。
「ニュヤ!!」
驚いてるものの、ターゲットは高速のバックステップで避けるが、流石に不意打ちなために体勢がすこし崩れている。
「シッ!!」
そこで俺は瞬時に左手で拳銃を掴んで乱射させる。狙いは特につけない。体勢が崩れていれば下手に狙うより当たる確率が上がるからだ。結果、ターゲットの左腕の触手一本が撃ち落とされた。
「まずは一本!!」
「ニュヤ……まさかたった二手で触手を一本奪われるとは……」
ターゲットは冷静に分析してるが、そんなのを待ってやるほどお人好しではない。俺は拳銃の中に入っていたマガジンを捨てて、予備で持っておいたマガジンを装填する。
「(モデルガンを組み立てた経験が役に立つなんてね……)ウラァァァ!!」
今度は三発、足下に狙いを定めて打ち込む。しかし同じ手は食わないとタコは高速の横移動で俺の後ろへと回り込もうとする、が、それは完全に悪手だ。
「ニュヤ!!」
完全に回り込もうとした瞬間、タコは勢いよくその場から離れた。当然だ、
「二本目かな?先生?」
「ニュヤ……まさか
そう、仕組みは簡単、対触手用の弾と言えど、結局はBB弾サイズだ。そのためマガジン内にはかなりの数の弾が入る。
ならば半分くらい射てば、動揺して体勢を崩した状況なら一本は破壊できる。そして残り半分は地面に落とせば相手が勝手に移動しながら当たってくれるというものだ。
「ニュヤ……最初にここまで殺られるとは……」
「先生から生徒にはあんまり攻撃を仕掛けてこないと思ってね。だったら一瞬でも多くの勝ち筋を見極めた方が良いでしょ?」
「当然です。先生、暴力教師とは言われたくありませんので」
そういうターゲットの言葉に少しだけ不快感を覚える。
「別に暴力振ってもいいんじゃね?そら積極的に使うのはまだしも、注意するために使うなら問題なしっしょ?」
「勿論必要な時に力は振るいますよ?けど、今はまだその時じゃない」
「なら……手を出させてやるよ!!」
そういって俺は再びナイフを、今度は二本同時に投げる。が、今度はほとんど移動せず、体を捻るだけで避けられた。
「ヌルフフフ、さすがに同じ手は通じませんよ」
「あれ?俺がいつ同じ攻撃をした……よ!!」
俺が両手を引くと、なんと落ちる直前だったナイフが、行きを吹き替えしたように先生の背後から触手を狙ってきた。
「ニュヤ!?そんなバカな!?」
ターゲットは今日何度目かの驚きだが、殺せんせーは間一髪、バク宙することでそれを回避して後ろへ下がる。
「あらら?今ので二本落とせると思ったんだけどな?もしかして見えてた?」
「ヌルフフフ……さすがに今のは少し驚きましたよ。対せんせーナイフの持ち手に細いのワイヤーを取り付けて映画やゲームのアンカーブレードのようなそれを再現するとは」
「正解。ちなみに使ってるのはリールで使われる軽いうえに丈夫なタングステンワイヤーだけど、こういう扱いにはそれなりに有効なんだよね」
結構高いからそこまで長さのは買ってないけど。
「ですが肝心の速度はそこまでありませんね~あれが切り札ですか?」
「そ、あれが通じれば四本はいけると思ったんだけどね~流石に無理か~」
「ヌルフフフ、当然です。それに殺すというわりには小手先の技ばかり、君は本気で殺すつもりありますか?」
「ん?《全然無いよ》。ただ拒否できない頼みだから受けてるだけで、そんな面倒なこと率先してやるつもりないじゃん」
俺のポリシーは相手を煽って煽って煽り尽くして……その上で絶望の縁に叩き落とすこと。
絡んできた不良には気にしてるだろう言葉を言いまくって暴力を振ってきたところを同士討ちさせた。
勉強ができると言ってきた自信過剰には、敢えて勉強を教えて貰っておいて、悠然と追い抜いて貶してやった。
サッカーやバスケなどのスポーツではわざと相手の反則に見えるようなプレイをして、審判にわざと抗議させて退場させてやった。
そうやって相手が絶望に落ちる顔を見ること、それが私の楽しみだ。
「それに先生が……マッハ100だっけ?そんなバカなスピード出せる
だからこそ、E組の皆の絶望した顔が希望に変わるのが許せない。絶望しやつはとことん這い上がれない程に絶望してもらわないとね。
でないと、
「だから俺は真面目にやるつもりはないし、積極的に行動するのもこれくらいだよ。それが何か?(ここまで言えば熱血教師のあんたみたいな先生は、熱くなって単調な行動しかしなくなる)」
大抵の罵詈雑言……それも人の信念たる部分を直接的に言ってやれば、大抵は怒りを覚える。それが感情を持つ人間……いや、生物の当たり前だ。現にクラスメイトの何名かはぶちギレ寸前の顔になってるし
だが、
「……成る程、君はカルマ君と似たようなタイプの人間ですか」
このタコはその範疇外だったわけだが。
「小手先だけならカルマの倍の手数は持ってるけどね。ま、理由としてはもうひとつあるわけなんだが」
「ヌルフフフ。それは、その場所を動いてない事にも関係がありますね。体力不足ですか」
「そ、こんななりでも俺は女、しかも引きこもりだ。体力なんてあるわけねぇし、走ったりしたら多分100メートルでさえぶっ倒れるね」
引きこもる前なら800メートルくらい余裕でクリアできる自信はあったし、何より喧嘩もそれなりにこなしてたしね。カツアゲ目的で。
「ま、そういうわけだから……ッ!!」
言葉を続けようとした瞬間、とてつもない殺気を感じて思わず後ろへ下がる。そしてタコの頭は
「……へぇ、本気か」
これでもかと黒くなってた。完全にぶちギレてた。俺としてはかなりピンチだが
「烏間先生、少しだけ本気で相手をしてもよろしいですか?」
「……今回だけだタコ教師」
タコの本気……ヤバイな。雰囲気だけでも負けるのは確定だろ。だけど、少しばかり遅かったなタコ教師。
「グホッ!!」
「「な!!」」
二人は一様に驚く、当然だ。いきなりこっちが吐血したのだからな。
「くそったれ、限界か」
それでも思ったより遅かったとは思うけどな。まぁ頭痛やらなんやらが酷くて立つのも限界だが
「な、ななな!!なんということですか!?」
タコはタコでいきなりの事で殺気どころか、平常心まで散らしてアワアワしてる。表情やらなんやら変わりすぎだろ。
「……タコ、今すぐ私の鞄と水を持ってきてくれ」
「ニュヤ!!今すぐ…持ってきました」
「速すぎだろ、ホント」
一瞬で持ってきたタコから鞄を受け取り、中からカプセル薬を二錠出して、持ってこられた水と共にそれを飲み込む。
「……い、今のは?」
「色々と事情があんだよ。ストレス性吐血症っつってな、一定以上のストレスで血吐いちまう」
この体質のおかげで休学認められてたぐらいだからな。E組に落とされた理由の一つでもあるけど。
「アレルギーもですが体質まで……いったいどんな生活を……」
「ん?普通に両親が蒸発するまで、家では毎日が暴力だったけど?」
あっけらかんに言う事に二人とも引いてるが、いつもの事だったしな。
「拳蹴りは当たり前、包丁やトンカチ……あとは木製バットなときもあったかな」
どれも急所は外してわざと死なないようにやってたけど。
面白かったのはどうやったのか釘の先が中から出てる鉄球入りソフトボールなんてものまであったかな。どうやって作ったんだか。
そんなことを思いながらモンスターを見ると、顔面蒼白もかくやというほど青白くなってる。どうしたいったい?
「そ、それは世間一般的には拷問というのでは……」
「別に蒸発してくれたからどうでも良いんだけどね。まぁこの体質もそれに適応した結果みたいなもんだし」
まぁ酷いときは風を引いたら一日血を吐いてたなんてこともあったしね。いやほんとに。
「ま、なんか微妙なことになっちゃったけどさ。これから適当によろしくよ、タコの殺せんせー」
「ヌルフフフ……まぁ良いでしょう。生徒の問題を解決するのも先生の役目ですから」
「ハハッ、そうかよ」
さて、明日はこれの安静と言う名目の仮病で休もうかね……
「あ、それと仮病で休むのは無しですよ?」
「うーん、先生が隠し持ってる私の胸のサイズのメモを渡して忘れてくれるなら良いけど」
「…………ナ、ナンノコトデスカネ~」フゥ~
「口笛更けてねぇよ?」