4月、入学式シーズンで出会いの季節であり、此処IS学園も例外ではなく新入生を迎え入れている。だが、今年の新入生の中には本来ならありえない人物たちがいた。
「(凄いな、これは。物珍しいってだけでここまで緊張感が生まれるのか)」
「(……ここまで視線が鬱陶しく感じることもあるんだな)」
IS学園1年1組の教室、一番後ろの端の方にIS学園の制服を着たユウキが仏頂面で座っており、ユウキはザルバと念話で会話を続ける。
「(しかし、ユウキ。此処はお前にとっては色々とキツいんじゃないか?)」
「(……まあな。外国籍の人間もいるから仕方がないが……臭いな。濃い香水の匂いや体臭、さらには血の匂いが混ざって臭すぎる)」
「(嗅覚が鋭敏なのも考え物だな)」
「(……まあ、ホラーを狩る時には便利だ。そこまで不便というわけでもないが)」
「(そうか……おっと、話してる間に色々と進んでたようだぜ)」
「げぇっ、関羽!?」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
ザルバの言葉にユウキは意識を前の方に向けると、『一番最初にISを動かした男』としてIS学園に強制入学させられた数少ない男子生徒、
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けて済まなかったな」
「い、いえっ。副担任ですから、これくらいはしないと……」
一夏を殴った時の表情とは変わり、優しそうな表情で言う千冬にこのクラスの副担任である緑髪の眼鏡を掛けた童顔の女性、
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。できない者にはできるまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
「キャーーー! 千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉さまのためなら死ねます!」
独裁者のようなセリフを吐いた千冬に女子生徒達からの黄色い声が響き、ユウキは不快――特に最後の女子生徒発言を聞き――に感じたのか少しだけ眉間に皺を寄せる。
「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者が集中させているのか?」
そんな千冬の発言に黄色い声はさらに上がり、ユウキの眉間の皺がさらによる。
「で? 挨拶も満足にできんのか、お前は」
「いや、千冬姉、俺は――」
パアンッ!と音を響かせ、一夏の頭を出席簿で殴り、一夏は痛みによって頭を押さえる。
「(あの嬢ちゃん。昔はあんな暴君みたいな性格じゃなかったのにな、人は変わるもんだなぁ)」
「(フン、ああいう人間が周りに陰我を生み、ホラーを出現させる……もう少し、周囲のことを考えて発言してほしいものだな)」
「(それには同意だ)」
「ふむ、とりあえず時間がな……ユウキ、自己紹介をしろ」
ユウキとザルバが念話で会話しているうちに話が進んでいたらしく、ユウキは席を立ち千冬に言われたように自己紹介を始める。
「……ユウキだ」
「お前もまともな自己紹介ができんのか……」
「失礼だが、織斑教諭。自己紹介と言うのは文字通り、自己を紹介することだ。なら、名前だけで十分のはずだが?」
「お前……まあ、いい。さあ、
名前だけ言い終えると、ユウキは席に座る。そんなユウキの態度に周りの女子たちはざわつき悪態を吐いたりし、周囲の様子に千冬は溜息を吐くが、気を取り直すかのように独裁者発言をした。
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一時間目の授業が終わり、休み時間になった。
休み時間になると鋭い目つきをしたポニーテールの女子生徒、
「(さっきから視線が鬱陶しいな……話があるなら自分から話しかけてこればいい)」
「(そう言うな、ユウキ。俺様が長い間生きてきた中で分かったことがある。人間の女というのは結構面倒くさいってことだ……それよりも気づいてるか?)」
「(ああ、視線の大半が嫌悪のそれに近いな……さっきの対応のせいか?)」
「(それもあるだろうが。お前が男だということもあるだろな)」
「(フン、そうか……)」
「ねえねえ~、少しいい~」
ザルバとの念話を終え、少しでも苛立ちを抑えるために、魔戒騎士としてのイメージトレーニングをしようとしたユウキの前に、裾がダボダボでほんわかした雰囲気を醸し出している女子生徒が話しかけてきた。
「……なんだ?」
話しかけられたのと女子生徒の雰囲気にユウキは意識をイメージトレーニングから女子生徒の方へ向ける。
「私は、
「ゆうゆ?」
「うん、自己紹介でユウキって言っていたから、ゆうゆだよ~」
「(オイオイ、こいつ初対面のユウキに愛称を付けてるぜ……よかったな、ゆうゆ?)」
「(黙っていろ、ザルバ!)……それで、何の用だ?」
ふざけた感じで本音の付けた愛称を言うザルバを黙らせ、ユウキは眉間に皺を寄せながら言う。
「うんとね、お話がしたくて来たんだ~」
「そうか……なら、目的は達成された……俺に近づくな」
「え~、そんなこと言わずにもっとお話ししようよ~」
拒絶の態度を見せるユウキを気にしていないのか、ぐいぐいと独特な雰囲気を醸し出しながら来る本音に、ユウキがさらに眉間に皺を寄せていると……。
キーンコーンカーンコーンと、チャイムが鳴り、女子生徒たちが席に着き始める。
「時間切れか~、また後で話そうね~、ゆうゆ~」
ブンブンと腕を振りながら自分の席に戻って行く本音の姿を見ながら、ユウキは溜息を吐くのだった。
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時間が経ち、三時間目が始まった。
二時間目に、一夏が授業を全く理解できていないことが分かったり、放課中に金髪の英国人女子生徒、セシリア・オルコットに絡まれたり、ユウキが本音に絡まれたりしていたりするが……まあ、別に大丈夫だろう。
「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」
教壇に立つのは千冬だ。余程大切な内容なのだろう、真耶もノートを取ってる。
「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦にでる代表を決めないといけないな。」
千冬がふと思い出したように言うと、一夏は疑問を表情に出し、ユウキは仏頂面のまま千冬の話を聞く。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
千冬の話が終わった後、ざわついていた女子達が一斉に手を上げると……。
「はいっ。織斑君を推薦します!」
「私もそれに賛成!」
「私はユウキ君を!」
興味本位でなのか二人の女子生徒が代表者の候補者に一夏とユウキを推薦し、他の女子生徒達も賛同し始め教室が少し騒がしくなる。
「では候補者は織斑一夏、ユウキ……他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」
「お、俺!?」
候補者に挙げられた一夏は、驚きの声を発しながら席から立ち上がり、ユウキは一夏のように席から立ち上がりはしなかったが、眉間に皺を寄せ始める。
「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか? いないなら織斑とユウキの二人から選ぶぞ」
「ちょっ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな――」
「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものには拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」
「い、いやでも――」
一夏の意思は千冬に一刀両断される。千冬の意見に納得のいかない一夏がさらに反論しようとすると、甲高い声が一夏の言葉を遮った。
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
バンッと机を叩き、席から立ち上がったのはセシリア・オルコットだ。
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ! そのような屈辱を一年間通して味わえとおっしゃるのですか?」
男子二人が推薦されたのがよっぽど気に食わなかったのか、セシリアは周りの視線も気にせずに暴言を吐き続けていく。
「実力から行けば私がクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由だけで極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!いいですか?! クラス――」
「ハァ、織斑教諭。俺は候補辞退を希望し、セシリア・オルコットを推薦します」
暴言を吐き続けて興奮してきたのか、さらに言葉を荒げようとするセシリアの様子にユウキは一度溜息を吐き、セシリアの言葉を遮りながら千冬に言うと、千冬はニヒルな表情でユウキの方を見る。
「ほう、お前は先ほどの織斑との会話を聞いていなかったのか? それと、オルコット推薦理由は何だ?」
「話は聞いていました。辞退の理由としては、俺がクラス代表になったとしても、クラスの利益にはならないので……セシリア・オルコット推薦理由は単純です。彼女が代表候補生であることと、その立場でありながら他国を侮辱するほどの慢心があるようなので」
「あ、貴方、私を馬鹿にしていますの?」
仏頂面のままで答えるユウキに、セシリアは男に情けを掛けられたと思ったのか怒りで体をプルプルと震えさせながら、ユウキを睨みつける。
「馬鹿に?いや、俺は事実を言っただけだ、セシリア・オルコット。何か俺は間違っていたか英国人?」
「決闘ですわ!」
セシリアはバンと机を叩き、ユウキを指差さす。が、ユウキはそれを無視するかのように教科書の方に視線を移し、セシリアは怒りで顔を真っ赤にさせていく。
「何故、無視しますの?!決闘ですわ!決、闘!」
「……ハァ。阿保か、貴様は? 俺はお前を候補者に挙げ、自分は降りると言った。それで良いだろう?」
「ふ、ふん。やはり男ですわね! へコヘコと腰抜けですわ!あなたの父親もよっぽどの腰抜けと見ましたわ!」
鬱陶しく感じ始めたのか、ユウキは苛立っているのを感じさせる声色で答えるが、セシリアはそれに気がついていないのか……または、気が付いているがあえて言ったのか分からないが、小馬鹿にするように言い、それを見て一部の女子達がクスクスと笑い始めるが……。
「オイ……今、何て言った?」
「ッ……い、一体なんですの?」
セシリアの言葉が気に障ったのか、笑っていた一部の女子達とセシリアを睨みつけ黙らせると、ゆっくりと席を立ち上がる。
「いいだろう、セシリア・オルコット。お前の、そのおふざけに付き合ってやる」
「(オイ、ユウキ! お前、魔戒騎士の禁を破る気か?!)」
慌てた様に念話で呼びかけるザルバを無視し、ユウキは千冬の方を見る。
「織斑教諭。そう言うわけです……ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
「ふん、気にするな。話が拗れそうになっていたら、それで決めるつもりだったしな……それでは勝負は次の月曜日。放課後、第三アリーナで行う。ユウキとオルコット、織斑はそれぞれ用意をしておくように。それでは――」
「ま、待ってくれ千冬ね……じゃなくって、織斑先生! 俺もですか?!」
「ほう、織斑……同じ男であるユウキが受けるのにお前は逃げるのか?」
「ッ……いや、俺も参加す、します」
先ほどまで置いてけぼりだった一夏は、自分の名前を上げられたことに驚き慌てて立ち上がり抗議の声を上げようとするが、千冬の一言に何かを感じたのか、自分も参加する意思表示をする。
「なら、良し。では、授業を再開する」
そんな一夏の様子に千冬は満足そうに頷いてから授業を再開させた。
はい、ユウキ君。カチキレマシタ。ユウキ君は嗅覚が鋭いです。ホラーのにおいを嗅ぎわけちゃいます。
あと、関係ないですが、ガタックぜクターってヤンデレだよね?
では、次回でまた会いましょう!