Fate/World Crosses〜交差する世界〜 作:mikuroさん
険しい丘に登るためには、
最初にゆっくり歩くことが必要である。
ーシェイクスピア
そこは暗闇。天井というものあるのか、底があるのか、自分は浮いているのか、落ちているのか。分からない。そして理解もしようとしない。もうどうでもいい。自分は終わりを迎えたのだから。しかし何も無かった暗闇から光が差し込む。この光、この暖かさだけはすぐに理解できた。自分はその光に手を伸ばし……
バチコーンッと教室内に音が響く。クスクスと静かに笑う声や「馬鹿だなぁ…」と呆れた声も聞こえる。俺は目が覚ましたばかりの重い身体を起こす。眼前には鬼の形相で仁王立ちする古典の教師。棚田繭子 (29)最近は年齢に危機を覚え何としても三十路という境界線を超える前に運命の人を見つけようと婚活周回中だそうだ。まあ、3連続失敗のハットトリックを決めてる訳だが。
「蓮斗くん?君はこれで何回私の授業で居眠りをしているのかな?そんなに私の授業はつまらないかしら?」
「いえ、繭子先生。俺は繭子先生の美しい授業に見惚れてしまっていたのです。全くこんな綺麗な方がいるのに何故世の男は気づかないんでしょうか…大人の男は愚かなものです。」
先程まで鬼の形相で立っていた繭子も顔がゆるくなり、鬼ではなく微笑む女神の様な笑顔に変わる。
「そうなのよー。なんでこんな私をほっとくのかしら。でも、私は信じてるわ…いつか白馬の王子様が迎えに家賃2万円弱のアパートの前に来るって…」
(ちょろい)
キンコーンカーンコーンと授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。古典の棚田繭子(29)歳は身体をクネクネさせながら喜び教室から退出する。今日も無事このつまらない普通の1日が終わろうとしている。
「おーい、蓮斗一緒に帰ろうよー!」
今声をかけて来たのは俺の住んでるお隣の神巫沙百合。沙百合とは幼稚園からの幼馴染で沙百合の両親には昔からお世話になっている。
「おー、んじゃ帰るか」
机の横にかけてあるバックを手に取り帰宅の準備を済ます。
「わり、待たせた」
「また繭子先生に怒られたんだってね。ちゃんと受けなきゃ追試させられるかもよー」
「へいへい、気をつけますよっと」
「でさ、今日は何食べたい?帰りにスーパーに寄って帰るから、今日は好きなもの食べさせてあげるよ」
「んー…じゃあハンバーグ…いや、カレーも…」
と、俺の頭は夕飯のメニューでいっぱいになる。
「あとさ、今日はあそこも寄らないと…」
「…あぁ、そうだな」
世話になってる理由というのは、俺の両親は昔俺が小学生の頃に事故で亡くなっているためだ。一応祖父母が遠くに住んでいるのだが、俺は両親との思い出があるこの家を離れたくなかったのだろう。祖父母の受け取りを断り東京に残ることに決め、良く仲良くしていた隣の神巫家にお世話になることになった。学費などは祖父母が出してくれており、特に苦労する事無く。学生生活を送っている。祖父母や沙百合達には本当に感謝している。
そんな事を話しながら、下駄箱の前に着く。今日は事故にあった日つまり、俺の両親の命日だ。命日には沢山のガーベラの花を添える様にしている。ガーベラは両親の思い出の花だったらしい。小さい頃に母親から聞いた事がある。
生徒が続々と下校していく。夕日が傾き、ここからでも橙色の日差しが差し込んでくる。
「さて、帰るか」
そんな時だった。この時何が起きたか理解できなかった。地震などの揺れでは無く衝撃波とでも言うべきか。ドーンッ‼︎‼︎‼︎‼︎と鼓膜が破れるのではという音が鳴り響き、その次に全身にビリビリビリと痺れる様な感覚が走る。
揺れが起きていたが、徐々に治まっていく。パニックなど起こる暇も無く、ただざわざわと「今のなんだ…?」「爆発?」などと言っている人の声が耳に入ってくる。
「な、なんだったの?今の…」
「分からない…だけど、取り敢えず家には帰れそうにないな」
その時ある生徒が声を発した。
「あ、あれ…裏山が…」
ざわざわとざわつき、大勢の生徒達が裏山の方を見る。
俺たちも裏山の方を見てみる。絶句だった。今日、登校してきた時は確かにあったはずの学校の裏にあった裏山が消え去っていたのだ。
「どうなってるの…」
沙百合が口を抑え唖然としている。それはそうだろう。普通ここでは驚くのが当然だ。だが俺は違った。この非現実的な事が起こり今はドキドキしていたのだ。
「沙百合、お前はここに居ろ。俺はあそこの様子を見てくる」
「あ、危ないよ!」
「大丈夫だって。少し見てくるだけだからさ、じゃ」
と言って裏山の方へと走り出す。
沙百合がこの時何か叫んでいた様な気がしたが、俺は目の前で起きたことだけを見ていたので、気にも留めなかった。
ー約20分程かけ、巨大な爆発?が起きたであろう場所に着いた。ヤバい…クレーターなんて初めて見た。画像や、漫画などでは見た事はあるが実物を見るのは初めてだ。地面が本当に綺麗に抉られている。
(ここで一体何が…)
恐らく警察もそろそろ来るだろう。本当に様子見で帰らないといけない。一応周辺を見渡したが、別に飛行機がついらくしたり、爆弾の破片があったりはしなかった。収穫無しだ。諦めかけていたその時、クレーターの中心に何か落ちている事に気付く。
「ん?何か落ちてるな…あれは、カード?」
少し危ないがクレーターを滑り、カードのある所まで降りる。長方形のカード。トレーディングカードというよりはタロットカードに近いだろうか。カードの表紙には、
「…騎士?」
剣を持ち鎧を着た。良く見る騎士がカードに描かれている。ひっくり返してカードを見ると、白紙だった。ただ、何か文字が…
「S…b…r…モー……ド?駄目だ、文字が掠れて読めないな…」
こんなカードは知らないが取り敢えずポケットに入れておく。たまたま衝撃で飛んできて、衝撃とは関係ないものかもしれないが、何故か。言葉では表現出来ないが、持っておくべきと思ってしまったのだ。
「さて帰るか…」
だがビリっと身体に電気が走る。次の瞬間、俺の頭上には黒い物体があり、クレーターと俺を呑み込んだ。
これが俺の日常とはかけ離れた非日常の始まりだった。
はじめましての方ははじめまして、mikuroというものです。以前まではSAOの二次を書いていたのですが、期間を空けてしまったのでリハビリがてら新連載のもの「Fate/World Crosses〜交差する世界〜」を書いてみました。キャラの名前、設定などは次回の前書きに大まかに記載しておきます。何故ならこの創作は頭の中で勝手にできて書いてしまったものなので、キャラの設定が決まってません笑 では、また次の回で…end