面白過ぎて東方熱が再発。また兎書きたくなったので書いた。
東方自然癒は超オススメです。
RPGツクールと言うソフトを使ったフリゲーなのですが、クオリティ高過ぎて、金取れるレベル。シナリオが凄く秀逸で、神シナリオだと個人的に思ってる。
ゲームのシステムバランスも絶妙で、レベリングしたパワープレイで押し切れば多少苦戦するけど勝てるけど、それでも何も考えない脳筋プレイに走ったら即座に負けるので力でゴリ押しの難しいけどきちんと戦略を立てれば苦戦程度で済むと言う絶妙すぎるバランスで出来てます。
でも壊れた幻想の難は絶対無理。あれは勝てない。リーフスパーク二連続で全滅する。
私がまだ永遠亭に来たばかりの頃の話だ。
永遠亭には私を含め、月から追われた存在が集まっている。
だからこそ師匠は当初、永遠亭周辺から出ることを禁じた。何故ならそうしないと師匠の封印により永遠亭が隠されているのが無意味になるからだ。
だがそこに私が幻想郷が結界によって隔てられている、と言う稗田の屋敷で見た情報を話すと、未だに師匠たちが月に見つかっていないと言う情報と合わせてすぐに答えを導き出す。つまり、結界がある限り月からは見つかりはしない、と言うことだ。
そうなってからは徐々にだが人里とも交流を取るようになり、私も以前のように変装したりせず堂々と人里に赴くようになった。
そう言えば以前幻想郷に来たばかりの頃にも感じていた違和感があった。
どうして永遠亭の存在は知られていないのか?
答えは意図的に隠していたからだ。どうしてそんなことになったか?
何故なら師匠たちがこの竹林に住みついたのは幻想郷に結界が張られるよりも以前の話だったからだ。
それ以来ずっと人目を忍んで生きてきたらしく、そのせいで結界の存在を知らなかったらしい。
外出が解禁になって一番喜んでいたのが姫様だったのは…………まあ言わずもがなだった。
妖怪だらけの幻想郷唯一の安全区域、と言う人里だが明確にどこからどこまでが、と言う区切りはない。
人里の端のほうは寒村としていて、ぽつりぽつりと間隔が開いて家の立つ心寂しいところだが、逆に中央のほうに行くと商家などが密集し、人の賑わうところとなる。
「そんでどこに行くの? 鈴仙」
隣で私について来たてゐがそう尋ねるので、一度メモに目を通し、書かれているものが売っている場所を頭の中で人里の地図を思い起こしながら確かめていく。
「まずは酒屋さんかな?」
殺菌消毒に酒を使うと言うのは医者の常套句だ。前世で言うところの消毒用アルコールと言うやつだろうか。
なので永遠亭には不必要なほどに多くの酒が常備されている。
しかも姫様も師匠も私もてゐも人並み程度にしか飲まないので、その大半が飲用でないと言うのが事実だ。
先も言ったが永遠亭は現在人里とも交流を持っている。
妹紅さんと言う前例があるので蓬莱人と言う存在は簡単に受け入れられたのだが、問題は私やてゐと言った妖怪兎だ(厳密には私は玉兎だが人間から見れば同じようなもの)。
と言ってもまあ私はそもそも玉兎なので人間を襲わなければいけない、と言うことも無く。
てゐはてゐでたまに自分の落とし穴に人間がかかっている程度で満足らしいので被害らしい被害はほとんど無いのが現状だ。
だからこそ永遠亭は二つの道があった。
一つは妖怪側として人に恐れられていく道。
そしてもう一つが人間側として妖怪を恐れながらも退治していく道。
まあ師匠たちが妖怪を恐れるかは知らないが、少なくとも人間と敵対することも無いので人間側、と言うことになるのだろう。
そうして人間側に立った永遠亭の面々はだからこそ人の営みで生きると言うしがらみに捕らわれれることとなる。
そうして始めたのが診療所だ。
と言っても検査してその場で治療するようなものではなく、検査結果を見て薬を調合して渡す、と言う方式でやっている。最近はその手伝いもしており、お陰で薬についても多少知識が増えてきた。
と言っても塗り薬や簡単な処置ならその場で行なうこともあり、例えば擦り傷や切り傷などを治療する時に使うのが先も言った酒だ。
永遠亭が診療所として開業してしばしの時間が経つが、やはり一番良く使うのが酒だった。
治療に使うだけではなく、器具の殺菌などにも使うので消費量が半端ではない。
さらにいつの間にか姫がこっそり飲んだりしているのでふと気づくと、あれだけあったお酒がもう無い?! と驚かされることになる。
とまあそんな消費の激しいお酒だからこそ良く買いにも行っているわけで。
「おじさん、いつものください」
店の戸を開け、暖簾を潜ると中にいる男性に向かってそう声をかける。
「おや、鈴仙ちゃんじゃないか、いつものだね、ちょっと待っててくれよ」
恰幅の良い酒屋の店主が景気の良い声で返し、すぐに店の奥から抱えるほどの大きさの酒壷を四つほど持ってくる。
「ほい、じゃあいつもの分量だよ」
「ひい、ふう、みい…………確かに」
数がちゃんとあることを確認し、お金を渡す。
「はい、確かにね。毎度どうも」
にっかりと笑う店主を背に店を出てすぐにてゐを探すと店の壁に寄りかかり人の流れを見ていたので声をかける。
「次に行こ、てゐ」
私の声にこちらを振り向きとことこと着いてくるてゐと並んで人通りの多い道を少し歩く。
「あれ? 何も持ってないけど、何か買ったんじゃないの?」
手ぶらで歩く私の姿に違和感を覚えたのか、てゐが首を傾げ尋ねる。
「お酒は重いから最後に荷車借りて運ぶのよ。先に買っておかないと売り切れちゃうから代金だけ払ってきたけどね」
なるほど、と納得したように頷くてゐ。予約、とかそう言った概念がまだこの時代、と言うか幻想郷には無いらしい。
お陰で昼下がりに酒造店に行くと、居酒屋などにその日の分がすでに買われていて売り切れている、などと言うこともちょくちょくある。
「それで鈴仙、次はどこに行くの?」
「霧雨さんって人のやってる道具屋さんのところ」
実験道具の一部が使えなくなって破棄したのでその代わりを買って来い、と言うことらしい。
師匠オリジナルの薬、と言うのは珍妙なものが多いので使用した器具がダメになることも多いのだ。
あらゆる薬を作る程度の能力は裏を返せばどんな危険な薬でも作れてしまうと言うことに他ならない。
それでも実際に危険な事態が起きていないのは師匠が考えて作っているからなのだろう。
「永琳、良く壊すからねえ…………」
てゐも簡単に想像がついたのか遠い目をしながらそう言った。
「そう…………そうなのよ」
多分私も同じような目をしているだろう。
なるほど、実際師匠の作る薬が被害をもたらした実例は
私が知る限り、一般人に迷惑をかけたこともない。
ただ、同じ部屋で実験を手伝わされている私やてゐは別だ。
「「あはは…………はは……」」
乾いた笑いがこぼれ出る。無意識にその時の情景を思い出そうとする脳が生み出す光景から必至に目を逸らす。
「ま、まあ…………気にはしないでおきましょ」
「そ、そうだね…………はは」
これ以上考えたらトラウマが再発しそうだった。
霧雨道具店は人里の中央付近にある大きな店だった。
「良いわねここ」
店の中を見て回る。周辺でも特に大きな店舗内は綺麗に整列されており他と比べても特に品数も多く、品質も良い。
以前に紹介されたので足を運んでみたが、これは中々に当たりだったかもしれない。
「何かお求めですか?」
そうして並べられた品を一つ一つ見ていると、店の奥からやってくる一人の男性。銀色っぽい白髪と眼鏡越しに見える赤い瞳が特徴的な男性だ。アルビノ、と言うには髪の色素が濃いので恐らくこれが地なのだろう。
「えっと店主さん? この紙に書かれているものを探しているのだけれど」
そうして男性にメモを見せると、さっと目を通した店員が一つ頷き。
「これらですね、ほぼ全てありますよ、それと僕は店主ではありません、こちらのお店で修行させていただいているものです。霖之助と申します」
そう言って一礼し、それから店に陳列された商品を一つ、二つと手に取り持って来る。
「これらで間違いないですか?」
差し出された商品を一つ一つ確かめ、頼んだ品であることを確認すると頷く。
「ではお代は…………これくらいですね」
算盤で弾いただけの金額を渡すと店員がそれを受け取り確認する。確かにあることを確認する。
メモに目を通し、一点を除き全ての品が揃ったことに満足気に頷くと店員に尋ねる。
「一つ聞きたいのだけれど、さきほど見せた紙の中で一つだけこの店に無いものがあったと思うのだけれど、どこに行けば売ってるか分かる?」
そう言うと、店員が少し考え。
「お客様は妖怪…………ですよね?」
やや視線を上げ私の耳を確認してかそう尋ねてくるので、頷く。
「なら大丈夫でしょうか…………魔法の森、と言うのはご存知で?」
「あの胞子だらけの森ね、そこが何か?」
「ええ…………魔法の森の奥にとある店があるらしいんですよ」
店員の言葉。だが一瞬何を言っているのか理解できなかった。
すぐに理解し、けれど訝しげな表情を出した私に店員が少し慌てたように続ける。
「本当です。魔法に関するものを売っている店があるらしいです。そこに行けばお客様の探しているものも見つかりますよ」
「らしい、って確認したわけじゃないの?」
「いえ、僕は直接見たわけではないのですが、妖精たちや他の妖怪の方がそう言ったものを見たと言う話でして」
「一応聞くけどそのお店の名前は?」
そう尋ねると店員が少し困惑した表情をしながら。
「霧雨魔法店、と言うらしいですよ」
「で行かないの?」
「行くわけないでしょ」
店を出て、てゐと合流する。これで必要なものは買い揃ったし、後は酒を受け取って帰るだけだ。
「しっかし、霧雨魔法店って今寄った道具屋も霧雨でしょ? 何か関係あるの?」
「さあ? でも店員の人はそんなもの知らないって言ってたから無関係じゃないの?」
てゐとそんな他愛も無い雑談をしながら人通りの多い道を歩いていると。
ドン、と誰かの肩がぶつかり、思わず数歩たたらを踏む。
「わっと…………す、すみません」
体勢を立て直して視線をやるとぶつかったのは二十前後の青年だった。
「ああ、いえ。大丈夫ですよ」
と、体勢を戻すときにころり、とスカートのポケットに入れっぱなしだった仏像が転がり落ちる。
「っと、いけない」
別に惜しいわけでも無いが、こんなところに仏像を転がしていくのも罰当たりだと仏像を拾い、ふと視線を感じ振り向くと青年が自身の持つ仏像を凝視していた。
「………………そ、それは、まさか、いや、そんな」
「…………どうかしました?」
「…………?」
隣でてゐも首を傾げている。正直私も首を傾げたい。と言うかもう行っていいのだろうか。
「そ、それじゃあ、失礼しま「ちょ、ちょっと待った!!」…………えっと?」
立ち去ろうとする私の肩を万力のような握力で握る青年。その目がどこか血走ったように見えるのは気のせいだろうか。
「そそそそそ、その仏像、ちょ、ちょっと見せていただけませんか?」
正直ドン引きだがここで断ったら面倒なことになりそうなのでスカートから仏像を取り出し再度渡す。
「おおおおお…………この流麗な造詣、表情が分かるほどに丁寧に掘り込まれた顔、艶が見えるほどに研磨された表面…………間違いないこれは?!」
青年の話が止まらないので中略。
「これを譲っていただけませんか?!」
「ハイ、ドウゾ」
ほとんど聞き流していたが、とりあえず譲って欲しいと言う部分だけは伝わったので適当に頷いておく。
「ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、これをどうぞ」
そう言って青年は私の手に無理矢理ソレを握らせて去っていった。
うどんげはやくそうをてにいれた。
「…………え、これ何の薬草?」
てゐが訝しげに手元の薬草を見る。私も同様に視線を落とし見やる。
「これこのまま張るだけでも効能が出るやつね。腰痛とかに効いたと思うわ」
「ところで鈴仙、あれを見て、どう思う?」
「すごく…………おおき、って何言わせるのよ」
てゐの指差す方向を見ると、道端にうずくまって腰を抑えるお婆さんの姿が…………見ていても何なので、すぐに駆け寄って声をかける。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ…………ちょっと腰が痛いだけなんで、少し休めば治るわよ、心配してくれてありがとうね」
ふと手元の薬草に目を落とし、ちょうど良いか、と思いお婆さんに断りを入れてからその腰に薬草を張ってやる。
数分もすると薬草が聞いてきたのかお婆さんがよろよろと、だが立ち上がる。
「ありがとうね、助かったわ…………対したものじゃないけど、これお礼にどうぞ」
そう言ってまた私の手にソレを渡してお婆さんが去っていった。
うどんげはなわをてにいれた。
「…………え、この縄どうするの?」
「分かんないけど、こんなところじゃ捨てるに捨てられないね、どうするの? 鈴仙」
「え、ええ? わ、分かんない」
どうしよう、と手に縄を持って手持ち無沙汰にしていると。
「暴れ牛だー、どいてくれえ」
遠くから聞こえる声。どうやら暴れ牛がこちらに走ってきているらしい。
手元に視線を落とす。そこにあるのは縄。
「てゐ…………」
「あいあいさー」
走ってくる牛を視認する。興奮して真っ直ぐ走る牛、その両側に私とてゐが立ち持った縄を引く。
ピン、と縄が張り、牛の足が引っかかる。
人間なら牛の勢いに負けそうかもしれないが、私もてゐも妖怪だ、そうそう負けはしない。
結果的に足を捕られた牛がすっ転び、私が能力を使って牛の精神の波長を整えてやる。
落ち着きを取り戻した牛がもう暴れないのを確認して、一息吐く。
すぐに牛を追ってきた男が追いついてきて、現状を見て驚いた様子で言う。
「お、おお?! あの暴れ牛をどうやって…………いや、それは良い、とにかく怪我は無かったですか?」
明らかに妖怪な二人組みに向かってこんなことを言ってくるのだから、不思議な感覚である。
「ええ、大丈夫よ…………てゐも大丈夫よね?」
「大丈夫だよ」
自身たちの答えに男がほっとした様子で息を吐き、すぐにこちらへと話しかけてくる。
「お二人がうちの牛を止めてくださったようですね、本当にありがとうございます…………お礼と言ってはなんですが、うちで取れたものです、どうぞお納めください」
そうしてずっしりと重みを感じるソレを私に手渡し、男が牛と共に去っていく。
うどんげはぎゅうにくをてにいれた。
「…………何だったの? 今日は災難にでも見舞われる日だったの?」
「災難なのかわらしべ長者なのか…………判断が難しいね」
………………。
………………………………。
………………………………………………。
「と、言うことがありまして今晩はすき焼きです。ちょうどタケノコもいっぱいありましたし」
「………………あの数時間のお使いの間に随分とまあ、色々な体験をしたわね、うどんげ」
「ええ、はい…………まあ」
「仕方ないわね、今晩実験しようかと思ってたけど、中止しましょう…………今日はゆっくり休みなさい」
「本当ですか師匠? ありがとうございます…………正直気疲れしてちょっと眠いです」
「夕飯までまだ時間があるわね…………少し寝てなさい」
「了解です…………ではすみませんが、一時間ほど仮眠させてもらいます」
「おやすみ、うどんげ」
「はい、お休みなさい、師匠」
蛇足だが。
そして非常にどうでも良い話だが。
幻想郷で牛肉、と言うのは非常に高価だったりする。
そもそも外の世界ですら牛肉はまだ高価な時代だ。幻想郷に置いては言わずもがなである。
幻想郷では牧畜産業と言うのが少なかったりする。様子に動物を飼ったりすることがあまり無いのだ。
精々飼っていて鶏と言ったところか。私が出会った男性のように牛を飼っている人間などほぼいない、と言っても良い。
私の前世では当たり前のように食べられていた牛肉だが、幻想郷では豚肉や牛肉は肉類としてはマイナーなのだ。幻想郷では鶏肉や兎肉などが主流であり、豚や牛を食べる風習があまり無い。
しかも鶏はともかく、兎など野生にいくらでもいるだけに畜産と言うのが全くと言って良いほど増えない。
結局、どうしても希少品になる牛や豚などは値段も高くなる。と言っても豚と言うのは猪を家畜化したものが始まりであり、猪を普通に狩って食べている幻想郷では豚そのものが存在しないと言っても良い。
つまり、幻想郷では鍋はあってもすき焼きは無いのだ。
全く持って勿体無い話だ。
ところで…………あの牛を追っていた男性、何故牛肉など持っていたのだろう?
牛の畜産をしているのは予想できる、だが逃げ出した牛を追いかけるのに何故牛肉を持っていたのか。
しかも持ってかえって改めて見たが、中々に新鮮な肉だった。
さて………………一体何をしていたのやら。
これ以上の想像はグロテスクなのでやめて置こうと思う。
さて…………全く持って蛇足な話だ。
後半から面倒になってきて文章が雑になってる気がする。
書いてて自分でも疑問に思ったものを蛇足に書いたけど、本当に蛇足だった。
と言うか本当は最初はわらしべ長者がやりたかったので後半だけあれば良かったんですけど、ついでなのであからさまな伏線一個張ってみました。
因みに今回出てきたのは森近霖之助です。
色々設定探りましたが、1950~60年の間に霧雨の店で修行してるのかな、と言う結論になりました。因みにこの時年齢は30~40くらいを予想してます。
ついでに言うなら、森近霖之助って名前は自分で付けたらしいので、その由来を考えるに、苗字はまだこの時点ではありません。霖之助、が名前です。
まあだから何だといわれればソレまでですが。
どうせこの先五十年くらいは出す予定ないですし。
それと最後に一つ忠告しておきます。
鈴仙を始めとして、軽いジャブで永遠亭の面々も性格改変してきましたが。
この先、本気で色々とキャラとか改変していきますので、こんなの嫌だ、と思ったら素直に閉じたほうが良いと思います。
例えるならあの名作、うそっこおぜうさま、並の改変をどんどん入れていくので、受け入れられない人は素直にブラウザバック推奨です。