魔法少女まどか☆マギカ~もうひとつの世界 星に祈りを~ 作:あおいちご
「・・・ただいま。」
時刻は、深夜2時頃だろう。魔女狩りのために、こっそり10時頃に、家を出る。正直、辛いけど、仕事上、深夜にしか、狩りが出来ないから、仕方がない。
誰も起きていないのは、知ってる。紅葉はまだ魔女狩りをしてるけど、あと30分ぐらいで、帰ってくるんじゃないかな?
そのまま、靴を脱いでリビングに向かう。そして、手を洗って、冷蔵庫の中身を取り出して、軽く朝食を作っておく。そして、作った料理を、たった一人で食べる。
「・・・いただきます。」
作ったのは、スクランブルエッグと、フレンチトースト。毎週火曜の朝は、いつも洋食と決めている。二人分は、《チンして食べてね♪ あおいより》というメモで、冷蔵庫に入れておく。
早すぎる朝食を食べて、シンクに食器を入れておく。これは、紅葉の仕事。魔女狩りから、帰ってきたら、洗っておいてと言ってあるから、きちんと仕事するだろう。安心して、部屋に戻った。
がさがさ
不意に、部屋から物音がした。
「誰か、いるの?」
不審に思って、呼び掛けた。
ガチャッ
返事がないから、ドアを開けた。
「あ、葵・・・。」
「・・・何してるの?お母さん。机の中身なんか、出して。」
「こ、これは・・・」
慌てたように、弁解しようとする。
「ねぇ、何してるの?答えて。」
「あ、葵こそ、どこにいたのよ?」
「わたし?ちょっとマネージャーと電話してただけ。それがちょっと長引いただけだよ?・・・そろそろ、何してたのかだけ、教えてもらわないと。タレントとして。」
「そ、それは・・・」
「!・・・まさか、お母さんのせいなの?最近、物がよく無くなるから変だなって思ってたんだけど。しかも、シュシュとか、髪留めとか、仕事で、必要なものばっかり無くなってると思ったら・・・!」
「あ、葵が、この部屋にいないからいけないのよ!葵がいれば、この部屋に入って、葵の物を、盗ることもなかったんだから‼」
えっ?
「な、何言ってるの・・・?お母さん、わかってるよね・・・?生活費、稼いでるの、わたしだよ?家に帰ってこれるのは、そもそも少なくなるって、契約した時、社長さんから、言われたよね?それでも、契約していいっていったのお母さんじゃない。」
「だって、葵、最近まともに私のこと、助けてくれないじゃない。昨日、私が疲れたって言ったのに、葵は、助けてくれなかったじゃない。前の葵だったら、助けてくれたこと、今の葵は、助けてくれないじゃない。」
「な、何のことを、言ってるの・・・?」
「一昨日も、そう。指切ったから、絆創膏買ってきてって、言ったのに、葵は、助けてくれなかった!」
「だから、何のこと言ってるの・・・?私、昨日やっと帰ってこれたんだよ?それに・・・」
わたし、ちゃんと一週間ライブで、いないって言ったじゃん。
その言葉を、続けることは出来なかった。
パンッ
叩かれた。信じてた、大切な人に。
「家族を、思えないなら、そんな仕事、辞めてしまいなさい‼」
なんで・・・?わたし、お母さんのために、いままで戦って来たんだよ・・・?なんで・・・そんなこと言うの・・・?わたし、お母さんのために契約してお願い事、したんだよ・・・?なのに、そんなこと・・・言うの・・・?
「だいたい、中学生なのに、夜まで仕事で、朝早くから仕事でいないって言うのがおかしいのよ!私は、悪くないわ!私の娘を、さんざん私から離してた奴等の迷惑になるなら、喜んで」
訴えるわ
「・・・」
「?葵?」
「・・・か。」
「葵、何を言ったの?はっきり言いなさい。」
「・・・お母さんのばかッ!もう、知らない‼」
知らない。お母さんなんて。わたしは、悪くないのに。なんでわたしが、八つ当たりの道具にならなきゃならないの・・・!
「葵!待ちなさい‼」
「うわっ!葵、ビックリさせ・・・?葵?」
訳もわからず駆け出した。
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「あら?美咲葵ね。いい感じに、絶望しかけているわね。でも、まだまだかしら。彼女は、伸びしろが有り余ってるもの。魔法少女の秘密を、ぶつければ、九割方、絶望するわね。・・・決ーめた。」
最初の、生け贄を決めたわ。クククッ!
内心で、笑いが溢れる。
最初のターゲットは、貴女よ。喜びなさい、美咲葵。
偉大なる、私の呪印持ちの魔女に、してあげる。
喜びなさい。《
偉大な、私の、最強の魔女として生まれ変われることを。舞台装置の魔女にして、合成魔女《ワルプルギスの夜》となれることを。
絶望の幕開けは、明日から。
さあ、舞台に登る役者は揃った。脚本通りに、物語を演じなさい。主役は、星の魔法少女達。
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「・・・もう、嫌だ。」
わたしの足は、留まるところを知らない。
「・・・葵、お姉様・・・?」
やさしく、声を掛けてきたのは・・・
「どうなさったんです?取り敢えず、
わたしの義妹、星伽あかりだった。
「あかりん・・・。」
深夜だというのに、起きていたらしい。いや、たぶん、トイレに起きたんだろうな。偶然。
「どうぞ、ジンジャーティーですわ。こんな時に、外に出ていたら凍えてしまいますわ。」
温かなお茶が出てきた。
「あはは・・・。ゴメンね。こんな時間に。」
「いいえ。お気になさらずに。いつも、この時間に起きてしまいますの。まだ時差ぼけがあるみたいですので。知ってます?スイスと日本の時差は、約九時間あるのですわ。」
「そうだったんだ。大変だね。」
「・・・今の、葵お姉様より、ましですわ。」
「えっ?」
「いつもと、雰囲気が違いますわ。落ち着くまで、此処にいても良いですわ。・・・お風呂のご用意が出来てますわ。良かったら、お入り下さい。」
それだけ言って、あかりんは、リビングに向かって、それ以上干渉しようとしなかった。そっけないけど・・・これが、あの子の優しさなのは、もう知ってる。腐っても義姉だもん。
そんな優しさに、わたしは、ほっとした。
「あ、あの、葵お姉様。やっぱり、言いたくはないのですけれど、言わせてください。
恥ずかしかったのかそっぽを、向いていたけど、それでも、何が、言いたかったのかは、伝わった。要は、そんなに悩むことはない。そう言いたいんだよね・・・?
「うん・・・。ありがとう。ゴメンね?わたしのせいなのに、気遣ってくれて。」
久々の
いつもの営業スマイルじゃなくて、ちゃんとした笑顔で。
「なんだ。きちんと笑えるではありませんか。安心しました。」
ああ、バレてたんだ。やっぱりね。なんとなく、わたしが、営業スマイルする時、いつも悲しげな表情だから。なんとなく、わかってた。
「あはは。わたしだってちゃんと笑う時は、笑うよ。こんな時は、特に、ね。」
「今日は、もう泊まっていってください。明日の、学校用の制服は、予備がありますので、それを使って下さい。・・・今は、帰る気分では、ありませんよね?」
「うん。ありがとう。あかりん。」
本当に、今日は、良く寝れた。落ち着いて、静かに。何事もなく。
だから、次の日から、狂ったような生活が、始まるなんて、ちっとも思ってなかった。
わたしを、徹底的に消そうとするかのように。
キャラ設定▼
・妃夢乃
呪いの魔法少女。《星の戦乙女》を犠牲に、合成魔女を作ろうとしている。名前は《ワルプルギスの夜》と、決めているようだ。最初のターゲットは、美咲葵。
・美咲葵
母親と、喧嘩してしまった。あかりとの対話で、幾らか冷静になった。妃夢乃に、一番最初のターゲットにされている。
・星伽あかり
美咲葵を、義姉として、慕っている。絶望しかけた葵を、希望ヘ、一時的に立ち直らせた。妃夢乃とは、見えないところで、本人も自覚せずに、戦っている。