いい事なんですがここまで調子がいいと逆に不安に…
大きな見上げるほどの白い美しい外壁が聳え立ち、大きな門が旅人達を出迎える。
街へ入るとまず目を引くのは遠くに見える白い大きな城だ。人々には活気があり賑わっている中央通りでは、かごを片手に買い物をする母子やレザーメイルに身を包み、剣を腰に提げた男たち、そして銀色の鎧に身を包み街を巡回する騎士。
そんな人々でごった返していたのだった。
ここはグレート大陸中心部に位置する「デルシア王国」そのさらに中心部「王都デルシア」である。
デルシア王国は大陸の中央に位置し、建国500年の歴史を持ち人種差別が無く最も安全かつ最先端の都市として大陸中に知られていた。
王国国民は人間、エルフ、ドワーフの3種族が協力、協調して住んでおり、長い平和が続いている。
この国にも国教とまでは行かないが歴とした宗教があり、三つの派閥に分かれていた。
一つは「火の神」を崇め、友愛を重んじる「ルドア教」主に人間が信仰している。
二つ目には「土の神」を崇め、調和を重んじる「マディア教」主にドワーフが信仰している。
最後の三つ目は「木の神」を崇め、規律を重んじる「ウイドル教」主にエルフが信仰している。
そんなこの国に一つの異変が起き始めていた。
「魔物」達の大量発生である。南西の樹海から突如現れた魔物達は田畑を荒らし家畜を喰らい、家を壊すなど尋常ではない被害を多く出したのだ。
その影響で農村にさえ防壁が張られ常に常駐の兵士がいるような状態である。
「国王様、このままではいずれ食糧難に陥ってしまいますぞ」
「既に一部の村々がやられ外壁の外には難民がテントを張っているような状態ですぞ」
国王と呼ばれた男に必死に嘆願しているのは地方を治める領主たちである。
国王は難しい顔をしたまま考え込むと一つの決断を下す。
「大臣、ギルドに依頼を出せ。内容は"魔物大量発生の原因調査と収束"報酬は…白金貨100枚だ」
「は、白金貨100枚ですと‼︎それはもはや国家予算ですぞ!本気ですかな!」
「ああ、余は本気だ。これほどの被害が出ている現状ではこれより他にあるまい」
「閣下のお覚悟、しかと受け止めました。これよりギルドに依頼に行ってまいります」
その翌日、王都中を大きく震わせる報せがはしった。
「国王様がギルドに魔物退治を依頼、報酬は白金貨100枚」
金貨1枚が農民の最大年収と言われる世の中で、金貨100枚に匹敵する白金貨1枚ですらとてつもない大金であるにもかかわらず、白金貨100枚を出すという事は国の一大事である。
その日じゅうに冒険者達が集い、我先にと依頼を受けると南西の森へと向かう。その数およそ50パーティ。
街の人々はそれを期待と不安とが入り混じった感情で見送っていた…
そのパーティの一つ、「白い闇」は王都でも数少ない「ランク7」の冒険者である。ランクは1〜10まであり、ランク4以上の冒険者は強者と言われる。その中でもランク6を超える冒険者は稀で、今回の調査でも「白い闇」は期待の的であった。
白い闇リーダーの剣士であるハウンドは2人の仲間と共に幾多の冒険を乗り越えて来た猛者だった。そのハウンドは今回の冒険にこれまでにない危機感を感じていた。
「ハウンド、どうした?らしくないな?」
そう声をかけたのはパーティの仲間でドワーフの戦士、ゴルドだった。ゴルドはドワーフとあり背丈は小さいものの、その怪力たるや得物である重鈍な魔鋼の斧鎚を軽々と振り回す。
「今回の依頼…気をつけたほうがいいと思うんだ。何故だか嫌な予感が強い、こんな事は初めてだ」
「そうか、実はワシも昨夜夢の中で神様に仕えるといってでてったきり死んだと思うとった親父が出てきてな…神様の怒りに触れるなってよ」
「おい、おどかすなよな。こっちは真面目に言ってんるだ」
「いや、すまんかった。しかしワシの方も真面目に言うとるんじゃよ」
そんな話をする2人に後ろから声をかける者がいた。
「嫌ですね2人とも、これから依頼だというのに、そんなに不吉な事を考えても仕方ないですよ。そんなに心配ならば皆用心していけばいいだけですしね」
彼はアルス、2人の仲間でエルフの魔法師である。魔法師とは名の通り魔法を使う者の事で、その中でも精霊と契約している者は上級魔法師などと呼ばれる。彼はその上級魔法師であった。
「そうだな、考えても仕方ない。それじゃあ、俺らも出発するとしようか」
「おう」 「はい」
それから馬車で7日、遂に「白い闇」は他のパーティ20組と共に目的地である南西の樹海へとたどり着く。50組いた冒険者パーティのうち30は途中の襲撃や怪我人の続出により中断を余儀無くされた。そうして到着した冒険者達が見たものは、樹海の中とあるはずの無い「地下へと続く大きな鉄の扉」であった…
「これは…?いったい?」
「なんだってこんな森の中に扉が…?」
そういった戸惑いの声があちこちから聞こえる。ハウンド達もこの異様な光景に戸惑っていた。
「ここで無駄足踏んでても仕方ねぇ、2人共行くぞ」
「そうじゃな、ハウンドの言う通りじゃ進むぞ」
「ここまで来たのですからね、さっさと調査してしまいましょう」
そうして冒険者パーティ「白い闇」はダンジョンへ足を踏み入れたのだった。
その後それを呼び水にどんどんと冒険者パーティがダンジョンへと足を踏み入れていく。
「……うふふふっ」
そんな様子を楽しそうに、嬉しそうに見ている少女が後ろにいたことにも気づかずに…
感想、アドバイスなどありましたら、感想欄にぜひよろしくお願いします。