俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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剣道?

翌日、勇者4人の姿は城の訓練場にあった。先日の魔法の訓練場ではなく騎士団の所有する訓練場で、今日は生きるための戦闘訓練を行うとのこと。

 

訓練場では朝早くから既に多くの騎士や兵士達が訓練を行っていた。剣を振る者、槍を構える者、鎧を着て走る者など統率された訓練と同時に個々の訓練も行なっているようであった。

 

当たり前だが、戦闘訓練という言葉に大地と薫はともかく、美沙とさとみはあまりいい顔をしなかった。

 

「勇者様方、再び御目にかかりましたな。改めて、私このガルア帝国騎士団団長を務めさせていただいております、ゴードンと申します。以降よろしくお願いいたします」

 

ゴードンと名乗った男はまさしく「偉丈夫」と言うべき男であった。2mはあろうかという身長と太い腕、軍服の上からでもわかるほどの筋肉は見事なものである。そんな外見からは想像もつかないほど丁寧かつ温和な挨拶をしたゴードンに4人は少しイメージを上方修正したようだった。

 

「さて、皆様。早速で申し訳ありませんがある程度"武の心得"のある方はいらっしゃいますかな?」

 

外見に似つかわしくないほど優しく質問したゴードンに対し、大地と薫が手を挙げた。

 

「ふむ、ならばダイチ様とカオル様。少しこの木剣を振っていただけますかな?ミサ様とサトミ様は後ほど多少手ほどきを致しますのであちらで御覧になっていてください」

 

するとゴードンは一般兵の練習に使う物であろう100cmほどの木剣を2人に差し出す。2人はさとみと美沙が離れたのを確認すると剣道の基本通りの素振りと軽く型の演武を行う。

 

「おぉ、それは勇者様の世界の剣術ですかな?綺麗な剣筋にございます。特にカオル様の演武は芸術のようでございました」

 

ゴードンの手放しの賞賛に照れくさそうな顔をする薫。しかしゴードンはその直後スッと真顔をなると2人に向き直り

 

「御二人の剣は確かに美しゅうございます、しかし1つだけこの場で覚えて頂きたい。御二人は"斬れはしても殺せない"剣にございました。おそらくは御二人の剣術は活人剣の部類にございますな?決して悪い事ではございませんので勘違いはしないで頂きたいのですが、御二人の剣は充分素晴らしい物です。正規兵にも十二分に通用いたしましょう」

 

ゴードンは一旦区切ると「しかし…」と続ける。

 

「しかし御二人の剣には"とどめ"がございません。私からはその"とどめ"と実戦での"生き残り方"をお教えいたします。しっかりとついてきて頂きたい」

 

ゴードンはそう言うと不安そうな顔をする2人に向けて優しい声色で諭すように言う。これに2人も暫くは立ち尽くしていたりするものの、話し合うと納得したように強く頷くと鍛錬に入るのだった。

 

 

〜大地side〜

 

「御二人の剣には"とどめ"がございません」

 

ゴードンさんから言われたその一言は異世界に来たという境遇からかスッと頭に入った。

 

剣道とは元々殺人術だった物を形にし、剣術となし、さらにその剣術から"剣"を扱う要素のみを抜粋した物である。

 

故に、剣道は"なんでもありの戦場や路上の喧嘩"では不利になり易い。俺はこれまで自分のやって来た"剣道"に自信を持って来たが、それはあくまでも「平穏な日本において」という前提があってこそだった。それが「危険な異世界」では何があってもおかしくは無いし、仮に負けて殺されても文句は言えない。

 

(認識が甘かったとしか言えないな…これは俺の落ち度だ。なんだかんだ言って"異世界転移"なんて展開に浮かれていたんだな、俺は…)

 

ふと隣を見ると薫もどうやらこれに気がついたらしく少し自信を無くしたような顔で立ち尽くしていた。

 

「薫、俺たちはちょっと浮かれてたみたいだな」

「…」

「ここはやっぱり安全な日本じゃない、異世界だ。己を守り、美沙やさとみさんを護るのは、これまで剣道をやってきた俺たちがやるべきだろう?」

「…そうかも、しれないな」

「まだ理解できても納得はできない…って感じか?」

「…ああ」

「無理すんな、少し落ち着け。ゴードンさんには俺から言っておこうか?」

「いや、いい覚悟を決めた」

「…そうか」

 

俺は薫にそれだけ言うとゴードンさんに向き直り鍛錬に移った。

 

鍛錬は先ず一般兵を相手にした模擬戦を行うことになった。双方が訓練用の皮鎧や木剣といった装備に身を包むと、俺は正眼に、相手の兵士は右片手の半身に構える。双方の準備ができたことをゴードンさんが確認すると「始め!」と声をかけ戦闘が始まる。

 

(先ずは出方を伺うか、相手は一般兵といえども本職の軍人、俺程度の剣がどこまで通じるやら…)

 

しばらく睨み合いが続くも、相手は意外と早く痺れを切らしたのか気合いを発しながら俺に向かい突き、袈裟、逆袈裟と三連続で攻撃してくる。

 

「イヤァァア!!」

「よっ!とっ!はっ!」

 

思いの外鋭さの無いそれを難なく捌くと、俺は相手の剣を持つ右手を小手打ちの要領で打ち抜く。すると相手が剣を落としてしまう、素早く相手に剣を突きつけると

 

「そこまで!勝者ダイチ!」

 

との呼び声がかかり終了となった。

 




*本話で出てくる剣道に関する話は、あくまで経験者でもある私個人の見解です。
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