俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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能力?

〜大地side〜

 

兵士の方々やゴードンさんとの訓練を通して1つハッキリとわかったことがある。

 

"俺たちの身体能力はとても高い"

 

この世界に来てからというもの、身体が変に軽かったりしたことはあったがあまり意識したことはなかったが、ゴードンさんとの訓練を通してこれが判明した。

 

「ゴードンさん、実はなんだか自分達の身体能力が覚えているものよりもかなり高くなっているようなのです」

 

そう素直に相談すると、ゴードンさんは少し考え込み3分ほどで分かったと言わんばかりに手を叩くとこう言った。

 

「おそらくそれは勇者様方の魔力が無意識中に身体能力を強化しているのでしょう。これは私どもでも扱う技術ですが無意識では扱えません。これはおそらく勇者様方の溢れんばかりの魔力のせいと考えて間違いないでしょう」

 

魔力による全身の身体能力の強化?無意識でそんなことが行われてるのか?しかし現に俺らの身体能力は日本にいた頃のそれと比べ大幅に上昇していることに間違いはない。

 

俺らはそれに気づいた後、ゴードンさん協力のもとどれ程自分達の身体能力が強化されているのかを検証してみることにした。

先ずは1番手っ取り早いであろう短距離走。美沙とさとみさんにゴールにいてもらい、俺と薫がおおよそ100mを何秒程度で走り切れるかを測る。

 

「2人とも〜!行きますよ〜!…よーい!どん!」

 

さとみさんの合図と共に走り出す俺と薫。自分の想像以上の速度が出ることに若干戸惑いながらも走りきる。

 

「え!すごいよ!2人ともまだ2秒しか経ってないよ!」

「大兄も薫さんもすっごい速かったよ!」

 

2秒台か、オリンピック選手も真っ青だなこりゃ…どうやら俺たちの身体能力はおそらく俺たちの想像の何倍も上がってる可能性があるな。

 

次は重量上げ。ゴードンさんからある程度の重さの指標となるものを持って来てもらい持ってみる。重さの単位は1ガルと読むらしい、長さも1カルと呼んでいたがこれもそれぞれおおよそ1g、おおよそ1cmとみて間違いなさそうだ。

 

「よし、じゃあ俺は日本では限界だった60kgに挑戦する」

「じゃあ、あたしは50kgにしようかしら」

「わ、わたしは力なんてないからこの小さい5kgのかな?」

「ミサはね〜、この20kgにしてみる!」

 

全員が準備できたところで持ってみる。

 

「ふんっ!…おわぁっ!?」

「んっ!…えっ!?」

「よいっしょ…あれ?」

「えいっ!…わぁっ!?」

 

案の定と言ったところだろうか、拍子抜けしてしまいそうなほど簡単に持ち上がる。想定して込めた力の半分以上が無駄に込めた力となってしまったので、バランスを崩してしまった。

非力だったはずのさとみさんや美沙も軽々と持ち上げているあたり筋力の上昇率はかなりのものなのだろう。

 

最後に跳躍。ここまでくればなんとなく展開は分かりそうなものだが、今の自分がどれだけできるのか把握しておくに越したことはないだろう。

先ずは試しに俺だけが飛んでみる。

 

「おっし、とうっ!!」

 

一瞬にして俺の身体は想像以上に飛び上がり4〜5mほどの高さまであがると落ちていく。

 

「…よっと、ふぅ」

「大地、アンタかなり飛んでたけど、大丈夫なの?」

 

心配してくれたのか3人が寄って来てくれた。ドスンッという鈍い音と共に落ちた俺の身体だったが、不思議な事に足にも腰にも身体にも落下の負担がかかったような感じはなく、全く何事もなかったかのように立てる。

 

「ああ、思ったよりもずっと身体が軽く感じて気がついたらあんな高さだった。その上全く負担が感じないときたからな、薫たちも軽くでいいからジャンプしてみな?多分思ってるよりもずっと飛び上がれる」

 

俺の言葉にやや不安そうな顔をするものの3人もジャンプしてみる。

 

「うわぁ!なにこれ!」

「きゃぁっ!…びっくりしました…」

「うわっほーぃ!すっごーい!」

 

軽く飛んだだけで1mほど飛び上がれる自分に驚きつつもなんだかんだで楽しそうにジャンプする3人。

はたから見れば嬉々として人間1人分ほどの高さまで飛び上がる女子高生。なんか、絵面がシュールだな…

 

こうして身体能力の簡単な把握が終わると、美沙とさとみさんは休憩。ゴードンさんは俺と薫2人の訓練をしてくれるそうだ。

 

〜side out〜

 

騎士団長ゴードンと勇者2人の訓練の内容は至って簡単だった。2人は先ず型の演武を実戦程度の速さで行う、ゴードンはそれを見ながら2人に足りない要素を指摘する。そして最後にゴードンと2人との軽い手合わせである。

 

「やあ!」「とう!」

「ダイチ様、まだ手首の返しが甘いですぞ。それでは剣をいなしきれませぬ!」

 

「やあ!」「とお!」

「カオル様、もう少し鋒を上に!そのままでは首に突きを当てられませぬ!」

 

こうして厳しくも優しいゴードンの訓練が続いた。

 

「それでは最後に私めとの軽い手合わせ、よろしくお願いいたします。しかし、私めも騎士団長の身の上。如何に勇者様方が相手といえど、簡単に勝ち星なぞあげられませぬぞ?」

 

ゴードンはそういうとニヤリと笑って2人に構えを取る。対する2人も小さく笑みを浮かべるとすぐに表情を引き締め構えを取り向かい直る。

 

大地の武器は訓練用の刃を潰したロングソード、薫の武器は同じく訓練用のサーベルである。

対するゴードンの武器は彼と同じ2mはあろうかというほどの剣…かと思いきや、彼は持った剣を自分の背後に突き刺す。すると何処からともなくボクシンググローブと籠手を組み合わせたような革製の大きなグローブを嵌めると再度構え直す。

 

「ダイチ様、カオル様、驚かれたでしょうがこれからあなた様方が相手にするやもしれない敵は剣を使うとは限らないのですぞ?それでは行きます…ぞッ!!!」

 

ゴードンはそういうと魔力で身体能力を強化したのだろうか、ビュンッと風をきるような音と共に巨体に見合わぬ俊敏さで間合いを詰めると先ず大地に先制の拳を浴びせる。

 

「んなッ!?」

 

スパァァンッ!!!という大きな破裂音が鳴り響き大地は後方に吹き飛ばされる。様子を見る限り辛うじて反応できたのだろう、大地自身はダメージを負ってはいないようだった。

 

「ほほぉ!これに反応いたしますかな!」

「辛うじて、ですがねッ!」

 

嬉しそうなゴードンに、大地は強化された身体能力を不完全ながらも駆使し高速の突きを放つ。

ゴードンはそれを難なく躱すが…

 

「はぁっ!!!」

 

今度はそれを後ろから薫がやや袈裟懸けに胴を狙って攻撃する。

 

「はっはっは!軽いですぞ?ムンッ!」

「きゃあっ!」

 

しかしそれはゴードンの分厚い籠手に防がれカウンターのパンチを食らう。幸いグローブは大きく柔らかいのでダメージは無いようだが、大きく飛ばされてしまったようだ。

 

「薫!?大丈夫か!」

「そちらに気を取られて、よろしいのですかな?」

 

大地は思わず飛ばされた薫に気がいってしまった。ゴードンはその隙を見逃さずにステップを踏んで大地の背後に回ると、スパパパンッ!!という連続音と共に大地に連続のジャブをかます。

 

「ふぅ、ここまでですかな?」

 

まともに拳をくらってしまった大地は堪らずその場に座り込んでしまい今日の手合わせは終了となった。

 




追記補填

2話あたりで記述したと思いますが、この世界では、ほぼ「魔力=生命の格の高さ」となります。しかし、「肉体という器」のある人間と「純粋な生命の塊」である精霊達とでは圧倒的な差が開きます。そして、器のある人間や動物は器いっぱいまでしか魔力を蓄えられません。広大で無尽蔵な水を湛える海や川と人口の湖や池では全く水量が違いますよね?本作での人間と精霊達の違いはここにあります。
この世界の人間一人が蓄えられる魔力量は実はかなり多いのですが、まだ誰もその境地に達するほど生命の格を上げられていない。そんなところです。
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