俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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巫女さん?

〜火の聖霊皇side〜

 

やぁやぁ皆さんお久しぶりッスね、自分は火の聖霊皇ッス。

今日は全世界の人族達の神殿を行脚するアルマちゃんを自分が直々に送りに来たッス。

いつもはアグニの眷属のフェニックスやドラゴンとこの竜に任せたりしてたんスけど、今回は訳あって特別に自分が送って来たッス。

 

「んじゃアルマちゃん、ここまででいいッスか?」

「はい、ありがとうございます。聖霊皇様」

「んもぅ、そんなに堅苦しくなくっていいっすっていつも言ってるのに…」

「あはは…こればっかりはクセみたいなモノですよ。では、行って来ますね」

「いってらっしゃ〜い」

 

ほいじゃあ自分は今話題の「勇者クン」一行を見ていきますかね?

 

その前に…変装変装っと…完了ッス!

 

〜side out〜

 

〜勇者side〜

 

勇者一行が待つことしばらく。

ようやく火の神殿にて"種火捧げ"の儀式が始まった。神像の前には祭壇と大きな火皿が用意され、神官達がその周囲を囲っている。

静まり返り、厳かな雰囲気の溢れる神殿内には多くの人々が詰めかけていた。

ほどなくして神官達が神像の前へと来る

 

「火の巫女様がご入殿なされます」

 

そう言うと神殿に来た人々が静かに黙って祈り始める。それと同時に神殿の扉が開き、奥から火の巫女が現れる。

 

「(あれが巫女様ね…)」ヒソヒソ

「(そうみたいだな)」ヒソヒソ

「(しかし…)」

「「(なんで巫女服が?)」」

 

大地と薫の視線の先には、白衣に緋袴を纏った巫女服(改造)を来た巫女がいた。巫女は手に紅い宝玉の付いた杖を持ち、頭には赤い大きなリボンをつけている。

 

「(うわぁ〜!綺麗な人…)」

「(本当ね…)」

 

巫女は火の神の神像前へと来ると、持っていた宝玉の付いた杖を掲げる。すると紅い波動のようなものが神殿内へとブワッと広がり、次の瞬間には祭壇に用意された火皿に紅蓮の炎が灯っていた。

炎が灯ると神殿内が「おおぉ」という歓声とともにざわつき出す。

 

「いやぁ、巫女様の『授け火』はいつ見ても美しい!」

「本当ですね、巫女様の『授け火』を見せていただけるだけでも心が澄み渡るようです」

 

周囲からはそんな話し声も聞こえる。すると再度巫女が杖を掲げ、今度は祝詞のようなものを唱え始める。

それを聞くとすぐにざわつきがおさまり巫女の綺麗な声だけが神殿内に響き渡る。

 

(綺麗な声だ…まるで唄うような祝詞だな…)

 

誰もが聞き惚れてしまうような澄みわたる声で巫女が祝詞を唱え終えると、神像に向かい「二礼二拍手一礼」してこちらへと振り向く。

 

「これにて、『授け火の儀』は終了です。それでは皆様、種火をお捧げ下さい」

 

巫女がそういうと神官達が列に並ぶように先導し、参拝者達が続々と火皿に種火を捧げ始める。

 

「いやぁ、まさか異世界で巫女さんを見ることになるとはな…」

「む…ちょっと大兄?な〜に巫女さんに鼻の下伸ばしてんの?」

「おまっばっ!鼻の下なんて伸ばしてねぇし!」

「ふふ〜ん、本当かにゃぁ〜?」

「全く、2人とも兄妹喧嘩はそこまでにして。ちょっと巫女さんに話を聞きに行ってみない?」

「わたしも、それに賛成です。あの巫女さんにお話を聞いてみたいです」

「わかった、なら巫女さんに話を聞きに行ってみようか」

「あ〜!大兄今巫女さんと話せるって聞いてちょっとニヤけたぁ〜」

「おい美沙ぁ!待てコr…」

 

「あんたら…そこまでにしなさいよ?」

 

「「はい、ごめんなさい姐御」」

「あ、あははは?」

 

なんとも締まらない勇者一行ながらも巫女に話を聞くべく向かった。

 

〜side out〜

 

〜大地side〜

 

「異世界の巫女さん」この言葉に興味を示さない者は少ないだろう…たぶん。

俺たちは今その巫女さんから話を聞くべく神官さん達にお願いをしたところであった。

 

「…と言うわけで、巫女様に面会をお願いできないでしょうか?」

「わかりました、勇者様方であれば問題ないでしょう。巫女様にお伝えしてまいりますので少々お待ちください」

「よろしくお願いします」

 

さて、神官さん達の言い方からしておそらく面会できるだろうがどんな話から聞くべきかな?

 

「なぁ、3人とも。巫女さんからどんな話を聞くべきだと思う?」

「大地、それに皆。それについてはあたしに一任して欲しいの」

「薫?俺は構わないが、美沙とさとみさんはどう?」

「ミサはいいよ〜」「わたしも、大丈夫です」

「一応だが、何故薫が話を聞きたいのか、聞いてもいいか?」

「ええ、なんだかあの子、あたしに似てる気がするのよ」

「そうか…わかった、なら薫に任せるよ」

 

一瞬だけ「あの子が薫に似ている?」と思ったが何とか顔に出さずに済んだようだ。危なかった…

 

〜side out〜

 

〜薫side〜

 

…とか考えてるんでしょうね大地の事だし。顔に出なくても何か言いたそうに一瞬だけ開いた口は全てを物語ったわ。

ホントにバカなんだから…

 

ま、いいわ。それよりもあの子に会って話を聞いてみなくちゃね。何でかあたしにも分からないんだけどあの子とは何処か他人な気がしないのよねぇ…

あの子も最後に振り向いた時にあたしを見てちょっとだけ驚いたように目を見開いていたし…

 

とか何とか言っていたら神官さんが来たわね。

 

「巫女様がお会いになるそうです。ではこちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

 

さて、綺麗な子だったけど、どんな性格してるのかしらね。

 

あたし達が案内された部屋へと入ると、テーブルの奥の方にさっきまで神殿で祈祷をしていた巫女さんがゆっくりと紅茶を飲んで待っていたようだった。

巫女さんはあたし達に気がつくと笑顔を浮かべて立ち上がる。

 

「あなた方がガルア帝国の召喚した勇者様方ですね?わたしはアルマ、火の聖霊皇様の巫女を勤めさせていただいております」

「丁寧な挨拶ありがとうございます。あたしはカオル・ササキです。それから…」

「ダイチ・シガだ」

「サトミ・サクラバです」

「シガ・ミサだよ」

「そうですか、それでは今日はよろしくお願いしますね」

 

互いに自己紹介を終えると席につき、神官達から差し出された紅茶をいただく。

 

「早速ですみませんが巫女さん」

「巫女さんではなくアルマで結構ですよ。その代わりわたしにもカオルさんと呼ばせてくださいね?」

「わかりました、ならアルマさん。アルマさんがさっき儀式の後であたしを見てちょっと驚いていましたよね?何故だか教えてもらってもいいですか?」

 

あたしがそう切り出すとアルマさんは「ああ、それか」と納得のいったような顔をして喋り始める。

 

「いいですよ、私がカオルさんを初めて見たときに、その"加護の大きさ"にびっくりしちゃったんですよ」

「加護の大きさがわかるんですか?」

「はい、これでも私は火の巫女ですよ!火の加護の事だけですが、その加護の大きさがなんとな〜くわかるんです。その人のオーラ?とでも言うんですかね?その大きさがわかるんです」

「それで、あたしの加護が大きいのがわかった…と」

「はい!これまで見てきた中ではカオルさんが一番おおきかったですから」

 

なるほどね、巫女さんになれるだけあって何かしらの力があるみたいね。

 

「アルマさんは、最初からその力を?」

「…いいえ、私がこの力を授かったのは火の聖霊皇様に助けて頂いたからなのです」

 

ちょっと暗いテンションになってしまったアルマさんは、これまでの経緯を話せる範囲で話してくれた。

 

自分は元はただの村娘で、生贄に出された事。殺されてしまうかと思ったときに神様に助けられた事。神様の正しい意志を伝えるために神殿を回っている事。ときに受け入れられずに迫害されてしまうようなこともあった事…

 

どれもこれもがあたし達からは想像もつかないような出来事で、これらを乗り切ったアルマさんに素直に尊敬の念を抱いた。

 

「凄いですね…アルマさんは、あたし達と大して変わらないような年頃みたいなのにそれ程の経験をして気丈でいられて…」

「そんな事ないです…はじめは私もとっても辛かったですし、今も時々苦しくなります。でも火の聖霊皇様がいて下さいますし眷属の皆様も力を貸して下さいます。私は一人じゃなかったからここまで来れたんですよ」

 

アルマさんはそこまで話すと少し紅茶を飲みゆっくりと息をすると「それに…」と続ける。

 

「カオルさんにも皆さんが居るじゃないですか!なら大丈夫ですよ、なんにも心配はいらないと思いますよ?自分にできることを一生懸命すればいいんですから」

 

ああ、こういうところなんだろうな。アルマさんが巫女として多くの人に慕われる理由は。

 

「そうですか…そうですよね。あたしにも大地や美沙やさとみちゃんがいてくれますからね」

「ああ、そうだぜ?」

「もっと頼ってくれていいんだよ?薫ちゃん!」

「薫姉にはミサがいるもん!」

 

なんとなく、異世界っていう全く知らない環境に来てからの心細さを気丈に振る舞うことで誤魔化してた自分がいたような気がする。

でも、もう誤魔化さなくてもいいよね?

 

〜だって、あたしは一人じゃないから〜

 

気がつけばあたしは、みんなに抱きついていた。

 

〜side out〜

 

〜アルマside〜

 

静かに涙を流して皆さんに抱きついていくカオルさんをみて、私ももらい泣きしてしまいそうです…

 

なんとなくですが、カオルさんが無理をしているような印象を受けたので話の流れを変えて行きましたが、やはり心の何処かに暗いものが溜まってたんでしょうね。

 

それにしても…

 

「カオルさん、素敵な人達に囲まれているじゃないですか」

 

これならきっと、大丈夫ですね。

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