俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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神々?

薫が落ち着きを取り戻すと、アルマへと話の続きを始めた。

 

「んんっ…取り乱してごめんなさいアルマさん」

「いいえ、カオルさん。落ち着かれたようで何よりです」

「それじゃあ一応今回の本題に入らせていただきます」

 

薫はそこで「おほん」と咳払いをすると軽く泣き腫らした顔をスッと真剣な表情へと戻しアルマへと向きなおる。

 

「アルマさんにはまだいくつか聞かせて貰いたいことがあります、先ず一つにその衣装は伝統の物なのか、二つ目に火の神は実在するのか、そして三つ目に他の神々に会ったことはあるのか…ですね。答えられる範囲で構いませんのでお願いします」

 

薫の質問にアルマはしばらく考えるような仕草を取ると薫を向き、話し始める。

 

「そうですね、一つ目の質問は"いいえ"ですね。これは伝統の衣装などではありません。二つ目は"はい"です。詳しくは話せませんが、私は毎日火の聖霊皇様と顔を合わせていますよ?」

 

アルマはそこまで言うと少し間を置く。

 

「…三つ目の質問に関してですが、他言無用を守って下される場合に限りお話しします」

 

そう言い切ったアルマの表情は一瞬ではあったが、これまで見せていた聖母のような微笑みと優しい口調ではなく、鋭い視線に威圧感を伴った声色で勇者一行を脅すかのように言い放った。

 

大地達はその一瞬の豹変に驚き尚且つ襲ってくる威圧感に思わず後ずさりしてしまう。

しかし薫はそれに屈せずにアルマへと言い返す。

 

「…わかりました。あたし達は他言無用を守りましょう」

「本当にできるんですか?」

「…やって、みせます!」

 

アルマも負けじと強い口調のまま言い放つが、薫は断固として引かなかった。

 

「………負けましたよ、お話ししましょう。但し、契約の魔法をかけさせていただきます」

「わかりました。それでお願いします」

 

するとアルマはどこからともなく先程儀式で使っていた杖を取り出すと軽く杖をかざし、祈るような姿勢をとる。

 

〈我、火の巫女アルマはここに契約を結ばん…汝、カオル・ササキは此れを良しとするか?〉

「はい、します」

〈宜しい、ここに契約は結ばれた。汝ら、いつ何時であろうと契約を破る事叶わじ〉

 

呪文を唱えきると、アルマとカオル、そして勇者達を杖から出た赤い小さな竜が囲い、やがてそれぞれの肩に乗ると身体に吸い込まれるようにすうっと消える。

 

竜が消えると、アルマは「ふぅっ…」と大きく息を吐き、少し脱力したように椅子に腰掛ける。

 

「契約は結ばれました。ならば、お話しいたしましょう。本来なら私の神である火の聖霊皇様のこと以外はあまり話してはならないのですが、〈火の契約〉の魔法を使ったので大丈夫だと思います」

「〈火の契約〉ですか…」

「はい、命をとるような危ない呪文では無いので安心してください。話そうとしてもその内容の時だけは口が開かず声が出ない…と言う程度です」

 

アルマがサラッと言った言葉にどう反応していいのか困る勇者一行ではあったが、とりあえず命に関わるものでは無いと聞き、一先ず落ち着いたようだった。

 

「では…そうですね、カオルさん達はこの世界で信じられている神は何柱いらっしゃると思いますか?」

「ん〜、属性一つにつき一柱だったから四柱?」

「そうです、四大元素である火・水・木・土、この四つを司る聖霊皇様がそれぞれいらっしゃいます。私は火の聖霊皇様に連れられその全ての方々にお会いしておりますが、火の聖霊皇様含めてどの聖霊皇様へ会うにも、人族では先ず無理でしょうね」

「それは何故ですか?」

「簡単な話です、どの方も人族では到底辿り着けない場所、辿り着けても生きてはいられない場所に住んでおられるからです」

 

薫や美沙、さとみがその言葉に少し驚きを見せる中、大地だけは合点がいったような顔をしていた。

 

「おや?ダイチさん…と言いましたか?貴方はこれを予想していたようですね?」

「ああ、何となく…だけどな。アルマさん、一つだけ聞きたいことがある。これだけ聞かせてほしい」

 

大地はそこまで言うとアルマに少し待ってくれるよう頼み他の三人を呼ぶ。

 

「大地…何かわかったの?」

「いや、ちょっとした予想なんだがな。当たる保証はない」

「どういうこと?」

「俺の予想では、おそらくその神の中に人族に友好的ではない神がいるんじゃないか…と考えている」

「もしかして、それって水の神様?」

「お、さとみさん正解。俺の予想では水の神がアウグストゥスの言っていた"水の魔王"なんじゃないかと思っている」

「まさか…そんな事って?」

「いや、おかしい話ではないだろう。考えても見てくれ、このインペルの丘の神殿は三つでそれぞれ火・水・木・土の神を讃えているはずだろう?なのに水の神殿だけが無い…これは水の神がそれだけ恐れられていると言う可能性につながる」

 

大地はそういうとアルマの方を向きゆっくりと確かめるように言う。

 

「アルマさん、神の中には人族に友好的ではない神がいらっしゃいますね?」

 

アルマはその質問を聞くと軽く俯き少しトーンを落とした声で話し出す。

 

「…それに辿り着きましたか。はい、その通りです。このガルア帝国にも伝わっている御伽噺ですが、『水の災厄』と呼ばれるものがあります」

「…っ!?」

「ここまで言えばお分かりでしょう、水の聖霊皇様は過去に眷属様方を人族に害されております。御伽噺の内容はこうです」

 

するとアルマは歌うように御伽噺を語り出す。

 

 

遥か昔のそのまた昔、魔法で栄えた大王国は、水の都の理想郷。

水の宝玉輝く王都は全てを潤す魔法の国。

ある日、魔法の王様は、妖精王を呼び出した。

するとたちまみ雷雲立ち込め、天をも貫く龍が轟く。

我は水の聖霊皇、汝らが罪を滅ぼさん。

水の神は天高く、水の劔で国を裂き、大竜巻で地を荒らし、氷の槍で全てを貫く。

人々みな死に絶えて、そこに残るは水ばかり…

水の都の物語…

 

 

アルマの語った物語を静かに聞いていた勇者一行は御伽噺の凄惨たる有様が眼に浮かぶようであった。

 

「これは実際に起こった話だと聞いております。水の聖霊皇様はとても温厚なお方ではありますが、眷属様を傷つけるものを決して許しはしません。勇者様方、決して道を間違えませんように…」

 

アルマはそういうと「では、これで…」といい部屋を出ていく。

 

 

〜大地side〜

 

「勇者様方、決して道を間違えませんように…」

 

アルマさんが最後に言ったその言葉が頭に食い込むように刺さって離れない。

おそらく皇帝アウグストゥスが俺らに討伐あるいは撃退させようとしている「水の魔王」というのはこの「水の聖霊皇」とみてほぼ間違いないだろう。

 

(しかし…しかしだ、あまりに意見が食い違い過ぎている)

 

アルマさんは「水の聖霊皇は温厚な方だ」と言っていたが、アウグストゥスやこの国の人々はある種の「恐怖の対象」となっている。

 

(どういう事だ?どちらが正しい?)

 

そう悩み始めた時、薫が叫ぶように言った。

 

「あ"〜〜!もう!どっちがどっちなのかわかんないわよ!アルマさんが言ってる事は嘘じゃないとは思うけど、この国の人達が水の聖霊皇を恐れているのも嘘じゃない…」

 

薫は「なら…」と続けて

 

「もうあたし達の目で確認するしかないじゃない」

 

「…そうだな、人からの情報だけじゃ何が正しいのか分かるわけないよな」

「そ、そうだよね。もしかしたら何か皆勘違いしているのかも知れないしね」

「そうと決まったらさっさと強くなって、真実を確かめに行かないとな」

 

俺たちの中で明確な目標が定まった瞬間だった。

 

 

〜アルマside〜

 

「どうやら、間違った方へは進まないようですね。聖霊皇様…」

 

アルマは神殿から出るとそう独り言をいう。

否…独り言のように言う。

 

「よくやってくれたッスよ、アルマちゃん。よくあれを見破ったもんッスねぇ」

「フフッ、火の聖霊皇様のくださった加護と経験のおかげです」

 

アルマへと返事をしたのは一羽の赤い鳥だった。正確には赤い鳥に化けた火の聖霊皇であるが…

 

「にしても勇者くん達に、よりにもよって水の魔力で微弱な洗脳を施してたなんて…もしかしたらアイツのところでも何か問題が起こってるかも知れないッスね…」

「はい、このままでは下手をすれば御伽噺の二の舞もあり得るかと…」

「それだけは阻止しないとヤバイッスね…」

 

事態は勇者達の想像を超えて深刻になりつつあった…

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