俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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聖霊皇の成長

 

〜水の聖霊皇side〜

 

近頃、身体の大きさがほぼ限界まできたのか、成長を感じなくなってくると同時に、力が大幅に大きくなったような感じがする。

他の連中(聖霊皇)にも聞いてみたが、全員がにたような感覚を覚えているらしい…

 

(俺らの力が大きくなったって事はこの世界は順調に生命で満ちてきている…と言う事でいいんだろうか?)

 

他三人との話し合いでも大まかそれだろうと意見が一致しており、あとは母さんがそれを認めるかどうか…と言ったところだ。『この世界を生命で満たす』これが俺らの本来の役割だからな。

 

今日はその増えた力がどれほどのものかを検証しにきている。

ここは見渡す限りの大海原で、周辺数百キロに陸地はないところにした。

 

「それでは聖霊皇様、検証を開始致します」

 

「検証」や「実験」といった言葉に釣られたのかポセイドンが手伝いに来てくれている。その他にはウンディーネや我が娘ルサルカだ。

 

「ぱぱー!がんばってねー!」

「聖霊皇様、無理はなさらないでくださいね」

 

まぁ、心配されるほどでもないと思うが…

寧ろ心配なのは此方だ、今回の実験にはかなりの危険が伴うと予想されているからな。

 

『ポセイドン、ウンディーネ、ルサルカ、それでは海の中へと避難していなさい』

「「わかりました、聖霊皇様」」

「はーい!ぱぱ!」

 

よっし、それじゃあ先ずは身体を元の大きさに戻してっと…

 

俺の身体は次第に巨大化し、周辺海域を囲えそうな程になる。身体を解放すると同時に力のリミッターも徐々に解除していく。

すると周囲に可視化するほどの濃密な魔力が湯水の如く溢れ出し、暗雲が立ち込めて雨が降ってくる。地球じゃスコールとか呼ばれる類だろうが、これはそれよりも何倍も強い雨だと思う。

 

(さて、いい感じに身体がほぐれてきたな…はじめは肩慣らしにブレスを一丁っと!)

 

口に魔力を溜め込み凝縮圧縮させて青いレーザーのように天に向かい吐き出す。するとブレスの当たった雨雲がフワッと搔き消えて青空が覗く。青い光はそのまま雲を貫くと空に一本の青い虹を描く。

 

我ながらいいブレスだ。威力、飛距離共に申し分ない。

 

(さて、次はどんな事をしようか…と、そうだアレを試してみよう)

 

昔漫画か何かで見たヤツ…一応氷も俺の範疇だから大丈夫なはず…

 

俺は全身に魔力を溜め込むとその濃密な力を濃密なまま周囲へと広げその言葉を発する。

 

〈時よ、氷れ〉

 

濃密な魔力の広がった空間の時間のみが凍てつき、俺だけの世界となる…

 

ドサァァッと激しい音を立てて降っていた雨も、強く波打っていた海面も、その様子を海中から見ているポセイドンやウンディーネ、ルサルカもピクリとも動きはしない。

 

(遂に概念魔法に届いたか……これまではうまく魔力が纏まらなかったが、やはり成長の成果か上手くやることができたな)

 

氷った時の中で俺は成功した喜びの余韻を楽しむようにゆっくりとそう考えていた。

 

おっと、みんながまだ止まったままだっにな…

 

〈時よ、解けろ〉

 

するとまた時は動き出す。

 

「聖霊皇様…ブレスの後に何か一回魔法を使われましたな?」

『おお、ポセイドン。よくわかったな』

「はぁ、わかるに決まっておりますよ。これほど濃厚濃密な水の魔力が周辺にばらまかれているのですから」

 

ポセイドンとウンディーネはどうやら氷った時間は知覚できなくとも周囲に広げた濃密な魔力の残痕で何かしらの魔法があったと断定できるようだ。

 

「して、今のは一体どう言う魔法だったのですか?よろしければ我々にも教えていただきたい」

『いいだろう、今の魔法はこの空間に膨大な魔力を浸透させることにより、空間の中の時間を氷らせるというものだ』

「時を…氷らせる?」

『ああ、だがこれには俺ら聖霊皇クラスの無限の魔力と水の魔力への完全な親和性がいるからな、まず出来るものはいないだろう』

「…なるほど、応用次第ではとてつもないことになりそうですな…」

 

やはりポセイドンは頭がいいな、普通なら時を氷らせて止めるだけで驚いてしまい、応用法など考えるものはほぼ無いというのにな。

そして今の検証で確実にわかったことがある。

 

「水に関する概念」や「水に関する事柄」さえも聖霊皇ならば利用できる

 

という事だ。

どういうことかわかりづらいだろうが簡単に例えると、今使った「時を氷らせる」魔法の応用には魔力の浸透した空間内の「時を流す」「時を滞らせる」「時を逆流させる」ことが出来る。

この最後にある「時を逆流させる」がミソだ。ここが「時を遡る」では俺の魔法は発動しない。「逆流」させてはじめて時は戻る。

つまり水に関係さえしていれば大体なんでも出来る。

 

(反則くせぇ能力になったな…いや、元からか…)

 

その時、後ろからウンディーネの小さな叫び声が聞こえた。

 

『どうした!?』

「聖霊皇様!ルサルカが!」

 

そう叫んだウンディーネが指差す方には、俺がさっき使ってみせた「時を氷らせる」魔法を極々僅かな範囲であるが発動させているルサルカだった。

 

(何!?この短時間で時を氷らせるだと!?)

 

さっすが我が娘だぜ!

…なんて親バカはいまは置いておくとして、これは危ない。「時を氷らせる」魔法は己の周囲の空間へと作用させるが、己自身には作用させない。

 

まだ魔力操作が曖昧なルサルカが下手に使えばルサルカ自身の「時を氷らせて」しまいかねない…

 

『ルサルカァァア!待ってろよ!今パパが助けてやるからな!』

 

「時が氷った」空間は外部からの干渉を同じ「時を氷らせた」空間以外から受ける事はない。これを利用し、俺も「時を氷らせる」とルサルカへと近づきルサルカの空間ごと「時を解かす」

 

すると先ほどまでのルサルカの空間は内側から徐々に溶けていく。

 

(な、なんとか間に合ったな…)

 

ルサルカは今ので自分の内包する魔力のほとんどを使い切ってしまったのか気を失ってしまっているようだった。

 

『ウンディーネ、これは後でルサルカとしっかり話合わねばならないな…』

「ええ、そうですね…この子がまさかこれ程までの力を持ってるとは…」

『俺もだ、この場合は己自身の力を甘く見た…というところかな。俺の魔力を多大に取り込んでいるルサルカのことだ、これくらいは出来る可能性がある事を考えていなかった…』

 

俺の娘はどうやら俺の想像以上に才能に溢れた子だったようだ。

これからは上手く魔法を教えていかねばならんな。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その次の日、俺の姿は昨日と同じ海上にあった。

昨日と違うのは、俺とルサルカの親子2人きりと言ったところだろうか。

 

『ルカ、昨日も言ったと思うが今日はお前に魔法を教える。これはお前が昨日のように無闇に魔法を使ってしまわないためだから、真剣に取り組むんだぞ』

「はぁ〜い!」

 

よし、いいお返事だ。

 

『それではルカ、お前は既にできているだろうが、まずは魔力の放出だ。体から魔力をジワジワと出してみよう。但しくれぐれも出し過ぎてはいけないぞ?消えてしまうからな』

「わかったの、ぱぱ!」

 

そういってルサルカは「ふぅ〜んっ!」という可愛らしい声とともに、ふんばるようにして魔力を放出する。

 

(予想よりも放出できる魔力量がはるかに多い…やはりルサルカは天さ…もといこれは危険だな。やはり魔力制御を重点的に教えねば…)

 

『よし!いいぞルカ!よくできた』

「ルサルカ、やったの!」

 

ちょっと疲れたのか、ルサルカはやや力なく返事をするとコテンと座り込む。

 

『ルカ、大丈夫か?まだ続けられるか?』

「ルサルカ、ちょっとだけ疲れたの…でも頑張るの!」

『そうか、ならば頑張ろうか。次は魔力制御だ。これは見た方が早いな』

 

そう言って俺はルサルカの目の前で極微量のブレスを使って氷像を作る。

 

「わぁ〜!ぱぱ!すごいの!きれいなの!」

『こういうことが出来るようになるのが魔力制御だ。いいかい?やり方は簡単だ。魔力を自分のイメージのままに動くよう強くイメージし続けることだ』

「はいなの!ぱぱ」

 

俺は、ルサルカの輝くまぶしいほどの笑顔で癒されつつも、ルサルカに魔法を扱う上でのコツをしっかりと教え込む。

 

「う〜んっ!」

「えーぃッ」

「とりゃあ〜」

 

なんとも気の抜けるような掛け声をしつつもルサルカは一生懸命に俺の指導についてこようとしてきる。

 

「みてみて!ぱぱ!できたの!」

 

何時間か経ったあたりでルサルカは跳ね上がるように俺の元へ来る。

そのルサルカの手には綺麗に咲いた魔力の花が咲いていた。

 

『よし、この調子だルカ。それでは続けて魔力の重要さをだな………』

 

こうして俺の1日は過ぎていった。

 

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