俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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貴族?

勇者side

 

 

木の神殿は内部に行けば行くほど日本の文化を思い起こさせるものばかりだった。

御手水、賽銭箱に社など、殆どのところが日本のものであると言っても良い。

 

そうやって案内してもらいながら歩いていると、ふとクレアさんが目を輝かせながらこちらに声をかけてくる。

 

「勇者様方は素晴らしいですね!まるで長年の修行を積んだ神官のように殆ど全てのウイドル教の礼儀をマスターしてらっしゃいます!」

 

 

そりゃあそうですよ、日本人ですから。

 

 

…なんて言える訳もなく俺ら四人は「アハハ…」と苦笑いで誤魔化す。

 

「クレアさん、『長年の修行を積んだ神官のよう』と言ってましたが、ウイドル教の礼儀はそれほどに難しいものなのですか?」

 

ふと気になり俺が言ったその言葉にクレアさんは少し真剣な顔になって言う。

 

「そうですね、この世界の三大宗教と言われるウイドル教、マディア教、ルドア教がありますが、その中で最も修行が厳しく礼儀を重んじるのはウイドル教と言って間違いないでしょう…」

 

クレアさんが語った内容はこうだ。

 

ウイドル教は規律を重んじる教えが多く、人と人の間の礼儀、人と生き物の間の礼儀、人と自然との間の礼儀、人と神との間の礼儀…というように細かく一つ一つの規律が設けられている。

それが故にウイドル教を国教とする国では規律が厳しいが治安は良い。

治安がいいと民には余裕が出る、余裕が出ると民にも誇りが持てる。

そうして国全体で規律を守り誇りを維持しているのがクレアさん達エルフ族の故郷なんだとか…

ただ、それの弊害かエルフの国の敬虔なウイドル教信者の中には傲慢とも思えるほどに誇り高いエルフが少なくなく、外交やらで問題になってるとか…

 

 

本末転倒じゃねぇか。とも思ったがクレアさんもかなり気まずそうに話しているあたりとても不本意なのだろう。

 

「教えてくださりありがとうございます。なんだか話しづらいところまで喋らせてしまったようで申し訳ありません」

「いえ、勇者様方には誤解なく我々エルフ族を知っていただきたかったですし、何よりウイドル教の規律は余程己に甘くない限り守れないなんてことはない教えばかりですからね」

 

クレアさん…いい人だ…

敬虔な信者ってただ単に教義を守り厚く信仰するだけの人じゃなく、こういう客観的な視点を持って排他的じゃない人を差すんだろう。

 

そうこうと話しているうちに俺たち四人は最初に来た入り口まで戻って来ていた。

 

「クレアさん、案内ありがとうございました」

「いえ、この程度のことでしたらいつでもいいですよ?」

 

なんでもない、という風に振る舞うクレアさんに思わず見惚れていると、薫が脇から肘打ちをかましてくる。

 

 

(ぐぉっ…なんと見事なレバーブロー…)

 

 

地味に悶絶している俺に脇目もくれず薫はクレアさんへ向かう。

 

「クレアさん、今日はお世話になりました。それで、最後に一つ聞きt…「だから!巫女を呼んで参れと言っておるじゃろう!早く出さんか!」」

 

薫がクレアさんに対して質問しようとしたその時、出口の方から怒鳴り声が聞こえた。

 

遠目から出口の方を見てみると、無駄に煌びやかに着飾った太った男が従者と思われる男たち10人ほどを連れてハールさんを囲っていた。

 

「そうおっしゃられましても困ります。こちらとしては貴方に巫女を出す理由などありません」

「じゃから!ワシにはあるといっておるじゃろうが!はよ巫女を呼んで参れ!」

「ですから、先程からうかがっている通り、何故巫女を呼ばねばならないのですか?はっきりと述べていただかねば呼びようもありません」

「なんじゃとぉ!さっきからグチグチと屁理屈ばかりこねよって!この無礼者がぁ!だいたい貴様ワシを誰じゃと思っとる!ワシはメンチ男爵家当主のコエトル様じゃぞ!」

 

コエトルと名乗った肥え太った男は怒りで真っ赤になった顔で唾が飛び散るほどに怒鳴り散らす。

 

「だからなんだというのです!この木の神殿はアウグストゥス皇帝の統括地。男爵家だろうがなんだろうが手出し無用を言い渡されているはずでしょう!」

「むむむぅっ…此奴め!ええい!者共!この無礼者をひっ捕らえい!不敬罪で処刑してくれるわ!」

 

断固とした態度で言い切ったハールさんに対してコエトルは我慢がきかなくなったのか従者にハールさんを捕らえるように言い放つ。

 

「大地!このままじゃハールさんが危ない!」

「ああ、クレアさんここで待っていてください。相手の狙いは巫女ですからクレアさんは巫女さん達を集めて安全な場所へ!」

「ゆ、勇者様方はどうするのですか!?」

「俺らはハールさんを助けます!こう見えても俺たち、それなりに腕が立つんですよ?」

 

とりあえずクレアさんを安心させられるような言葉を適当に並べながら、俺は脳内でこの状況にどう介入すべきか考える。

 

(相手は見える範囲で5人、影の数からしてあと3人はいるだろう。内武器を構えたものは見えない。ここからあそこまでは2、3秒もあれば割って入れるがハールさんを避難させないとあの位置じゃあ巻き込んじまう。先ずはハールさんの確保だな、次いで俺が間に入れれば十分!)

 

刹那で思考を終えると俺は即座に行動に移す。

 

「ミサ!さとみさん!ハールさんの確保を!薫と俺は間に割って入るぞ!」

 

俺の指示に3人は軽く頷くだけで返すと即座に行動に出る。

 

この世界に来てから強化された身体能力をフルに活かして20メートルほど離れたハールさんの前に割り込む。

 

「な!なんじy「ハールさんを早く!」」

 

コエトルと名乗ったおっさんが俺らに気を取られているうちに2人がハールさんを抱えて後ろに下がる。

 

「貴様ら!ワシの邪魔をしおってぇ!お前ら!やってしまえぇ!」

 

激昂したコエトルが俺らに男達をけしかける。

 

(いい具合に相手の頭に血が上ってるな、向こうのほうは指揮は無いに等しいから、あとはコイツらをゴードンさんに習った通りにッ!)

 

そう考えつつ真正面から俺に向かってくる男の拳を体を捌いて躱す。

 

「はぁッ!」

 

捌くと同時に拳を取りつつ背中に回り捻り上げつつ肩を極める。

 

ゴリッ!「ぐあぁッ!痛ぇ!!」

 

しまった…力加減を間違えて肩を外したか…

まぁいい、むしろ今の状況下じゃあ都合がいい。

 

「おらぁっ!」

 

続けて、後ろから俺に向かって棒を振り落とす男が来る。

 

「ふんッ!」ガキンッ!

 

両の手を交差させる事で相手の棒を受け止める。

身体能力が大きく上がっている俺にとって筋肉を固めるだけでも下手な防具より頑丈になる。

 

「な、何っ!?」

 

自分の一撃にそれなりの自信があったのだろう。男は俺が受け止めた事を信じられないとでも言うように見ている。

 

「隙ッありぃッ!」

 

棒を受け止めたまま男の膝を踏みつけるように蹴る。

 

「うおぁっ!」

 

姿勢が崩れた男に続けざまに踏みつけを食らわせ気絶させる。

男の膝が逆関節になってるがご愛嬌だ。

 

2人をノックアウトしたところで相手の方を向く。

 

見ると向こうは俺ごときには2人で十分だとでも思っていたのかコエトルの周りに控えるのみでいた。

 

「チッ…どいつもこいつも使えぬ奴め!ならばこのコエトル様直々にあいてしてやるわァ!!」

 

するとコエトルが叫びながら腰の剣を抜き俺めがけて突きを放つ。

 

(酷く緩慢な動きだ、避けるまでもねぇ)

 

俺はそれを見切ると「たったったっ」とゆっくりと(本人は至極真剣に)走って来るコエトルの剣めがけ居合い抜きを放つ。

 

「フンッ!」

 

右薙に放った居合抜きはコエトルの剣を正確に斬り、俺はそのまま上段からコエトルに剣を振り下ろす。

 

「ッ!!!!!」

 

刹那の瞬間、目を見開き迫り来る「死」の気配に怯えるコエトルが見えた。

 

そして俺はその剣を「寸止め」にした。

 

見下ろす俺の眼下には口から泡を吹き気絶するコエトルの姿があった。

 

 

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