勇者達が決意新たに旅立ったその日、丁度その付近の深海では水の聖霊皇が眷属らと戯れていた。
〜水の聖霊皇side〜
子供の成長は早いと言うが、聖霊皇の娘でもそれは変わらないようだ。
ルサルカはあれからもすくすくと育ち、前世でいう小学3年生くらいの大きさには育った。
「パパ、あのお魚はダンクレオステウスっていうんですって。ポセイドンが言ってたわ!あの鎧は鉄みたいに硬くって、亜竜くらいなら食べてしまうんですって!」
見た目はまだまだ小さい子供だが、俺の眷属達が「なぜなに?」に応えて持てる知識の全てを教え込んだ結果がこれだ。
現にルサルカが俺にさっきから俺の近くを護衛のように泳ぐクソデカイ鎧魚の名前はおろか詳細も話してくれる。
ーーコイツ、よく俺の護衛みたいなことしてたけど名前なんて気にしたこともなかったわ…ーー
心なしか鎧魚の目が潤んでるようにも見えなくないがきっと気のせいだろう。
「そうか、ルサルカは物知りだな」
「でしょでしょ!ママやポセイドンがたっくさん教えてくれたの!だからパパはルサルカに頼ってもいいからね!」
そう言ってルサルカは誇らしげにその胸を張る。
頼もしいやらカワイイやら、やっぱりウチの娘は最高だぜ!あぁ、カメラが無いのが悔しい、カメラがあればウンディーネと一緒にルサルカのあれやこれやのカワイイ写真を撮って撮って撮りまくるのn…
…ゴホンッ、失礼熱くなったわ。
なんだか最近娘のことになると本当に熱くなりやすくて、このままじゃあ土のをバカに出来なくなっちまうな…
それに最近のルサルカは知識を得る楽しさを知ったせいか、今度は経験を得ようとフラフラと出て行く事が多くなった。
下手に陸地に上がって下賎な人間に捕まったりしなければいいが…
ルサルカの事以外にも、最近は気がかりがある。
ウンディーネから報告を受けていた水の妖精達の『生命の格』が落ちているという件だが、世界中に散らばる眷属達を総動員して調べたところ、どうやら勇者くん達がいた『ガルア帝国』が裏で糸を引いてる可能性があるらしい。
クソッ…また『国』か、毎度毎度面倒ばかりを起こしやがって…
俺もかつては確かに人間だったが生き物を生き物とも思わない外道な人間を許しはしなかった。
まだ大きく事を起こしてないため様子見をしているような状況だが…
【大きく動いたら、その時は…】
おっと、あまりの怒りで殺気が漏れていたようだ。急いで納めねば…
「パパ、どうしたの…?今のパパ怖かったよ…?」
「ああごめんよ、ルサルカ。なんでも無いさ、なんでも無いんだよ」
我ながら苦しい言い訳だとは思うが娘にこんな話を聞かせる必要はない。
「ごめんよルサルカ、お詫びになんでもしてあげよう。ルサルカは何がしたい?」
「う〜ん…ルサルカ、パパの魔法を教えて欲しいの!」
「そうか、魔法を教えて欲しいか。いいぞ、それじゃあお家に帰って魔法を教えてあげよう」
「やったぁ!じゃあ早く帰ろう!」
「はははっ、わかったよルサルカ。さ、パパの上に乗りなさい」
俺はそう言ってルサルカがツノにしがみついたのを確認すると海流を巻き起こしながら住処に向かう。
程なくして海中に沈んだ巨大な神社が見えてくる。例えるならば出雲大社に近いだろうか、大きな鳥居と注連縄のかかった巨大な社が深海にあるのはなんとも言えずシュールな光景でもある。
これまでの俺の住処は深海にできた大きな洞穴だったんだが最近、他の連中が続々と立派な神殿やら住居やらを構えてる中、俺だけがまだまともに居を構えて無かったから家(神社)を建てることにしたのだ。
ーーさすがに娘持ちなのに家なしは親としての尊厳とか、娘の教育上よろしくないとか、他の連中に負けたくないとか、いろいろあったのだーー
「さ、ルサルカ。お家に着いたぞ」
「ママー!ただいまー!」
「おかえりなさいルサルカ、それとあなた様も」
「ああ、ただいま。ウンディーネ、出ている間に何かあったかい?」
「はい、火の聖霊皇様から話があるから連絡を欲しいとだけ」
「そうか、ありがとう」
アイツからの話なら後ででもいいだろう。まずはルサルカのお願いを叶えなきゃな。
「それじゃあルサルカ、魔法を教えてあげよう」
「はーい!」
今日俺がルサルカに教えようと思っているのは〈眷属化〉の魔法だ。
今この場にいるのはルサルカ含め全てが俺の眷属だが、中にはウンディーネの眷属やポセイドンの眷属、クラーケンの眷属を兼任してる眷属も大勢いる。
ここでルサルカに眷属化を覚えてもらい眷属を持たせる事でルサルカが何らかの理由で危機的状況に陥っても眷属が助けられるようにしておけばいいと考えたのだ。
ん?何故俺が助けに行く前提じゃないかって?
俺がおおっぴらに動けば間違いなく陸地に甚大な被害がでるだろうし、これ以上派手に暴れたりすれば流石に他の連中も黙ってない。
だから如何に娘の危機とはいえどすぐさまには駆けつけられないのだ…
本ッ当に悔しくてならんがな!!!!
「さぁルサルカ、今日教えてあげるのは〈眷属化〉の魔法だよ」
「〈眷属化〉?それってなぁに?」
「眷属化の魔法はね、パパみたいにお友達や仲間をいっぱい作る魔法さ。ルサルカも一応パパの眷属になっているんだよ?」
「お友達いっぱいできるの!?」
「ああ、そうだとも。でもねルサルカ、この〈眷属化〉の魔法は相手がルサルカのお友達になる事を認めてくれないと出来ないんだ。だからゆっくりやっていこうね?」
「わかったわパパ!」
こうして俺はルサルカを連れてルサルカの眷属探しに出ることにした。
とは言ったものの、俺の中では既にルサルカの眷属にするのはおおよそ決まっている。
「よし、じゃあルサルカ。今からルサルカのお友達になってくれそうな子を集めてくるからな」
「うん!パパ、早く帰ってきてね!」
「おう!任せとけ!」
さて、どいつから見つけるか…
まず始めに向かったのは俺の眷属の中では最古参の一人であるイルカの精霊トリトンの所だ。
「トリトンはいるか!?」
「はっ!ここに!」
なんだか凄く久しぶりにコイツと話したきがするがきっと気のせいだ。
第一昨日もトリトンにあっている。
「トリトン、実はな…かくかくしかじかなのだよ」
「ふむふむ、まるまるうまうまですか…」
俺はトリトンに事の顛末を話した。
「という事でお前に俺の娘の護衛に出せる精霊を一人見繕って欲しい」
「わっかりました!このトリトン、その大役しかと承りました!」
そういうとトリトンは即座に何処かへと泳いで行った。
程なくしてトリトンが戻ると1匹のイルカの精霊の赤ん坊がトリトンの背に乗っていた。
「聖霊皇様、この子などいかがでしょう?私の眷属の中でも最も優れた者たちの娘です」
「ふむ…内包する魔力も多く才能も大きいな。気に入った、この子ならばきっと役目を果たしてくれるだろう。預かっても良いかな?」
「ええ、聖霊皇様のお役に立てたと聞けば親も喜びましょう」
「ああ、ありがとうトリトン。その親達にはいずれルサルカとともに挨拶に向かわせてもらう」
「はい!ありがとうございます!」
こうして俺はまず「子イルカの精霊」をルサルカの元に送った。