俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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ルサルカの眷属探し〜後編〜

トリトンの所から「子イルカの精霊」を貰った直後、俺の姿はこの星の北極にあった。

 

どうやって来てるかって?俺は水を司る聖霊皇だぜ?大気中には大なり小なり水分がある、俺は身体を霧に変えて後は身体の密度を変える事で風を操りながら空を泳いで来たのさ。

 

ここ北極には陸上で生活する俺の眷属が集まっている。

説明するまでもないかもしれんが、ここにいる眷属達は「氷」を司る者が殆どで、熊の精霊や狼の精霊といった者達が生活している。

他にも密林なんかに行けばカエルとかトカゲとかの眷属もいるが、コッチの眷属達の方があっちのよりも愛嬌があって頭がいいからな。

 

「おーい!ノフ!ノフはいるかぁ!!」

 

俺がそう叫ぶと、程なくして1匹の白熊が現れた。

一見するとタダの白熊だが、ノフには額に一本の立派な角が生え、腕は6本、そして特筆すべきはその身体の大きさだ。ノフは体高が軽く5mはあろうかという巨大な熊である。

 

それは最早熊じゃないって?角が生えてるならサイに近い?俺の中じゃコイツはカワイイ白熊なんだよ。

 

「おおノフ!久しぶりだな!」

「グガァァァァァァアア!!!!」

 

俺がそういって近寄ると、ノフも嬉しそうに俺の顔を舐め出す。

 

…ノフ、今の俺霧になってるから舐められねぇだろ…

 

そう思ったがノフは舐めようとするのをやめないのでそのままにしておく事にした。

 

「でなノフ、実は今日来たのはノフに頼みがあるんだ」

「グゥ?」

「おう、頼みだ。今、俺の娘の眷属を探していてな、そのうちの一人をノフにおねがいしたいんだ。ノフは俺の眷属の中でも数少ない陸地で活躍できる眷属だ。だからこそ他の連中には任せられない大役を任せたい」

「グォア!」

「おお!受けてくれるか!ならしばらく待っててくれ、この後他の眷属を見繕ってからルサルカと一緒に会いに行くからな!」

 

そういってノフに一時の別れを告げると、俺はすぐさま次の眷属に会いに行く。

 

 

俺の姿は今度は大陸から離れた孤島にあった。

孤島の近くまで来ると、海の中にいても聞こえるほどに透き通った歌声が聞こえて来る。

その歌に気分を良くしつつゆっくりと泳いで近づくと、岩場の上に乗って歌うマーメイドがいた。

 

「ル〜♪ルル〜〜♪ル〜♪…あら?聖霊皇様ですか?珍しいですわね?」

「ああ、マーメイド。直接君達の島に来ることはほとんどなかったからね」

「私のお誘い、受けてくださる気になったのですか?」

 

実は俺は眷属のマーメイドからしょっちゅう「妾にして欲しい」だの「愛人でもいいから愛して欲しい」だのと言われていたのだ…(ちなみにウンディーネにはまだバレていない)

 

「いや、君の気持ちは嬉しかったが家族である眷属の中で三角関係なんてギスギスしたものを抱きたくはないからな」

「フフッ、ウンディーネはクールに見えて独占欲が強い子ですからね。それで、本日のご用件は何でしょうか?」

「ああ、実はルサルカの眷属を見繕っていてな。今は幾らか回った後で、セイレーンかマーメイドの眷属を一人ルサルカの眷属にしようと思っているのだが、癒しの力を持つマーメイドの眷属が適役と考えてな」

 

そういうとマーメイドは、ぱぁっと花の咲いたような笑顔になる。

 

「まぁ、まぁまぁまぁ!それは嬉しいですわ!実は丁度、私の子の一人に旅をさせてみようかと思っていたのですが、それでしたら旅よりもルサルカちゃんの眷属の方が余程いいですわ!」

 

手を合わせて頬の横で合わせるとマーメイドは「ちょっと待っていて下さいね?」といって眷属を呼びにいった。

 

すると程なくしてマーメイドが戻って来た。

 

「聖霊皇様、お連れいたしましたよ。この子です」

 

そう言ったマーメイドの後ろには、マーメイドに隠れるようにして一人の水の妖精がいる。

 

「ほぉ、君がそうかい。俺は水の聖霊皇。君たちの王だよ。君の名前を聞かせてもらえるかな?」

「は、はい…わたしはミュー、です。マーメイド様の…眷属、です」

 

俺、できる限り優しく言ったつもりだったが俺自身の容姿の前に儚く散ったな…

かなり気の弱い子のようだし仕方ないっちゃあ仕方ないんだが、こうも露骨に怯えられると、それはそれでヘコむ。

 

「ごめんなさいねぇ聖霊皇様。この子歌はとっても好きなんですけど、おしゃべりはあんまり得意じゃないの」

「そうか、なら仕方ないな。怖がらせちまってゴメンよ?でも今日は君に用があって来たんだ」

「……用って、なんですか…?」

「実は、俺の娘の眷属になって欲しい」

「…聖霊皇様、の娘さん?」

「ああ、ルサルカと言ってな。とっても可愛い娘なんだ。君も会えばきっと気に入ってくれるだろう。どうだろうか?無理は言わない、ここは1つ俺と共に来てくれないか?」

「………」

 

俺がそういうとミューは俯いたまま黙り込んでしまった。

 

「ミュー、私は貴女がこの機会を逃さなければきっと大きく成長できると思うの。だから行ってみないかしら?」

「…わかり、ました。その話、お受けします」

「おお!そうか、来てくれるか!そうと決まれば善は急げだ!!マーメイド、すまんな。いずれまた来る!」

「ええ、お待ちしておりますわ。聖霊皇様」

 

こうして俺はルサルカの待つマイホームへと急いだ。

 

 

 

〜ルサルカside〜

 

 

 

 

「パパ、まだかなぁ〜」

 

今日はパパからお友達を増やす〈眷属化〉の魔法を教えてもらうことになってるの。

でも、もうだいぶ経っているのにいつまで経ってもパパは来てくれないの…

 

ルサルカがそう思ってた時。

 

「悪いルサルカ!遅くなってゴメンよ!」

「パパァ!!」

 

居ても立っても居られなくなってパパに抱きついちゃったの。

 

「はははっ、いやぁゴメンなルサルカ。遅くなっちまって。それじゃ、早速紹介しようか。ルサルカのお友達になってくれる一人目だよ」

「キュー!キュー!」

 

そういってパパの後ろから出て来たのはイルカの赤ちゃんだったの。

 

「わぁ〜!カワイイ!あなたがお友達になってくれるの?」

「キュキュー!」

 

私がそう聞くとイルカの赤ちゃんは首を縦に振って応えてくれたの!

 

「ルサルカ、実はこの子まだ名前が決まってないんだ。ルサルカがつけてあげてくれ」

「そうなの?うーんと、えーっとぉ…『フィン』!その子の名前はフィンよ!」

「そうか、良い名前だね。よかったなフィン。ルサルカがお前の名前をつけてくれたぞ?」

「キュキュキュゥ!!」

 

フィンは名前をとっても気に入ってくれたみたいだったの。

ルサルカ、誰かに名前をつけてあげるなんて初めてだったから、気に入ってくれるか不安だったの。

 

「さて、それともう一人。水の妖精のミューだ」

「は、初めまして…ルサルカ、様」

「初めまして、私はルサルカよ。あと、私に様付けはいらないわ」

「な、なぜ…ですか?」

「だって私はパパみたいにすごい事できないもん。パパは水の聖霊皇だからとっても偉いけど、ルサルカはただのルサルカだからよ」

「なら…ルサルカ、ちゃん?」

「うん!それでいいよ、ミューちゃん!」

 

これまでは名前もよく知らない水の妖精さんたちとよく遊んでいたけれど、これからはミューちゃんが来てくれるんだよね!

 

「さてルサルカ、もう一人いるんだがそいつには後で会おう。まずは〈眷属化〉の呪文を教えるからよく聞くんだよ」

「はい、パパ」

 

パパが「よく聞くんだよ」とか「しっかり見ていてね」とか言う時は大体本当に大事なの。前に言う事聞かなかった時は魔法に失敗しちゃってとっても怒られたの…

 

「ルサルカの場合はね…〈水に住まう精霊よ我は聖霊皇が娘ルサルカ、汝に名を与え汝を眷属として力を与えん。その力で我に仕えよ汝が名は……!〉この汝が名は、の後で相手の名前を呼んであげるんだよ?」

「はーい!」

「それじゃあやってみなさい」

 

よしっ!いよいよフィンとミューちゃんを眷属としてずっとお友達にできるの!

 

「こほん……〈水に住まう精霊よ我は聖霊皇が娘ルサルカ、汝に名を与え汝を眷属として力を与えん。その力で我に仕えよ汝が名はフィン!〉」

「キュィキュィー!!!」

 

フィンがルサルカの呪文に応えるように鳴くとフィンを青い光が覆っていったの。

光が消えるとフィンとわたしの間には何かで繋がっているような感じがしたの。

 

「…よし、成功してるぞ。流石は俺の娘だ」

「やったぁ!次はミューちゃんだね!」

「…よ、よろしく…ね、ルサルカちゃん」

「まっかせて!ミューちゃん!」

 

嬉しさで舞い上がっちゃう気持ちをなんとか抑えて平常心で次にのぞむの。

 

「〈水に住まう精霊よ我は聖霊皇が娘ルサルカ、汝に名を与え汝を眷属として力を与えん。その力で我に仕えよ汝が名はミュー!〉」

 

するとさっきと同様にミューちゃんの身体を青い光が覆ってすぐに消える。

今度はミューちゃんとの間に繋がった感じがしたの。

 

「よし、いいぞルサルカ。これで眷属化したお友達はいつでもルサルカが呼べば応えてくれるはずさ」

「本当に!?」

「ああ、本当だとも。さてルサルカ、もう一人待たせているから行こうか」

「うん!パパ」

 

こうしてルサルカはパパに連れられてとっても寒いところまできたの。

 

海の中じゃない、一面真っ白なところ。たしかポセイドンが言ってたわ、こう言うところは「陸地」ってところの「雪原」って言う場所だったはずね。

 

「パパ、ここってどこ?」

「ここは陸上の中でも最も北にある北極と言う場所だよ。ここにもパパのお友達がいっぱいいるんだよ」

 

パパはそう言うとフワッと霧みたいになって広がっていく。

 

パパが広がってからすぐに大っきな影が雪の中から「ドスン…ドスン…」って音を立てて歩いてきたの。

 

「よぉノフ。待たせて悪かったな」

「グォゥ」

 

パパが「ノフ」って呼んだのは見たこともない大っきな生き物でした。

おでこに生えた角、ギラギラとした牙、6本の足、長くて白い毛…

なんていう精霊さんなんだろう?

 

「パパ、この子はなんていう精霊さんなの?」

「ああ、コイツは白熊の精霊だ…たぶん」

「白熊さん?」

「グォゥ!」

 

白熊さんがお返事をしてくれた!

白熊さんは怖そうなお顔だけど、もしかしてクラーケンみたいに優しいのかな?

 

ちょっとだけ抱きついてみようかな?

 

「えいっ!」

「クゥン?」

「わぁっ!白熊さんもふもふ〜!ヒンヤリしてあったかくて、もふもふなの〜!」

 

海で会う誰にもない「もふもふ」表面はヒンヤリしてるのに、中はあったかくて、ふわふわでもふもふなの!

ついつい夢中になっちゃった!

 

「ルサルカ、ノフで遊ぶのはそこまでにしておきなさい。まずはノフにお友達になってもらおう」

「わかったわパパ!」

「呪文は覚えているかい?」

「バッチリよ!…〈水に住まう精霊よ我は聖霊皇が娘ルサルカ、汝に名を与え汝を眷属として力を与えん。その力で我に仕えよ汝が名はノフ!〉」

「グゥォァァァァァァァアア!!!」

 

私が〈眷属化〉の魔法でノフちゃんを眷属にすると、ノフちゃんは私のために雪原中に響き渡るほどの声をあげて応えてくれたの。

 

 

 

 

〜水の聖霊皇side〜

 

 

 

ふぅ、ルサルカはなんとかみんなを気に入ってくれたようだ。本当に良かった。

特にノフを快く受け入れてくれたのが大きかったな、アイツは小さい子には怖がられやすい顔つきしてるからな。

そして、何よりこれでルサルカの心配をあまりしなくても済むな。

 

さて、火のから来てた連絡の件でも片付けるとするか。

 

 

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