俺らはあの日、聖霊皇になった。   作:すぺありぶ

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港町へ

晴れ渡る空、白い雲、そして眼下に広がる青い海と深緑に、真っ赤な屋根の真っ白い建物が連なる港が見えている。

眩しいほどに白い街並みや、小高い岬にある赤茶色の灯台は遠くからでもハッキリと分かり、いよいよ陸地が近づいてきたことがわかる。

 

「野郎共!!!湾内に入った!!錨の準備をしろ!荷は積み降ろしが楽にできるように整理しとけよ!桟橋の横につけたら梯子を掛けるから梯子を持ってこい!ブリッジ!旗を変えて港と連絡を取れ!」

 

船長の怒号混じりの号令が飛び交う甲板は、忙しく走り回る船員や作業に勤しむ下働きで賑やかだ。

 

俺は一人、心地よい海風に吹かれながら甲板の縁からこれから俺達が上陸するだろう港町の様子を眺めていた。

 

「なーにそんな所で一人遠い目してんのよっ!」

 

不意に俺の頬が突っつかれる。……これは薫だな?

 

「いいじゃんかよ。こんなにいい景色なんだから、ゆっくり眺めてたいと思ったんだよ」

「へぇ〜、大地にしてはロマンチックな事考えてるじゃない。及第点をあげるわ」

「何を考えてれば合格点なんだよ…」

「フフン、自分で探すのね」

 

薫はそう言うと、機嫌良さげに俺の隣で海を眺める。

 

「おうおう、朝っぱらからお熱いねぇニィちゃん!」

 

不意に後ろから聞こえた声に振り向けば、そこにはニヤニヤと笑ったジハッドのおっさんがいた。

 

(おっさんめ、あからさまに俺をからかおうとしてやがるな?その手には乗らん!)

 

そう思った俺は咄嗟にやらかす。

 

「いやぁ、枯れちまったおっさんと違ってまだまだ若い俺達2人には、このくらいラブラブなのが丁度いいのさ!」

 

そう言って薫の肩を抱きながら、自分でも胡散臭いと思うくらいの爽やかな笑顔を見せる。

……隣で耳の先まで真っ赤になった薫が足を思いっきり踏みつけてくるが、ここで顔に出せばおっさんとの勝負に負ける!

右足の激痛に耐えつつ、おっさんと互いに無言で睨み合う事数秒。

 

「中々言うじゃねぇかニィちゃん!!こりゃあ一本取られたぜ!!ガッハハハハ!」

「ハハハッ!俺だっていつまでもやられっぱなしじゃないぜ!」

「いやぁ参った参った!ガッハハハ!」

 

おっさんは右手で顔を覆い、笑いながらも俺の勝利を認めた。

 

(おしッ!漸くおっさんから勝てたぜ!)

 

俺は数瞬、勝利の余韻に浸ると、隣の真っ赤なリンゴちゃんになった薫の方を見る。

 

「悪かったな薫、俺どうしてもジハッドのおっさんから一本取って見たくてな〜」

「……ぅなの?」

「え?なんだって?」

「もう!なんでもない!このバカ!」

 

薫はそう言うと俺の左足を踏みつけていく。

 

「いぎゃぁっ!?何すんだよ!?」

「フン!もう知らない!」

 

涙目になりながらの俺の抗議も虚しく、薫から3度目の足踏みを食らうのはその数秒後だった……

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そうこうしているうちに港に魔導船は港へと着港した。

 

「皆様!この度はご乗船ありがとうございやした!!」

「「「「ありがとうございやしたァ!!」」」」

「またのご乗船をお待ちしております!降りる際、足元滑りやすくなってますんでお気をつけてお降りくだせぇ!」

 

魔導船の船長と船員達が綺麗に一列に並ぶと、そう挨拶をして船を降りる人々の手伝いを始める。

 

「ここの人たちって、強面な顔の割には親切で優しい人たちばかりだったね〜」

 

その様子を見ていた美沙がそう言った。

 

「そうね、一見粗野そうに見えたけど、声をかけてみたらとっても丁寧だったしね」

「そうでしたね、お料理も上手でしたし」

「あの魚料理は最高だったな、また食べたいな」

 

そんなことを話しつつ船員さん達がかけてくれた橋を渡って港へと上陸する。

 

「おっしゃー!ミサがいっちばーん!」

 

いち早く駆け下りた美沙が右手の人差し指を掲げて、ドヤ顔で勝ち誇るようにこちらを見る。

 

「はいはい、わかったから荷物忘れていかないの」

「ぶ〜ぶ〜!そんな華麗にスルーしなくても良いじゃん!」

 

サラッと対応した薫に抗議するように、ぷっくりと頬を膨らませ、腕を組んだ美沙が文句を言う。

俺はそれを横目に見ながらも素通りして行く。

 

「ほらほら〜美沙、置いてくぞ〜!」

「あぁ〜もう!まってよみんな〜!!」

 

こうして船から降りて桟橋を渡って石造りの階段を上ると、そこは活気溢れる市場だった。

 

 

「ヘイラッシャイ!ラッシャイ!水揚げされたばかりの新鮮な魚だよー!」

「焼き貝はいかが〜?安くておいしい旬の貝だよ〜!」

「こちらはズィールからの渡り物だぁ!世界樹の葉が手に入ったよ!1枚金貨8枚で取引だ!」

「さぁさぁお立ち会い!!アブラサメの解体だよ!!バラしたらその場で量り売りだぁ!」

「今朝採れたての野菜だよ!魚に合うよ!」

 

 

正面の大通りにズラッと並んだ屋台や店は、海辺特有の磯の香りと屋台で焼かれた魚貝の香ばしい香りで満ち満ちていた。

特に海側は今まさに水揚げされたばかりの魚や貝、海藻なんかが捌かれそれを買い求めにくる商人や街の人であふれている。

 

「うわぁ!凄いわね!」

「おいしそうな匂いでいっぱい〜!」

「なんだか、キラキラしててすごいです!」

 

そんな街の様子を夢中で眺める俺達の隣にジハッドのおっさんが来た。

 

「どうだい、ニィちゃん達?ガルアよりかはいくばかちっちぇ街だが、大陸だけあって活気はガルアの倍近いだろう?その上港町なもんだから貿易品もわんさかだ!」

「ああ、スッゲェよおっさん!ガルアも凄かったがここも中々だよ!」

「そうね!活気があってとってもいい雰囲気だわ!」

「ミサ、はやくお店見に行きたい!」

「とってもいいところですね」

「だろう?だがなニィちゃん達。これから俺らが行くデルシアはこんなもんじゃねぇからな!ビックリしすぎて腰抜かすなよ?」

 

おっさんはそう言って悪戯っぽくニヤリと笑うと「屋台も良いが先ずはコッチだ!付いて来い!」と言って街の中へ入っていく。

もちろん俺たちもその後を追って活気溢れる街の中へと入っていった。

 

ジハッドのおっさんは大通りの繁華街から一本奥まった方へと入って行く。

こちらは大通りとは打って変わって『職人街』といった雰囲気で、大通りから近いものの、賑やかさと言うよりも鉄を鍛える『カーン!カーン!』という甲高い音や木を削る『ゴリゴリ、ショリショリ』といった"仕事の音"であふれているようなところだ。職人達の家でもあるからか、家々が密集していて、時折遊ぶ子供達が駆けていくのが見える。

 

「なんだか、こっちも趣があってステキね」

「なんていうか……『昭和』な感じ?」

「こういう時は、『ノスタルジック』って言うんですよ?」

「へぇ〜、みさと姉物知り!」

 

俺たちはその町並みを眺めながら迷いなく歩いていくおっさんの後ろを付いていく。すると、やがてある一軒の店の前で立ち止まった。

 

なんかこの店、閉まってないか?

 

「おっさん、ここで合ってるのか?なんか閉まってるみたいだけど……」

「いや、ここで合ってる。ニィちゃん達、ちょっとまってな」

 

おっさんはそう言うと、すぅっと息を吸う。

 

 

 

『こおんのバカ弟子がぁぁぁぁぁぁ!!!!いつ迄寝とるつもりじゃぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 

職人街の全ての音が一瞬鳴り止んだような錯覚に襲われる程の怒声が俺たちを襲った。

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