闇に抗う影   作:春の雪舞い散る

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月影の国
新しい舞台


①上陸前

 

 船に戻った大樹は大急ぎで霊玉を飲み込み意識を失ってベッドに倒れ込んだ

 

 暫く眠り込み空腹に耐えかね目覚めた大樹はふらふらと

 

 食堂に行くと針仕事をしながら一人待つミナが居て大樹に気付き顔を上げるとホッと息を吐くのを見て

 

 「ミナさん、何か食べる物残って無いですか?俺、腹ペコで…」

 

 そう言って苦笑いの大樹を見て微笑みながら

 

 「大樹さんのお昼ご飯残してありますから食べて下さい、ただちょっと冷めてますけど」

 

 後半は表情を曇らせまるで料理が冷めてしまったのが自分の落ち度の様に言うミナを見て

 

 (ミナさん、良くも悪くもこの人も変わらないよな…)

そう思いながら

 

 「大丈夫ですよ、船乗りの食事は冷めても美味しく食べられる工夫がしてあるって聞いてるし…

 

 それにもうこれ以上それを気にしてられない位耐えられない程の空腹なんだから…」

 

 そう言ってあっという間に平らげる大樹にお茶を手渡しながら

 

 「大樹さん、少し背が伸びてませんか?服がきつそうですよ?」

 

 そう言われて改めて身体を見ると確かに袖や裾が短く肩幅も少し窮屈なことに気付いて

 

 「どのみち大樹さんが起きて食事したら知らせるようユカさんに言われてますから休んでてください

 

 私の目寸で…見習い騎士のしかないと思いますが用意しますから…」

 

 そう言って食堂から出て行くのを見送りホッと息を吐く大樹

 

 (いよいよ俺も巫女様に仕える騎士になったんだな…)

 

 そう感慨に耽っているとミナが服を一枚持って戻ってきて

 

 「これに着替えたら甲板に命様が待ってますから行ってください

 

 ユカさんは食事の後で色々確認したいから談話室に来るようにとの事です」

 

 そう言われて手渡された服を受けとりながら

 

 「わかりました、取り敢えず着替えて甲板に行きます」

 

 そう答えると微笑みながら頷き今自分が食べた食事の後片付けを何も言わず始めるミナを見ながら

 

 (こういうところがミナさんをお嫁さんにしたいって多くの男達に言わせるんだろうな…

 

 年下の俺がゆーのもなんだけと可愛い人だしな…)

 

 そう思いながら立ち上がると気持ちを切り替え

 

 「ヨシっ、着替えて行くかっ!」

 

 そう小さく気合いを入れ食堂を後にする大樹だった

 

 

 「遅くなりましたっ!」

 

 甲板に出た大樹が命に声を掛けると命は振り返ることなく

 

 「指笛を吹いて」

 

 と言われ意味のわからぬ者達は顔を見合わせたけど

「わかりました」

 

 そう答えると大きく息を吸い込み力一杯指笛を鳴らした

暫くの静寂…波と風の音だけが聞こえていたけど

 

 「来た…」

 

 そう言って命が空の一点を指指すと未だ点にしか見えない何者かが近付きつつあった

 

 「い、一角獣…」

 

 兵の一人がそう呟く通りにその額に純白の角を持つ威風堂々の姿を人達の前に現した

 

 神速の天馬、水の中も自在に駆けるシーホース、燃え盛る炎のように激しい気性の炎馬

 

 そして、王者の様な風格と体躯の一角獣…その一角獣が大樹に「背に乗れ」と言っているように見詰めているから大樹も頷き

 

 「主人の資格が有るか試して下さい」

そう言って飛び乗る大樹に

 

 「初乗りだから無理しないよーに忍が見張ってて、あ…でも忍を後ろに乗せたらまたキンチョーして良いとこなしかも?」

 

 そう笑って言われて大樹は顔を真っ赤にしていると忍にはクスクス笑われ阿と瑞穂にはフッと鼻で笑われた

 

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