今私は先ほどの病院辺りから少し離れにある廃墟にいる
当然1人ではない…
「へへっ」
ニヤニヤした顔で大輔は私を見た
思わず私は目を背けた
少し前
「そんなにニコニコしてなんかいい事でもあったんか?こっちはボロ負けでムシャクチャしてるってのによ」
大輔は含み笑いして蔑んだ目で私を見た
恐怖でうずくまりそうだった…
さっきまでの嬉しい気持ちが嘘みたいに吹き飛び反対に体は震え胸が締め付けられ苦しくなる
急に極度に緊張したのか鼓動が今まで体験した事ないほど早くなっているのが分かる…
まさか大輔とバッタリ会うなんて…
どうすると私は考え……
…る前に私は反射的に大輔を背にして走り出そうとした
ガシッ
手には握られている感触が!
私はバッと振り向くと大輔が私の手を握り足止めしていた
「オイオイ逃げるなよ感じ悪りいな」
捕まった!その事に驚いた私は頭が混乱して無我夢中で抵抗した
「離して!!!離して!!!」
私は手を振りほどこうと必死に抵抗した
ゴッ ドシャ
体が倒れた…
後から頬に痛みが…私は殴られた事がようやくわかった
普段なら一秒も経たなくても分かる事なのに…
「俺に逆らうんじゃねぇくそ女!!!」
それでも私は逃げるために立ち上がろうとしたが
大輔に髪を強く引っ張られ
痛みで顔をしかめてしまう
「無視してんじゃねぇ!!!」
私はとっさに周りを見た
大人たちが何人かはいたが
みんな目線は下にして見て見ぬ振りだ
時折チラチラと遠巻きに見てそそくさと去って行く
この光景だけでも私の心は黒く塗りつぶされ深くえぐられていく…
「このくそ女!俺に対していい度胸してんなぁ…」
「そうだちょうどいいやお前で憂さ晴らしでもするか」
さっきまではあれ程抵抗していたのに
もうそんな気力もなくなってしまった…
いかに私が無力なのか…
いかに大人が無関心なのかまざまざと見せつけられた…
「ジロジロ見てんじゃえ!!!」
「いや…その……」
よっぽどチラチラ見る大人が目障りだったのか大輔が声を荒らげ1人の男性に向けて声を上げた
年はお父さんより少し若い感じだった
言われて驚きそそくさと逃げるように去る男性
大人ってこんな物かな…
ちょっと前の自分なら元々期待なんてしなかったはず
期待するだけその後絶望の幅が大きくなるだけだとよく分かっていたのに…
ふっと無意識に手元に何かを大事そうに持っているのに気づいた
よく見ると手にはケーキの箱が…
多分この男性1人で食べる訳でもなく家族に買ってあげた物だろう…小さいお子さんに奥さんへの手土産
よく考えてみればこの眺めているだけの大人の中には家庭を築いて必死に守っている人もいるはずだ…
「チッ!ウゼェ奴らだ…1人後でしめあげようか」
「ちょっと待て!」
「待って!」
こんな事で何か怪我でもしたら
いやこのご時世しかもこんな奴だからもしもの事を思うとその人本人や友達に親戚にそれに家族に迷惑をかけたくない
「ついて行くから早く…」
私は黙ってついて行くことにした
こんな目に遭わされているのに赤の他人にここまで心配するなんて…
やっぱり私はお人好しだなとつくづくそう感じた
どうせ何度も経験した事だ…
ただ惰性に耐えればいいだけの話し…それで全て丸く収まる
そうして今に至る
廃墟の中
「オラっ!」
大輔は私を無理矢理連れて来るなり手荒に放り投げた、私は力無く崩れるように倒れてしまった
この廃墟はきみわるがって
他の人は来たりしない
「ムシャクシャしてる時にテメーがいると都合がいいぜ」
つまり助けが来ない…
「どうやって楽しもうかな」
侮蔑の笑みを含める大輔が私に近づいてくる
私は倒れた姿のまま顔だけ上げて大輔を見続けた
いつもの事だ……
ただただ何も感じる事なく時が過ぎるのを待てばいい…
いつものように
我慢すれば………
やっぱり無理だ……
私は勢い良く立ち上がり両手で大輔を力一杯突き飛ばそうとした
少しはグラッとよろけたがやっぱり女子の腕力ではこの位しか出来なかった…
「舐めんじゃね!!!クソ女!!!」
ドガッ バッ
怒声を聞くや否や思っ切り頭を殴られ身体が倒れた
そしてすぐさま馬乗りになり片手で私の首を掴んだ
「調子にのるなよ彩菜!!!」
私は無我夢中で何とか逃れようと手足を激しく動かす
そんな私を大輔は手に力を込めて叫ぶ
「レン君のいないところでオメーに手を出すなって言われているけどな」
「関係ね!!!テメーは俺らのおもちゃだってわからせてやるよ!!!」
首が絞められて苦しい何とか必死に首も手足も動かし身体全体で抵抗する
何とか大輔の手の所まで首を動かし必死に噛み付いた
「イッテ!!!」
思わぬ反撃に大輔は顔を歪めその場から離れて噛まれた手を片手で抑えた
私はその隙に立ち上がり出口に向けて走り出す
でも手を掴む感触が……
そのまま勢い良く引っ張られて大輔と私が面と面が合うと大輔は思っ切り殴り私は出口とは反対方向へゴロゴロと転がり倒れた
「オモチャが歯向かってるじゃねぇ!!!」
頭が痛い…右目がしみる……
あっちこっち身体が痛む…
打撲と擦り傷でボロボロの身体に鞭を打って
起き上がろうと手と膝をついて顔だけ上げた。
真っ赤な形相で大輔が向かってくる。
どうせ助からない…
誰も助けてはくれない……
いつも絶望を抱えて過ごしていた……
だから今までなら惰性に耐えられた…
…でも今は違う もう耐えられない
いやだ…いやだ…
そんな時思い浮かぶ…
いつもへらへらしてふざけた事ばかり言ったり何をしでかすかよく分からないけどいざって時は有無を言わさず必ず助けてくれる優しくって信頼出来る大人を…
「助けて…」
「はぁ?」
「助けてぇーーー!!!!!ライバックーーーー!!!!」
私は叫ぶように助けを求めた
助けを求めるなんてもう何年ぶりのような感覚だった
そんな私に対しては大輔は蔑んだ目でお腹を抱えて大笑いしてた
「アッハハハハハ!!!お前今頃何言ってるんだよ!!!」
確かに今頃になってだ…
でも助け求めずにはいられなかった
呼べは助てくれると淡い気持ちを持って叫ぶ私
それに対して嘲笑う大輔
「誰もお前みたいなボロ雑巾助すけるわけないだろう!!!!!!」
「それにライバァックゥーーーーって誰だよ!!!!!」
「俺の事だよ」
「あっ?」
突然の声に振り返る大輔
その直後だ大輔の向かいにいる人が
左手で大輔の右肩を掴むと引き寄せ
右手を大輔の胸元辺りを掴み腹部へ膝蹴り
股間辺りに蹴りを素早く入れ込む
それによって膝をついた大輔に容赦はせず
さらに膝蹴りを叩き込み上半身が浮きすかさず手刀を腹部 喉へ打ち込み最後は顔面に拳を叩き込んだ
打ち込まれた大輔は後ろへ吹き飛ばされる形に倒れた
「あっ…」
思わず声が出てしまった
だってそこにいるのは…
「遅れてすまない彩菜」
「彩菜!!!大丈夫!!!」
「彩菜!!!遅くなってごめん!!!」
「みんな…」
ライバック…
それに結子に恵美も来ているなんて…
「待って今手当てするわ」
結子が私の側に寄り肩を貸してくれて
大輔から離れて出口付近まで移動した
一方大輔はライバックの打撃に大ダメージを受けており顔は苦痛で歪みうずくまってケホッケホッと咳をしていた
「俺が来たからにはもう大丈夫だ」
「みんなありがとう…ありがとう…」
私はその言葉に涙が溢れでた
嬉しかった
今まで駆けつけてまで助けてくれる事なんてなかったし、なりより信頼出来るライバックや友達の結子に恵美が来てくれたのがとても嬉しかった
結子は肩に掛けていた小さなポーチの中からハンカチにガーゼに消毒液に包帯にハサミに絆創膏を取り出した
そしておでこ辺りから出血した箇所をハンカチで拭き取ってくれた
「彩菜大丈夫?」
心配そうに見つめる恵美に私は大丈夫と呟いた
「テメェ誰だよ!」
声の方へ私に結子は向く
大輔だ、肩を少し落としながら顔だけはライバックの方へ向けていた
「お前程度の人間に名乗るにはもったいないが答えてやろう」
「俺の名はライバックだ」
「ライバック?」
「そうだ、お前を地獄へ葬る男の名だ。覚えておけ」
凄みのある声で大輔に話すが大輔はあっけらかんとしていた
「地獄へ葬るだと…それがどういう意味なのか分かってるだろうな?」
「簡単な話しだ、この場で馬鹿が1人葬れるって事だ」
「あんた馬鹿だろ!俺には頼りになる仲間がいるんだぞ!」
「分かるか?お終いって事だよ!」
ニヤリと余裕の表情を浮かべる、
大輔としては自分に危害を加えれば一真やレンが容赦しないと脅しているのだろう…
でも相手があまりにも悪すぎる
「それってひょっとして一真とかレンとか言う馬鹿供の事か?」
「なっ!!!」
驚く大輔、無理もない赤の他人の男にまさか仲間が誰なのか分かるなんて普通じゃありえない話しだ
「その一真にレンとか言う馬鹿供もキチンと地獄へ葬むってやる、だからお前は安心してクタバレはいい」
ニヤリと諭すように話すライバックに
大輔は顔を引きつった、相手は本気だ
「なあなあおじさんよ、そんなクソ女守って何なるんだ?」
「そんな女助ける価値も無いんだぜ、それよりももっと楽しい事しようぜ」
「イライラする事あるだろう、この女を殴ればスカッとするぜ」
何とか戦いを避けようと説得する大輔
その下品な説得に恵美や結子が何も感じない訳無かった
「あんたいい加減にしてよね!!!こんなに傷付けて絶対に許さない!!!彩菜はあんた達の物じゃ無いんだよ!!!」
あまりの言葉に恵美はついに激昂したが…
「ハッ!今まで見捨てた奴が偉そうにしてんじゃねぇ!!!」
「うっ…それは……」
大輔の言葉に言葉が詰まる恵美、結子の方を見ると顔を伏せ気味になり包帯を巻いていた手が止まっていた
大輔は言葉を続けた
「そうだよ、物だよ!汚れた女だ!」
「最初は抵抗してた癖に今じゃすんなり俺たちを楽しませてくれる、ゴミ箱だよ」
「え?汚れた女……ま…さか……」
大輔の言葉に恵美が反応した
私はもう顔を上げる事が出来なかった
できることなら友達に知らたくなかった
このまま消えて無くなりたいと思った
私は所詮汚れた女だ……
「そのまさかだよ!そんな事知らずに何が友達だ!」
「いい子ぶってんじゃねぇ!!!」
私はチラリと恵美を見た
「そ……そん…な…彩菜がこんな目に…あっていたなんて……それ……なのに……私は……私は……」
恵美が呆然と立っていた
顔には生気がなく絶望に近い表情だ
両手を血が滲むくらい握りしめていた
そして顔をうつ伏せて何かボソリと呟き続けた
何だろうと思ったが
段々と聞き取りやすくなるにつれて私は血の気が引っこ抜かれた
「………て………る…」
「こ……て………る…」
「こ……して…やる」
「こ……してやる」
「こ・してやる…」
「ころしてやる…」
「殺してやる」
「殺してやる!!!!!!」
「お前なんか殺してやる!!!!!!」
私は驚愕した…その目は……
恵美の目には涙をためて血走って眼つきは鋭く釣り上がり殺意がほとばしる勢いだった
恵美の目には見覚えがあった…
前に鏡で偶然見た復讐に満ちた私と同じ目……
結子の方へ素早く走り寄りハサミを奪い去るとすぐさま大輔の方へ突進した
「死ねぇ!!!大輔!!!グシ刺しにしてなぶり殺してやる!!!!!」
「何やってるんだ!」
振り向いたライバックはその辺に転がっている空き缶を恵美の顔面に投げつけた
すると恵美は目を瞑り動きが止まる
その隙に近づき恵美のハサミを持つ手を捻り上げて痛みでハサミを離させた
更に後ろに回り利き手だけそのまま上へ捻り上げ身体は下向きになった
自由に動けなくなったなおも恵美は激しく抵抗しながら叫び続けた
「離して!!!離して!!!私は!!!こいつを殺さなきゃいけないの!!!こいつを殺す!!!殺す!!!刺し違えても殺してやる!!!」
「このこんにゃく頭が!お前は自分で何をしでかしているのか分かっているのか!」
「彩菜を苦しめたこいつを殺そうとした!!!それだけ!!!何が悪いの!!!何で止めるの!!!あんたは彩菜がこんな目にあって何とも思ってないの!!!」
「私は許せない!!!助ける事もなく謝れば許してくれるなんて甘ったるい私自身も許せない!!!復讐して殺して彩菜に償うんだ!!!」
「こいつも殺して一真も蓮も殺す!!!彩菜に危害を加えた奴らも全て皆殺してやる!!!私の手で殺して償うんだ!!!この身が汚れても復讐を果たすんだ!!!彩菜に償うんだ!!!」
「邪魔するな!!!!!!」
怒りに身を任せた恵美は激しい勢いのまま言葉を並べた
「彩菜を見ろ」
私はライバックの言葉にふっと彩菜を見た
そして身体中の血が抜けるような感覚に襲われる事になった
彩菜が肩を抱き寄せて震えていた
「酷く悲しんでいるだろう…自分のせいでお前が復讐に囚われていると責めているんだ」
「あ……」
「お前の安易な殺意が彩菜を深く傷つけ悲しませた…その事をよく考えろ!」
私はなんて取り返しのつかない事を…
頭を思っ切り金槌で叩かれたごとくフラフラの意識を保ってやっと彩菜の側に着いた
「彩菜…私…」
私は本当に馬鹿だ……そんな事したら彩菜が自責して苦しむ事ぐらい友達なら分かっていたはずなのに
やっぱり私は彩菜の友達なんかじゃ無く迷惑な存在だ……
「恵美…言い方すごく変だけど気持ちはすごく嬉しいよ…」
「でも私みたいに同じ苦しみを味わって欲しくないな…」
「恵美はやっぱり元気と明るくが一番だよ」
「だからもうそんな事言わないでね」
目に涙をためて笑みを浮かべる彩菜に私は涙が止まらなかった
「彩菜…ごめんね…ごめんね…友達なのにこんな事も考えずに本当にごめんね」
彩菜は私を抱きしめてくれた
彩菜だけじゃない結子も涙を流して抱きしめてくれた
「おやおや今更友情ごっこてっかーお暑い事で」
ライバックは大輔を見据えた
「このクズめが…俺を本気に怒らせたな…」
「本当は最後辺りに痛め付けるつもりだったが予定変更だ…真っ先にお前を処刑してやる」
「覚悟しろ!」
「俺を殺すってかぁー」
「本来ならばお前をなぶり殺してやりたいが…彩菜を苦しめるわけにはいかない」
「だからと言って殺してやらないと俺の気がすまない」
「そこでお前を殺す一歩手前までとことん丁寧に追い詰めて絶望を味あわせてやる」
「やれるもんならやって見やがれ!」
そう言って
大輔はポケットから果物ナイフを取り出した
「なんだそれは?」
ライバックが聞くとは大笑いして答えた
「馬鹿かお前は!ナイフだよ!」
大輔は鼻で笑った
「ナイフ?それがか?オイオイそんなおもちゃがナイフだなんて…お前そんなおもちゃで俺を倒すつもりか?」
「ハァ!じゃお前はどうするんだ!」
「んーそうだなー……じゃ俺もナイフを使うかな」
そう考え唸るようにして言うと腰からナイフを取り出した…
刃渡りは大輔のナイフと同じだが…
鋼色でナイフの一部がギザギザで背の部分は少し湾曲している
グリップは黒っぽい銀色で波打つような形状で掴みやすくなっている
普通のナイフとは明らかに違う…
人を殺す為に作られたナイフだと言うのはこんな私でも一目でわかった…
「な・なんだそりゃ…」
想定外の本格的なナイフに顔を真っ青にして言う大輔
対照的にナイフを持ち裏表見つめてから大輔を見て余裕で答えた
「いいか坊主よく覚えとけ、ナイフとはこいつのことを指すんだ」
このセリフに大輔のプライドが傷つけられて逆上した
「ふっふざけんじゃねー!!!」
大振りでナイフを右に振り回しライバックに襲いかかる大輔
ライバックは慌てることなく後ろに下がりかわした
続いて大輔は左右と大きく踏み込んで大振りに振り回す
ライバックは右から来るナイフは下がって躱し
左から来るナイフは空いている手で捌いた
啖呵を切った割に攻めずに避けるライバックに大輔は調子に乗り出した
「へ!口先ばっかりだな腰抜けめ!どうした!かかって来いよ!」
両手の指を自分に向けて軽く曲げて
挑発して煽る大輔にライバックは挑発に乗ることなく冷静に対処した
「俺に対して挑発するとはいい度胸だな…」
低くゆっくりであるが迫力を感じるライバックの言葉に
体の血の気が一瞬に引くのを感じた
まるで瞬間的に氷漬けされたみたいな気分だ…
2人を見ると同じく顔を真っ青にしていた…
「見ていて思ったんだがナイフの使い方が分かっちゃいないな…よし俺がナイフの手ほどきをしてやるよ」
「ハッ!見掛け倒しが!先公ヅラしてんじゃねぇーぞ!」
そう叫びナイフを連続で真っ直ぐに踏み込んで刺しに来る大輔
「ホラ!ホラ!喰らえ!!」
ライバックは相変わらずに横に避けたり空いた手で捌くぐらいだ…
「全くなってないな…全体が大振りで無駄な動きが多い上にナイフの向きが単調だからすぐにどこを刺しに来るのか分かる」
「説教してんじゃねーぞ!ザコが!」
確かに大輔はナイフを大振りに振り回しているだけの感じだ
刺す時も包丁を握るのと同じ持ち方でそのまま真っ直ぐに刺す
対照的にライバックは小刻みに両腕を上げ下げしている
そのスピードも一定ではなく速かったり遅かったりだ
そしてナイフは逆手持ちにしているが普通の持ち方に戻ったりして
よく見るとナイフの向きを常に変えていて不規則な動きをしていた
まるで蛇のような動きだ
大輔は相変わらず大振りで右に切りつけにきたが
ライバックは左腕で大輔の右腕を払いのけ
その隙に右左ナイフを素早く振り大輔の頬に切りつけて前蹴りを喰らわせた
大輔は後ろに蹴り飛ばされて前へ倒れ込んだ
そして起き上がろうと片膝を突いて空いた手で頬を触った
そこには血がべっとりと付いていた…
「グァアア!!!………チ…血が!!!」
切りつけられて頬から出血している事に驚愕する大輔にライバックはケロリと答えた
「お前は馬鹿か?切られれば血が出るに決まっているだろう?」
いかにもバカにしたセリフに
逆上した大輔が怒りに任せて真っ直ぐに踏み込んで刺して来るが
ライバックにあっさり右へ躱され
そしてその隙に大輔のナイフを持つ右腕をライバックは素早く3回連続で刺して最後に右肩を刺し距離を空けた
大輔はよろめきながら後ずさりして空いた手で刺された右肩を掴んだ
切りつけられた腕や肩から血が滲み出てきた
「グアァァー!!!クッ!!!調子に乗ってんじゃねー!!!」
大輔は右斜め上から思っ切り振りおろして切りつけようとしたが
ライバックは左へかわし
その際ナイフで大輔のナイフを持つ腕を下から上に深く切りつけ
さらに頬や脇腹や肩あたりをまるで蛇が素早くしなる様な動きを彷彿させる華麗な捌きで連続で刺し切り続けまた距離を取った
「グアァァー!!!…クッソォーー!!!」
再び切りかかろうとナイフを持つ腕を後ろへ振りかぶるが
ライバックは的確に動きを見抜いて間入れずに蹴りを大輔の腹部に叩き込んだ
「グッフォ!!!」
大輔は地面に手をついたがまた立ち上がり
今度は右に切るとフェイントを仕掛けて左から切りつけたが
ライバックは右腕を縦にして
ガードした
ちょうどガードした腕は大輔のナイフを持つ手首に当たり動きが止まった
その隙にライバックはナイフを空いている手に持ち替えて思っ切り大輔の二の腕辺りに振り下ろし二度深く切りつけた
「ギアアァーーー!!!」
何回も刺さているから大輔のナイフを持つ腕は血まみれになっていた…
「死ねエェェ!!!」
今度はナイフを上に振りかぶったかと思えばすぐに引っ込み真っ直ぐに刺すが
ライバックに深く傷を負った二の腕を空いた手で強く掴まれた
「ああああぁーーー!!!」
痛さで顔が歪み悲鳴をあげる大輔
だがライバックは無慈悲にも胸と肩のライン辺りをナイフで連続で上から振り下ろして刺し続けた
刺す度に血が吹き出すがライバックは躊躇する事なく刺す続けた
「アアァァーー!!!ギアアァーーー!!!」
大輔の悲鳴が響き渡る中で再びライバックは大輔と距離を取った
ライバックは相変わらずの余裕の様子だが…
大輔の方はさっきの威勢はなく
顔色は真っ青で目が虚ろで肩が下がり猫背みたいになっていた
「あ……あ………ああ…………」
大輔の悟ったのだろう…
今目の前にいる相手は想像以上に恐ろしく容赦無い人物だって言うことに…
そして勝ち目がない事も…
バッタが跳ねたかの様に大輔は慌てて後ろに向いて走り出した
振り向き際急旋回したから体がついて行けず体がよろけて片手を地面につけてその後体制を立て直して走った
走る大輔の背中をライバックは持っていたナイフを投げつけた
ナイフは大輔の太ももに見事に深く刺された
刺されれば当然立つことも出来ず身体を崩した
「ギャアアアーーー!!!」
「どこ行くつもりだ?今更逃げるはなしだぞ」
ライバックとはそこそこ距離を取れたからなのか
大輔は振り向いて答えた
「アハ…アハハ、アッハハハハハ!!!」
「どうした?変なものでも食べたのか?」
「俺はバカだな」
「今頃気付いたのか?まぁバカなお前が自分で気付いただけでも第1歩だな、褒めてやるよ」
「テメェがだよ!!!このイカれ野郎が!!!」
すると大輔はポケットから何かを取り出した…
スマホだ!!!
「最初からこうすれば良かったぜ」
「これでお前はおしまいだな」
「さて、それは果たしてどちらの方かな?」
「もしもし!!!」
ただいまおかけになった電話番号は
「大好きなママに電話が繋がらなかったのかな?」
大輔の顔が恐怖で青ざめていき狂ったかのように何度もスマホをいじった
「ど!!!どうなってるんだ!!!」
「知りたいか?しょうがないな〜」
するとライバックの懐から何かトランシーバーみたいな小型の機械を取り出した
「これは電波妨害機って言ってなこの建物にいくつか設置させてもらった」
「こいつが作動している限りこの辺り一帯は電話やメールなどの通信は一切使用できなくなる」
私のスマホも見てみると確かに密閉された空間でもないのに圏外になっていた
「つまりお前はどう足掻こうがここから逃げる事は出来ない」
「それでも逃げたければ俺を倒してこの」
ライバックは電波妨害機を懐に入れると今度は何かのボタンを取り出した
「リモコンを奪う事だな」
「イ!イ!イカレテイル!!!クルッテイル!!!」
「そうか?俺はそうは思わないがな、人にはなぜかよく言われるんだよな」
「さてナイフの授業はお終いだ、これからは懺悔の時間だ」
「さっきのおふざけも含めてたっぷり懺悔させてやる」
その言葉を聞いた大輔はスマホをポトリと落とし
顔面蒼白になり体が震えていた
「あっ……あっ…うわああああぁーーーー」
窮鼠猫を噛むがごとく
追い詰められた大輔は大声をあげ恐怖と狂気に満ちた顔でライバックに向かって走り出した
利き腕はもう散々刺されて言う事聞かないのか左手でナイフを握り振りかぶりながら走り出す大輔
当然右足の太ももナイフが刺さっているのでヨロヨロながら近く
対照的にライバックはケロリとした余裕な表情だ
大輔がナイフを振り下ろすが
ライバックは右へ少し回避して避けてその間に左手で大輔の左手を掴み下へ引っ張った
大輔はくるりと背中から床にぶつけた
体勢的には仰向けの大輔の顔の隣にライバックが立っている状態だ
大輔はライバックの足を斬りつけようと振り回すが
先にライバックが大輔の方に向いて右足で
大輔の左手を踏みつけナイフを振り回せないようにして
さらに左足で大輔の左ひじを思っ切り蹴り飛ばした
バッキッ!!!
大輔の腕がV字に折れ曲がった
「ああああぁーーー!!!」
悲鳴を大輔を尻目にライバックは左足で大輔の左肘を踏みにじった
「ああああぁーーー!!!!」
大輔の叫びが嫌でも耳に響く中ライバックは何とも感じてない表情だ
「踏まれて痛いのか?それはすまないな、ならこっちの方を踏んでやるよ」
「やっ・や・やめろ・・・」
そう言うと今度は血まみれの右腕を踏み出した
しかもご丁寧に両足で体重を思っ切りかけて踏みにじった
「ぎゃあああああぁぁーーーーーーー!!!!!」
大輔としては反撃したいが右腕は踏まれて使えない
左腕は折られて動かせない
それよりも激痛でそれどころではない
涙と鼻水でクシャクシャ表情に
更に太ももに刺されたナイフをこれでもかとえぐって引き抜いた
「ギャアアア!!!!」
「ぎゃあぎゃあ ぎゃあぎゃあ喚くなうるさいな、男なんだろ」
そう言うとライバックは踏みつけるのをやめて
テクテクと大輔から離れて距離を置いた
大輔は痛みでうずくまっていた
そして左腕は使えないのでナイフを右手に持ち替えた
再びライバックに向けて走り出しナイフを思っ切り突き出した
ライバックはその動きをみきり
右腕で大輔のナイフを持つ腕を右へ払い
その刹那に左手の裏拳が大輔の顔面に直撃した
「グアアァ!!」
そして右手はナイフを持ちながら大輔の右側のそでを掴み
左手は大輔の左肩辺りを掴んだ
「さてここで問題だ」
「このナイフをわき腹に刺すとどうなるかな?」
ライバックはニヤニヤと笑いながら言った
大輔の苦しむ様を楽しんでいるみたいだ
その反対に大輔は恐怖で顔を引きつらせていた
「やめろ…やめろ…」
「答え合わせだ」
そう言うとナイフを大輔のわき腹に思っ切り刺した
「グギアアアァァーーー!!!」
大輔の叫びが響く中ライバックは大輔を乱暴に放り投げた
束縛を解かれた大輔は刺された脇腹や腕を狂ったかのように乱れながら出血を確認した
「血がーー!!!抜けてる!!!死ぬーー!!!血がーーー!!!」
「おや?まずいなー、このままじぁ死ぬな」
「死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!いやだぁぉぁーーーーーー!!!」
そう言って失神した
「ライバックこれってやばいんじゃ…」
これだけ出血していれば医学の知識が無くても危険な状態ぐらいは分かる
「確かにこのままならこいつは確実に死ぬな…」
「ライバック止めて!私はそんな事望んでないわ!」
「こんなクズにも慈悲をするなんて彩菜は優しいな、いい嫁になれるぞ」
「そんな悠長なこと言わないで!」
相変わらずこんな時でも呑気な事言えるのはさすがはと言うべきだなと彩菜は思った
「安心しろ簡単な手当てさえすれば助かる」
「おい、恵美!お前がやれ」
「私が!」
恵美はまさか自分に来るとは思っていなかったのでびっくりしてライバックを見つめた
まさか恵美にやらせるなんて…
「ここには他にも恵美って名前のやつがいるのか?」
「なんだって私が…」
「俺と結子は妨害機を片付けるから手が空いているお前にやらせるまでだ」
「くれぐれも刺し殺すやら手を抜くとかしない事だな、彩菜を悲しませたくなければな…」
ライバックが釘を刺すと渋々頷いた
「…分かった…どうやれば良いの?」
「直接圧迫止血法でやれ」
「…なにそれ?」
「直接圧迫止血法だ、分からんのか?」
「分かる訳ないでしょ!私普通の中学生なんだよ!」
「殺そうとしたくせによく言うな」
「そいつの服でも剥ぎ取って傷口に塩でも塗りこむかのように思っ切りぶち込んでアホみたいに強く押し続けてやれ」
「最初からそう言ってよね!」
「恵美…」
私は心配で仕方がなかった、大輔の手当てなんて…
「…大丈夫あんな事しないから安心して」
そう微笑むと大輔の所へ行った
「でもよく私の居場所が分かったわよね?どうして?」
「えっと…それはー……」
途端に2人の顔が曇り視線がライバックの方に向く
「そんなの決まっているダウジングで探したのさ」
「ダウジング?」
「針金をL字に曲げて持って動き回るやつさ、知らないのか?」
「知っているわ」
この現代の文明に置いてそんな古典的な方法を使う訳がない
「そう言うことを言いたいんじゃなくて…ねぇ ライバック 本気でそれでしら切るつもりなの?」
「分かったよ、これだ」
ふて腐れながらそう言うとポケットから100円玉みたいな丸く薄い黒色の物体を出した
「何これ?」
「発信機さ、これで分かった」
「発信機!いつ付けたの?」
相変わらず知らぬ間にこんな事を
「君が病院でぐっすりおねんねしている時さ」
まさかあの時にそんな細工まで施していたなんて…
私は服などを触ったりして見つけようとするが見つからない…
「靴をよく見た方が良いんじゃないか?」
ライバックの意地悪な笑顔にイラっとしながらも靴を脱いでよく見るが見つからない…
そんな様子にライバックはニヤニヤしている
幼い子供が友達の大切な物を隠して慌てふためく様子を楽しんでいるのと同じ原理だ
「靴底のつま先の側面をよく見ろ」
そう言われて目を凝らして見るけど分からない
「無いわよ?」
うんざりに答えると
ライバックは分からんのかと言わんばかりのニヤついた顔して言った
「少しつま先を擦ってみろ」
そう言われて脱いだ靴のつま先を擦る
すると綺麗に切られた切り口が出て来た
手にはその靴と同じ塗料が塗られていた
いつもながらの鮮やかな細工に驚くばかりだ
「全然気付かなかった」
「でもやるなら私に一声かけてよね」
「話したら驚かせる楽しみがなくなるだろう」
「それに迷子なった時は役に立つしな」
もう呆れるしかなかった
先ほどの会話で思い出した1つ気になる事を聞いた
「気になったんだけどいつあんな仕掛けしたの?」
「君がここに連れられた後に準備したのさ」
「一人だと大変じゃないの」
「こいつら達にも手伝わせたから楽だったぞ、まぁ結子はともかく恵美は物分かりが悪いから教えるのに苦労したけどな」
「はいはい、物分かりが悪くて申し訳ありませんでした」
大輔の手当てをしながら恵美は返事をした
ライバックにはとても感謝していた、大輔の件や恵美の事も含めて
でももうライバックにはこれ以上私の為に汚れ役をして欲しく無かった
「ライバックあのね、これからは恵美と結子がいるからこんな事までしなくても良いよ」
「私は大丈夫、だからライバックも私に気にかけなくてもいいから」
するとライバックは彩菜を見据えて答えた
その表情は真剣そのものだ
私もビクッとしながら聞いた
「そうか……これは俺の考えだが」
「こんなクズ共は今すぐにぶっ潰すしかないな、それもこれ以上ない程 徹底的にな」
「でも…もうこれ以上しなくても…恵美や結子もいるし大丈夫だよ」
「彩菜…君は優しい……だがな」
「やめて下さいと素直に言えばイジメは無くなると君は本気で信じているのか?」
「ある日美しい天使が舞い降りて彩菜ちゃん今までご苦労さまイジメを無くしてあげるねと言ってみんなを改心させるのか?」
「それともゴーストがいじめっ子を毎日説教して君を護り続けてくれるとか?」
「それとも!どこかの偉大な神か精霊が現れて!巨大なスイッチをひねると一瞬にして目の前にはイジメが存在しない綺麗な世界が表れるとか?」
ライバックは珍しく声を上げて説教じみて話しかけた
たしかにライバックの言う事は事実だ
それは紛れも無いだろう
「君の守護霊がイジメを無くすのを手伝ってくれるならいいさ」
「平和的に話し合いで全てが円満に解決できるなら俺もそうしたい」
「でも現実は残酷だ!誰も助けてはくれないし聞く耳も持たない!見て見ぬ振りで何かあれば責任のなすり付け合いだ!」
「本当に重要なのはこの残酷な現実にどう立ち向かうかだ!」
「暴力には頼りたくはないが!あの手のどうしようもないバカに選択の余地もない!やるからには確実に潰す!」
「それに君もこのままあいつらが何も報いも受けずにノホホンとするのは許せないだろ」
「それは……ないと言ったら嘘になるけど……」
いくら私がお人好しでもあんな目に遭わされて何もお咎め無しで過ごせるほど私は聖人ではない
「俺は心優しい彩菜をこんな目に合わせた奴らを許す訳にはいかない、全員まとめて地獄を叩き落としてやる」
「だが彩菜は優しいからクズ共を直接痛ぶる事はもう出来ないだろう」
そう言った後ライバックは結子と恵美の方を向いた
「そこでだ…お前たち2人には俺の手足として存分に体で稼いでもらう」
「裏工作に偵察に誘拐何でもやってもらうぞ」
「つまり汚れ役を引き受けろという事ね…」
結子がそう呟く
「そう言うことだ」
そんな恐ろしい事に友達を巻き込ませたくない!
私はライバックに訴えた
「そんな!2人にそんな事させるなんて」
「いいわよ…どっちみちケジメをつけないといけないしね」
結子が私の言葉を遮った事にも驚いたが言った内容でさらに驚いた…
そんな私の内情を知らずか結子は続けた
「これで私の罪が償えるなら安いものだわ」
「それに私が言うのもおごがましいかもしれないけど、彩菜をこんな目に合わせた奴らをもう許すことは出来ない…」
結子の目は据わっていて
握りこぶしを力の限りに握りしめていた
恵美も同感だと言わんばかりに深く静かに頷いた
ふいに結子はライバックの方へ視線を動かした
「ねぇ、所でもし万が一私が断ると言ったらどうするつもりなの?」
「猛獣を解き放すと言ったらどうする?」
「どっち道選択の余地はないわね…」
私は確信した
ライバックは結子と恵美をこの復讐に深く巻き込ませるつもりなんだ
二度と後戻りできないよう私に対する罪悪感を利用して…
二人の心の傷をえぐり従わせるやり方に憤りを感じてライバックを睨みつけてやった
それに対してライバックはいつも通りのケロリとした顔だ
「別に脅してはいないぞ、ちゃんと本人達から志願したんだぞ」
「そのやり方が許せないの」
「彩菜大丈夫だよ、私達のことは気にしなくてもいいから」
恵美が心配そうにして私に話しかけてきた
ここまで来たら2人はライバックに協力する事は間違い無しだ
私が駄々をこねたら結子と恵美に余計な心配をかけるだけだ
「分かったよ恵美…」
だから私は諦めた…
「でも結子と恵美を深く傷付ける事があればたとえライバックでも許さない…覚えておいてね…」
私はライバックの目を見据えて話した
「分かった、肝に銘じるよ」
「さて、彩菜を家まで送ろう」
「恵美と結子はここに残って残業だ」
「分かったわ」
「残業やだなー」
「ブツクサ言わずにしっかり働け」
「はいはい」
結子と恵美がそう答え私はライバックの車に乗った
そしてあっという間に私の家に着いた
「じやあな、しっかり休めておけよ」
そう言って車を走らせたおそらくまたあの廃墟に行くのだろう
私は家にこっそり入るなり
ボロボロの制服を脱いでビニール袋に詰めた
後で処分しようと思いビニール袋を持ったまま自室に向かった
そして着くなりビニール袋をベットの下に隠しパジャマに着替え終わるとそのままベットへバタリと倒れた
もうクタクタだった…
疲れでモヤモヤする頭を振り絞って今後の行く末を考えた
私が釘をさしたからライバックは結子と恵美に酷い事はしないだろうと思うけど…
出来る事…なら巻き込ませ…たくなかった…
で…も……どう…す………る……
…………
こうして意識は遠ざかり私にとって激動な1日が終えた
更新は気長に待ってもらえると助かります
ここまで読んで頂きありがとうございます