伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

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第二十三話 カムイ・ヌイナ

 202番道路を2日かけて進んだ二人はコトブキシティに到着した。

 

―コトブキシティ コトブキテレビ局やポケッチカンパニーなどが立ち並ぶビジネス街。世界中の人々とポケモン交換を楽しめるGTSもここにある。シンオウ地方の政治的な中心にあたるが、残念な事にシンオウ人の評価はオシャレなヨスガシティやショッピング街のドバリの後塵を拝している現状だ。ポケモンジムはない。

 

―10月8日 午後1時 コトブキシティ―

 

 二人はコトブキシティに到着すると荷物の整理やポケモンの回復などをした後市街を散策することにした。

 立ち寄ったフレンドリィショップでトレーナーの歩き方を購入した後、北側に行くとひときわ大きいビルが目に入った。近くに行ってみると銀河物産と刻印された立派な玄関がある。

 

―午後2時 銀河物産本社ビル 玄関前歩道―

 

「うーんしかしすげえビルだな……」

 

 レッドは見上げるも最大限まで腰を曲げても見きれなかった。

 

「貴方。みっともありませんわよ」

「ああごめん……」

 

 レッドは言われるとすぐに背を戻した。

 

「確かに立派ですが……やはり、シンオウですわね。私の会社に比べればまだまだですわ」

 

 エリカは得意になってみせる。

 

「私のってお前が経営してるわけじゃないだろ……」

「フフフ。まぁそう言われればそうですけれど。シンオウ一の大企業といえど我が家の稼業程でないということですわ」

「お前もしかして不安だったのか?」

 

 レッドはエリカの自慢に少し水を差すことにした。

 

「ま、まさか! 私はただ貴方に社会勉強としてこのくらいの企業はカントーにはざらにありますわとお教えしたかっただけですわよ」

 

 エリカはやや顔を赤くして返した。どうやら図星のようだ。

 そんなこんなで話しているとビルの敷地内に入り込んであからさまに怪しげにうろつき回っている一人の男が目につく。

 

「貴方。あの人……」

「ああ……」

 

 レッドは早くから気づいていたが敢えて口に出しては居なかった。

 

「何をされているのでしょうか……。気になりますわね」

「うーん……俺が聞いてみようか?」

「あら。左様ですか」

 

 そう言ってレッドは男に近づき、話しかけた。

 

「あの……」

「ナヌー!! 何故私が国際警察の人間だとわかってしまったのだ?」

「はい?」

 

 よくよく見てみると男は中年くらいの年齢と思われる風貌をしていた。

 

「ム! 君はもしかして……あの伝説のトレーナーのレッド君!? ということは後ろにいるのはエリカ女史か! なるほどなるほど。ならばその眼力にも納得だ。私を只者ではないと見抜いて話しかけたのだろう!」

「いや、単に怪しいなと思って話しかけただけなんですけど」

 

 レッドは率直に答える。

 

「怪しくなどない! 私はこうして捜査をしているのだ」

「捜査……ですか?」

 

 エリカはいつの間にかレッドの隣に居た。

 

「うわ。お前いつの間に」

「そうだ。この銀河物産は君たちも聞いているとおりシンオウでは第一の企業……だがその裏ではとんでもない事を企んでいると我々国際警察はみているのだ! このビルのどこかにそのアジトが……」

 

 そう男が得意げに話していると部下の刑事と思しき人物が駆け寄ってきた。

 

「ハンサムさん!」

「おお。アポロンか! どうだ? アジトはここに」

「いやそれが……どうもここじゃないらしいんです。例の二人がなんか嗅ぎつけたらしくて」

 

 刑事は苦々しい顔をしてハンサムに言う。

 

「何ぃ!? あの嫌らしいメガネの刑事がか! またちょっかいかけているんだな! ようし、今度という今度はガツンと言わなければな。だがだからといってここにいても仕方ないな……分かった。すぐに行く」

 

 そう言うともうひとりの刑事は去っていった。

 

「というわけだ。君たちもなにか怪しいと思うことがあったら何かの縁だこの番号に電話してくれ。私への直通電話だ」

 

 そう言ってハンサムは二人に電話番号を記したメモを手渡す。

 

「は……はぁ」

「それと、もし今度私に出会っても、それは仕事をしているから話しかけないように。いや、それじゃ寂し。じゃなくて、怪しい奴を見かけたりなにかあれば私に話しかけてくれ」

 

 そう言ってハンサムも去っていく。

 

「国際警察ですか……ご苦労なことですわね」

 

 エリカはやや呆れた風にハンサムの背中を見る。

 

「そうだな……それにしても。とんでもないことを企んでるって言ってたな。ここが」

「ええ……。どうやらこの地方も平穏無事に済むというわけには参らないようですわね」

 

 その後、ポケッチカンパニーでポケッチを購入してデータを移行させた後、203番道路及びクロガネゲートを越えてクロガネシティに到着した。

 

―クロガネシティ 炭鉱で栄えている町。周りは山で囲まれているがこの街の住民は皆朗らかに暮らし、働き手の格闘ポケモンと共に仲良く暮らしている。化石を復元するクロガネ炭鉱博物館がありヒョウタはここで育った。因みにヒョウタはトウガンからの暖簾分けでクロガネ炭鉱の最高責任者となった。

 

―10月11日 午前10時 クロガネシティ―

 

 洞窟を抜けてポケモンセンターを出ると直々にヒョウタと思しき人から出迎えを受けた。

 

「やあ! ようこそクロガネシティへ! 僕はここのリーダーを務めるヒョウタ。伝説の夫婦がいよいよ来るって言うから待ちきれずに来ちゃったよ」

 

 ヒョウタと名乗ったその青年は爽やかな様子でそう言った。

 

「あら、それはそれは……」

 

 エリカはそのまま自己紹介をして、レッドもそれに続いた。

 

「よし、それじゃあジムまで案内するよ。ついてきて!」

 

 そう言ってヒョウタは先導して二人をジムまで連れて行く。

 

「確か……トウガンさんのご子息でしたわね?」

「うん。そうそう……父さんにはもう会っているみたいだね。話は聞いているよ」

「ヒョウタさんもやはりその出で立ちから察するに鉱石などを生業としているのですか?」

「そう! 僕も地下の洞窟などを探検するのが大好きでね。そうそう。ここシンオウ地方には地下に巨大な地下通路があって……」

 

 ヒョウタが地下通路について語っているうちに三人はクロガネジムに入った。

 

 

―午前10時15分 同所 ポケモンジム―

 

 ジムに入り、二人は奥に通された。

 

「僕の使うポケモンは岩タイプ。シンオウ地方の一番目のリーダーとして、ここでの戦い方というものを見せてあげるよ。行け、ゴローニャ! ダイノーズ!」

 

――

 

 レッドは1匹失うが、エリカは1匹も失わずに勝利した。

 

 

「負けちゃったか……。だったら仕方ないね。このリーグ公認のコールバッジ、受け取ってよ」

 

 そう言ってヒョウタは二人にコールバッジを手渡す。二人は深く頭を下げて受けた。

 

「最近は勝ってばかりだったからちょっと油断してたけど……。これじゃ駄目だな。これからちゃんと鍛え直してみるよ」

 

 それからも二言三言話してヒョウタとは別れた。

 ヒョウタから手土産がわりに化石を貰ったので復元してもらう為にその足で炭鉱博物館に赴く。そこで当地にきていたウツギやツクシなどの研究員と軽く会話をかわした後復元した二つの化石ポケモンを受け取ってポケモンを回復させた後に二人はクロガネシティを出た。

 二人は204番道路、ソノオタウン、205番道路を越え、ハクタイの森へと入り森の洋館近くに差し掛かった。

 

 

―10月20日 午前10時 ハクタイの森 森の洋館 門前―

 

 ハクタイの森も終盤に近づいたその頃、目の前に洋館が見えてきた。

 

「あら……もしやあれがハクタイの洋館ではありませんか? トレーナーの歩き方に書いてありましたわよね?」

 

 エリカがレッドに尋ねる。レッドはリュックから歩き方を出す。

 

「あぁそれっぽいな。明るい茶色の屋根だし……。しかし本当に出るのか?」

 

 レッドは半信半疑だ。

 

「出るのならば是非お目にかかりたいものですわね。何分本物の幽霊というものにはお目にかかったことがないものですから」

 

 エリカは堂々とした様子で言う。

 

「あれ……お前もしかして怖くないの?」

「あら? 何を恐れる必要があるのですか? 寧ろ興味深いではないですか。この世界の霊的・超能力的な力はまだ解明しきれていませんし、お目にかかれば検体として持ち帰りたいくらいですわね」

 

 エリカは興味津々な様子で言う。どうやら本気だ。

 

「そっか……。お前はそういう人だったな……」

 

 レッドは内心やや気を落としながら前に進む。すると、門前と思しき所で右往左往している少女を見かけた。

 目に留まったのかエリカの方から声を掛ける。

 

「あの……」

「わ! びっくりした……。あたしになにか……」

 

 そう言いながら少女は二人の方へ顔を向ける。

 

「あれ……もしかしてその姿。レッド君にエリカさん!?」

 

 少女は二人を見て目を丸くしている。ここで会うとは想定していなかった様子だ。

 

「もう筒抜けですのね……」

「勿論! 私だけでなくジムリーダーならば誰でもお二人の姿格好はわかっていますから!」

 

 彼女はスッキリとした微笑みで返す。

 

「ジムリーダー……。って事はまさか」

「ご明察! あたしはこの先にあるハクタイシティのジムリーダーのナタネっていうんだ! 1月にリーダーになったばかりだけど宜しくね」

 

 ナタネはそう言うと礼儀正しくお辞儀をした。

 

「ということはかれこれ九ヶ月ですか……。お仕事にはもう慣れましたか?」

 

 エリカは世間話とばかりに振る。

 

「一通りの作業はこなせるようにはなったよ。あとは力をつけていつかはシンオウ最強のジムリーダーになって……そして10年後20年後にはあのヤナギさんをも破る凄腕のトレーナーになってみせるの!」

 

 ナタネは自信たっぷりな様子で言う。レッドは内心嘲笑ったが表情には出さないように勤めた。

 

「私と同じ草タイプの使い手と伺っておりますわ。それだけの意気込みにかなうものかどうか試してみたいものですわね」

 

 エリカは敢えて夜郎自大な野望を聞かなかったことにしてうっすらと笑みを見せた。それには同じ草使いとしての闘争心があるかのようにも見えた。

 

「随分と自信があることで。流石は伝説の夫婦の奥方様って感じね。よおし、それじゃあ早速」

 

 ナタネがモンスターボールを構えると、突如一斉に鳥ポケモンたちのものと思われる羽の音があたりに響いた。

 

「きゃあっ!」

 

 ナタネはとっさにみをかがめる。

 

「あの……。そういえばナタネさんはどうしてここにいるんです?」

 

 レッドが尋ねる。

 

「えっ……あぁそうね。この洋館にお化けポケモンがいるかどうか調査して、いるようならどうにか追い払って欲しいってハクタイの人たちに言われてさ。ここでこう外から調査してたってわけ」

 

 ナタネは身振り手振り交えながらそう話した。

 レッドは納得するが、エリカは少々間を空けて言う。

 

「それでジムリーダーがわざわざ出張るのですか? リーダーの領分ではないように思えるのですが……」

「ま、まぁね。エリカさんの言う通りではあるんだけどさ。ほらあたしってまだ新人だからこういうところでハクタイの人から評価稼いどかないとね」

 

 ナタネはそうは言うがどこか乗り気じゃないような雰囲気も垣間見える。

 

「なるほど……。リーダーは地域の中枢の一翼を担いますからね」

 

 エリカはそう言って自らを納得させた様子だ。

 

「そうそう……。やっぱりリーダーってその地域で一番強いトレーナーがなるものだしね。こういうポケモンの力を発揮できる仕事は進んで引き受けなきゃって」

 

 ナタネは髪を所在なさげにいじりながら言う。その言葉は彼女自身に言い聞かせているようにも窺えた。エリカはその様子を見て何かを察した様子だ。

 

「でも外から見ただけじゃ何も分からないんじ」

「貴方!」

 

 エリカはレッドの無神経な発言を牽制した。

 

「そ、そうだよねーやっぱり。中に入らないといけないよねうん」

 

 ナタネは二人から目を逸らしながら言う。脂汗も掻いているようだ。

 

「あ、あの! 私達もお供させていただけませんか?」

 

 エリカは咄嗟にそう提案した。

 

「え。いやいいよいいよ! これはあたしの仕事だから」

「まぁそう言わずに……。私達もこの洋館を散策してみようと考えていたのですわ」

 

 レッドはそんなこと言ってないと言おうとしたがエリカが無言の圧力を放った。レッドは堪忍してエリカの言うことに従う。

 

「そ、そう! 分かった。そこまで言うなら仕方ないよね。一緒に行こっか!」

 

 ナタネはそう言うと心なしかどこか嬉しそうに洋館へ向かった。

 

「お前なぁ……」

「あら? 良いではありませんか。こういう所は何か良いものが眠っているかもしれませんわよ」

 

 そう言うとエリカはレッドに微笑みかけてナタネに続いた。

 レッドはため息をついてやれやれと言った様子で洋館へ向かった。

 

―森の洋館―

 

 中に入るとそこはいかにも何かでてきそうな気味の悪い雰囲気に満ちていた。

 

「たしかにこれはなにかありそうな予感がしますわね……」

「うう……」

 

 入ってすぐ彼女は身を震わせたが、大きくかぶりを横に振った。

 

「さ、さてと! あたしは左側回るから、二人はそっち行ってくれる?」

「わ……分かりました」

「あの。私もそちらに行きたいのですが……」

 

 ナタネは一瞬だけ救いがきたかのような表情を窺わせたがすぐに元に戻った。

 

「い、いやいやいいって! 二人で仲睦まじく回っててよ」

「あら左様でございましたか。せっかく同じ草タイプのジムを運営するもの同士、色々と情報を共有できる良い機会だと思いましたのに……」

 

 エリカはやや芝居がかった様子で残念がる。

 

「そ……そうなの?」

「ええ。ラフレシアやキレイハナの花弁を如何にして美しく維持するかや、ジムの植栽に与えている肥料をどうしているかなど色々と……」

「そっ……そうだったんだ」

 

 ナタネは暫く考えた後、笑みを浮かべて返す。

 

「そういうことなら是非あたしも色々とエリカさんと話したいことがあったんだ! レッド君。悪いけどちょっとエリカさん借りていくね!」

「は、はい……」

 

 レッドはナタネに気圧されるようにして承諾の返事をした。

 こうして、ナタネとエリカは左側から探索していく。

 レッドは独りになった。

 広い洋館である。一人ではとても片側を回りきれないだろうと思った彼はモンスターボールを手にとった。

 

「行け、ピカチュウ」

 

 ピカチュウは普段どおり出てきたが鬱蒼とした雰囲気の洋館にやや不穏な雰囲気を感じ取ったようだ。

 レッドは事のあらましを話した後ピカチュウに指示をだした。

 

「で、俺は一階の方を回るから、お前には二階に行って欲しい」

 

 ピカチュウは小さくうなずく。

 

「よし。頼んだぞ。なにもないとは思うが何かあったらすぐ知らせてくれ。そんじゃな」

 

 そう言ってレッドはピカチュウの頭を撫でてやった後スタスタと右側を歩いていった。

 ピカチュウは息をついて階段を駆け上がる。 

 

―約30分後 洋館二階 テレビの部屋―

 

『全くレッドときたらこんな役回りやらせるなんて……』

 

 ピカチュウはブツブツと言いながら部屋のドアを飛び上がって開けた。

 手が滑って着地した時に背中を打った。

 

『いたた……あ、テレビだ』

 

 ピカチュウはまず目についたそれに近づく。

 

『電源は……ついてないみたい』

 

 右端に目を遣る。コンセントは繋がっているようだ。

 

『これ押せばつくかな……えいっ』

 

 ピカチュウは主電源を押す。しかし反応がない。

 

『あれー。おかしいな……』

 

 ところどころ電球の明かりはついていた為ブレーカーが落ちているということはない。何度かポチポチと起動を試みたがうんともすんとも言わない。

 

『壊れてるのか……。あーあ。なんだちょうどあのアニメの時間だったのになぁ』

 

 ピカチュウは残念そうにすごすごと後にしようとした。

 その時、突如テレビの電源が入り、見ようと思っていたアニメの音声がピカチュウの耳に入った。

 

『なーんだ壊れてなかったんだ……。よしせっかくだから見よっと。どうせ最後の部屋だしこれくらいサボってもレッドは許してくれるよね!』

 

 と、上機嫌そうにテレビに近付く。すると突如音量が最大限になった。

 

『ギャー!! やっぱ壊れてんのコレ? こらっ、ちゃんと動け!』

 

 ピカチュウは音量を下げた後、テレビを何度か叩く。

 すると、ぬうっとテレビから一体のポケモンが出てきた。

 

「やあ」

 

 そのポケモンは片方の触媒を高らかに掲げ、ピカチュウに挨拶した。

 

『出、出……』

「ピカピーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 ピカチュウの鳴き声は屋敷内に高らかに響いた。

 三人は何事だとばかりにその部屋に駆けつける。

 

「ど、どうしたんだピカチュウ!」

 

 真っ先についたのはレッドだった。

 ピカチュウは腰を抜かしたまま目の前にいるポケモンを震えた指で差しながら何かを訴えている。

 

「やあ。君がこのピカチュウの飼い主? 無礼にも僕を叩いたからちょっと驚かそうと思って」

「こいつ……よくもピカチュウを脅かしたな! 見てろよ!」

 

 レッドはモンスターボールを構えたが、すぐにエリカが止めに入った。

 

「お待ちなさい! 何があったのですか?」

 

 後ろにはナタネも居る。

 

「このポケモンがピカチュウを驚かしてあんな風にしたんだよ!」

「まあそれはそれは……」

 

 そう言いながらエリカはポケモンを見る。

 

「あら……このポケモンは確か、ロトムでしたわね。電化製品に取り憑いていたずらをするのが好きな」

「僕のこと知っているんだ。そう。僕はロトム! 機械に入って人やポケモンが驚いているのを見るのが好きなんだ!」

 

 ロトムは純粋な様子でそう言った。

 

「取り憑くって……まさかこのポケモン」

「ええ。このポケモンは電気とゴース……」

 

 そのフレーズが聞こえた瞬間ナタネの顔が青ざめた。

 

「出、出、出たあああああああああああ!! 怖いよおおお! レッドさん助けてえ!」

 

 ナタネは反射的にレッドに抱きつく。

 

「ナ、ナタネさん落ち着いて! ね?」

 

 レッドは引き剥がそうとしたが、エリカ以外の女の子に抱きつかれることなどそうそうない為この状況を楽しんでいるようにもみえた。

 

「もう……。これではあれほど気を回したのも無駄な事でしたわね」

 

 エリカはため息をつく。

 

「ねえ」

 

 ロトムがエリカに尋ねる。エリカはロトムに向き直る。

 

「なんで君は全く驚かないの?」

 

 ロトムはやや不思議そうな様子で尋ねる。

 

「私はどちらかといえばそういうものには好奇心を抱く性質に生まれ育ちましたから」

「そうなんだ……へぇ」

 

 ロトムは少しばかり嬉しそうな様子だ。

 

「どうしてロトムはここにいるのですか? 電化製品ならばもっと人のいるところでも宜しいのでは?」

「さあ……自分でも分かんない。なにせ、物心がついた頃からここにいるから」

「左様ですか……」

「ねえ」

 

 ロトムがエリカに向き直る。

 

「何でしょうか」

「僕を捕まえてみる気はない?」

「宜しいのですか?」

 

 エリカは嬉しそうな様子で尋ねる。

 

「うん。そろそろここにも飽きてきたし……君だったら僕も退屈しなさそうだから」

「まあ……。私もゴーストタイプのポケモンについてはかねてより些か興味を抱いておりますわ。ロトムが宜しければ是非」

「ふふ……宜しくね!」

 

 こうしてロトムがエリカの手持ちになった。

 

―午後1時 森の洋館前―

 

「さてと。エリカさんがロトムを捕まえて原因も正されたことだし。あたしはハクタイに戻るよ!」

「まぁよく10分間も抱きついといて現金な……」

 

 レッドは軽く笑いながら言う。

 

「あ、あれはちょっとびっくりしちゃっただけだから! 怖かったとかじゃないからね! これは大きな差だよー」

 

 ナタネは強がった様子で答える。

 

「ハハハ……」

「ふう……。それではナタネさん。ハクタイでまたお会いしましょうね」

「ええ。その際は是非あたしのジムの植栽も見てね! ふたりとも本当にありがとう。それじゃ、またね!」

 

 そう言ってナタネは飛び去るかのように駆けていった。

 

「はあ……なんだか結構無理をしてそうな子だな。アスナさんとはまた違う雰囲気だ」

「彼女は恐らく世襲ではなく推薦でのリーダーなのでしょう。だからこそ少しでもおおく信頼を勝ち得て地位を盤石なものにしようとわざわざ不得手な仕事まで引き受けて色々と尽力しておられるのでしょうね……」

 

 彼女はどこか感じ入ったかのような表情で遠くにあるナタネの背中を見た。

 それからすぐに二人はハクタイの森を出て205番道路を通過した。

 

――ハクタイシティ 歴史と人間の融合した街。

 都市化も見られるが自然と上手い具合に調和できている。伝統を大事にし、シンオウの伝説ポケモンであるディアルガとパルキアの像があり祀られている。地下おじさんの家や漢方薬を売っていたりとそれなりに便利な街である。

 

―10月21日 午前9時 ハクタイシティ ポケモンジム―

 

 二人はついてポケモンセンターに行った後、ジムへ向かった。

 ジムトレーナーを倒した後、ナタネと相対する。

 

「ハクタイの森ではありがとう! 本当に助かった。でも! それと勝負ではまた別の話。モラトリアムから苦労して苦労して……やっとここまでたどり着けた。ハクタイ第一のトレーナーの実力あなた達に見せてあげる!」

 

――

 

 レッドは2体、エリカは1体失って勝利した。

 

「くっ……。やっぱり強いね。やっぱり二地方も全力のリーダーを破ってきた人は違うや。はい、フォレストバッジ、受け取って」

 

 二人はシンオウ地方二枚目のバッジ、フォレストバッジを受け取った。恭しく礼をしながら丁重にとる。

 

「でも。いつまでもこうはいかないから。いつの日かあなた達夫婦を超える力をつけてみせるから! 覚悟しといてよね」

「ええ。その日を楽しみにするとしますわ」

 

 エリカは微笑ましい表情でそう返す。

 

「っと。それはそうとエリカさん。あの樹木にあげる肥料についてなんだけど……」

 

 それから10分ほど草タイプのジムを経営するもの同士、情報交換のついでにポケッチの番号も交換してジムを去る。

 

―午後1時 同市 某ビル前―

 

 回復させて街を散策していると北側にある一棟のビルの前で怪しげに動いている人物を見かけた。それはハンサムであった。

 ハンサムは二人に気がつくとゆっくり近づいてきた。

 

「やあ。コトブキでは失礼したね」

 

 レッドとエリカは返礼した。

 

「あのビル見えるだろう? 我々はあのビルにやつらの悪事が隠れていると見ている。だが如何せんなぁ……警備が厳重で私一人ではどうにもならなそうなのだ」

「へぇ……そうなのですか」

「肝心のアポロンや応援の刑事はなかなか来ないし……全くあのいやらしいメガネの警部とむさいラフな格好の刑事を本庁に言って帰ってもらったはいいが肝腎な時にいないのだから困ったものだ……」

 

 ハンサムはわざとらしくため息をつく。

 

「あの……」

「何!? 代わりに行ってくれる!? いやーそれはありがたいね! さすがは伝説の夫婦だ。私は君たちが突入した後に色々と中に入って調べて見るから」

「え、あの俺達何も言ってないんですが……」

 

 レッドは当惑しながら言う。

 

「いいかい。奴らは各地でポケモンを強奪して自らの支配下に置き、悪事に利用しているのだ。彼らはギンガ団と名乗り、方方で活動しているのだが恐らく私は銀河グループと関係があるものと見ている。まだ決定的な証拠こそあがっていないが必ずそれをここでみつけだす。君たちはその手伝いをしてほしいのだよ」

「なるほど……そういうことでしたか。ならば助力は惜しみませんわ」

 

 エリカはそうハンサムに答えた。

 

「そうだな……。ここで会ったのも何かの縁だ。協力しますよ」

 

 そういうわけで二人はハクタイビルへ入ることを承諾し、中に入った。

 

―ハクタイビル 最上階―

 

 国際警察と話している所を団員に見られていた二人はすぐさま侵入者としてギンガ団員から攻撃を受けた。

 しかし、二人にとって団員程度のポケモンを蹴散らすことなど訳もなく、あっという間に幹部のジュピターまで破ることに成功した。

 

「ふっ……。さすがシンオウまで名を聞かせるだけの事はあるじゃない。でもね。もう遅いわ。ハクタイの調査も終わったし、あの材料の確保もマーズがやってくれた」

「あの材料って……なんのことです?」

 

 エリカはジュピターに尋ねるがかぶりを横にふる。

 

「今はまだ教えるわけにはいかないわ……。そのかわり、これだけは教えておいてあげる。あたしたちのボスはね……シンオウの伝承を調べて、そこで得た知識と力で以てシンオウ地方、ひいては全世界を支配するの……。如何に伝説の夫婦やポケモンリーグであろうとこれを止めることはできないわ!」

 

 ジュピターは心の底から確信した表情で二人を睨む。

 

「そこまでだ! 国際警察である! 観念しろギンガ団!」

 

 レッドとエリカの背後よりハンサムや付き従った警官や刑事たちがジュピターやその取り巻きを逮捕しようと走り出した。

 

「ここで大人しく捕まると思って? おめでたい人たちだこと……。お前たち!」

 

 ジュピターと団員たちは咄嗟にガスマスクを装着し、団員たちにスカンプーを出させ、一斉に悪臭を放たせた。

 二人は勿論のこと逮捕しようとした者たちは悪臭にあてられて顔を背けてしまい隙を作ってしまい、ジュピターを取り逃がしてしまった。

 

―ハクタイビル前―

 

「いやー。君たちのおかげで多くの資料と団員たちを捕まえることができたよ。ありがとう」

 

 ハンサムは二人に頭を下げた。

 

「いえ……。しかしあの幹部と思しき女は取り逃がしてしまってよかったのですか?」

「そこを突かれると痛いんだが……。まあとにかく今はギンガ団と銀河グループのつながりさえ証明できればいいんだ。これさえ出来れば世論が味方について我々ももっと動きやすくなるからな」

 

 ハンサムは自信満々に言ってみせる。

 

「それにはこの資料と団員の自白があれば足りる。必ず追い詰めてみせるぞ」

 

 と、彼はこの後に控える取り調べに向けてか大いに息を吸い込み、そしてむせた。

 

 しかし、団員たちの自供は得られず、それどころか黙秘を貫いた。証拠となるべき資料も雑多なものばかりでつながりを立証するには不十分であった。結局この突入で得られたものはギンガ団単体の悪事の証拠取得にすぎなかったのである。

 

―午後4時30分 同市 ポケモン像前―

 

 二人はハンサムと別れて、ハクタイの名所の一つであるポケモン像に来ていた。高台の上には二体のポケモンと思しき銅像が別々に建てられている。

 

「へぇ……これがシンオウの伝説のポケモンか」

 

 レッドは像をまじまじと見つめている。

 

「プレートらしきものがあそこにあったようですが……剥がされてしまっているようですわね」

 

 エリカはやや残念そうに言う。

 すると、背後より女の声がした。 

 

「そのポケモンはシンオウ地方において大事な神様なのよ」

 

 二人は声がした方向に振り返る。

 

「あら……貴女はもしかしてシロナさんですか?」

「まぁ。名前を覚えててくれて光栄だわ。そう、あたしはシロナ。シンオウ地区の理事長で……全国ポケモンリーグの副理事長よ」

 

 シロナは腰まである長い金髪に黒を基調とした服を召していた。

 

「ということは……シンオウ地方のチャ」

 

 レッドがチャンピオンと言いかけたところでシロナは牽制した。

 

「レッドさん。あたしがその地位にあることをそう濫りに言ってはいけないのよ。これはモラトリアムのトレーナーたちの夢を壊さない為にあるのだから」

 

 シロナの有無を言わさぬ気迫に満ちた物言いはレッドを黙らせるには十分だった。

 

「しかしホウエンのミクリさんなどはもう自分で言っちゃってましたけど……」

「他の人はともかく、あたしはそういうのはきっちりしないと気がすまないの。ごめんなさいね」

「さ、左様でございますか……」

「さて。それはそうと、大した戦いぶりね。さっきからずっと見ていたけどここまで勝ち抜けたのも十分に頷けるわ」

 

 シロナは先程までの張り詰めた表情から一転して温和な様子で言った。

 

「ずっと見ていたんならあの女幹部捕まえておいてくださいよ……」

 

 シロナはそう苦言を呈したレッドを睨む。彼は縮こまり言ったことを後悔した。するとシロナはふうと息をつく。

 

「追いかけはしたんだけど走るのは苦手でね……。あ、そうそう二人共ねぇ、その程度の服じゃシンオウの冬は乗り切れないわよ」

 

 シロナは露骨に話題を転換した。しかし二人もやや肌寒いと感じつつあったので耳を傾ける。

 

「やはりもっと厚手の生地でなければ駄目でしょうか?」

「そうね。最低限裏地にしっかりとしたウールとかポリエステルが使われてないととてもじゃないけど凍え死んじゃうわよ。ついこの間までホウエンにいた二人には分からないかもしれないけどね」

 

 シロナは言葉はやや厳しいものが伺えたがその一方で二人を思っているようにもとれた。二人とも生粋のシンオウ人である彼女の意見を心に留めた。

 

「まぁそれはそれとしてね、この銅像はシンオウ地方で長く受け継がれてきたある神話を基に作られたものなの」

「ええ。文献で読んだことがありますわ。ディアルガとパルキアのお話ですわね」

「そう。この二つの像はその二体のポケモンを祀ったものなのよ。時間を創造したディアルガ、空間を創造したパルキア……そしてここにはいないけどこの世とは全く違う異空間の主といわれるギラティナ。この三体が神話の主役を担っているの」

「へぇ……」

 

 レッドは興味深げに頷いている。

 

「エリカさん。カムイ・ヌイナの伝承はご存知かしら?」

「え……。す、すみません不勉強で……」

 

 エリカは珍しく知らないことを聞かれて陳謝した。エリカでも知らないことがあるのかとレッドはやや意外そうな眼差しを向ける。

 

「まぁ無理もないわね……。シンオウの人間でも知らない人が多いもの」

「後学のためにご教示願えますか?」

 

 エリカはやや食い気味に尋ねた。知らないことについては特に好奇心を示すのだろう。

 

「今から千年以上も前の話よ。シンオウ地方の北東にあるカンナギタウンという場所には古来からの本州の戦に負けて逃れた人たちが強い復讐の念を持って祈祷者……それこそ(かんなぎ)と呼ばれる人たちが集落を作っていたの」

「シンオウは近代に至るまで本州の政権の手が深く及びませんでしたからね。妥当な選択ですわ」

「そう。だからこそ彼らにとっては最高のねぐらとも言える場所だったのね。……。彼らはいつの日か本州に下って恨みを晴らそうと臥薪嘗胆の日々を送っていたわ。その恨みを晴らす手段というのが、この祀られているディアルガとパルキアってポケモンなの」

 

 シロナは像に目を遣る。

 

「なるほど……」

「彼らは当地の伝承からその二体の神と言われるポケモンがいることを知り、なんとか現世に降臨させて恨みを晴らしてもらおうとテンガン山に登り、祈祷を以て呼び寄せようとしたの。結果、それは成功して、彼らはこれでなんとかなると大いに喜んだそうだわ……。でもそこまでだった」

「もしかして」

「そうよ。彼らは呼ぶことは成功しても制御する術を知らなかった。ディアルガとパルキアは急に呼び出されたことに怒ったのかまあそこは定かじゃないけど、その祈祷者を集落ごとどこかの世界に吹き飛ばしてしまったの」

 

 二人はその言葉に目を丸くする。

 

「ふ、吹き飛ばしたのですか?」

「うん。この二体のポケモンの力から見るに全世界の全時代のどこかに……ね。急に集落が消えたことに驚いた原住民たちはそれ以来神の祟りだと畏れてつい最近までそのポケモンが住むとされるテンガン山をより深く崇拝し滅多なことでは入山すらしなかった……というお話よ」

「なるほど……。なかなか興味深いお話ではありますわね」

 

 エリカは深く何度か頷きながら言う。

 シロナが話し終わるとその背後より男の声がした。

 

「あ! お嬢! シロナお嬢じゃないですか!」

 

 男はシロナの姿を見るとすぐさま駆け寄ってきた。中年ぐらいの男で作業服にリュックを背負っている。

 

「あら……トシアキさんじゃない! どうしてここに?」

「いやぁちょっと遺跡を守るポケモンの漢方薬を補充しなきゃならなかったんで……。いやーやっぱお嬢だ。あの長い髪ですぐわかっちまいましたよ。ご無沙汰してますなぁ。かれこれ2,3年ぶりですか?」

「そうねぇ。最後に会ったのはそれくらいよね。元気そうで何よりよ」

 

 シロナは表情を緩めて言う。どうやら心の底から再会を喜んでいるようだ。

 

「あの、シロナさんこの方は……?」

 

 エリカが尋ねる。

 

「ごめんごめん。この人はね。トシアキさんって言って私の故郷にあたるカンナギの遺跡博物館の学芸員をしている方なのよ。卒論を書いてた頃色々と遺跡について教えてくれて論文を書く時本当に助けられたわ。それ以来色々とお付き合いさせてもらっているの」

「いやぁ……そんなそんなお嬢の賜物ですよ。ところでこのお二方は?」

 

 トシアキが尋ねる。

 

「あら? 知らない? 今全国を周って旅をしているレッドさんにエリカさんよ」

「へぇ……そりゃあ大したもんですなぁ。あっしはどうもトレーナーについては疎くていけねえや」

 

 トシアキは照れ隠しに笑いながら言う。

 

「いいのよ。そんな気にしなくて。貴方はあたしと同じく遺跡一筋だものね」

 

 シロナは笑みを浮かべながら言う。

 

「あの……先程からトシアキさんシロナさんのことお嬢お嬢って言ってますけど」

 

 レッドが尋ねた。

 

「お嬢はこっちじゃ知らぬものはいない大名士のご令孫なんでさぁ。なんせカンナギをシンオウ第一の遺跡の名所にしたのはこのお家のおかげみたいなものでして」

「も、もうそういう話はよしてよ。恥ずかしいから……」

 

 シロナは顔を赤くしてトシアキを止める。

 

「ハハハ。ところでお嬢はなんでまたここに?」

「ちょっと調べたいことがあってね。ほら、前にチラッと話さなかった? カムイヌイナは伝承なんかじゃないって」

「あ、あー! あの話ですかい。なんだまだご執心なんで?」

 

 トシアキは一瞬だけ表情を暗くした。

 

「えぇ!? あのお話はあくまで伝承という風にシロナさんは……」

 

 エリカが大いに驚いた様子でシロナに言う。

 

「通説では。って話よ。あたしはこの事は決してただのおとぎ話じゃないと思っているのよ。当時の日記や風土記などを見る限りではこれは現実に起ったものと史学の見地では考えるべきものなのよ」

 

 シロナは確信を持った表情で話す。どうやら本気でそう思っているようだ。

 

「お嬢。いくらなんでもそんな事はありえねえでしょう。だいたい人や集落が一瞬にして消えてしまうなんてそんな夢みてえな話」

 

 トシアキは笑いながら否定する。

 

「いえ……。そうとも限らないかもしれませんわよ」

 

 エリカが顎に手をやりながら言う。

 

「あら、エリカさんもそう思ってくれるかしら?」

「シンオウに来る時トウガンさんと船を同じくしたのですが……」

 

 エリカは簡潔にトウガンが乗船していた理由と調査していることを話した。

 

「へぇ……トウガンさんがそれを見つけているとはね……。最近は選挙で忙しくてなかなか集中できなかったけど時間があれば聞いてみようかしら。ありがとうエリカさん」

 

 シロナはエリカに礼をして感謝の意を示した。トシアキの表情はやや険しくなっていた。

 それからも二言三言話してシロナやトシアキと別れたが、選挙については聞きそびれてしまった。

 

―午後9時 同市 ポケモンセンター―

 

 二人はそのままポケモンセンターに行き、宿泊することにした。

 夕食を食べてポケモンの世話をし、レッドが先に風呂に入っているとエリカのポケッチが鳴り響いた。

 

「はいもしもし……。あら。ナツキさんですか?」

「はい。あのう。シジマさんからジムにお電話があってリーダーに取り次いで欲しいと……」

「左様ですか。分かりました。つなげてください」

 

 暫く待っていると久々にシジマの声がした。

 

「やあやあエリカ女史! 久しぶりだのう! 順調なようでなによりよハッハッ!」

 

 シジマはいつもどおりの元気な様子である。

 

「シジマさんも壮健なようで何よりですわ。ところで私に何の御用でしょうか?」

「うむ。もうそろそろスモモのジムも近いところだと思うての。覚えておるか? わしが二人に頼んだこと」

 

 エリカは暫し間をおいて。

 

「忘れるはずがありませんわ」

 

 と答えた。

 会話は一瞬にして緊張した雰囲気に包まれた。

 

―第二十三話 カムイ・ヌイナ 終―

 




タイトルのカムイヌイナはアイヌ語でカムイ(神)・ヌイナ(隠す)の意味です
アイヌ語の文法だと本来は逆なのですがまぁお気になさらず……
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