伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚 作:OTZ
ハナダシティを出発したレッドとエリカは、人混みを嫌って地下通路経由でクチバシティに到着した。
―1月4日 午後1時 クチバシティ―
三が日を過ぎ、人々が日常の生活に戻りつつあった一月四日。
しかし、ここクチバシティは正月などあったものではなく、平常運航である。船は正月であろうと休むことなくクチバ港に
そんな最中、二人はクチバシティの入り口に立った。
「相変わらず、異国情緒漂う街ですわ。こういう街も嫌いではありませんわ」
とエリカが感想を言っている傍ら、レッドは南東の丘を見ている。
四年前にビルを建てようとしていたおじさんが居たことを思い出して、ああ、まだ建っていないんだなと懐かしみに触れていた。
「貴方、何故、そちらを見ているのです?」
「いんや、少し思い出したことがあってだな……。それはそうとジムに行くか」
と、レッドは歩み始める。
「マチスさんですか……、お話したくはありませんが、仕方ありませんわね」
彼女はそうぽつりと呟くと、少し遅れてレッドの後を追った。
―同日 午後2時 クチバジム―
「うわ、相変わらずの電気仕掛け……」
レッドは、遠くにあった電気バリアの太き線を見てげんなりしている。
「あら、一時期故障したというお話も伺ったのですが……。仕方ありませんわね」
という訳で、トレーナーを一応倒しながら、ゴミ箱を
汚れ仕事を嫌うエリカは全くやらず、すべてレッド自身で漁ったことは説明するまでもないだろう。
―午後2時30分―
ジムの仕掛けをどうにか突破し、マチスの所にたどり着く。
マチスは相も変わらずのハイテンションで話しかけてきた。
「ウェルカム! よく来たネ!」
「お久しぶりです」
レッドはマチスに対しては、敵対心は無く、むしろ好意的な印象を持っていたので明瞭に応答する。
一方のエリカは、愛想笑いに徹していた。
「ミー、あれからハードプラクティスしたネ! ユーにビクトリーするために!」
相変わらずの英語混じりの日本語を話すが、相手を選んでくれてるのか、レッドでも理解できるレベルの英語をマチスは喋っている。
「そのリザルト! ミーは」
「おい、エリカ、リザルトって何だ?」
しかし、時々わからない単語が出て来た時、エリカに耳打ちをしていた。
「Result……、結果。ですわ」
「ヘイ、ミスターレッド。イングリッシュはノットグッド?」
ノットグッド……、グッドのノットなんだから良くないという意味だろうと、少し考えたレッドは、正直に
「イエス」
と答える。レッド自身、英語を聞くのはマチスやメリッサ等を除けば小学校以来である。
「Hmm……、ミセスエリカ。Do you speak english?」
マチスはわざと、クセのある喋り方で話す。どれくらい英語を話せるか試しているのだろう。
「Yes,I can speak a little English.(はい、私は少しだけ英語を話せます)」
と、気だるそうではあるが、非常に
「Oh! That's intelligible pronunciation.(これは明瞭な発音だ!) Excellent!(優秀だね!)」
と、エリカを褒め称えている。
「ソレだけ出来ればGoodだネ! もし、ミスターレッドが、困っていたら、translate(翻訳)してあげてネ!」
エクセレントという言葉に、レッドが首をかしげていたのを見ていたマチスは、簡単な言葉に言い換えてくれた。
「Of course.I will do as much as I can right.(私に出来る限りの事はします)」
そう言ってエリカは締めくくった。無論、愛想笑いである。
「As I was saying(話を元に戻して……)、ミーのポケモンはフォーイヤーズアゴーよりも、ベリーストロングになったネ! ミーのエボルブ(進化)したポケモン、それにアッド(加え)してミーのエレクトリックなタクティックス(電撃的な戦術)にオノノクがいいネ! Go! マルマイン!、ジバコイル!」
マチスに続いて、レッドとエリカも繰り出す。
「おいでなさい、キノガッサ!」
「行け、カビゴン!」
「ジバコイル、バリアー!」
「壁張っとこ」
ジバコイルはバリアを形成しようとした。
「キノガッサ! ジバコイルにスカイアッパーです!」
「砕け散れ」
キノガッサは、命令と共にジバコイルに突っ込み、素早く、そして力強く、ジバコイルに拳を見舞う。
急所に当たり、一撃で瀕死になった。
「HAHAHA! ライチュウ! カビゴンにワイルドボルト!」
「ハイスピードでアタックするぜ!」
その雄叫びと共に、マルマインはその巨大な球体を動かすとともに、莫大の電力を伴わせる。
そして、その状態のまま、カビゴンの腹に銃弾の如く怒濤に突っ込んだ。
「あじいいいいい!!」
カビゴンは、相当のダメージを喰らったようだ。HPでいうなら3分の2ぐらい減った。
「カビゴン! 仕返しだ! 地震を喰らわせろ!」
「許さんぞー! 今日の晩御飯は柳川鍋だ! 地よ震えよ!」
カビゴンは、その巨体を用いて、フィールドを思いっきり揺らす。
「うがあああああ! でも死なないぞ……!」
マルマインは気合のタスキでHP1だけ残った。
「GO! ランターン! カビゴンにダイビング!」
「バイバーイ!」
そう言ってランターンは、海を作り、潜水した。
レッドの背筋に寒気が走る。非常に悪い予感がしたからだ。
「OK! マルマイン! Large explosion(大爆発)!」
指示された瞬間、マルマインの体が
カビゴンは無論、倒される。キノガッサも吹き飛ばされた。しかし、アクロバティックにも、1回転をしてジムの壁を蹴れる態勢になった後、無事に蹴り返す。そして、半回転をして着地位置を微調整し、元居たところにまで着地した。何とか耐え切ったようである。
「フーッ! ミセスのキノガッサ、クールだネ!」
「Because,Fight type.(そりゃ、格闘タイプ……ですからね)」
エリカは段々、自身の発音を聞いた時のマチスの反応が楽しくなってきたのか、またも英語で話している。実際、マチスはかなり興奮している。出会った時よりもさらに野性的になっているようだ。
当のキノガッサは、頬を緩ませ、
レッドはカビゴンを戻す。
「ちぃ……、カビゴンが……、仕方ないな。戻れ、カビゴン。行け、フシギバナ!」
―――――――――――
こうして、レッドは二体を、エリカは一体失って勝利した。
「Oh! ゼイの強さ、トルゥース! That's undoubtedly it.(それは疑いようも無い)ネ! それをリコギナイズ((価値を)認める)した証として、オレンジバッジ、ヤルヨ!」
マチスは、オレンジバッジを二枚渡した。
「I appreciate it.(感謝いたします)」
エリカは英語バージョンで謝意を伝え、深々とお辞儀をする。
「フーッ、As you excellent! Your command of English is marvelous!(やはり素晴らしい! 君の英語の力は感激するぐらいだよ!)」
マチスがかなりベタ褒めをしていることは、その動静から明らかである。何を言っているか全くわからないレッドでも、すぐに分かったぐらいである。
「Oh,sorry.ミスターレッド。ユーのパワーはモアGoodダネ! ここまでトレーニングしたポケモンたちをオールキルするだなんてネ! これからも、ガンバれヨー! Do your best!(最善を尽くせ!)」
そう言って、マチスは満足したように二人を見送る。最後の言葉はレッドでも分かっていたので、少し嬉しくなっていた。
―ジムの外―
「はぁ……、相変わらずの暑苦しさでしたわ……」
エリカは、ジムの外から出ると早速毒づく。
「しかしたまげたなあ……、お前が英語出来たなんて。つかお前嫌いと言っていた割には、割と後半は嬉しそうに話していなかったか……?」
レッドは感心して、エリカを褒めたと同時に疑問をぶつけた。
「英語……、正確にはイッシュ語ですがね。これが出来なくてはタマムシ大に入ることはできませんので。しかしあそこまで褒められるだなんて……、英語なんて本当に久しぶりに話したものですからこちらが驚きましたわ。それでついつい、自分でも認めたくないのですが……その、嬉しくなってしまいまして」
エリカは、嫌いな相手に褒められて、うれしくなっていた自分を少し悔いているようだ。
「……、まあほめられりゃ誰でもそうなるさ。さて、次はとうとう……」
レッドが言い切ろうとしたところを、彼女は遮り、
「その前に、少し立ち寄りたい所が……」
「え? どこ?」
レッドは、俄かに遮ったエリカの反応に少し驚いている。
「もしかして……、お忘れになられたのですか? ナゾノクサのクロのお見舞いにシオンタウンに行きたいのです。去年のお盆には行けなかったので、せめて今行きたいと思ったのですが……」
無論、彼はすっかりそんな事を忘れていたが、安定のしったかをする。
「い……嫌だなぁ。忘れるはずがないじゃないか……。そうだな、行こう」
「目が泳がれていますわ……。それはともかくとして、参りましょう」
という訳で二人は空を飛ぶで、シオンタウンに向かった。
―同日 午後4時 シオンタウン―
シオンタウンは相変わらず、閑静な住宅街である。正月というめでたい月のせいか、あまり墓参の人は見受けられない。
「あ、あれ!? ポケモンタワーは?」
彼は、四年前に来た時にあった荘重な塔が、大きなビルに変わっている事に対して大いに狼狽していた。
「ご存知無かったのですか? ポケモンタワーは現在、ラジオ塔に取って代わられたのですよ? ラジオで聞き及んでおられるかと思ったのですが……」
「いやー……、俺あんま記憶力良くないからさ……。そっかマジかぁ……」
レッドはしみじみとしながら、遠くにある大きなビルを見つめている。
「あれ、じゃあ今はどこにポケモンのお墓があるのさ?」
彼は当然の疑問をぶつけた。
「現在は魂の家という、ポケモンタワーの長を務められていた、フジ老人が営んでおられる所に移されていますわ。クロの墓も無論、そこにありますわ」
「そか。んじゃ、そこに行くか」
という訳で二人は、魂の家に歩みを進めるのである。
―魂の家―
到着すると、エリカは真っ先にフジ老人の所に赴いた。
フジ老人は誰かと話しているようだ。頭はツルぴか……、まさか。
「お話し中の所、申し訳ございません。フジさん! ご無沙汰しております」
エリカは恭しく、フジ老人にお辞儀をする。
「おお、エリカ女史かい……。久しぶりだね」
「おお! レッドではないか、グレン島以来じゃな!」
話していた相手は、カツラであった。
「カ……カツラさん。よくぞご無事で」
レッドはまず、そのことを口にした。グレン島噴火の知らせは、かなりの大ニュースであった為、レッドの
「何、あんな噴火ぐらい乗り切れぬようじゃ、グレンのジムリーダーなど務まらぬわ」
と、カツラは自信たっぷりに言う。
「お二人はお知り合いなのですか?」
エリカは興味深げに尋ねる。
「いや何、大学以来の朋友だよ。フジはわしと同じく社会に出てからタマムシ大に入ったからの。じゃあのフジ……、例の件。頼んだぞ」
「無論じゃ。必ずやあの男の野望を阻まなくては……のぉ」
フジとカツラは決意を固めた視線を送り合う。
「じゃあの。レッド。6つ集めた暁には、ふたご島に来ることじゃ。間違ってもグレン島には無いから勘違いするでないぞ! ハハハハ! それではな二人とも、楽しみにしとるぞ」
レッドの肩を数回叩きつつ、カツラはいつも通りな調子で、快活に出て行った。
「全く、カツラはどうして場所を弁えないのか……、ここは墓だと言うのに」
と、フジは愚痴をこぼす。
「いや、あれでも抑えてる方だと思いますわ。なにしろ御年不相応なまでに
エリカはそう、カツラをフォローした。
「確かにそれは否定できないの。さて、墓参りに来たのじゃろう。こちらに来なさい。墓まで案内しよう」
と、フジ老人は右の壁にあったドアに向かって歩き始めた。
「え? ここじゃないのですか?」
レッドは少し驚いている。
「女史には、ポケモンタワーから移る際に多額の寄付を頂戴した上に、代々、亡くなったポケモンをここに埋葬してもらっていたからそのお礼に別の部屋に埋葬しているのじゃ。本来は私と持ち主しか入れることはできないのだが……、ま、配偶者という事で特別に入室を許可しよう」
という訳で、二人は墓参りをした。
――――――
墓参りを終えた二人はシオンタウンを散歩していた。
「そういえば、ここら辺で俺はエリカと会ったんだよな……」
レッドは四年前、ポケモンタワーの前あたりの広場で会ったことを想起している。
「フフ……、今思うと、貴方かなり恍惚としておりましたわねぇ……。あの頃から思慕を抱いていらしたのですか?」
エリカは、当時を想い起こし、思い出し笑いをしている。
「……、その通りだ。まさかあの時、一緒に旅するだなんて思ってもいなかったな……」
「私も同じです。ただ、一つ言える事とすれば……あの頃はまだ、貴方の事は凄い方とは思っていましたが……恋慕の情は抱いていませんでしたわ」
エリカはきっぱりと言う。
「え、じゃあ、いつ俺の事」
レッドが言い切ろうとすると、エリカは遮る。
「そんな事……、どうでもいいではありませんか……。今、貴方の事を……愛しているのならば」
エリカはそう言うと、レッドの肩に頭を預ける。
これ以上この話を続けると、いろいろなものが暴発してしまいそうになったので、レッドは話題を切り替えた。
「さて、今度こそタマムシか……」
「久々に帰郷致しますわ……。
エリカは、14歳の頃に母親を失い、父親は10歳の頃に他界している。そして最後まで見守ってくれていた祖母(カルミア)も、エリカが大学を卒業したのを見届けたかのように16歳で鬼籍に
「……、そうか。そうだったな。さて、それじゃあ行くか!」
「ええ」
こうして二人はまたも地下通路経由で、タマムシシティへと向かった。
―1月6日 午後1時 タマムシシティ―
こうして、エリカは四年ぶりに、レッドは更に久しぶりにタマムシに到着した。
「うーん、相変わらず賑やか……」
今日は月曜日という事もあって、少し落ち着いている感触こそあったが、やはり他の街とは比べ物にならないほどの繁栄があった。首都の威厳だろうか。
「内国一の、素晴らしい都市だと私は自認致しますわ。コガネやカイナ等とはまた違って、ここは緑を多く取り入れておりますし!」
エリカは自信満々に、自らの街を称賛する。
「なるほど、自分の街だけあって、お前がいつもより更に生き生きとして見えるよ……。さて、ジムに行くか」
「ナツキさん……、ジムの木々……きちんと手入れしているかしら。もし一本でも枯らしていれば……」
エリカがそんな事を呟いているのを耳に挟みつつ、ジムに向かう。
―タマムシジム―
ジムに入ると、近くに居たジムトレーナーが俄かに騒ぎ出す。
「あ! リーダー!」
「本当だ! お久しぶりです!」
そばに居た全員が作業を止め、二人に対してきっちりとお辞儀をした。流石、エリカの治めるジムである。綱紀粛正がなされている。
「皆様、ご無沙汰しております……、ジムを空けてしまい、迷惑をかけてしまって申し訳ありませんわ。さて、ユキコさん。ナツキさんは何処におられます?」
臨時副リーダーのユキコは、質問されたと同時に、
「はい、現在は奥で胡蝶蘭の世話をされていると思います!」
と、丁寧に元気よく答える。
「どうも有り難う。行きますわよ、貴方」
レッドが周りの花に見とれていると、彼女の一声で現実に戻り、
「お、おう。そうだな」
こうして、二人はナツキの所に赴いた。
―同所 奥―
ナツキはユキコの言う通り、奥で胡蝶蘭の世話をしている。
「ナツキさーん」
エリカは、彼女を見つけると、笑いかけながら呼ぶ。
「リ、リーダー! お久しぶりです!」
と、ナツキは深々と頭を下げる。
「そこまで畏まらなくても宜しいですわ……、名目上は同じ役職なのですから。さて、それはそうと……、言いつけどおりしっかりと世話されてますわね。枯れている木や花は、見たところ一つもなく、私の居た頃と遜色無いほど清潔に保たれてますわ」
エリカはそう、ナツキのジムの内装管理を褒めた。
「あ、有難うございま……ゲホッ、ケホッ」
ナツキは返事をしようとしたが、途中で咳をしてしまった。
「あら、お風邪ですか?」
「冬なもので……。あ、大丈夫ですよ。そこまで大事では……ゲホッ」
ナツキは気丈に答えたが、深刻そうではある。
「無理をしないでください……。副リーダーのユキコさんも居るのですから、養生できるようにしっかりと分担しながらやってくださいよ?」
「肝に銘じます……」
と、ナツキは鼻声交じりの声で答える。
「さて、ここに来たという事は挑戦ですね! レッドさん貴方とは前々から」
ナツキは、元気よくレッドに挑もうとしたが、エリカが口をふさぐ。
「ナツキさん……、分不相応な事をいうものではありませんわ。この方は貴女が到底……、勝つことなど不可能な力を持っております」
「え、では、不戦勝でバッジを渡せと!?」
ナツキは、素っ頓狂な声で言う。
「そんなジムの名を下げる真似は致しませんわ……」
「おいおい、じゃあどうする気だ」
レッドは、帽子を目深に被り直し、エリカに尋ねる。
「……、簡単な事ですわ。貴方の……レッドさんのお相手は……私が務めさせていただきますわ」
彼女は、レッドの目に向かってしっかりと答えた。
「……え?」
―第四十話 波止場と墓場 終―
作者は英語苦手なので、もし英文、英訳が間違っていたとしてもご容赦ください。辞書片手にやったので、口語にしてはかたい事に関しては勘弁してください。
しかし、重大な欠陥ならばメッセージや感想でこっそり、改善案と共に指摘してくださると有難いです。