伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

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第五十一話 邪なる恋情

―1月27日 午後5時 ヒオウギシティ―

 快復させた後、四人はチェレンのジムらしき建物に入った。

 入ると、一人の少年が

「先生!」

 とチェレンの方に向かって言っている。

「シンヤ君……、あれ皆も揃ってどうしたんだ?」

 チェレンの言うとおり、シンヤと呼ばれた少年に続くかのようにぞろぞろと少年少女がいる。恐らく10歳前後の歳だろう。とレッドは推測する。

「どうしたもこうしたも無いですよ。先生、さっき悪い人に蹴られていたじゃないですか!」

 どうやらこの少年達は先ほどの一部始終を逐一見ていたようだ。

「私たち、すっごく心配してたんですよ!」

「そうですよ……、先生だけじゃなくて一緒に戦ってたフウロさんも負けちゃってたし……」

 と、一人の少女の発言を皮切りに口々にそれぞれの思いを言っている。

 チェレンはそれらの発言に対し

「ハハ、大丈夫だよ。この通り、体調には問題なしさ」

 と気丈そうに返す。倒れていたくせにである。

 入ってからの子供たちの動静に疑問を持っていたレッドは、チェレンに聞いてみることにした。

「あの……先生って?」

「ここはジムであると共に。トレーナーズスクールでもあるんですよ。僕はここの……コホン、校長兼教師です」

 チェレンは咳払いをして少しだけ偉そうに振る舞う。

 レッドは更に疑問を持つ。

 今は夕方だ。良い子は帰る時間なのにどうしてここに子ども達が居るのか少々不思議に思ったのである。

「それは分かりましたけど、どうしてこんな時間に子ども達が……」

「イッシュは学校の形態が様々で……、うちの場合は寮みたいな事もやってるんですよ。僕が旅していた頃の経験を生かしてボーイスカウト風に寮生活を楽しもうと。そういうコンセプトです。なので、こうして夜まで残っている子も居るわけです」

「なるほど……。しかし小学校はどうするのですか? イッシュにも義務教育があったはずですが」

 エリカがそう口を挟む。

「それがウチですよ。ここのトレーナーズスクールは小学校に代わる教育機関として認定されている訳です」

 そうこう話していると、トレーナーの卵たちがいつの間にか一斉にレッド達に注目していた。

「あわわ! レッドさんだー!」

「あのあの……、さっきすごく格好良かったです!」

 心配していたチェレンの事などどこ吹く風なのか、生徒の関心はゲストに移ってしまったようだ。

 レッドは内心悪い気はしておらず、適当に相槌を打ちながら笑っていた。

「エリカさんもいるー!」

「すっごい綺麗ー! テレビで見た時よりも1億倍は綺麗!」

 こういう大げさな桁で形容するのもこういう年頃の子の特徴と言うべきか。

「ふふ……。恐縮ですわ。それにしても皆さん強そうですわねー……」

 エリカは子どもが嫌いではないのか、上手く世話している。

 数分位しただろうか。そろそろ切り上げようとして、チェレンは手を叩き

「はいはい! それくらいにして……。あれフウロさんは?」

 チェレンがフウロの不在に気付くと、フウロは申し訳無さそうに扉を開きながら

「あはは……、ちょっと入りづらくて。ごめんねー」

 と、頭を掻きながら小さく頭を下げる。

 それに対するレッドの反応は……最早何も言うまい。

 そしてフウロの登場に、少年トレーナーが色めきだったことも言うまでもないだろう。

「そうですか。それじゃあフィールドに向かいますよ」

 向かおうとするチェレンに、一人の生徒が尋ねる。

「先生、戦うの?」

「うん。滅多に見られない戦いだし、しっかりと目に焼き付けておきなよ」

 そう先生が言うと、生徒は「はいっ!」と元気よく返事した。

「随分と懐かれてますね」

「いやいや、単にはいはいって言っているだけですよ。心の中じゃ何を考えているか分からないんですから」

 と、チェレンは冗談めいた笑いをしながら答える。本意ではなさそうなのは明らかだ。

「あーっ、またそうやって小馬鹿にしてー」

「はいはい。君たちも観ていなさい。今日は観戦の授業だ、あんまり騒ぎ立てるとそうだね……その班は一か月トイレ掃除!」

 えーーっ? という子ども達の声は、そこまで本気の拒絶しているものには聞こえなかった。むしろ楽しんでそうだ。本当に慕われているんだなとレッドはつくづく思った。

 こうして、4人はビルの奥の外庭にあるというヒオウギジムにへと向かった。

 

―ヒオウギジム 入口付近―

「あ、レッドさんだ……、あの! おいしいみず……」

 ジムに居るガイドーはレッドにおいしい水を渡そうとした。しかし……

「いやーしかし、ビルの外にジムとは中々斬新なことをやりますね、チェレンさんは……」

「いやいや単に丸ごとジムを置ける用地が無かっただけですって……」

 と、ジムリーダーとレッド当人は話し込んでいた。

「あ……行っちゃった……。! あの、エリカさん、おいしい水っす!」

 レッドが過ぎてしまったのでエリカだけでもと、おいしい水を渡そうとしたが……

「エリカさん凄い人気でしたねー。まあ当たり前か……本当に綺麗な方ですもんね」

「いえいえ。フウロさんだって同じくらいの賑わいでしたわよー……」

 話し込んでおり、話しかける事かなわずだった。エリカはどこか刺々しい語調だったが……。

「……、本当、美人だなあ……トホホ……」

 無視されても、女の魅力にはやっぱり弱いガイドーさんでしたとさ。

 

 

―ヒオウギジム フィールド奥―

 それぞれが所定の位置につくとチェレンは

「えーっと……、それぞれの使用ポケモンは三体、2×2のダブルバトルで宜しいですか?」

 と、ルールの確認をしていた。

「あれ、トリプルバトルとかでもいいんじゃない?」

 フウロがチェレンに横槍を入れたが

「いやいやトリプルだと2対2の場合だとどちらかの使用ポケモンが不公平になっちゃうから面倒なんですよ……」

「あ……そっか。そうだよね」

 フウロは少し考えたのち、合点がいったようで、それ以上の口出しはしなかった。

「で……、いいですよね、お二人とも」

 チェレンは改めてレッドとエリカに確認をとる。

「はい」

「それじゃ、行きますよー……」

 チェレンはムーランドを、フウロはスワンナを繰り出し、レッドはピカチュウを、エリカはキノガッサを繰り出した。

「ピカチュウ、スワンナに10万ボルト!」

「キノガッサ、ムーランドにスカイアッパーです」

 スワンナに、強力な電流が直撃し、あっという間に焼き鳥が出来上がってしまう。恐らくタイプは白鳥っぽいから水・飛行……だから、タイプ一致も加味すれば六倍のダメージだろうとレッドは推測する。

 何か木の実を口にしてやり過ごそうともしてたが残念なことにピカチュウの電撃はそれ以上に強かったようだ。

「むむむぅ……一発で見破られちゃったかな。うう、これじゃあ木の実の意味ないよねぇ……アハハ」

 フウロはそう力が抜けた笑いをしながら言うと、唇を噛んで少しだけ悔しそうな表情をする。

 如何にもなポケモンを繰り出しといて何言ってんだとレッドは思ったが、嫌われたくないので突っ込むのは止めた。

「初っ端からやられないでくださいよ……、ムーランド! キノガッサに氷のキバ!」

 エリカは、まさかの氷技に当惑気味の表情をしたが、すぐに平静を取り戻して、

「キノガッサ! 喰らう前に早く!」

 とエリカは急かすようにキノガッサに指示する。

「分かってやすよ……、オラァ!」

 ムーランドの凍りついたキバがキノガッサの傘にかかる直前。キノガッサは歯の奥に思いっきり一撃を見舞わせた。キャインという声をあげた気がするが多分気のせいだろうとレッドは流す。

 無論、体は宙を舞い、綺麗な半月状の軌跡を描いたのちバタリと砂のフィールドに落ちる。

「ムーランド! 倒れちゃダメだ! やり返せ!」

 チェレンの呼びかけに反応し、ムーランドはダメージなんぞ喰らわなかったとばかりに果敢にキノガッサに襲い掛かる。

 氷のキバは確かにキノガッサを捉えたが、所詮は不一致。相当なダメージは喰らったようだが、致命傷に至らしめるには足りなかったようだ。

「次はもっと耐えてよ……、ふっとべ! あたしのウォーグル!」

 ウォーグルは勇猛そうに羽をはためかせながら出てくる。鋭いくちばしになびくたてがみ。そして鋭い爪……、猛禽(もうきん)類全ての特徴を形容したかのような鳥ポケモンだ。

 それを見たときのレッドの第一印象は、か……かっけえええええ! である。

「す……すげえ……イッシュにもこんなにカッコいい鳥ポケモンが……」

 レッドの口からは図らずもそんな言葉が出る。

 それを聞いたフウロは嬉しそうな表情を浮かべながら

「気に入った?」

 と尋ねる。レッドは大きくうなずく。

「そっかそっか。じゃあ不戦敗になってもいいならあげちゃっても」

 と、途中までフウロが言い掛けたところで

「フウロさん!」

 チェレンが大声で冷や汗をかきながら注意する。

「嫌だなぁ。ジョークだよ、ジョーク! もう、チェレン君って冗談通じないな」

 フウロは少し不満そうな顔しながら応対する。チェレンはそれに対して呆れた表情で

「全く……、いって良い冗談と悪い冗談が……」

 と言ってる途中で面倒くさそうな声でフウロは

「はいはい。ごめんなさい! ウォーグル、岩なだれ!」

 何とも無かったかのような鷹揚(おうよう)な調子で指示する。さっきのやりとりでレッドの心は更に締め付けられた事はもう分かり切ったことだ。

 レッドは浮かれた心を鎮めるようにしてピカチュウに指示する。

「ピカチュウ! ウォーグルにかみなり!」

 あれだけ強そうなポケモンだ……一筋縄では行くまいと悟ったレッドは、10万ボルトではなくより威力のある雷を選んだ。

 しかし、ピカチュウの白い稲妻はすんでのところでウォーグルは避けてしまった。所詮は命中が不安定な雷である。

「チィ……」

 レッドは静かに舌打ちをしていた。

「キノガッサ! ムーランドにもう一度スカイアッパー!」

「……、ムーランド! キノガッサにもう一度氷のキバを」

 しかしその前にウォーグルによる岩雪崩の洗礼が始まった。

 岩が天より降り注ぎ始め、ピカチュウは頭を押さえながら何とか凌ごうとする。

 一方のキノガッサは俊敏且つ的確な体さばきで避けながらムーランドの元に突撃する。

 やはり格闘ポケモンは格が違うなぁとレッドはつくづく思った。それでも数個はキノガッサに当たってしまっているが……。

 そしてキノガッサは2発目のアッパーをムーランドに見舞って、倒すことに成功した。

……

 こうして、レッドは2体、エリカは1体を失い、残ったポケモンのHPは少な目と少し危ない状況ではあったが何とか勝利を収める。

「参りました」

 チェレンは負けを素直に認めて頭を下げる。

「なるほど……、うん、貴方達がイッシュまでこれた理由。体で体感した気がするよ!」

 フウロは確信めいた表情をして、ニヤりと微笑みながら二人の実力を認めた。鷹揚な態度は崩さないようだ。

「いえいえ、イッシュのトレーナーも手強いと思いましたよ……」

 レッドはそうフォローを入れる。

「とんでもありません、僕自身学んだことが沢山あるもので……。これ、ベーシックバッジです! どうぞ受け取ってください」

「あたしも2年ぶりに本気で勝負出来て本当に楽しくて、幸せだった……。その感謝の意も込めて、はい、フェザーバッジです!」

 こうして、レッドとエリカは一気に2つのジムバッジを手にする。

「初めてのチャレンジャーたちが貴方達で本当に良かった……。これなら、これからの挑戦者にも胸を張って戦えそうです」

「ええーっ!? チェレン君、今回がリーダー初バトルなの!?」

 フウロは驚きを隠せない様子だ。当然、レッドやエリカも驚嘆している。

「負けた時に言い訳したくなかったから言いたく無かったんですけど……。これだけ多くの事をモノにできたのならバラしても悔いはないよ。というかそんなに驚くことですか?」

「いえ……、あまりにも手馴れていた様子でしたから、てっきりもう何度か戦っておられるのかと」

 エリカはそう口にする。余程驚いたのか、どこか口調がおどけた調子だ。

「バトルは元々手馴れているつもりですし、振る舞いは普通にしたつもりですけど……。まあいいです」

 そういってチェレンは口を閉じる。

「いやいや……俺としても意外でした……。俺も、初のイッシュでの相手が貴方達で良かったです」

「レッドさん……。そう言って頂けるなら光栄です」

 チェレンは少し頬を赤くしている。照れているのだろうか。少なくとも惚れている訳ではないとレッドは自己完結をした。

「へへ……、そう言って貰えるとあたしもあたしのポケモンも、すっごく嬉しいよ!」

 フウロも同じく顔を紅潮させている。こっちは惚れてるんじゃないかと邪推してしまうのが持たざる男の悲しい所だ。

 レッドは、一まず初のバッジを手にしたので大きく伸びをして

「さて、バッジも手にしたし、このまま、次のジムに行くか!」

「そうですね!」

 レッドの発言にエリカも同調するが、

「いや、もう夕方……というか夜ですよ」

 チェレンの一言でふと気づくと、辺りはすっかり暗くなっている。無我夢中とはまさにこの事だ、時間の変化にすら気づくことはないとレッドは言葉の意味を噛み締めた。

「あ……。そ……そうですよ貴方! どうして気が付かないんですかー」

 エリカは冷や汗をかきながら、レッドからわざと目を逸らして対応する。

 いやお前さっき「そうですね!」とか言ってただろうが。と突っ込もうと思ったが、慌ててるエリカも可愛いのでレッドは放っておくことにした。

「アハハ……」

 フウロは引きつった顔で笑いながらその場を見ている。

「……、という訳でお二人はこれからどこに泊まられるのですか?」

 チェレンは話題を切り替えた。中々空気の読める男だ。とレッドは思う。

「いつも通りポケモンセンターですかね」

 レッドが言うと、フウロが

「ポケセンね。あぁそうそう!」

 と。ポンと手を叩きながら何かを思い出したかのように続ける。

「イッシュのポケセンって、内国でいうフレンドリィショップとくっついてるんだよー!」

 レッドは納得しながら

「へー、一々移動する手間が無くて良いですね。でもどうして内国がそうだと知ってるんです?」

 とフウロに続けて尋ねる。

「でしょ? あたし、ナギさんの案内の下でホウエンしか周ったことないけどフレンドリィショップが別で凄く驚いたんだ。それが妙に印象強くってねー」

 と、楽しそうに語っている。飛行機の中でナギさんがイッシュ周っていた事も言ってたし、二人はすごく仲良いんだなぁとレッドは思う。

「内国はフレンドリィショップを管理する機関とポケモンセンターの機関で利権の対立がありますので、まず出来ない事ですわ……。うらやましい限りです」

 エリカはどんだけ内部事情に詳しいんだとレッドは思ったが、今更突っ込むのも面倒なので止めた。

「確かに、内国とこっちじゃポケモンリーグを初めとして色々な機関が別々ですが……なるほどそういう事情があるんですね」

 博識そうなチェレンでも知らなかったようだ。

「ふむふむ……。さてと、あたしもポケセンかなぁ……。フキヨセ付近は荒天らしいし」

 フウロはそう呟く。あまり残念そうでもなさそうだ。

「フキヨセの辺りってこの季節だとあられとかが降りまくりますもんね……。ああ、お二人も気を付けてくださいよ」

 チェレンはそう、二人の身を案じている。

「ご心配は有難いのですが、俺たち、シンオウの寒さも経験してるので大丈夫ですよ」

 レッドはそう言ってチェレンの心配を取り払おうとする。

「そういえばそうでしたね。ハハハ、釈迦に説法とはまさにこの事で……」

 釈迦に説法!? 俺はお釈迦様じゃねえぞ等とレッドは思った。しかし、エリカは横から耳打ちをする。

「貴方……、釈迦に説法というのは物事をよく知っている人に、薄ら分かっている人が説法……つまり説教をすることですよ」

 恐らく表情から分かっていないことを察したのだろう。エリカは丁寧にもレッドに意味を教えてくれた。

 レッドは勘違いしていた自らが恥ずかしくなって、赤くなった顔を隠すために帽子を目深に被り直す。

「あのー……、チェレン君? 確かにレッドさんはお釈迦様みたいにすごい人だけど、別にお釈迦様じゃ」

 フウロも意味を知らなかったようで、チェレンにバカ正直に尋ねている。

「は……はいぃ!?」

 チェレンは信じられないかのような表情でフウロを見る。

「あ……あれ、何かあたし変な事言ったかな?」

「フ……フウロさん、失礼ですが、国語の成績は如何ほどですか?」

 チェレンは恐る恐るフウロに尋ねる。

「あたし、体育と家庭科と……あと化学と物理の時間以外あんまり好きじゃなかったし……」

 チェレンは溜息をつく。

 どうやらフウロは理系のケがあるようだ。

「そ……そうですか。あのですねフウロさん」

 チェレンが自分とフウロを後ろに向かせる。

 全て聞き終るとフウロは真っ赤な顔になって……。

「そ、そーなんだ。嫌だなーあたし、言葉全然知らないやーアハハー」

 言葉という事は、多分釈迦に説法の意味を解説していたんだろうか。笑ってごまかしてはいるが、フウロの心中は察するに余りある。

 レッドは仲間が居たんだと、内心かなり嬉しくなっている。

「……、さて、そろそろおいとま致しましょうか」

 ここに居る用事は無くなったなと思ったのか、エリカは去る事を提案する。

「そうだな」

 レッドもそれに同調する。

「そうですか。あの……本当、お疲れ様でした、生徒たちにも貴重な経験となったでしょう」

 そういってチェレンは深く頭を下げる。

 レッドは謙虚な素振りを見せ

「いやいやそれ程でも」

 と返す。

「さてと、という訳だ! シンヤ君、マリコ君! 今日見たことの感想や分析について1週間以内にレポートにまとめるよう伝えてきてくれ!」

 チェレンは大きな声で、フィールドの外に居た二人の生徒らしき男女に喚起する。戦いが終わった後は7割くらいの生徒は校舎に戻ったようだ。

「えぇ……面倒くさいなぁ」

「分かりました! 行こう、シンヤ君!」

 マリコはシンヤという男を連れて校舎に戻っていく。

「ハハハ……レポートにまとめるなんてそんな大層なものじゃ」

 とレッドはまたも謙遜している。

「これも立派な教育法の一つですよ。観戦して、分析をさせ、総評をさせる。こうする事で自分が実際に戦う際も理論立てて考えることができ、勝ちに繋げることも出来る。そういう事です」

 そんな簡単に上手くいくなら苦労しねえんだよ! とレッドはチェレンに主張をぶつけようとしたが、自信満々に語っているので言いそびれてしまうのであった……。

 こうして、チェレンと別れ、レッドとエリカは同じくポケモンセンターに泊まるというフウロと共に宿に向かうのであった。

 

 

―同日 午後8時 ポケモンセンター―

 という訳で、レッドは今回の宿が空いているかどうか聞いた訳だが。

「ええっ!? 一部屋しか空いてない?」

 レッドはわざとらしく素っ頓狂な声をあげる。

 言われたジョーイさんは申し訳なさそうに

「はい。現在、その一部屋を除いて満室となっておりまして……」

「ですってフウロさん。どうしますか?」

 レッドは尋ねる。フウロは少し間を置いて、困った表情をしながら

「えと……それってレッドさんとエリカさんと同じ部屋に泊まるという事ですか?」

「俺は別に構わないけど……、エリカ、お前は?」

 まさか野宿させる訳にもいくまい。おのずと選択は決まっているが、レッドはエリカに一応尋ねている。

「……、止むをえませんわ。私も構いません」

 エリカは少し不服そうではあるがそう答える。

「い、いいんですか? あたしが居るんじゃお邪魔では……?」

 流石のフウロも敬語になっている。少し緊張しているのだろうか。とレッドは思った。

「いえいえ、このまま外にって訳にもいかないでしょう」

 明らかに妻の前で言うべき事ではないが、レッドは構わず言い続ける。

「……、そ、そうですか。じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな……。エリカさんが居るなら安心だし……」

 それってどういう意味だ! とレッドは思ったが、願ってもないことが起こったのでレッドは気にしないことにした。

 

 こうして、3人はポケセンの客室にチェックインしたのだ……。

 空は、3人の行く末を案じているのか、いつもより心なしか黒い。

 

―第五十一話 (よこしま)なる恋情 終―

 

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