伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

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さて、サンギを経由してホミカ戦ですが、
時間の都合でポケウッド及び親子喧嘩のイベントとかは全て無かったことにしてます。ごめんなさい。


第五十三話 嘱託

―1月30日 午前11時 19番道路―

「そこのトレーナー!!」

 旅をしていたら、どこからか枯れ気味の大声が聞こえる。

「何でしょうか?」

「声の元は崖の上……かな。随分と声張らせてるな」

 そういう風に流して崖を通り過ぎようとすると

「またぬか!」

 と言いながら二人の背後に声の主と思しき人物が舞い降りてきた。

 その男は、赤と黄色のたてがみに首をモンスターボールをぶらさげ、全体的に風来坊を彷彿とさせる容貌をしていた。年齢は50代前半といったところか。

「全く……、人が呼びかけているのに応じぬとは礼を知らぬトレーナーよ」

「いや、俺たちに向かって言っているとは思わなかったので……ごめんなさい」

 と言い、レッドとエリカは頭を下げる。

「謝れば良いのだ。さて、わしはアデク!」

 その名前に何か思い当たることがあったのかエリカは

「アデク……どこかで聞いた名前ですわ」

「ほう、わしの名を知っておるか。で、わしはポケモンと共に歩む……その事が如何に素晴らしき事かを伝える物好きなトレーナーよ!」

 容貌だけでなく、行動も変わっているようだ。

 人に話しかけるや、このような宗教紛いの事を言うとは新手の勧誘か? 等とレッドが(いぶか)しげにアデクを見ていると

「これは失礼を!」

 とエリカは深くまたも頭を下げている。

「おいエリカ、急にどうした」

「どうしたもこうしたも……この方はイッシュリーグの前チャンピオンですわ! この方のお話を聞いていたらピンと来たのです」

 エリカがレッドに説明していると、

「……、お前さんたちは?」

 アデクはまさかと言いたげな目線を二人に送る。

「マサラタウンのレッドです。で、この女が」

「タマムシジムリーダーのエリカですわ。以後、お見知りおきを」

 そう言うとアデクは驚いた表情をした後、

「ふむう。お前さんたちが近頃イッシュに来ると(ちまた)で噂になっておった伝説の夫婦か……」

 最早二人は、地方に来ると言うだけで話題になってしまう程の有名人だ。

「お前さんたち、ちと時間はあるか?」

「それはもう、腐るほど」

 レッドは即答した。エリカも特に何も言わなかった。

「ならばちと、お前さんたちとポケモンの力を貸してくれぬか?」

「えっ? 何を急に……」

 レッドはアデクの唐突な提案に当惑している。

「なーに、そんな大層なものではない。ちとわしの家でやってもらいたい事があっての……」

 仮にもチャンピオンをやっていた人間の依頼だし、そんな危険なものではないだろう。そう判断したレッドはとりあえずアデクの提案とやらを見に行くことにした。

 

―同日 午後1時 サンギタウン 練習場―

 家の前にはフィールドがあり、家はごく普通の一軒家だった。

 しかし中には机や座布団、そして奥には布でかけられた高い場所がある。

「あっ、アデクさん! お帰りなさーい。その人たちも鍛えてあげるの?」

 一人の女の子が行儀よく腰を曲げて挨拶する。

「いやでもこの二人強そうだよ……」

 横に居た男の子がそう言って身震いした。

「それもそうだろう……。何しろこの二人はかの伝説の夫婦だからの!」

「ちょ……子ども相手に怖がらせるような紹介は……」

 レッドは気恥ずかしさもあって、アデクの発言を制しようとする。

 しかしアデクはレッドの発言を無視して続ける。

「なーに、失敗は成功の基というだろう。それで学ぶこともあるのだぞ! という訳でレッドとエリカ! この二人と戦ってくれい」

「あの、それはともかくここはどういう場所なのですか? 私、一向に把握できないのですが」

 エリカは展開が急すぎて頭がついていけないのか、疑問を投げかける。

「うむ、ここはわしがこの町の中で目ぼしいトレーナーの卵を見つけ、こうして練習をする所だ。とにかく、練習試合という事で仕合うてくれい!」

 という訳で、言われた通りにレッドが男の子と、エリカが女の子と戦った。

 アデクがいうには町でも抜きんでた少年少女トレーナらしいが、ワンサイドゲームに終わった事は言うまでもないだろう。

 二人の勝負の感想を聞いてみれば、「草は炎に弱い」だの「水タイプが水技を使うと強くなる」等、初歩の初歩の話をしていた。レッドからするとなんとも懐かしい香りがして、微笑ましくはあったが、アデクの(はら)が良く読めなかった。

 アデクが戦った二人の子どもに少し講義をして、下がらせた後すかさずレッドは背を向けていたアデクに尋ねる。

「アデクさん、どうして俺たちに突然このような事を……」

 アデクが答える前にエリカが静かに口を開いた。

「初心忘れるべからず……ですね」

 レッドはその言葉に如何な意味があるのか注目することにした。

「……左様。わしは二人に……いや特にレッドに対し、一つの警鐘を鳴らせてやらねばならんと覆ったのだ」

「警……鐘?」

 レッドはそれに対して首をかしげた。

「ここのリーグを辞める直前、お前さんの戦いを見させてもらった。そう、あの選挙の直後、シロナと戦った時のな」

「そうだったのですか? 私は全く気づきませんでしたが……」

 エリカと同様に、レッドも全く気配すら感じはしない。

「ワタルの隣におったからな。気づかぬのも無理はなかろう。話を戻そう。わしは、シロナと戦っていたお主を見て思ったことは二つある」

 レッドはアデクの次の発言に耳を傾けようとする。

「一つは、その力はきっとわしをも簡単に超えているだろうという事。もう一つは……」

 アデクは途端に口ごもったので、レッドは次の発言を促す。

「……、もう一つは、強さにかまけて己の修練を怠ってはおらぬかと思ったのじゃ」

「え?」

 アデクは、レッドの疑問をよそに続ける。

「お前さんは、あれほどギリギリの状況で勝ったにも関わらず、それを気にする素振りをさほど見せはしなかった……。これは、お前さん自身が『勝てば、それで良い』と思っているからではないのか?」

「違いますよ! それは単に、勝てた事があまりにも嬉しくて……」

 レッドはそういって弁解しようとしたが、アデクは

「その気持ちは分かる。勝てば誰でも嬉しい物だ……。だが、舞い上がってはならぬだろう。これは勝てばそれで良いと思っているから左様な事が出来るのよ」

 アデクの言葉はレッドの心中深くに突き刺さる。

「初心忘れるべからず……。お前さんもまだ駆け出しの頃、わしの弟子のようにポケモンと戦い、どうすれば勝てるのか試行錯誤した時期はあるだろう。その時期を思い出すのだ」

「はい……」

 レッドの心中は満身創痍だが、それでも何とか答えようと試む。

「イッシュ地方は、ポケモンをはじめお前さんたちが内国では見る事のなかったものが数多くあるだろう……それを楽しみ、満喫するのは旅の醍醐味の一つよ。それを満喫しつつ、初心に帰って己を見つめ直すのだ。それを基に成長できなければ、それ以上の向上は望めないぞ」

 アデクは先ほどまでの飄々とした口調とは打って変わり、重い口調で話している。

「はい……しっかりと肝に銘じます!」

 レッドはそう、悟りを得た僧侶の如く目を輝かせながら言う。

「いい目だの……。一か月の延長させた甲斐……少しはあったようだの……」

 アデクは後半、笑い混じりに言っている。

「え?」

「初心に帰らせようと思い、わしはその勝負を見た直後、ワタルに『レッドの入国許可はやはり特例でというわけにはいかん!』とだけ言って立ち去ったのだよ」

「それであの時のワタルさんはあんなに呆れていた目をしていたのですね……」

 エリカはその時のワタルを思い出したのか、くすくすと思い出し笑いをしている。

「なるほど……そらワタルさんもいい迷惑と言う訳だ……」

 レッドも力の抜けた笑いが図らずも漏れ出る。

 やがて、練習場の中は笑いに包まれたが、弟子たちはびっくりして振り向いていた……。

……

―練習場の外―

 その後、二人は練習場の外に出た。

「ふう……、なんかさっぱりした気分だよ」

 レッドはアデクの諫言を聞き、辛くはあったがどこか草原に風が吹くかの如き爽やかさを感じていた。

「さっぱりしたとは……?」

「自分の欠けている所を沢山指摘されるっていうのはもっと悪い気分なんだろうけど……、言い換えれば俺にはそれだけ伸びる余地があるって事だよな! よし、これから頑張……」

 と、気合を入れ直して頑張ろうと背伸びしたその刹那。

 眼鏡をかけた中年の男が二人に近寄ってきた。

「そこで頑張ろうとしている貴方! 突然ですが初めまして……」

…………

 長々と説明され、男が帰ると二人の手元には何やらケースが置かれていた。

「な……なんじゃありゃ。そしてなんじゃこれ」

「早口で聞き取りづらかったですが……、私たちのようなトレーナーの行動を逐一評価するお節介なイベント……メダルラリーと言うのがあるらしく、このケースがその証だそうですわ」

「お前良く聞き取れたな……。で、このケースにメダルが貯まっていくって事か?」

 レッドは頭の中に残っている情報を集積させながら、エリカに確認する。

「だそうですね。しかし本当にお節介ですわ……、ストーカー紛いのこんなイベント早いところ……」

 と言いながらエリカはケースを開く。

 するとピンク色の一つのメダルが日に反射され、輝く。

「まあ……これは中々……」

 エリカの目の色が変わった。恐らくメダルのせいだけではないだろう。

「ホントホント、気持ち悪いしさー……っておいエリカ?」

 レッドはエリカの様子が変わった事に気づき、改めて尋ねる。

 エリカはそそくさにケースを閉じ、レッドに向き直る。

「し、しかしですね、貴方、こういうのも悪くないのでは?」

「は?」

 レッドは急に考えが変わったエリカに不審を抱いたが、まさかと思ってケースを開くと意味を理解し、そして観念した。

 そう、エリカは美しいものに弱いのだ……。

 

 その後二人はポケモンセンターに宿泊し、20番道路を通ってタチワキシティに到着した。

 どうでもいい事だが、レッドはサンギタウンでトレーナーの歩き方を見つけ即購入した……。

 

―タチワキシティ

 雲と煙に覆われがちな街。

 人々は活発だが、その方向はあまり宜しくない方向に向けられる事があるとかないとか。

 最近有名になったロッカージムリーダー・ホミカの登場によって、ロックも絶頂を迎えつつあり、 変な方向に暴走し始めている事は恐らく気のせいだ。

 その一方で映画村のポケウッドがあり、日夜スタッフたちが高名な映画を作り上げている。

 

―2月3日 午後1時 タチワキシティ―

「なんだか、危険な匂いがする街ですわね」

 ゲートをくぐり抜け、タチワキに到着した途端の第一声がこれである。

 雲と煙という陰鬱な背景と灰色系の建物が林立するとこうも嫌な香りがするものかとレッドまで陰鬱な気持ちになっていた。

 とりあえずジムを探そうという事で、二人は町中を探し回る。

 

―午後1時半 同所―

 街の南東部に位置する、小さめの建物。そこには上に図案化されたモンスターボールと『タチワキシティ ポケモンジム リーダー ホミカ ポイズンライフ! ポイズンライフ!』と何とも奇妙な看板があり、おそらくここだろうという事で入る事にした。

 

―タチワキジム 地下―

 入ると、ドラムやベースの協奏曲……要するにロック風の音楽が漏れ聞こえる。

 エリカはあからさまに嫌悪感を示し、レッドが心配するが

「こういう曲はあまり趣味ではありませんが……止むを得ませんわ」

 と言って気丈に振る舞う。当然と言ってしまえばそれまでだがなんとも健気だ。

 階段を下りきると、ドアが見える。

 押して入ろうとすると、前に居たおっさんが話しかけてきた。

「何ですか! 今急いでいるんです!」

 エリカは聞きたくもない曲を聞かされて苛々しているのか、声を荒げる。

「わっ……ごめんなさいっす……」

「いや、貴方が謝るような事じゃないですよ……。こいつ今結構苛立っているんで。それで何用ですか?」

 レッドが男をフォローした。エリカも我に返って男に謝る。

 男は悲しそうな顔をして……

「うう……やっぱり覚えてないですか……」

「やっぱり?」

「いえ、こちらの事っす。自分、トレーナーのジム挑戦に関するガイドをするガイドーと言います! 以後宜しくっす!」

 と言ってガイドーは深々と頭を下げる。

「こちらこそ。えっと……ガイドーさん、ここは随分と……お騒がしいですが……想像はつきますけど……何をされて……おられるのですか?」

 エリカはもう疲れているのか絶え絶えの声で話している。

「だ、大丈夫っすか? え、ええとですね、ここはジムであると共にライブハウスになってるんすよ! だからここで日夜練習に励んでいるわけっすねー」

 ガイドーは最早慣れてしまっているのか、構わずすらすらと喋る。

 レッドも段々となれない大音量に気が滅入られ始めている。

「という訳で、ジムリーダーをはじめとする人々は練習しちゃってますけどー、構わずガンガンチャレンジしちゃってください! あ、ワンドリンク」

 ガイドーがそう言ってワンドリンク、つまりおいしいみずを差し出すと、レッドはすかさず取ってやつれているエリカに飲ませる。

「あ……あのー。レッドさん?」

 ポケモン用の水を飲ませるという予想外の行動に出たレッドをガイドーはそう言って呆然としながら見る。

「ごめんなさいガイドーさん。今もう早くも体力が黄色ゲージの人が居るんだ」

「そ。そっすね、一応水は10本ぐらい常備しているんで、ツーモアドリンク差し上げるっす」

 一本飲んでエリカは一応生き返ったので、二本はポケモン用にとレッドは有難く受け取っておいた。

 

―ジム内―

 とりあえず、ポケモン勝負で横に居る二人を黙らせ、ホミカに近づく。

 フウロから聞いた通り、小柄で大きなベースを弾いている。なんともそのギャップが可愛らしい。

 それはともかくとして、レッドはホミカに話しかけた。

「いくよ! あんたたちの理性、ぶっ飛ばすから!」

 急に何を訳の分からない事をとレッドは思ったが、ホミカはドグロッグとモロバレルを繰り出した。

 とにかく勝負をしなければ始まらないので、レッドはカメックスをエリカはラフレシアを繰り出す。

「ラフレシア、モロバレルにヘドロ爆弾です!」

 エリカはジムが無音状態になって精神が安定したのか、いつもの明るい調子に戻った。

 ラフレシアはモロバレルに毒をくらわせたが、案の定一撃では倒れない。

「カメックス! 雨乞い」

 フィールドは雨模様になる。

 特にドグロッグが嬉しそうな表情を見せない事からレッドはドグロッグの特性をきけんよちだと見抜く。

「モロバレル! カメックスにキノコの胞子! ドグロッグ! 剣の舞!」

 ホミカの指示にすぐさまポケモンは反応する。

 そして、モロバレルはカメックスを眠らせ、ドグロッグは体を華麗に舞わせ、攻撃力を上げたようだ。

「ラフレシア! モロバレルにもう一度」

 ラフレシアは同じく、ヘドロ爆弾をくらわせるが、流石に二撃では倒れなかった。

「眠ってしまったら仕方ない……行け! ラプラス!」

「モロバレル! ラプラスからギガドレイン! ドグロッグ! ラフレシアにどくづき!」

 ラプラスは特防の高さがあってか一撃では倒れなかった。しかし、ラフレシアは攻撃上昇もあってか結構な深手を負う。

 そしてモロバレルはギガドレインの吸収と折からのくろいヘドロで回復。ほぼダメージ分を取り返した。

「ラプラス! 吹雪!」

 レッドは吹雪の威力に賭けた。

 見事、吹雪は発動しモロバレルは一撃で倒れる。ドグロッグは体力を三分の二失った。

「やるじゃん! 次はもっと爆裂して! ペンドラー!」

 

……

 こうして、レッドは2体エリカは1体失い、残ったポケモンは緑ゲージの凡勝を収める。

「あーあ! 不意打ちすればもしかすればもしかするかもって思ったのにな! ほんと負けてんなよなホミカ!」

 なんつーやり方で勝とうとしたんだとレッドは突っ込もうとしたが、突っ込むとベースで頭ぶっ叩かれそうな気がしたので止めにした。

「てのはほんの冗談で……、いくらあんた達が相手だったのは言え負けたのはすっごく、くやしーけど……、一切手抜きなしのガチンコだったし! スッキリしたし! ありがとね。はいこれあたしに勝った印!」

 こうしてレッドとエリカは三つ目のバッジ、トキシックバッジを手に入れた。

 エリカがお辞儀をし、適当に引き上げようとするとジム内にホミカの仲間と思しきスキンヘッズの男が入ってきて……

「ホミカさん! 大変っす! 今港にプラズマ団を名乗る連中が……」

「適当な事を……って思ったけど、そういやチェレンとかいう隣町の同僚がウチが襲われたとか言ってたっけ……。すぐ行くよ! あんた達もついてきて!」

 という訳で二人はホミカについていくことにした。

 

―タチワキシティ 船着き場付近―

 三人が船着き場に到着すると、ヒオウギの時と同じ制服を着た黒ずくめの集団が(たむろ)していた。

 その様を見てホミカは

「あんたたち……ホントにプラズマ団?」

 そう言うと一人の下っ端は

「そうとも! 俺たちはプラズマ団! 二年前に王として崇めた男に裏切られ、我々のイッシュ地方征服は露と消えた……。だが、俺たちは諦めはしない! ネバーギブアップ! 既に新しい”センセイ”とか”ボス”達も加わって比べ物にならないくらいパワーアップした俺たちは、もう新たな計画を」

 エリカはセンセイとボスという言葉に少し眉を動かせる。

「おいこのバカ! 喋り過ぎだっての」

 と言って隣の下っ端が下っ端の頭を引っぱたいた。

「いてて……、あ……あれ。おい、リーダーの後ろの奴の顔、見たことないか?」

 引っぱたかれた下っ端が頭を上げると、もう一人の下っ端にそう持ちかける。

「え? ……おい! こいつらスペシャルインポータント注意人物じゃねえか! レッドにエリカ! とりあえず引いて、ヒウンのセンセイが居る所に……」

「何をゴチャゴチャ抜かしてんだよ!」

 業を煮やしたホミカが思い切り地を踏んで威嚇する。

「ヒェッ……! プラーズマー……」

 と言って、下っ端たちはどこぞへと逃散していった……。

 

「チッ……逃げたか……。それにしてもあんた達、思ってたよりよっぽど凄い人たちなんだねえ。顔見ただけで逃げていくなんて……」

 レッドはデジャヴに襲われたが、気のせいだろうと思う事にした。

「恐らく、ヒオウギでの一件があちらにも伝わってるせいかと……」

 エリカはそう推測する。

「それにしてもセンセイに新しいボス……? 一体何のことだ?」

 レッドは頭を抱えてひたすら思索するが、その脳みそで考えられることなどたかが知れているのですぐにやめた。

「さあね。あたしの知った事じゃないよ……。さてと、あんたたちこれから次のジムに行くんでしょ?」

 レッドが頷くと、

「次のジムはここから海を渡ったヒウンシティっていう馬鹿みたいにデカい街にあるから、あと、リーダーはかなりの変わり者だけどあんま気にしないでね」

 レッドは遂に音に聞く、摩天楼の立ち並ぶ大都市中の大都市、ヒウンシティに足を踏み入れる事に少し胸を躍らせる。

「あたしはもうライブの練習あるし戻るけど、あんたたちはヒウンに行ってついででもいいからプラズマ団を追いかけて。何か……二年前よりももっと凄いことを企んでる。そんな気がしてならないんだ……」

「わ……分かりました」

 レッドは少しだけ後ずさりしながら答える。

 エリカは立ち去ろうとするホミカに対して

「お待ちください! 貴女はイッシュ地方全体の危機よりもライブの方が大事なのですか!?」

 エリカがそう言うと、ホミカは立ち止まって

「きっとあたし一人……ううん、きっとイッシュ全員のリーダーがかかっても止められない。今のプラズマ団は二年前の何倍も何十倍もヤバい組織になってる……。あの下っ端の言葉、冗談には聞こえなかったからさ。だからあたしは無駄な事にジョーネツ注いで、周りを悲しませるぐらいならあんた達のように強い人に託した方がずっと良く思える……。あたしの街は……地方はあんたらに託すよ」

 そう言ってホミカはまたライブハウスの方へと歩む。大きなケースを背負う彼女の姿は年齢にそぐわない哀愁を感じた。

 

 そして、レッドとエリカは、ヒウンに行っていた船が戻るのを待ち、様々な思惑が交錯する大都市ヒウンシティへと向かうのであった……。

 

―第五十三話 嘱託(しょくたく) 終―




次回はvsアーティ。しかし本編はそれ以外かも……?
そして次の話にはなんとあの正統派歴史漫画のキャラが……さて誰でしょう?

次回も乞うご期待
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