伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

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今回はライモン編です。


第五十五話 輝く情熱、くすみだす情愛

―2月3日 午後9時30分頃 ヒウンシティ ポケモンセンター 209号室―

 レッドはフウロにエリカが居ない入浴中を見計らって相談の為にライブキャスターを介し、テレビ電話をした。

 フウロは存外好意的に出てくれたので、レッドは取り敢えず一安心して胸をなで下ろす。

「こんばんは。あの……ご迷惑でしたか?」

 そして、レッドは申し訳なさげにフウロに尋ねる。

 フウロは、他意のない口ぶりで

「全然! あたし大体寝るのが23時ぐらいだからこの時間は暇なんだー。それで、どうしたの?」 レッドはフウロにエリカとのすれ違いについて話した。

 最近エリカと自分の知識の差に更に戸惑っている事。

 エリカは自分に対して無理して明るく振る舞っているのではないかという疑問。

 何もかもが釣り合わない自分なんかと付き合ってエリカと自分は本当に良いのだろうかという事。

「へぇ……あんなに仲むつまじいのにそんな内情があったんだ……。見ただけじゃわからない事もあるもんだ」

 フウロは腕を組んでどこか達観した目をしてそう言う。

「うう……それで、フウロさん的にはこの微妙な不和。どうやって直せばいいと思います?」

「うーん。そだねえ……」

 フウロは少し考えたような表情をした後

「あたし、ぶっちゃけちゃうと付き合ったことないし、あまり干渉しちゃいけないと思うんだけど」

 彼女がそう言って手を引こうとしたのでレッドは慌てて

「いいです! 女の人の気持ちとか俺よく分からないし……こういう事相談出来るほど仲の良い異性ってフウロさんぐらいしかいないかなー……なんて思ったもんですから」

 レッドは顔を赤くしながらフウロに理由を説明する。

 実際にこれは本音だが、何とまあ醜い所を晒しているなと、レッドは自覚する。

「……」

 フウロは当惑気味の表情をして黙ったままだ。 

 こんな所を見てしまったので呆れてしまったのだろうか……レッドは破談も覚悟しながらフウロの次の言葉に注意した。

「あのさ、レッド君」

「はい!」

 レッドはつい大声を発してしまった。余程に次の発言を気にしていたのだ。

「お母さんとかじゃダメなのかな?」

「いやいやいや、こんな相談出来ませんよ!」

「えー? あたしの中じゃ自分のお母さんってそういうのに関しては一番のベテランだと思うけどな!」

「あの、まさかフウロさん、貴女の母上にはそういう相談をした事が……」

「あはは。そんな急にサムライ口調にならなくてもいいよ」

 フウロはいつもの闊達な笑いと純真な姿勢でレッドに接する。

 そんなフウロに心を動かせかけたが、レッドはエリカとの約束を思い出しここでは何とか踏み止まる。そして、冷静になって話を仕切り直す。

「で、相談をした事が」

「もー。話を戻さないなら乗ってあげないよ?」

 フウロは頬を少し膨らませてそう言った。

「え?」

「だから、相談! あたしが18年の人生経験。その範囲内で良いのなら乗ってあげてもいいよ!」

「ほ、本当に?」

 まさか乗ってもらえるとは思っていなかっただけに、レッドは上ずった声をだしてしまう。

「うん。友達の悩みに答えてあげるのは当然の事だよ!」

 友達という単語に少しだけ落胆してしまったのは恐らく気のせいだとレッドは思う事にした。

「あ、有難う! 有難うございます!」

 レッドがそうベットに(ぬか)づくになって言うと、エリカが風呂場のドアから顔だけひょっこりと出して

「貴方! 何事ですか、先ほどから騒々しいですよ」

 心配したのか、そう注意してきた。

「え! いやあの、ピカチュウが高い高いしたら喜んじゃってさ、ごめんね」

「ピカ?」

 何となく世話と癒しの為に側に出していたピカチュウを咄嗟の言い訳の材料に使った。

 ピカチュウは当を得ない表情で、首をかしげている。「ごめんよピカチュウ」とレッドは小さな声で謝った。

「へー……、にしては随分低い声でしたけど」

 エリカは案外に耳聡い。

「そ、そんな事は無い! ピ、ピカチュウ~。ほら、こんな声だろ!」

 レッドは半ば無理やりにピカチュウの鳴き声をまねる。人生でここまで恥ずかしい思いをしたことがあっただろうか(反語)。満面に朱を注ぎながらエリカの動静を待つ。

「……。あ、ラフレシア! 風呂のお湯は啜るなとあれほど……」

 レッドの視界からエリカの頭が消える。

 ポケモンは浴槽に入りきる手持ちに限り、風呂場で洗っている。エリカはラフレシアやキレイハナなどを洗ってあげているらしい。

「ケホケホ……あづい……」

 ラフレシアの声と同時に、浴場のドアは閉められた。

 何とかやり過ごしたと思って、ライブキャスターを見直すと誰かが後ろを向いて肩を震わしていた。髪を()かしていたせいでレッドは一瞬誰だか分からなかったが、何とかフウロだと思い出した。

「フウロさん?」

 フウロは前を向き、口を押えたまま、驚きと笑いが混じった目でレッドに応対する。

「へ? い、いや別に笑ってないよ! 笑ってないってば!」

 何も聞いていないのに、そう返すところはやはり抜けている。動きかけた心を何とか鎮めながらレッドはその話には触れずに本題に戻す。

「で……、例えばどんな相談になら乗ってくれるんです?」

「それはレッド君の発言次第かな。答えられることはちゃんと答えるし、無理な時は無理って言うよ

。それでまずは何聞きたい?」

「そうですね……」

 レッドは少し顎に手を当てて考える。

「取り敢えずさっきまでのエリカとの経緯(いきさつ)聞いてどう思いました?」

「エリカさん、確かにすっごい物知りな人だしねー。その傍らだと自分がバカみたいに思えてくるのはよーく分かるよ」

 フウロは先ほどとは違って笑みも交えながらではあるが、真剣に応対する。

「でもね。エリカさんは別にそんな理由でレッド君を嫌ったりはしないと思うな!」

「どうして?」

「だって、エリカさん。君と居る時安らいでいる表情しているもん。嬉しそうとかだったら確かに無理している……ってあたしも思ったかもしれないけど、安らいだ表情はなかなか出来ないよ」

「安らいで……る?」

 レッドは自分でも気づかなかった視点に驚きを隠せずに居る。

「それって、君と居るとすごーく落ち着く。友達……ああ、あたしがまだパイロットになる前の話だけど。その子の情報だと、本当に好きな。愛している! ってレベルの人の隣に居ると嬉しさと一緒に安らぎも感じるものなんだって」

「へー」

「だから、それって心底エリカさんがレッド君の事を愛しているって事だし、それ以前に好きじゃなかったらここまで一緒についてこないよ!」

「……」

 確かにその通りだが、レッドは不安の表情を浮かべる。

「でもエリカって能とか舞踊とかもやっていたらしいし……それすらも演技でごまかしきれるんじゃ」

「へぇ……。内国人だ」

 フウロは神妙な顔をしてエリカに感心しているようだ。

「まぁ……。本当の所はあたしはエリカさんじゃないし分かりきれないけど。一応、同じ女の子として分かる範囲で言っちゃうと」

 レッドは食い入るような表情でライブキャスターを見つめる。

 フウロは途端に黙って、

「……、そんなウォーグルが獲物を狙うときのような目しないでよ。緊張しちゃうから」

 と言う。

「わっ! ごめん」

 レッドは注意を受けると即座にモニタから目を離す。

「あはは。良いって良いって。それでー……」

 しかし、間の悪い事にエリカがパジャマに着替えて風呂から出てきてしまった。

「わ。エリカが風呂から出てきちゃった……。ごめんフウロさん。また掛けた時に次聞かせてくださいそれじゃ!」

 レッドはそう言うと一方的にライブキャスターの電源を切った。

 

―午後10時 フキヨセシティ フウロ宅 寝室―

「え!? あ……もう。強引だなあ」

 そう言うとフウロも携帯電話の電源を切る。

 携帯電話とライブキャスターは連動しているのだ。当然テレビ電話にも対応している。

「はぁ……。二人、大丈夫かな」

「?」

 フウロが番犬ならぬ番鳥がわりに寝室に置いているウォーグルが首をかしげる。

「あー……何でもないよ。お休み、ウォーグル」

 ウォーグルは黙って頷く。

「いや……大丈夫だよ。きっと……むにゃむにゃ……」

 そして、フウロはベッドに身を臥せて夫婦の事を案じながら、いつもより少しだけ早く眠りを深くしていくのだった……。

 

―所戻って ヒウンシティ ポケモンセンター 個室―

「ふう……貴方、誰とお話しされていたのですか?」

 風呂から上がったエリカがバスタオルで髪を拭きながら尋ねる。ラフレシアはボールに戻したようで、今はキレイハナがエリカの傍らに居る。

「え? 母さんだよ母さん! 暫く顔会わせてないし、電話でくらいならいいかなって」

「……。何故、それほど焦っておられるのですか」

 エリカはレッドの挙動に不審を抱いている様子だ。

「焦ってなんか居ないって。えーと、それじゃ歯磨くか。行くぞピカチュウ」

「ピカ!」

 ピカチュウはとてとてレッドについて行った。

 エリカは怪訝な目線をレッドに送るがそれ以上の追及はしない。

「ふう……困ったお方ですわね、キレイハナ」

 キレイハナは当惑気味の表情だがご主人様に合わせようとこくこくと頷く。

 

 こうして夜は更けていった。

 

―2月4日 午前11時 ヒウンシティ 北部ゲート―

「ひぇー……寒い寒い」

 レッドはゲートに入って暖房の暖かさに包まれると救われたような声をあげながらそう言った。

「そういえば本日は立春でしたか……。暦の上と実際の季節が合わないのは暦が上代や中古の頃とは違う故に仕方ないのですが……」

「へ? 上代? 中古?」

 レッドはまたいつもの唐突の知識披露かと思いながら尋ねる。

「上代というのは奈良時代。中古は平安時代。特に文学史的にはそう分けるんですよ。それでその頃と現在では使っている暦が違うので季節感が少し違うんですよねー。そうそう、季節感と言えば近世。つまり江戸時代の頃まで春夏秋冬はですね……」

「1~3月が春。4~6月が夏。7~9月が秋。10~12月が冬。ですね」

 エリカの話に突如として、横槍が入る。

 エリカの傍らより来た男は、昨日織部と利休を元の時代に返した男。アクロマである。

「せ、正解です。良くご存知ですわね。アクロマさん」

 エリカは後ろを振り返り、少し驚いた声になりながらアクロマを褒める。

「いえいえ、旅しているうちに身に着いたもので。さて、いつまで経っても来ないからここまで来てしまいましたが」

 レッドは分かってない表情をしたが、エリカが耳打ちをする。

「ほら、昨日、アクロマさんが……」

 そこまで言われてレッドは合点が言った調子でアクロマの話を聞く。

 織部と利休はここに来た記憶を消したうえで元の時代に還したという。

 時間を決めていなかったので突っ込もうとしたが面倒なので止めた。

 さて、勝負をすると言っておきながらアクロマはさっさと先に進んでいく。

 

―4番道路―

 ゲートを出ると砂嵐が吹き荒れる。

 帽子を被ったりして応急処置を取って、しばらく進むと何やら見覚えのある岩を目の前にしてアクロマは止まった。

「……、あら大きな岩が道を塞いでしまっていますわ」

「これは、岩ではなくイワパレスというポケモンですよ」

 レッドはその発言でハッとした思いになる。そう、アーティがかのポケモンを使っていたのだ。

「え? ……確かに良く見ますと岩の下に何かありそうですわね」

「よく見ていてください。この、手製のポケモンを目覚めさせる道具で……」

 アクロマは何やら機械のようなものをポケットより取り出し、イワパレス達にその機械を向け操作をする。

 すると、イワパレス達は一斉に面をあげてアクロマの方向とは反対方向に走り出して彼方へと消えていった……。

「イワパレス達は一体……どこで力が尽き果てるのでしょうか」

 イワパレスの方に体を向けていたアクロマはそう言うと、レッド達の方に向き直る。

「そのポケモン達に砂漠を走らせて、死ぬのを待つって……!? 気は確かですか?」

 レッドは目を見開かせてアクロマに問い質す。

「かのプラズマ団は言いました。ポケモンの持つ可能性を認めてポケモンをトレーナーの束縛から解放し、可能性を拡散させよ。と。しかし私はそうは思いません。かの劉備が武功を上げる機会が無く、(くすぶ)ってしまい、太腿(ふともも)の肉が肥えてしまったと嘆いたように、どんなに有用な才能があったところで使ってくれる物やチャンスがなくては決してその才能は真価を発揮できません……つまり!」

「ポケモンは真価を発揮する為にトレーナーが必要……。そう、言いたいわけですね」

 エリカは納得したような真剣な表情でアクロマに返す。

「そうです! 人間は! 寧ろ自らのポケモンの力を引き出すべきなのです! さて、レッドさんにエリカさん。貴方たちの力は最早誰もが知るところ……。そしてどのようにしてその力を、ポケモンの力を引き出しているのか私にみせてもらいましょうか。行きなさい、ギギギアル! レアコイル!」

……

 アクロマは予想外に手強く、レッドは1体、エリカは2体を失い残ったポケモンもそこそこのダメージを喰らうという辛勝を収めた。

 アクロマはご満悦な様子で

「なるほどっ。これはなかなかに宜しい!」

 と言った。

「むむう……ただの旅行者かと思いきや……これはとんだ藪蛇だよ」

「失敬な事言わないでください! アクロマさん中々にお強いのですね……。どこで鍛えられたのですか?」

 エリカは感心と同時に興味津々な様子で尋ねる。

「旅していれば自然と強くなっていくものです。ふむふむ……なるほど、エリカさんは本職の通りにポケモンを大事にすることでその強さを導きだすトレーナー。レッドさんはポケモンを鍛えに鍛えて、その力を最大限に活かすことで爆発的なパワーを生み出す……そういうトレーナーですね」

 アクロマはたった一回のバトルで慧眼(けいがん)を駆使して正確な分析をはじき出した。

 世界最高峰の頭脳を持つ人間の前にはすべてが見透かされてしまうのだろうか……そんな事をレッドは思った。

 アクロマはお礼にと、かいふくのくすりとタウリンを渡す。

 そして最後にと次の事を話した。

「悔しい! ポケモンの力を引き出す……その為にポケモンと腹を割って話せれればいいのですがね。私にそういう話術に長ける才を天は生憎賜ってくれなかったようです」

 いや、それだけの頭を持ってりゃ充分だろ。贅沢言うなとレッドは思ったが、口には出さない。

「それでは、レッドさん、エリカさん。またお会い致しましょう」

 こうしてアクロマは砂漠の中をスタスタと先に進んでいった。

「ほんと、訳の分からない人だな」

「疑問を持ち続けるその態度は、デカルトに通じる所がありますわね……」

 こうして二人は砂嵐の弱まっている時や場所を見計いつつ北に進み、ライモンシティに到着した。

 

―ライモンシティ

 スポーツと娯楽の街、ライモン。

 ジムリーダー、カミツレの理念に基づいているのか否か町全体が煌びやかで大きな建物には大体電飾が使われているほどだ。

 東部にはジェットコースターや観覧車などがある遊園地。北部にはミュージカルやバスケットコートなどあらかたの娯楽施設が立ち並び、イッシュ人休日の遊び場としての機能を果たす。

 しかしその一方、街の中央には豪壮なバトルサブウェイなる施設が鎮座し、バトルの街という側面もある。

 

―2月8日 午後1時 ライモンシティ―

 さて、着くとジムに行ったが、カミツレが居ないとガイドーが言った。

 仕方が無いので、ガイドーの情報を頼りに旧ライモンジムだというジェットコースターに行き、まわりまくると、モデルの人からジムに戻ったと伝えられ、そして二人はジムに再び戻った。

 

―午後2時30分 ライモンジム―

 中に入ると、そこはとても騒がしい場所だった。

 場所が間違いだったかと思い、引き返そうとするとガイドーが話しかけてきた。

「わー! 待ってくださいよ! ここはジムですって!」

「貴方が居るという事はそういう事なんでしょうね」

 レッドはため息をついて答える。

「やっと分かってもらえましたか。さて、来たら騒がしくてびっくりしたでしょ? ここは、なんと、ファッションショーを模した煌びやかなステージなんす!」

「はあ!?」

 ファッションショーという事は観客も大勢だ。しかも近くに居る。

 コミュニケーションに障害があるレッドはその言葉に卒倒しそうになるが、何とか持ち直す。

「ファ、ファッションショーですか」

 エリカは少し興味ありげにガイドーを見る。

「そうっす。このステージを前へ進んでいくにつれて現れる、モデルのトレーナーを次々と倒し、一番奥にリーダーのカミツレさんが居るわけです。で、カミツレさんは電気の使い手ですよ!」

「面白そうではないですか! 貴方、行きましょうよ!」

 エリカはいつになくノリノリな調子でレッドの袖を掴み、行く事を勧めてきた。

「おいエリカ、お前こういうの……好きだっけ?」

「ちょっと恥ずかしいですけど……こういう斬新な趣向嫌いではありませんよ。それに二人でこの細長い道を歩むだなんて……その、け、結婚……式みたいで宜しい……では……ないですか……」

 エリカは最後の方が消え入るように言っていたのでレッドには良く聞こえなかったが、エリカは赤くなっている。勿論、レッドにはそんなのを気にする余裕は無く。

「うう……。バッジ獲得のためには致し方なし……行くか!」

「緊張したら、水分をこまめに補給しましょう! というわけでワンドリンクどうぞっす!」

 そしてレッドとエリカは、まるで結婚式のバージンロードを歩くか如くに進み、渡る人が人なだけに観客は熱狂に包まれて二人を称賛している。

 そんな嬉し恥ずかしの道を歩みながらトレーナーを倒し、リーダーらしき人物の前あたりにまで辿りつくと一気に辺りが明るくなり、BGMが変わりいよいよという雰囲気になる。

 バックスクリーンにはリーダーのカミツレと思しき顔が映るという演出まで煌びやかなジムである。

 そしてレッドとエリカが道を渡り終わって、広い舞台に足を踏み入れる。

 すると、なんとも暑そうな格好をした女性が前に歩み出て、二人に話しかける。

「ようこそ。このステージへ。私の愛しいポケモンたちと、貴方たちのポケモン……どちらがより燦然(さんぜん)と輝いているか。そして本物であるか! この場で比べましょう」

 そう言うと、カミツレは暑そうな上着を鮮やかに上に剥ぎ捨て、モデルがすかさず汚れないようにと受け取る。息はぴったりだ。

 そして、存外美人だったのでレッドは少し時めいたが、エリカにけん制されたのですぐに目を覚ます。にしても不思議な髪形だなーとレッドは思う。

 

 カミツレはゼブライカとデンリュウ。レッドはカビゴン、エリカはキノガッサを繰り出した。

「カビゴン! 地震だ!」

 レッドは即時に決着をつけようと、カビゴンの攻撃に賭けて地震を指示した。

 しかし、カビゴンはやはり鈍い。

「地面技で力押し? そんな手では私の輝きをくすませられないわ! ゼブライカ! カビゴンにワイルドボルト! デンリュウ! コットンガード!」

「コットンガード?」

 レッドは初めて聞くその技に首をかしげる。

 すると、デンリュウの周りには羽毛が発生し、やがて凝縮されて一つの壁になったが如くになる。

「よく分からないが……防御を上げる系の技か。でもそんな簡単にカビゴンの攻撃は抜けな……っ」

 レッドがそう余裕をかましていると、ゼブライカが騎兵の突撃の要領で壁を突き破るが如くに電気を(たた)えて、閃光と共にカビゴンを(つんざ)く。

 その衝撃はカビゴンの巨体をも動かし、少し浮いたかと思うとすぐに地についた。

 カビゴンにはかなり堪えたようで、体力が半分ほど削れる。

 カビゴンはその後、地を思い切り揺るがした。ゼブライカは防御が弱いのか一撃で倒れたが、デンリュウは何の気ない表情で突っ立っている。

 レッドの読み通り、コットンガードは防御力を著しく上げる技である。

 エリカもそれを読み取ったのか、キノガッサを引っ込めてユキノオーを繰り出す。

 天候は霰状態となる。

「中々、読みが鋭いわね……。次はどうかしら? シビルドン! スポットライトの中へ!」

 すると、電磁浮遊で浮いているのか、何とも奇妙な電気ウナギが二人の目に映った。

「浮遊という事は地震は効かない……! くそっ、地道に行くしかないな。カビゴン! 眠るだ!」

 カビゴンはすやすやと眠りにつく。そしてすぐにラムの実を食べて全快になってすぐ起床する。

「ユキノオー! 吹雪です!」

……

 こうしてレッドは2体。エリカは2体を失い、残ったポケモンは少しだけ余裕があるくらいの辛勝に終わる。

「ふう……。痺れたわ。貴方たち夫婦のクールな読みとホットな戦い方に。ホレボレしちゃうファイトスタイルにとっても感激したわ。ここまで来れたのもよーく分かる気がした。さて、これを……」

 レッドとエリカは、5つ目のバッジボルトバッジを手にした。

 エリカがお辞儀をし、レッドもつられて礼をした後

「貴方たちは太陽と月……ではなく、太陽と太陽! 周りを輝かせ続けるブリリアントスターね! その調子で進めば、きっと輝ける軌跡を残せるわ!」

 カミツレの大げさな賛辞に、レッドとエリカは赤面になる。

 特にレッドは美人に褒められているだけに脂下(やにさ)がった顔だ。

「ああそうそう。レッド……だっけ?」

「はい」

 カミツレに急に呼ばれた為、緩んだ笑顔を引き締めて答える。

「フウロから聞いてるわ。とても面白くて、カッコいい人だって! あの子、とても君の事気に入ってるみたいだから、仲良くしてあげなさいよ」

 フウロがそんな事を……。かわいいならとにかくカッコいい……。そんな評価にレッドは真っ赤になる。

 エリカは聞いてないふりをしているのかどうかは分からないが、平静そうな表情をしている。

 その後、カミツレとモデルたちと一緒にステージを下る。弥栄(いやさか)な歓声を後にして二人はジムを出る。

 

―ジムの外―

「いやー、本当に凄い勢いでしたわねー」

 余韻に浸っているエリカにレッドは、どうしてフウロに褒められている事に対し嫉妬したような目線を向けなかったのか尋ねる。

「え? どうしてって……約束してくれたではありませんか! 私以外の女の人に流れないって……。それを信じているから、私は別に気にしたりしないんですよー。ただ、勝負の前に見とれているのはどうかと思いましたけどね」

 エリカは上機嫌にそう答える。本心から言っているようだ。

 レッドは、それに対して

「そうか」

 とだけ答えそれ以上の話はしなかった……。

 そして二人はライモンのポケモンセンターに入って泊まる事にした……。

 

 

―第五十五話 輝く情熱、くすみだす情愛―

 

 

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