伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

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観客席とレッドゴールド視点がちょくちょく変わりますがご容赦を。
因みにルールはPWTのシングルバトルと一緒です。
やっていない方などの為に注釈すると

・使用ポケモンは三体
・回復道具使用禁止(但し、道具や技などでの回復は除く)
・持ち物・技・ポケモンの重複禁止
・レベルは50フラット

関係あるものの範疇ではこんな所です。


結末編 (2014.7ー2025.6)
第六十三話 頂きの行方


―7月17日 午後4時 ホドモエシティ PWT 観客席―

 

 周囲が熱気に包まれている中、ツクシやアカネ等のジョウト勢とは少し離れた席でナツメとエリカは互いに隣に座って観戦している。

 この時点ではまだフィールドに二人が立っているだけである。

 

「いよいよですわね……。ナツメさんはどちらを応援されているのですか?」

 

 エリカは純粋な疑問の体で尋ねる。

 

「私は単にじかで見に行きたいと思ったから来ただけよ」

「……、というかナツメさん。貴女結末分かっているのでは?」

「大丈夫。超能力は使っていると体力消耗するから使うとき以外はなるべく差し控えてるのよ」

「なるほど……。ナツメさんはあくまで中立……と」

 

 エリカは納得した表情になる。

 『いざ、尋常に勝負!』という声がPWTの会場に響き渡ると互いにポケモンを出して勝負を開始した。

 

「始まったわね」

「……、貴方、どうかその天稟(てんりん)の才をこの場にて存分に示して下さい……!」

 

 祈るような目でレッドの健闘を願うエリカを、ナツメはどこか遠い目で見ているのであった。

 

―フィールド―

 

 レッドはカメックス、ゴールドはバクフーンを繰り出す。

 

「初手からバカな真似しやがって……。カメックス! ハイドロポンプだ! すぐに楽にしてやれ!」

 

 レッドがそう言うと、ゴールドはフッと笑い

 

「バカな真似……ですか。相性だけじゃ勝負のすべては決しませんよ! バクフーン! 雷パンチ!」

 

 バクフーンの方が先制し、電気を湛えた拳をカメックスに容赦なく叩き込む。

 カメックスは吹っ飛ばされたが、やはり甲羅の防御力は強くなんとか耐える。

 体力は半分ほど減り、その上運悪く麻痺してしまい、ハイドロポンプを出し損ねる。

 

「! どうしてこんなに減るんだ……? 不一致の上に防御も高いというのに」

 

 レッドは大いに戸惑っている様子で、ゴールドを見る。

 

「フフ……、こだわりハチマキ。やはり強いですね。バクフーンにはうってつけですよ! バクフーン! もう一回!」

 

 レッドはその発言で納得する、よくバクフーンの頭を見てみると確かにハチマキが巻かれている。一本取られたとでも言いたげな表情をしつつ

 

「ちょっとは頭が回るようになったようだな! カメックス! へこたれるな! ハイドロポンプで逆転しろっ!」

 

 レッドの指示にカメックスは従い、カメックスはもう一度砲塔に水を装填する。

 

「バクフーン! 止めをさすんだ!」

 

 バクフーンの雷パンチはやはりカメックスの腹に直撃する。

 あろうことか、カメックスが空に舞ってしまうぐらい猛烈な力を出したそうだ。

 レッドは呆然としたが、カメックスはそうではなかった。

 

「隙あり」

 

 カメックスがそう言った頃には、もうバクフーンのすぐ後ろをとっていた。

 そう、ただ為されるがままに舞っていた訳では無く、背後を取ろうとカメックスは計算していたのだ。

 バクフーンが気付いたころには時すでに遅し、カメックスはバクフーンの背後の炎に照準を当てたが如くに、猛烈な水流を放つ。

 バクフーンは大きく押し出される。背後と言う虚を突いた攻撃。その上、至近距離という状況、激流と一致技による威力の増加。一撃でやられたのは無理も無かった。

 そして、カメックスも逆さまになりながら技を放つという無茶をしたのが祟ったのか、バクフーンに致命傷を与えた後、仕事は果たしたとばかりに倒れる。

 そう、初戦は相打ちと言う結果に終わったのだ。

 観客は、この両者一歩も譲らない戦況に大いに湧きたつ。

 

―観客席―

 

「どっちも倒れるとはね……思った通り、面白そうじゃないの」

 

 ナツメはくすりと微笑んでいる。

 

「ゴールドさんも苦手タイプ相手にここまで善戦するとは……中々に成長されましたわね。しかしやはり相性という壁はそうそうには崩れないものです……」

「草使いのアンタが言うと説得力が増すわね……」

「いえいえ、だからその壁を如何にして越えていくか考えるのも楽しいものですわ」

 

 エリカは思案深げな笑いをする。

 二人がそんな会話をしているうちに互いは二匹目のポケモンを出そうとモンスターボールを構える。

 

「次が始まりそうね」

「まだまだ戦いは始まったばかりです。貴方、どうか気を落とさないように……」

 

 レッドがどこか落ち込んでいる表情をしているのをモニタで見たエリカはそういって聞こえる事のない励ましをする。

 

―フィールド―

 

「やるじゃないかゴールド。苦手タイプにもしっかり抵抗するとは……」

 

 レッドはゴールドを上から目線で褒める。

 そんなレッドの言葉にゴールドは表情を歪ませることなく

 

「やるじゃないか……余裕がありますね。その余裕、1時間もしたら焦りに変えて見せますよ! 行けっ、ポリゴン2!」

 

 ポリゴン2は、出てくると浮かびながら平然とした表情でか細く鳴く。

 

「お前……、俺にならって同じ世代でまとめるなって」

「レッドさん! セキエイでも言った通り、僕は自分の流儀で戦わないと気が済まないんです。自分と同じ地方のポケモンか。そこからの進化したポケモンじゃないと気が済まない性質ですから……。僕は僕の流儀で貴方を下してみせます! だからどうか、僕のわがまま、お許しください」

 

 ゴールドが強く言うと、レッドは眉をひそめながら

 

「花を持たせて勝たせたぐらいでナマ言いやがって……! お前がそうくるなら、俺も俺の流儀でお前を倒し、ポケモンマスターの称号を獲得する! 行け、リザードン!」

 

 リザードンは、その巨体を誇示せんとばかりに雄たけびをあげる。

 観客はその猛々しき威容に歓声をあげる。

 

「リザードン! 大文字だっ!」

「問題っ! 来日していたロシアのニコライ皇太子を巡査である津田三蔵が斬りつけた事件を……」

 

 リザードンがそこまで言うと、ポリゴン2は反応して

 

「ポリーポリっ!(大津事件)」

 

 と嬉しそうに答える。

 

「正解! ご褒美に大文字をあげようっ!」

 

 リザードンはポリゴン2に大文字を喰らわせる。

 一致炎の大技だ、ポリゴン2は文字通り大やけどをくらったろうとレッドは思ったが、体力は四分の一程しか減ってない。

 

「……! 嘘だろ!? それ程効いてないだと?」

 

 レッドは信じられないとでも言いたげな表情をする。

 

「嘘じゃないですよ。この通り、ちゃんと耐えているじゃないですか」

「……、お前まさか何か細工をしたとか……」

「細工とは人聞きの悪い……敢えていうなら進化のきせきという道具を持たせたぐらいでしょうか」

「……、何だそれは」

 

 聞いたこともない道具の名前だったのですぐにレッドは聞き返す。

 

「知らないんですか? 進化前のポケモンの防御・特防を1.5倍上昇させてくれる道具……。まあ、最終進化ばかりに拘るレッドさんには分からないでしょうけどね」

 

 ゴールドはここでレッドを明確に貶し始める。

 

「……、ポリゴンZじゃない理由はそれか」

「そうです。今のポリゴン2の特防は、例え貴方のリザードンが大文字を出そうと4発は耐えられる。まあもっとも晴れではない今の状況でPPが切れるかこいつが倒れるのがどっちが先かは目に見えてますがね! ポリゴン2! リザードンに10万ボルト!」

 

 ポリゴン2はダウンロードで一段階上昇した特攻で、10万ボルトを喰らわせる。

 体力はおよそ8割ほど削れる。

 

「進化のきせきがなんだ! 俺はそれ以上の威力で潰してやるよ! リザードン! ブラストバーンだっ!」

 

 リザードンは口を精いっぱいに開いて、爆炎をポリゴン2に衝突させる。

 爆炎の光は瞬く間に会場を埋め尽くし、閃光となって人目に突き刺さる。

 そして、爆炎は止み、光がおさまったフィールドをレッドは見る。

 ポリゴン2はかなりのダメージを喰らったものの、倒れてはいない。間一髪で耐えきったようである。

 

「……。固すぎだろ……。でもこれなら」

 

 リザードンが倒れた後すぐに挽回できる。とレッドは確信する。

 

「ポリゴン2、自己再生」

 

 ポリゴン2は目を光らせて自らを修復させる。

 レッドは目の前で計算が大いに狂う様を見て愕然とする。

 リザードンはもちろん、反動で動けない。

 

「よし……これならいけるっ! ポリゴン2! とどめだ、もう一回10万ボルト!」

 

 ポリゴン2は電気を作り出して、見事リザードンに命中させる。

 リザードンは倒れた。

 会場は一進一退の状況を固唾を飲んで見守っている。

 

―観客席―

 

「貴方……」

 

 劣勢となった夫を見て、エリカは心配になりだしている様子である。

 

「見事ね。きちんと色々な場合を想定して着実に勝ちに進めているわ」

 

 ナツメは冷静な分析でゴールドの戦いを評す。

 

「確かにゴールドさんはセキエイでお手合わせした時と比べましても大いに成長しておりますが……。だからといってレッドさんに勝てるとは」

「エリカ。あんたらしくないわね、根拠もなく信じ続けるなんて……」

「……」

 

 エリカはナツメの言葉に何も言い返せる気が起きなかった。

 

「エリカは、レッドの事を強く、たくましい人間であると思ってレッドと交際を始め、ここまで旅を続けている……ヤマブキに来たときに超能力で見た限りでも、戦争のあとエンジュで話した時もそういう事だと私は思っていたけれど……」

「そ……、それがどうしたというのです?」

「……、あんたの言うレッドのイメージ。今でも守り続けているのかしらね、あの男は」

 

 ナツメは凍てつくような目線をフィールドに向ける。

 

「守り続けてますわ! そうでなければシャガさんやアイリスさん等と言う強敵に勝てるはず……」

「確かにそうでなければレッドはあそこのフィールドで戦えないわね。でもそれって」

「それって……?」

 

 エリカはナツメに視線を向ける。

 

「もしかして、レッドの力よりも。あんたの力の方が大きいんじゃないかなー……なんてふと思ったのよ」

「え?」

 

 エリカが聞き返すと、レッドは最後のポケモンを出すためにボールを構える。

 

「始まりそうね」

「……。貴方……」

 

 エリカのフィールドを見つめるその眼差し。そこには段々と期待と愛情以外の物が溢れだし始めていた。

 

―フィールド―

 

「リザードンまで倒すとは……、お前、本当に頑張って来たんだな」

 

 レッドはこの戦いで使える最後のモンスターボールを手に持ちながらゴールドに言う。

 

「褒めて頂いて恐縮ですけど……、もうそんな言葉を吐かせなくしてみせますよ」

「フ……、ちょっと花を持たせすぎたか……、ここから一気に挽回してみせる! 行け、カビゴン!」

 

 カビゴンは出るや否や寝そべる。元々寝そべっているというのは禁句だ。

 

「カビゴンですか……。ポリゴン2、気合玉だっ!」

 

 ポリゴンは気合玉を放出するが、運悪く外れてしまう。

 

「よし……! カビゴン! 腹太鼓!」

 

 カビゴンはむくりと起き上がると、途端にポンポコポンポコ自らの腹を叩き始める。

 

「……! 早く仕留めないと、ポリゴン2! もう一回気合玉!」

 

 ポリゴン2の気合玉は、見事カビゴンに命中。しかし、カビゴンの脂肪のせいか否か、体力をわずかに残して耐えきる。

 

「今だっ! カビゴン! ばかぢからだ!」

 

 カビゴンは覚醒したとでも錯覚してしまうぐらいに猛烈な勢いでポリゴン2に襲いかかる。そして、ポリゴン2はコテンパンにされてボロボロになり、倒れる。

 まさに起死回生でポリゴン2を下したレッドとカビゴンに大きな歓声があがる。

 

―観客席―

 

「ほら! 勝ちましたよナツメさん!」

 

 エリカは夫の勝利に大いに喜び、はしゃいでいる様子だ。

 そんな可愛げのある様子にナツメは時めいたかのような反応をみせるがすぐに

 

「た……確かに勝ったけれど……綱渡りもいいところね。下手をすればあの気合玉で倒れていてもおかしくないというのに」

「それでも勝利は勝利ですわ! はぁ……流石貴方です! ここまでハラハラさせる戦いが出来るのは貴方以外に誰が居ましょう……」

 

 エリカは恍惚とした表情でモニタに映るレッドを見る。

 

「最早、聞く耳持たないわね……ま、こういうエリカが一番可愛いのだけれど……」

 

 ナツメはそう言うと腕を組みながら色々な感情の籠った溜息をつくのだった。

 

 

 

―フィールド―

 

「これで互角だな」

 

 レッドはゴールドに安心した視線を投げかけながら言う。

 

「……。はい、そうですね」

 

 そう返したゴールドの表情にはまだ余裕のある様子も見受けられる。

 

「来いよ。お前の最後のあがき、全力で受け止めてやる」

「泣いても笑ってもこれが最後……! 行け、ムウマージ!」

 

 レッドはムウマージの登場にうっかり頬を緩ませそうになる。

 

「最後がそれか。まあいい、カビゴン! 眠るだ!」

「眠れるかどうかはこれ次第! ムウマージ! カビゴンに怪しい光!」

 

 怪しい光はカビゴンに当たったが、カビゴンは元々眠かったのかどうかは定かではないがすぐに寝てしまう。

 

「よし! カビゴン! 実を食べ……」

 

 それを指示しようとした瞬間、レッドは重大な事を思い出す。

 この時のカビゴンの技構成は、ばかぢから、はらだいこ、ねむる、のしかかり。

 そう、ゴーストに対抗できる技が無いのだ。

 レッドは頭を抱えざるを得なかった。因みにカビゴンはとっととラムのみを食べて目を覚ましている。

 その様子を見たゴールドは

 

「? レッドさん? どうしました?」

「……。情けないけど、これしかない……、カビゴン! わるあがきだ……!」

 

 レッドは羞恥にかられながら悪あがきを指示した。

 その瞬間、会場全体が凍りつく。

 

……

 

 その後、カビゴンは、ムウマージからのサイコキネシス2回、悪あがき2回分の反動を喰らって気息奄々となっている。上昇効果で削れると思いきや、ムウマージはオボンのみでしぶとく生き残る。

 そしてサイコキネシスをもう一度喰らって、カビゴンはもう一度悪あがきをしようものなら確実に瀕死に至る状況に陥ってしまう。

 

「レッドさん! 貴方の最後のあがき。見せてください」

 

 ゴールドは他意なく、純粋な様子で言っている。

 

「……ああ! 見せてやるよ。カビゴン、悪あがき……!」

 

 カビゴンは息も絶え絶えの様子でのそりのそりとムウマージに向かう。

 レッドはその様を見て、あまりに自らが惨めにもなり、逃避をはじめ

 

「……やめろ。やめろぉぉぉ!」

 

 と叫ぶ。あれほど盛り上がっていた会場は最早冷め切ってしまっている。

 

 

―観客席―

 

 レッドがカビゴンで勝ち上がった時はあれほどはしゃいでいたエリカも、今やうつむいてしまっている。

 

「……、ねえ、エリカ」

 

 ナツメはエリカに訊く。

 

「……」

「こんな無様な姿をさらしているレッドが……、あんたの望んでいるレッドなの……?」

「……」

 

 エリカは手を握り締めたまま沈黙を守っている。色々な思いが交錯していることが見て取れる。

 

「後輩相手に、こんな惨めな姿を晒し……やめろなどと覚悟が決めきれないような発言を平気でする……。それでもエリカはレッドを信じ続けるの……?」

 

 ナツメは真剣な声でエリカに尋ね続ける。

 

「……私は……」

 

 エリカが口を開いた刹那。突如観客席に声が響く。

 

「こちら、ポケモンリーグの者です!! 一大事が起こりました! ソウリュウシティにプラズマ団と名乗る組織が出現し、氷漬けにしたとのこと! それと同時にイッシュ地方並びに内国のポケモンリーグに対し宣戦布告を致しました! ジムリーダーは各々の……」

 

 リーグ委員と思しき男は声を荒げながら言った。

 シャガはアイリスを連れてその後すぐに出ていく。

 それから少し遅れてアナウンスが入って、観客は突如パニックに陥る。

 

「……、私、行きます!」

「エリカ!」

「私はレッドさんの……妻ですから!」

 

 そう言ってエリカは出口に脇目も振らずに向かい、出て行った。

 

「……、バカ」

 

 ナツメはエリカが消えた出口に向かって、喧騒の中小さく呟く。

 

 

―フィールド―

 

「……、休戦だな」

 

 レッドは騒然となっている観客席を見ながらそう言った。

 

「納得いきませんけど……、それどころじゃないですもんね」

 

 ゴールドは苦虫をつぶしたような表情をしながら言う。

 

「……、ケリは必ずつけるさ」

 

 そう言ってレッドは挑戦者用の出口に向かった。

 

「きっとですよ」

 

 ゴールドも、反対側の出口から出ていくのだった……。

 

―第六十三話 頂きの行方 終―




プラズマ団始動! さてさてどうなるのでしょうね……。
次回はジムリーダーやチャンピオン視点、プラズマ・ロケット団視点が多めです。
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