では、どうぞ。
デュエルアカデミアに入学して翌朝。オシリスレッドの食事は質素だが、食べられないものではない。一人黙々と食事しているコナミだが、また彼に聞こえる幻聴が。
『デザートはー? デザートは無いのー?』
「(あっても夜じゃないかな?)」
『ちぇー……じゃあこの鮭の白い皮付近のでいいや』
「(君は食べなくても平気なうえに、鮭の脂ののった美味しい場所をピンポイントに食べようとしないでくれるかな? 昼休みでも適当なお菓子かデザート買ってあげるから)」
『本当っ!? だったらイチゴののったケーキ食べたいっ!』
「(却下)」
コナミの1日はいつも、幻聴の相手をする事から始まる。
デュエルアカデミアはあくまで学校である中等部もいるため、アカデミアには中学生と高校生がいる。一般教養の授業もやるが――デュエルに関する授業もやる。
授業によってはオシリスレッド、ラーイエロー、オベリスクブルーと合同でやる場合もある。本日はクロノス教諭による授業で、フィールド魔法についての問いを翔に当てられたが、本人はどもり。どこかオシリスレッドを小馬鹿にするかのような言葉に多くのオベリスクブルーは同調するかのように笑ったが、オシリスレッドの十代はクロノス教諭に勝った(無自覚)と、軽い精神攻撃をしては、クロノス教諭は悔しそうな表情を浮かべていた。
ここで、唯一であろう十代とクロノス教諭のデュエルを見ていなかったコナミは、彼も間接的にクロノス教諭に精神攻撃(無自覚)をした。
「ん? 遊城、先生に勝ったって? 試験のデュエルはそこまでの難易度はないはずだから、あまり自慢にはならないと思うけど……?」
「後で聞いたんだけどさ、その時のクロノス先生のデッキは試験用じゃなかったんだと。しかもそのデッキはクロノス先生のマイデッキだったんだ!」
「ゑ……? 確かクロノス先生はデュエルの最高責任者らしいけど、そのデッキに勝てた遊城って凄くない? 何でオシリスレッドにいるの?」
「いや~! その日は電車が遅れて遅刻しちゃってさ! その時にクロノス先生が試験の相手になったんだ! 凄かったぜ先生の【古代の機械巨人】!」
『そこ私語は慎むノーネ! オシリスレッドのドロップアウトボーイズ! でーは、連帯責任として辰上ーが、代わりに答えるですーノ!』
強引に会話を打ち切ったクロノス教諭は、八つ当たりと言わんばかりに辰上を指定した。本来は十代が指名されるはずなのだが、彼に負けたことに負い目を感じて指名できなかったのだろう。ならばと代わりのオシリスレッドのコナミを選んだわけだが――
「フィールド魔法についての説明ですか? では――フィールド魔法は永続魔法に似た、自分のフィールドに残り続けて効果を発揮する魔法カードです。遊戯お――デュエルモンスターズ初期では【森】や【ウォーター・ワールド】と言った種族・属性などの強化や弱体化が主流でしたが、近年では相手に影響を与えないフィールド魔法もあります。遊城十代が言っていた情報通りなら、クロノス先生が使うカテゴリーの【アンティーク・ギア】が良い例ですね。【歯車街】は入れていると思いますが、あのフィールド魔法は生贄を少なくするのはともかく、一番の使いどころは破壊された時ですね。あの破壊した時のモンスターの特殊召喚効果は、使用したプレイヤーのみ特殊召喚できますし。一番特殊召喚される機会のあるアンティーク・ギアは召喚制限がない【古代の機械巨竜】が一般的でしょう。ただし、古代の歯車街を扱う際注意点が必要です。あくまで歯車街の特殊召喚は【時にできる】という任意効果です。破壊されたときに別の処理が入るとタイミングを逃し、特殊召喚が出来なくなってしまいます。例えば同じ破壊カードの【サイクロン】と【砂塵の大竜巻】では、【サイクロン】は単に破壊するだけなので歯車街の特殊召喚効果は発動できます。しかし、【砂塵の大竜巻】の場合ですと、破壊した後に、砂塵の大竜巻を発動したプレイヤーは新たに魔法・罠を伏せることが出来ますが――歯車街が発動できるのは【時にできる】という任意効果なので、本来は破壊されたときに発動【できる】時に相手プレイヤーは伏せカードを伏せている時なんですよ。カードの処理中の【時にできる】という任意効果を持つカードは基本全て、タイミングを逃します。発動できないで処理が流れると言ってもいいでしょう。ですが、【場合にする】の場合は強制効果なので、砂塵の大竜巻の伏せが終わり次第……というよりもチェーンしている時も同じですが、発動する事が出来ます。任意効果でも、カードのテキスト次第ではできるものもあり、そのカードは【場合にできる】と書いてあるものも一部だけは除いて、処理後でも発動することができ――」
「も、もういいノーネ!? そこまで説明されると授業時間が無くなってしまうノーネ!」
クロノス本人は説明が詰まると思っていたが、饒舌であった事に舌を巻き、中止するように促したがコナミはまだ物足りなそうだ。
「あれ、そうですか? オベリスクブルーやラーイエロー、オシリスレッドの一部の方々は聞いてくれていますけど……特に三沢大地はメモを取りながらまだかまだかと説明を待っていますが」
「そういうノーは、休み時間にお願いするーノ」
「はぁ……まだサーチカードの説明があったんですが、まぁこれは知っているかな……?」
どこか不満そうに説明を終わるコナミ。ここから授業は再開する事になるのだが――一部の生徒は、コナミの事を見定めていた……。
「――てなわけで、自分が知っているフィールド魔法の知識と、【時】と【場合】の任意効果については以上」
「なるほど……フィールド魔法はともかく、【時】と【場合】の任意効果ではここまで違うものなのか……」
「博識そうな三沢が知らなかったというのはちょっと意外だけどね」
「俺だってそう知らない知識だってあるさ」
昼休み。三沢は授業が終わった後にコナミの講義を自主的に聞きに来ていた。その時間、約20分。満足そうに頷きながらも、時間を確認するとまず三沢はコナミに謝罪した。
「おっと、もうこんな時間か……すまないなコナミ。貴重な昼休みの時間をもらってしまって……」
「まぁ、わからないでモヤモヤするよりはすっきりした方が良いからね。別に構わないよ」
「そう言ってもらえると気が楽になる。……おう、そうだ。だったら昼飯はまだだろう? この講義のお礼ということで奢るが、どうだ?」
三沢大地は人格者のようで、恩を返すみたいだ。彼の提案は良いものだったが、コナミは申し訳なさそうに首を横に振る。
「あ~……今日の昼は適当に買って過ごすつもりだから、気にしなくていいよ」
「ん……そうか。なら、俺は食堂にでも行こうかな。気が変わったら来るといい」
そう言うとお互いに別れ、コナミは教室の外へと進んでいく。このまま歩いている時に、再び彼に幻聴が。
『お昼奢ってもらわなくてよかったの?』
「(君が忘れているのなら別だけど、適当なデザートでも買ってあげようかと思ってね。とりあえずカップゼリーで良い?)」
『ますたー大好きっ』
「(カップゼリーで安い子だな)」
話している様子はなく、ただ歩いているようにしか見えないわけだが……その中で、少し離れた距離で彼の後を着いていく人物がいたという……。
幻聴と会話しながら少し離れた、野外の見晴らしの良い場所。そこには孤島を見渡せる場所であり、木が一本あっては背もたれにはちょうど良い。彼は購買で買ってきたパンどが入ったビニール袋を置くと、彼は決闘盤を起動させ、何かのカードをたたきつけるかのように召喚した。
「よし――召喚っと」
『――よっと! あぁー久しぶりの外だーっ!』
「まぁ、君をデュエルで出すなんてしばらく無いからね……。それと、はい。カップゼリー」
「待ってましたー!」
ポンっと現れた、宙に浮く小さな少女。その少女は薄い緑のラインが入った白い色が主体の魔導服を着ており、目元には赤いライン模様があり。彼女はコナミからカップゼリーと簡易スプーンを受け取ったところで――
「――!? あ、アンタ!? その子、どうやって触れてるのよ!」
「「……あ」」
見られた、というのがコナミと少女の反応だろう。見られたことに二人が軽い動揺が見られるが。
二人に声をかけたのは女子生徒であり、制服は青のラインが入った、ノースリーブでできている白い学生服を着たオベリスクブルーの女子。同じ学生服の中で個性を出しているのか、額の上には赤いリボンがある。
急な来客に先に反応したには、小柄な少女。彼女はカップゼリーを隠すようにしながら、抵抗の言葉を。
「ま、まさか、アタシのカップゼリーをデュエルで強奪する為!? 駄目なんだからね! これはますたーが珍しくくれたデザートなんだから、絶対あげないから!」
「いや、いらないよ!?」
少女の疑惑を否定する女子生徒。目を丸くしてどこか慌てているが、コナミは冷静に諭す。
「うん。いくらなんでも昼ごはん強奪にきたんじゃないのはさすがにわかるから。それで、君の後ろにいる――【六部衆―ヤリザ―】は精霊だったりする?」
「えっ!? ボク以外の人に見えてる!?」
『何と……! 初めてヤリザが見える人物に会いましたな……!』
女子生徒の後ろにいる、コナミから見て半透明の幽霊にも見える、鎧兜と槍を持っている武士。指摘されたヤリザという人物――精霊も驚きを隠せない。
「うーん……結構精霊持ちっているもんだね。遊城も精霊がいるし」
「ますたー、少し離れた井戸にも確かいましたよ。その精霊は捨てられたものだと思いますが」
落ち着きを取り戻したのか少女は補足の説明をしているが、オベリスクブルーの生徒はまだ疑問は尽きないようで、恐る恐るコナミに質問を。
「ね、ねぇ……その子が精霊っていうのはわかったんだけど……なんで物に触れられるの? ボクのこの後ろにいる精霊は半透明で物理干渉はできないんだけど……立体映像のはずなんだよね? 決闘盤で召喚はしているみたいだけど……」
「うーん……まぁ、言っちゃって良いか。自分はその精霊の力の影響力は強いみたいで、決闘盤経由なら実体化できるんだよ」
「じ、実体化!? なんでそんな事が出来るの!?」
「それは自分が聞きたいかな」
「ますたーはそもそも非現実的な異世か――」
「それ以上喋ったら実体化解くよ?」
「ごめんなさい」
コナミの精霊が何かを言いかけたところで彼は脅すと、素直に謝る彼女。何か秘密がありそうだなと考えていた女子生徒は、思い出したかのように自分の名前について告げる。
「あ、そういえばボクの名前まだ言ってなかったね……ツァン・ディレ。それがボクの名前だよ」
「そう。自分は辰上コナミ。ここに来たのは、この精霊が気になったの? 多分他の人には見えていなかったと思うのに……」
「……いや、まぁ、確かにその子は見えてなかったけど――あれ? 精霊ってヤリザみたいに半透明がデフォルトじゃないの?」
「自分はまぁ、ほかの人とは違って、この精霊は念話で会話が出来るんだよ」
「ね、念話……?」
「まるで心が通じ合っているようでござるな」
コナミの説明に率直なヤリザの感想を。彼の発言にどこか少女の精霊は頬に手を置いて赤らめながら言葉を。
「えへへ♪ だってますたーは他の子よりあたしの方が使いやすいという事でデッキに入れてくれているんですよ! 特にあたしが中心になってソリティアして役立っている時にはもう、嬉しくて……♡」
「(……単に【魔術師】のシナジーがあるから入れてるんだけどね。チェインからのコンボは凄い使いやすかったけど)」
「そういえば……辰上の精霊って、見たことないね。どんなモンスターなの?」
妄想の世界に旅立っている精霊の少女は置いて、ツァンは素朴な疑問をコナミにぶつける。それはそうかもしれない。コナミのモンスターは大体知らないカードばかりで構成されているのだ。
「んー……良いか。この子は【調律の魔術師】。ステータスはレベル1で、攻守0で、遊城の【ハネクリボー】より弱いかな」
「えっ!? なんでそんなモンスターをデッキに!?」
ツァンが驚くのも無理はない。このデュエルモンスターズは、高ステータスのモンスターで相手を圧倒するのが主な戦法だ。それに対して、その重要となってくるステータスの値がゼロというのは、正直採用しているデュエリストとして疑われる。
何故そのような低ステータスをデッキに入れているのか、ツァンは問いかけようとしたのだが――ここで、第三者が二人に声をかけてきた。
「――あら? 私はお邪魔だったかしら?」
その声は、どこか艶のある女性の声であり。コナミとツァンが振り向くと、そこにはオベリスクブルーの女子生徒。髪型は2つのシュシュでくくられたツインテールであり、その女子生徒の外見評価を街頭アンケートをとったなら、大体の人物は非常に整っているという結果が出るくらいの少女だった。
彼女の言葉に過剰反応したのは、ツァンだ。顔一面をイチゴのように赤く染めながら、手を左右に振ってまで否定する。
「ち、違う違う! ボクと辰上はそんなんなじゃないからっ」
「そうなの? それに対して赤い帽子のボウヤは決闘盤を構えているけど……」
「(……あれ? 辰上、今精霊を実体化してるんだよね? 何で見えていないような反応が――)」
「(来る気配を察してオフにした。その結果――)」
『あぁーっ!? あたしのカップゼリーっ!』
『地面に落ちてしまったでござるな。中身が出てしまっては、食べられそうにないでござる……哀れ』
『あ た し は 許 さ な い』
……実体化を解いた事で、物理干渉ができなくなったことで、持っていたカップゼリーを落としてしまったコナミの精霊。彼の精霊は視線で女子生徒に憎しむものの、彼女はその視線には気づいていない。
コナミの精霊が睨みつけているのに気づかない女子生徒に対してツァンは、あることについて確認する。
「(……彼女、精霊は見えないみたいだね)」
「(見える方がむしろ珍しいぐらいだからね、普通。まあ、それはさておき……弁解でもしておこうかね)」
一時のツァンからの質問にコナミは答えた後、彼は改めて女子生徒に向き直った。
「ちょっと決闘盤のメンテナンスをね。たまたま出会ったディレに意見交換してたんだよ」
「……ふーん。まぁ確かに最近、決闘盤で魔法カードが使えなくなる不具合があるらしいけど……ボウヤ。何か隠しているでしょう。これでも私、両親が役者をやっていてわかるのよ――ボウヤの嘘はまるで呼吸のよう。わざと最近耳に入った噂を話題にする事で、『嘘じゃない嘘』を吐いている。他の人なら大丈夫でしょうけど、自然体過ぎて逆に不自然よ」
コナミの言い分に、疑惑の視線を注ぐ女子生徒。このことにツァンはもちろんだが、コナミ自身も内心驚いている。
「……へぇ。だったらどうすれば信じてくれるかな?」
「信じて欲しいなら、簡単な方法があるじゃない――これで、よ」
女子生徒は左腕につけられている決闘盤を見せつける。その方法に賛同するようにコナミは構えようとしたが――途中で止めた。その事に疑問に思う女子生徒。
「……何? まさか怖じ気ついたとでもいうの?」
「……いや、単純な話――昼休みの時間がそろそろ終わりだから出来そうもないなって」
「「……あっ」」
思わず時間を確認する女子生徒は、時間を把握できた頃にはマヌケな声が。実際にはまだ余裕はあるのだが――今いる場所は多少学園の距離は離れている。走って向かうなら話は別だが、走ることで力を使い果たして授業をおろそかにするのは良くないだろう。
――だが、目の前にいる女子生徒はというと。
「だったらサボれば良いじゃない」
「却下。オベリスクブルーの君とディレはともかく、自分はオシリスレッドなんだからサボれないし」
「辰上……オシリスレッドにしては知識が随分あるよね? 思わずクロノス先生が打ち切ったぐらいもあって、昼休みになっても筆記学年一位の三沢……だっけ? その人に教えてるぐらいだし」
「授業、サボる、良くない」
「確かにそれはわかるけど、何なのよその言い方……?」
ツァンの指摘にコナミは要点だけを喋っているが、その喋り方に疑問を覚えていたり。
それでも妥協案ということなのか、コナミは購買で買ったビニール袋の中をあさり、適当に一つ出しながら譲歩を。
「サボることは出来ないからさ、この場は――肉まんで手をうってくれないかな?」
「アンタねぇ……? 女の子を食べ物で釣るってどうなの――」
一種の子供のアヤしかたに、ツァンはやり方について説教をしようとした矢先、女子生徒は――
「……! 仕方ないわねぇ♪ この場ではそれで引いてあげるわ。で、も。次に会った時は逃げることは許さないから♪」
「「(釣れたっ!?)」」
肉まんを取引にされた女子生徒の目は輝いていると言わんばかりに上機嫌になっている彼女を見て、二人は心底驚いた。特にコナミは気のせいか、深く被っている帽子の位置がズレる程に。
『ますたーの食べ物はあたしの検問を通ってからなのに~!』
『食い物の恨みは恐ろしいでござるからな……』
……コナミの精霊の様子を見て、ツァンの精霊のヤリザは呆れているようにも見えるが。
コナミはひとまず女子生徒に肉まんを手渡すと、思い出したかのようにお礼を言いながら自己紹介を。
「ふふっ、ありがとうボウヤ……そうそう、私の名前は藤原雪乃よ」
「自分の名前は、ほ――辰上コナミ。ちなみに……ディレとは同じオベリスクブルーみたいだけど、何か交流とかあったりする?」
「いいえ、無いけど……彼女、合同授業中ずっとボウヤに熱い視線を送っていた事は覚えているわ」
「…………ゑ?」
予想外な情報だったのか、意外そうにコナミはツァンに視線を向けると――彼女は落ち着きの無いままで、赤く頬を染めながら雪乃の言葉を否定した。
「ち、違うし!? 何を言っているの藤原さんっ。ボクはただ、辰上のフィールド魔法の説明に耳を傾けていただけだしっ!」
「その割には授業が終わった後、食堂にも購買にも行かずにボウヤに視線を送り続けていたわよね? ボウヤがラーイエローの生徒と話している時も。それでボウヤが移動し始めた時、ツァンさんも移動し始めたと思うけど……」
「そ、それは辰上に話を――」
――くぅ~……――
「「…………」」
「――~~っ!!」
『ねぇーやりざー。今の音って……』
『察しの通り、ツァン殿の腹の虫でござる……。コナミ殿を追っていた分、腹に何も入れてないでいた』
精霊達の会話はともかく、音源の中心になってしまったツァンはどこかこらえながら、顔を伏せていた。クスクスと笑う雪乃をよそに、コナミはビニール袋の中から食べ物を取り出し、ツァンに勧める。
「食べていないなら食べる?――カツサンド」
「女の子に何重いものを渡そうとしてるのよ!」
「いや、思いっきり食べるならこれだと思ったんだけど……じゃ、スティックメロンパン食べる?」
「……ま、まぁ、それなら――って! 辰上の所為なんだからねっ! アンタがさっさと講義の説明を簡略して話さないから、ボクの貴重な食事時間が減ったんだから!」
「待って!? 後半の理由に関しては、自分は関係ない!」
「あらあら……二人は仲が良いのね。お姉さん妬けちゃうわ」
二人のやりとりを見てからかいの言葉を言う雪乃に、またツァンがムキになって否定しようとした時に、コナミは場を収めようとする。
「はいはい、藤原。からかいはそこまで、そろそろ時間に余裕を持って授業に行きたいから校舎に戻るよ。食べ物関連は食べ歩き出来るものだし、食べながら向かおう」
「そうね。あまり模範に反しすぎると委員長が口を酸っぱくさせる事だし……向かいましょうか」
「うー……納得いかない……」
こうして三人は食べ歩きながら校舎に戻り。始業五分前に教室の扉をコナミが開けると――コナミ達を生徒達は一度見ては、多数の人物が二度見した。
「!? た、辰上っ。別にボク達は変な事はしてないよね!?」
「そのはずだけど……」
「ふふっ……じゃ、また。ツァンさんに――赤い帽子のボウヤ」
含み笑いをしながら雪乃は自分に割り当てられる席へと戻り。コナミとツァンは納得いかないまま席に戻ったが――彼の席の近くにいた、同じオシリスレッドである丸藤翔は驚愕を含みながら問いかけた。
「た、辰上君!? もしかして昼休みオベリスクブルーの女子二人と食べてたんスか!?」
「んー……まぁ、結果としてはそうだね」
「羨ましいッス……! 明日香さんとは別ベクトルの美人の藤原雪乃さんとお近づきになってあたなんて~!」
「何? 別にそこまで自慢出来ることじゃないだろうに」
「……辰上君。それ、本気で言ってるんスか……!?」
気のせいだろうか。辰上の発言に大多数の人物(主に男子)が疑惑の視線を送っているように見える(ただし遊城十代は爆睡中)。
どこかコナミは妬みの視線を感じながら、小声で翔に確認する。
「……一応聞こう。藤原ってそこまで有名なのか?」
「有名ッスよ。両親は世界的に知られている役者の上に、藤原さん自体が外見が凄い整っているじゃないスか。それで言動もどこか色っぽくて男子に人気なんス。噂では何百人に告白されては、全員振られているみたいッス……!」
「要約すると有名人物の娘で、第三者から見ても第一印象で惚れては自滅する奴が多いってことね」
「……何か辰上君、反応薄くないッスか?」
「正直『それが?』ぐらいしか思わない」
「……これが勝者の余裕ッスか……! それにどうして他のオベリスクブルーの女子も一緒何スか!?」
「ディレに関してはまぁ……同じ共通点を持っていたから、その話題の時に藤原が乱入って形になっては最終的にこの教室に戻ってきた。それだけだよ」
精霊の話をしても翔は信じないだろう。適当にぼかして事の顛末を告げると、翔は溜め息混じりに呟く。
「ハァ……僕も女の子にお近づきになりたいッス……」
彼の言葉のタイミングで授業の始業時間のチャイムがなり、平和に1日が過ぎていった。
――と、思われたのだが。
「――丸藤がオベリスクブルーの女子風呂の覗きで捕まった?」
「――そうなんだ! だから翔を助けに行かねーと! ……コナミ、帽子を被ってないところ初めて見たけど、案外普通だな」
夜も遅くなった時間帯。コナミの寮でもあるオシリスレッドで彼はデッキ調整をし終わり、寝ようとしていたところで、コナミの部屋に十代が急いだ様子で訪ねてきた。
「そりゃあ、自分だって帽子を被らない時もあるし、頭に秘密を隠しているわけじゃないよ――それはともかく。丸藤が覗きで捕まった? 本当に覗いたの?」
まさか女子と触れ合いたい事を、そのまま実行したんじゃないかと考えているコナミ。彼の質問に十代は状況の説明を。
「先生には突き出されていないみたいなんだけどさ、オベリスクブルーの明日香から連絡があってよ。翔を返して欲しかったらコナミを連れて女子寮に来いだってさ」
「……待った。その様子なら遊城はその『明日香』と認識があるみたいだけど――自分はその人と認識は無いよ?」
十代の説明は簡略的で話の内容はわかったが、コナミはどうして認識の無い相手に呼び出されなければならないのか疑問なんだろう。その答えは十代も知らないようで。
「さぁ? でも、確かにわかる事はコナミがいないと翔を助けられないんだ! だからすぐ用意をして来てくれ!」
「……やれやれ。寝ようと思った矢先に問題が起こる事は止めて欲しいなぁ……。ま、しょうがないか。急いで準備するから待ってて」
「おう! わかった!」
コナミは級友を助けるべく、十代と共に女子寮へと向かっていった……。
コナミと十代は女子寮に着き。まず確認出来ることは、腰まで長い髪の毛に、どこか強気な瞳。それと彼女の取り巻きなのか、二人のオベリスクブルーの女子が丸藤翔を取り押さえていた。
目的の二人を確認し、声をかけてくる女子。
「ちゃんと来たようね、十代。それと…赤い帽子の辰上コナミ君?」
「……いや、だから君は誰? 君と自分は初対面だよね? 丸藤と同じ部屋で基本行動を共にしている遊城はともかく、何で自分が呼ばれるの?」
「そうね。私は天上院明日香よ。それであなたを呼んだのは――私じゃないのよ。この騒ぎに便乗して呼んで欲しい生徒がいるからということで、連絡させてもらったわ」
お互いの名前と容姿を確認したところで、理由を尋ねたコナミだが、彼を呼び出したのは彼女自身ではないという。誰が自分を呼んだのか尋ねようとした時――寮の陰から現れた。髪の毛をツインテールに結っている女子。
「――私よ、ボウヤ」
「! ……藤原」
「まさかカイザーの弟さんが覗いたと思ったら、それを出汁にデュエルに呼び出そうとしているんだもの。それでカイザーの弟さんと関わりがあったボウヤも呼び出してもらったのよ。言ったでしょう――次に会った時は逃がさないって」
「丸藤……君は後で屋上」
「屋上でなにやるんスか!?」
疲れたように不気味な発言をするコナミに翔は戸惑いを隠せない。
コナミの様子を見てか、十代は面識のある反応をした雪乃について問いかける。
「なぁ、コナミ? あの女子と知り合いなのか?」
「……知り合いだね。遊城は知らないと思うけど、結構有名人みたいだよ」
「マジか!? じゃあやっぱりデュエルつえーのかな!」
「……君の基準はデュエルなんだね」
十代の雪乃への反応に、言葉を制したのは明日香だ。
「藤原さんの相手は辰上君よ。そして、十代の相手をするのは――私。翔君を返して欲しければオシリスレッドチームで計2勝することね。もしも仮に私が負けて、辰上君が負けた場合は藤原さんともデュエルが出来るルールとしてね」
『尤も、あんた達オシリスレッドが藤原さんはおろか、明日香さんに勝てないでしょうけどね! ね、ももえ!』
『そうですわジュンコさん。藤原さんも明日香さんと並ぶ実力。勝てる可能性は低いでしょう』
明日香の言葉に同調するように、翔を逃げ出さないように束縛している女子二人組はどこか強気にいう。言いすぎだと思ったのか明日香は二人に注意していたが――雪乃は決闘盤を構える。
「――さぁ、ボウヤ。アツいデュエルを期待しているわ」
コナミに視点を合わせる彼女に続くように、明日香も決闘盤を構えて視点を十代に。
しかし、十代はというと――
「コナミが負けなきゃ連戦してデュエルが出来ないのか!? だからといってもしも俺が負けたらコナミが2連戦できる……」
「遊城、お互い勝つ前提で考えているのはともかく、君は二人ともデュエルをしたいの?」
「もちろんだ! 明日香とは前からデュエルしたかったし、藤原も有名人ということはデュエル強いんだろ!? いくらデュエルが好きな俺でも、友達に負けて欲しいなんて思わねぇよ」
「……『友達』か……」
十代の言葉に反応し、瞳を閉じて考えるコナミ。
数秒で考えがまとまり、彼は明日香と雪乃にある事を提案した。
「お二人さん、最低でもシングル戦が二戦じゃなくて――【タッグフォース】ルールでやらない?」
「「タッグフォース?」」
「? コナミ、なんだ? そのルール? 普通のタッグとは違うのか?」
コナミの提案に復唱する二人に、初耳なのか十代は首を傾げる。
その中で、翔を抑えているジュンコとももえはコナミの言葉を思い出しながら呟いていた。
「【タッグフォース】……普通のタッグと違う点はライフの共有、お互いの決められたターンしか行動出来なかったはず……。確か仲間のプレイヤーへの攻撃は庇えないはずだったわね」
「それだけじゃありませんわ。お互いのフィールドと墓地は共有。パートナーの出したモンスター、伏せた魔法や罠を使う事は可能。ですが、お互いの手札は確認できないという共通事項はありますが……」
「(……お互いにフィールドを共有できるタッグッスか……? 辰上君、兄貴の我が儘とか関係なく、勝つ算段があっての提案何スよね……?)」
コナミの提案に熟考している翔はともかく、あくまで【タッグ】という言葉に反応し、喜びを見せる十代。
「おっ! それだったら一気に二人と戦えるな! それに、コナミとのタッグも楽しめそうだぜ! よーし、俺達のコンビネーション、見せつけてやろうぜ!」
コナミの提案に十代は乗り、やる気満々に決闘盤を構える。彼に続くようにコナミも決闘盤を構え、明日香と雪乃に確認をとる。
「……遊城はやる気に満ち溢れているけど、二人はどうかな?」
「……良いわ。その提案に乗ってあげる藤原さんもそれで良いかしら?」
「私としたらボウヤのとのシングル戦が良いけど……クロノス教諭を倒したヒーローのボウヤも正直気になっていたのよね。ふふっ――さぁ、ボウヤ達。私達とアツくなりましょう?」
二人の了承を得て。それぞれ二人は決闘盤をパートナーとリンクさせるために調整を行っている最中、コナミは小声で十代に話しかける。
「遊城。フィールドにあるカードは思い通りに使って。場合によっては自分が遊城のカードを使う場合もあるし、逆に託す場合もあるから頭に入れて」
「そっか……あえて自分は使わずにパートナーに使わせることもあるからか」
「それと、出来れば相手の墓地確認はしてほしいけど――自分が使ったカードテキストは絶対に確認して」
「……? わかったぜ」
そして準備は完了し。4人は――挨拶を。
『――デュエル!』
LP8000 雪乃&明日香
LP8000 十代&コナミ
「――先行は私よ、ボウヤ達。ドロー」
先行を取ったのは藤原雪乃。その後の順番は十代、明日香、コナミの順番だ。次のターンは十代になるため、雪乃のターン時、相手をするのはコナミだ。
そして雪乃は手札から一枚の魔法カードを発動する。
「ふふっ、良い出だしね――私は魔法カード【名推理】を発動するわ」
「……! 藤原のデッキは【推理ゲート】か……!」
彼女の魔法カードの発動時にデッキを推測したコナミに、翔を取り押さえているジュンコとももえも含め、オベリスクブルーは驚きの反応を。
その中で頭の上でハテナを浮かべている十代と翔だが、十代の言葉を代表にコナミへ問いかけた。
「コナミ? 何だ、その【推理ゲート】って?」
「おそらく二種類の魔法カード【名推理】と【モンスターゲート】を主軸にしたデッキだよ。【名推理】は相手にモンスターのレベルを宣言してもらっては、デッキを捲り続けて特殊召喚できるモンスターをデッキから出す魔法カード。相手の宣言したレベルを引いた場合はそのまま墓地へ。レベルが違っていた場合はそのモンスターを特殊召喚出来る。モンスターが出るまでに捲ったカードは墓地に送られるけど」
何時の間にか出していた、握り拳から人差し指を立てており、コナミは次に中指も立てて説明の継続を。
「それと、もう一つの魔法カードである【モンスターゲート】は、【名推理】と違ってコストとしてモンスターを生贄にし発動。こっちも特殊召喚可能なモンスターが出るまでデッキを捲って特殊召喚。当然モンスターが出るまで捲ったカードは墓地に送られるけどね」
「えっと、つまり――デッキからランダムにモンスターを特殊召喚するデッキなのか?」
十代の考察にコナミは「そうだね」と同調し、補足の説明を。
「……このデッキを扱う際には、一つの選択肢として【レベルがバラバラかつ、通常召喚が難しいモンスター】で構築されている可能性があるんだ。モンスターの生贄召喚は、通常召喚する時は長くても1、2ターンかかるところを、特殊召喚として場に出すからね。早い段階で上級モンスターを出して攻めるデッキ構築だと思うよ」
「な、何て言うか……凄いスリルがあるデッキなんスね……」
コナミの説明に翔と十代は納得した表情を。
彼の推測は、実際的中している。コナミは高校からの入学でありながら、中等部から知り合いの雪乃のデッキを見破ったことに、明日香は一種の驚愕と――恐怖を覚えた。
「(何故【名推理】を見て、彼女のデッキがわかるの!? それだけじゃない、まだ使っていない【モンスターゲート】の存在だって! それに加えて、藤原さんのプレイスタイルまで……!? 本当に彼の実力はオシリスレッドなの!?)」
コナミに対して警戒を深める明日香に対して、雪乃は――どこか恍惚な表情を浮かべては、自身の人差し指を唇に置いて反応を。
「あぁん……こんなの初めて……♪ ボウヤが初めてよ。一枚の魔法カードで私のデッキが見破られるだなんて……♪」
「……その割には嬉しそうだよね、君」
「えぇ、嬉しいわ♪ 入学試験の貴方のデュエルを見て、他の男とは違う雰囲気を感じたんだもの。そして、今の慧眼――本当にボウヤは私をアツくさせてくれるわね♪ ……じゃ、【名推理】の処理に移るわ。ボウヤはどんなレベルを宣言するの?」
デュエル相手が一般的な男子ならば、その男子は雪乃の言葉に照れていたかもしれない。実際、翔が雪乃の仕草を見て頬を染めているが……コナミは無表情で宣言するレベルを考え、十代に関してはコナミの推察に感心しているというぐらいだ。
雪乃に促され、コナミが宣言したレベルはというと。
「……1」
『えっ』
彼が宣言したレベルに雪乃以外の人物は驚きを隠せないでいた。先ほどコナミの解説は、レベルがバラバラだが通常召喚が難しいものが選択肢の一つだと言っていた。それにも関わらず――デュエルモンスターズの中で、コナミは最も低レベルを宣言。
流石に意外過ぎたのだろう。彼のパートナーである十代が問いただす。
「コナミ!? 宣言するなら7とか8とか高レベルじゃないのか!?」
「遊城……一つ言っておく――【推理ゲート】における低レベルモンスターを舐めてはダメだよ」
「そ、そうなのか……?」
「……特に自分の知り合いの【推理ゲート】には悪あがきでも良いから、低レベルモンスターを宣言しないとワンキルされかねないから……」
「どんなデッキなんだそれっ!?」
遠い目で語るコナミに誰もが、そのデッキについて気になったのは言うまでもない。
そんな周りの反応の中、雪乃はというと。
「レベル1ね。じゃあ処理を進めていくわ。まず一枚目――罠【砂塵の大竜巻】、二枚目――レベル5【天空騎士パーシアス】。ボウヤの推理が外れた事により、他のカードは墓地に送って、このモンスターを特殊召喚するわ」
『フンッ』ATK/1900 ☆5
コナミの宣言が外れた為、中級レベルの、天使の騎士がフィールドに。
「【パーシアス】か……遊城、念の為聞いておくけど、あのモンスターの効果テキスト把握してる?」
「いや、全くわかんねぇ!」
「……あのモンスターは要約すると、守備モンスターに攻撃すると差分の貫通ダメージ。それと、戦闘ダメージを与えるとデッキからカード一枚ドローするテキストだよ。タッグにおいても優秀な効果だ」
「マジか!? 守備貫通もあって、戦闘ダメージを与えるとドローって滅茶苦茶強いじゃん!」
オシリスレッドとは思えない博識ぶりに、明日香はコナミに質問を。
「辰上君、あなた何でオシリスレッドにいるの?」
「……何でだろうね?」
まさかの問いかけという答えにどこか明日香は疲れたように溜め息をついていたが、雪乃は最後の行動を。
「それじゃ、モンスターをセットして、伏せカードを一枚伏せてターンエンドするわ。次はヒーローのボウヤのターンよ」
雪乃&明日香 LP8000 手札三枚
場
【天空騎士パーシアス】ATK/1900
伏せモンスター
伏せカード一枚
「よし、俺のターンだ! カードドロー!」
ターンが移り、十代のターンへ。彼は意気揚々ドローした後に、手札から二枚のカードを順番に処理する。
「俺は【E・HEROスパークマン】を召喚! さらに手札から装備魔法【スパーク・ガン】をスパークマンに装備! このカードはスパークマンに装備出来る! このカードはフィールド上のモンスターの表示形式を三回まで変更可能! ただし、三回使った時、このカードは破壊される」
『ハァッ!』ATK/1600 装備【スパーク・ガン】
「なるほど……【パーシアス】の守備力は1400。表示形式を変更して倒そうということだね。真っ当なプレイングだ」
「その通りさ! いけ、【スパークマン】――」
十代のしたいことを理解したコナミだったが――雪乃はそれに対する行動を。
「甘いわ――リバースカードオープン。【砂塵の大竜巻】。フィールドの魔法、もしくは罠を破壊するわ」
「なっ!? それさっき、【名推理】で墓地に送られたカードじゃ――」
「誰も私のデッキの【砂塵の大竜巻】は一枚だけとは公言してないわ」
十代の言葉が否定されながら現れた砂塵の大竜巻はスパークマンを襲い、竜巻が去った後には彼が持っていたスパーク・ガンの銃がなくなっていた。どうやら竜巻に持っていかれたようだ。
「ふふっ、装備魔法の類いは場に存在しなくなると効果を発揮出来ないわ。そして私は【砂塵の大竜巻】の処理で、手札から魔法もしくは罠を伏せることが出来る。私はカードを一枚セットするわ。さぁ、ヒーローのボウヤはどうするのかしら?」
「くっそ~、いけると思ったんだけどな~。じゃあ仕方ないか! なら俺は手札から魔法カード【融合徴兵】を発動するぜ!」
「! そのカードは……!」
「融合徴兵? 聞かないカードね……」
十代が発動した魔法カードに覚えがあったのはコナミで、明日香の言葉を代表に疑問の声に、十代はテキストの説明を。
「このカードは融合デッキの融合モンスターを公開し、そのモンスターの融合素材のモンスターをデッキ、または墓地から一枚手札に加える! ただし、【融合徴兵】で加えたターン、そのモンスターを召喚・特殊召喚できず、一ターンに一度しかこのカードを発動出来ない」
「でも融合素材には出来る、かなり優秀なカード……。でも、このタイミングで発動したということは……まだ融合出来る準備は出来てないみたいね」
「悔しいけどその通りだ……さぁ、俺は――」
「遊城。出来れば自分のデッキに合わせてくれるならありがたい。サーチするモンスターは高レベルの方が都合が良いんだけど……」
明日香の質問に答えた十代は融合デッキからカードを提示しようとしたが、コナミが指示を。十代は当然疑問に思ったが――
「高レベル? ――いや、コナミの事だ! 何か策があるんだな?」
「君がある事に気づいたらね」
「すっげえ気になるな……まぁ、良いか! 俺は融合デッキから【E・HEROワイルドジャギーマン】を公開して、融合素材である【E・HEROエッジマン】をデッキから手札に加えるぜ! そして俺はリバースカードを一枚セットしてターンエンドだ!」
十代 LP8000 手札3枚
場
【E・HEROスパークマン】ATK/1600
伏せカード一枚
十代は伏せカードを一枚セットし、明日香のターンに移る。ちなみに、伏せカードに関してはパートナーは情報を読み取る事ができ、把握出来る。
「私のターン、ドロー! このドロー時に藤原さんが伏せたリバースカードオープン! 速攻魔法【サイクロン】! 相手の魔法もしくは罠を破壊する!」
「なぁーっ!? また破壊カードかよっ!?」
「ふふっ、悪いけどヒーローのボウヤ。これはタッグなのよ? 味方をサポートするのは当然の事よ」
明日香が発動した。雪乃が【砂塵の大竜巻】の後続に伏せたカード。伏せたカードであればそのターンに速攻魔法・罠カードは発動出来ないが、ターンが移れば話は別だ。
彼女の発動した魔法カードにより、再び稲妻混じりだが竜巻が出現。その竜巻は無抵抗な十代の伏せたリバースカードに接近していたところで――コナミが十代に叱責。
「遊城! ぼうっとしてないでチェーン発動!」
「お、おうっ!? 俺は罠カード【ヒーロー・バリア】を発動するっ」
すぐさま十代はコナミの指示に従い、伏せたカードを発動するが、表側になった瞬間に竜巻に割られて破壊される。
十代が発動した【ヒーロー・バリア】についての考察を始める明日香と雪乃。
「【ヒーロー・バリア】……確かあのカードは【E・HERO】がフィールドにいる時発動する罠カードだけど……」
「あくまであれは攻撃を無効にするだけ。せめてものの悪足掻きって感じかしら」
「そのカードがなくなったいま、気にせず攻撃出来る! 私は手札から【エトワール・サイバー】を召喚し――バトル!」
『フンッ』ATK/1200 ☆4
スタイルの良い女性のモンスターが現れ、明日香はフェイズの移行を宣言し、攻撃体制をとったが――
「私は【天空騎士パーシアス】で【E・HEROスパークマン】へ攻撃!」
「…………ゑ?」
彼女の宣言に、どこかマヌケな声を出すコナミ。その拍子抜けた声は誰の耳にも届かず。
――その攻撃は、突如として現れたバリアに防がれた。
『えっ!?』
コナミ以外の人物の驚愕の声がその場に響き渡る。何故か味方である十代も信じられない表情をしているが。
「……まさか、遊城。自分のカードなのにもしかして知らない……?」
「自分のカード――あぁ!? もしかして今のバリアって【ヒーロー・バリア】かっ!?」
「……【ヒーロー・バリア】は確かに攻撃を無効に出来る。でもね――このカードは発動タイミングの指定の無い、フリーチェーンの罠だよ。攻撃宣言で発動できる【攻撃の無力化】と違って何時でも発動できるカードだよ。当然、攻撃宣言時にも発動できるけど……さっきみたいな【サイクロン】みたいな発動する効果を無効化しない除去ならチェーンして発動した方が良いに決まってる。その場合だと先に攻撃してきたモンスターの攻撃を無効にする、相手を選べない欠点もあるけど」
それでも、とコナミは補足を付け加える。
「まぁ、これは先入観の問題もあるけどね。攻撃無効と聞いたらバトルフェイズに発動できるものと勘違いするし。それで知らなかった天上院はダメージ効率を優先した攻撃順序だね。【パーシアス】で戦闘破壊して、ダメージを与えてドロー。【エトワール・サイバー】は直接攻撃時に攻撃力アップ効果を持っているからね。【ヒーロー・バリア】無しの攻めだったら間違いないプレイングだよ」
予定が通れたらの話を付け加えるコナミ。十代は単純に感心しているばかりだが、他の人物は逆に納得行かない表情だった。
――何故これほどの知識を持っているのにオシリスレッドにいるのだろう――
コナミは自身に向けられる視線に気づいたのだろう。多少不満気の表情が伺えるが、彼は明日香にターンを促す。
「……天上院、他にやる事は?」
「え、えぇ……バトルフェイズは終了。さすがにモンスターを残すわけにはいかないわ。魔法カード【地割れ】! 相手フィールド上の最も攻撃力が低いモンスターを破壊! 十代達のモンスターは【スパークマン】のみ! だからスパークマンを破壊する! ……カードを二枚伏せてターンを終了するわ」
明日香 LP8000 手札2枚
場
天空騎士パーシアスATK/1900
エトワール・サイバーATK/1200
伏せモンスター
伏せカード二枚
「ようやく自分のターンだね。ドロー。スタンバイ……何かある?」
「いいえ、ないわ」
「了解。メインフェイズに」
彼のいつもの礼儀正しい進行を元に、コナミのターンが進行。手札を確認したコナミは手札一枚を墓地に捨てながら魔法カードを発動した。
「手札一枚をコストに【ペンデュラム・コール】を発動! デッキから名称の違う魔術師ペンデュラムカードを二枚サーチする! 自分は【時読みの魔術師】と【星読みの魔術師】を手札に!」
「お、ペンデュラムカード! 二枚のペンデュラムカードが揃ったってことはするんだなっ!?」
『ペンデュラムカード?』
聞き覚えがあるカードに十代は胸が弾み、初めて聞いたオベリスクブルーの生徒は疑問顔。翔は「あっ……」と察しているが。
そして――コナミは呼吸をするかのように、その二枚のカードを決闘盤の端に叩きつける。
「自分はレフトペンデュラムゾーンにスケール1の【星読みの魔術師】、ライトペンデュラムゾーンにスケール8の【時読みの魔術師】をセッティング!」
PENDULM
「これでレベル2から7までのモンスターが召喚可能――揺れろ自分の魂! 現世と幻想を繋ぐ橋になれ――ペンデュラム召喚! 手札より【賤竜の魔術師】!【相克の魔術師】!」
『フン……』ATK/2100 ☆6
『……』ATK/2500 ☆7
黒衣の魔導服をきた魔術師に、白衣の魔導服を着た魔術師が浮かび上がり、青い筒状の結界があり、それぞれの足元には1と8の数字があり。コナミの口上で空から光が降りては現れる二人の魔術師。一人の魔術師は風と共に現れた野性味溢れる魔術師であり。もう一人の魔術師は両頬に赤いラインがはいった、青いマントを靡かせて現れた。
コナミの召喚に十代は「かっちょいい魔法使いきたー!」と童心にかえってはしゃいでいるが、観客も含めたオベリスクブルーの対戦相手はそうはいかない。先ほどまでは冷静に対処していた雪乃までも驚愕の表情を浮かべていた。
「ぼ、ボウヤ……!? そのカード達はいったい……!?」
「このカード達はペンデュラムカード。特別な召喚が出来るカード達だよ。必ず二枚のカードが必要になるけど――『ペンデュラム召喚は該当するスケール内のレベルのモンスターは、任意で可能な限り一斉に特殊喚出来る!』」
「一斉に特殊召喚できる……!? もしかして辰上君が言っていたスケールの数字内なら何体でも特殊召喚できること!?」
「その通りだよ天上院。今スケールとして扱われているペンデュラムのスケールは1から8。つまりレベル2からレベル7まで同時に召喚可能ってわけ」
驚愕する雪乃に、明日香の質問に答えるコナミ。ペンデュラム召喚について少し事前に知っていた翔だが、まだ知らないルールに目から鱗のようで呆然としている。
当然、ペンデュラムなど聞いたこともないうえに見たこと無いのが普通だ。観客のオベリスクブルーの女子生徒二人はコナミを非難した。
「な、何よペンデュラム召喚って!? そんなインチキよ!」
「デメリット無しの生贄無しで特殊召喚は卑怯ですわ!」
「……一応、デメリットはあるよ。ペンデュラム召喚するのは必ず二枚のペンデュラムカードは必要だし、一枚だけじゃペンデュラム召喚は出来ない。スケールとして扱う時、永続魔法として扱われると【サイクロン】などといった魔法・罠破壊カードで普通に破壊されるけどね。召喚の処理が終わった今では破壊してもあれだけど」
ペンデュラムについてのルールを説明するコナミ。
「正直、遊城の攻防で除去カードを使っていたときは焦ったけど……今じゃそのカード達は結構墓地に行ったしね。召喚するのならこのタイミングだと思ったね……ちなみに天上院、召喚する際、もしくはした時に発動するカードはある?」
「(今、私が伏せているカードは召喚に反応するカードじゃない……!)いいえ、ないわ」
「ならこっちの処理だね。特殊召喚時に【賤竜の魔術師】のモンスター効果を発動。召喚・特殊召喚成功時に墓地から魔術師ペンデュラムカードもしくはオッドアイズモンスターを一枚手札に。自分は【ペンデュラム・コール】のコストにした【オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン】を回収……最近、君の出席率が高いね。遊城のデュエルでも君がいたけど」
賤竜の魔術師が発生させた風が決闘盤の墓地ゾーンに巻き起こり、墓地からコナミの宣言したモンスターを手札に。
そのモンスターは、コナミの受験で見たことがある。雪乃を代表に思い返していたが――彼女の視力で見たもので疑問に思ったことがある。
「(今、回収したモンスターはあの風のドラゴンの融合素材のモンスター――ん? 儀式モンスター……? あの融合ドラゴンの素材は儀式モンスターが必要だなんて重いモンスターなのね。まぁ、あの破格の効果ならば納得は出来るけど)」
雪乃なりの考察をしていたが、コナミは自身のターンを進める。
「バトルフェイズ。【賤竜の魔術師】で【天空騎士パーシアス】へ攻撃!」
「なら、罠発動――」
「【時読みの魔術師】のペンデュラム効果! ペンデュラムモンスターが攻撃する際、相手はダメージステップ終了時まで罠を発動出来ない!」
「な、何ですって!?」
コナミの攻撃に罠を発動させようとした明日香だが、黒衣を纏った魔術師が放つ魔法によって発動しようとしていた伏せカードが黒く霞がかる。抵抗するまもなく、天空騎士パーシアスは破壊された。
「(【ドゥーブルパッセ】でお互いダイレクトアタック扱いにして、パーシアスの効果でドローしようと思ったのに……! これじゃどのみち次の戦闘も発動できない……!」LP8000→7800
「次だけど……遊城。エトワール・サイバーと伏せモンスターならどっちに攻撃するべきかな?」
「俺か? そーだなぁ……。明日香のモンスターよりも、次のターン藤原だから、藤原のモンスターじゃね? 明日香のモンスターは藤原と関連がないし……」
「そうだね。自分も若干そう思ってる。てなわけで【相克の魔術師】で伏せモンスターに攻撃」
意見が合ったのでコナミは伏せモンスターへと攻撃。その攻撃されたモンスターは――茶色い、目が計3つあるモンスターだった。
モンスターの持ち主である雪乃は不敵に笑いながら、モンスターの説明を。
「ふふっ。残念だったわねボウヤ。【クリッター】はフィールドから墓地に送られると、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを加える事はできるわ。尤も、ターンプレイヤーの関係で、天上院さんが自分のデッキから加えることが出来る。さぁ、好きなモンスターを」
「ありがとう、藤原さん。私はデッキから攻撃力1400の【ブレード・スケーター】を加えるわ」
偶然と言えど、味方をサポートできるモンスターの効果により、条件に合うモンスターをデッキから加え、明日香の手札は四枚に。相手が加えたカードを確認したコナミは次の処理に。
「……メイン2。伏せカードを一枚セットしてターンエンド」
コナミ LP8000 手札1枚
場
ペンデュラム 星読みの魔術師 スケール1
時読みの魔術師 スケール8
【賤竜の魔術師】ATK/2100
【相克の魔術師】ATK/2500
伏せカード一枚
「さて、ターンが一巡して私のターンね。ドロー」
コナミのターンエンドを確認した雪乃はデッキからカードをドロー。一度十代のターンで【砂塵の大竜巻】の効果で伏せては手札を二枚までに減らしていたが、三枚に。そして雪乃は二枚の魔法カードを順番に発動させる。
「じゃあ行くわよ。魔法カード【死者蘇生】。私達の墓地もしくはボウヤ達の墓地からモンスターを特殊召喚するわ……そうはいっても、自分のモンスターを選択するけどね。私は墓地より【クリッター】を特殊召喚。そして【クリッター】を生贄にして発動!【モンスターゲート】!」
「……効率の良い使い方だね」
コナミが推測したカードの一枚である【モンスターゲート】を使用。一瞬【クリッター】は【オレの出番か!】という意気込みででできたが、モンスターゲートにおける演出で青白く消えていく最中【えっ!? これで終わり!?】と信じられない表情で墓地へ反復運動にする事になった。
『……ますたー、一度ますたーの親友さんとデュエルしている時、あたしも反復運動する時あるけど、何か言う事がある?』
「(文句があるなら【グローアップ・バルブ】に差し替えるよ)」
『ごめんなさい』
どこか【調律の魔術師】は思い当たる節があるのか、ジト目をしながらコナミに抗議しかけたところ、リストラ宣告をされそうになり前言撤回する。
……しかし、その様子小声で見て気づいた人物が一人。
「……? なぁ、相棒……? あれってコナミの、もしかしてお前と同じような精霊なのか?」
『クリッ』
……十代とハネクリボーの会話はさておき、二人の謎の精霊に気づいていない対戦相手二人は、雪乃は行動を続ける。
「ボウヤのご所望のモンスターゲートよ。知っての通り、このカードは自分のモンスターを生贄を捧げることで発動して、デッキを捲って通常召喚可能な特殊召喚が出るまで捲るわ。じゃあ捲るわ――」
そうして、雪乃はデッキからカードを捲ると――一枚目で行動を止めると、彼女は不敵に笑いながらモンスターを特殊召喚。
「ふふふっ――私は【混沌の黒魔術師】を特殊召喚!」
「!」
「こ、【混沌の黒魔術師】ッスか!? そのカード、かなり激レアなカードだったはずッス……!?」
彼女が召喚したモンスターは、青みがかかった、黒の魔導服を着た魔法使い。そのモンスターの出現に一瞬コナミは反応し、希少価値が高いのか翔は驚いているところに、彼女はどこか自慢げに胸を張りながら理由を答える。
「私、運は基本的に高い事を自負しているわ。だからこそ、この推理ゲートデッキを組んでいるんだもの。気分が乗ったからパックを一つだけ買ったら出てくるんですもの。そして、ボウヤのペンデュラムとは違うけど、同じ【魔術師】の名前を持つモンスター。仲良くやりましょう――【混沌の黒魔術師】と墓地に送られた【クリッター】の効果を発動――」
「それにチェーンして発動! 罠カード【ブレイクスルー・スキル】! このターンのフィールド上に存在する一体の効果モンスターを無効にする! 当然対象は【混沌の黒魔術師】!」
『ハァッ!』ATK/2800 ☆8
演出で混沌の黒魔術師が何やら雪乃の墓地に魔法を掛けようとしたが、コナミが発動したカードにより急に虚空から現れた、空間にひびが入っては謎の白いモンスターが混沌の黒魔術師の魔法攻撃を殴るかのようにして防いだ。効果発動を防がれたことに不満げな表情を浮かべている雪乃だったが、カードプールの知識に若干乏しい十代はコナミに理由を尋ねた。
「なぁ、コナミ。あのモンスターの効果って何なんだ?」
「……確かあのモンスターは、この背景のテキスト通りなら召喚・特殊召喚成功時に自分の墓地の好きな魔法を回収できるんだ。おそらく推理ゲートの魔法か死者蘇生を回収しただろうね。それだけじゃなく、あのモンスターが戦闘破壊したモンスターはゲームから除外される」
「強いなこのモンスター!? こんなのがコナミの言う【推理ゲート】で簡単に出てくるのかよ!?」
「でも、混沌の黒魔術師のデメリットとして、フィールドから離れた場合は除外されるけどね(……今更除外がなんだって話だけど)」
十代に説明している中、ボソッとどこか呆れながらつぶやくコナミ。それはともかくとして、コナミの無効化に不満を言いながらも処理を続ける雪乃。
「もう、ボウヤったら釣れないわね……ならクリッターの効果を発動するわ。知っての通り、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える。私は攻撃力300の【マシュマロン】を手札に。そうねぇ……まぁ、効果無効化されていても攻撃はしましょうか。バトル――【混沌の黒魔術師】で【相克の魔術師】に攻撃!」
「くっ……」LP8000→7700
「これでほぼイーブンね。バトルを終了し、モンスターをセットしてターンエンド」
雪乃 LP7800 手札1枚
場
混沌の黒魔術師 ATK2800
伏せモンスター
伏せカード二枚
雪乃の魔術師がコナミの魔術師を破壊。やるべき事を終えたのか正体不明のモンスターを伏せてはターン終了。そして、十代のターンへと回る。
「俺のターン、ドロー! ……よし、【強欲な壺】を発動! デッキからカードを二枚ドローするぜ! よし来た! 【天使の施し】を発動! デッキからカードを三枚ドローして、手札を二枚捨てるぜ! ……さてと、この状況をどうやって突破しようか……」
「さすが十代ね……ここぞとばかりにデッキからカードを補充して手札交換を行ってる……」
「さらっとドローソースを本当にドローするよね、君……」
関心する明日香をよそにコナミはどこか呆れているが、十代は考える。十代の手札は5枚。偶然にも先ほどのドローで融合できるモンスターはそろった。
一先ずはやることは決まった。十代は二枚のカードを選択し、順番に行動を行う。
「俺は【E・HEROフェザーマン】を召喚! そして魔法カード【ミラクル・フュージョン】を発動! このカードはHERO専用の融合カード! 自分フィールドまたは墓地のモンスターを除外し、融合召喚を行う! 俺はフィールドのフェザーマン、墓地の【E・HEROバーストレディ】を融合! こい、【E・HEROフレイムウィングマン】!」
『ハァーッ!』ATK/2100 ☆6
彼のフェイバリットモンスター、フレイムウィングマンがフィールドに降り立つ。後は彼の十八番であるフィールド魔法を発動し、鉄板コンボを発動するにみだが――ふと、ある事を思い出す。
「(……そういや、コナミは使えるものは使えって言ってたっけ)」
やれることが無いか、十代は模索する。何せ、このデュエルはフィールド、墓地のカードは共有だ。うまく使えるものは無いかと考えている時に――ふと、十代はコナミの言葉を思い出していく。
『これでレベル2から7までのモンスターが召喚可能』
『手札より【賤竜の魔術師】!【相克の魔術師】!』
「(手札から、スケール以内のモンスターが特殊召喚可能――!? まさか、コナミは……!)」
思い代えている時に、十代はあることに気づいた。
何故、コナミはタッグを提案したのか。
何故、墓地とフィールドは共有なのか。
実際、フィールドの共有により雪乃と明日香はうまくリバースカードを相手に託したり、モンスターのサーチ効果を行った。いずれも、タッグフォース特有の『フィールド・墓地の共有』によって。
「(……コナミ、面白れぇ事に気づいたぜ! これがタッグフォースの面白さか!)」
コナミがデュエル前に言っていた言葉の意味を理解し――
「俺はコナミのセッティング済みのペンデュラムスケールを使って――ペンデュラム召喚を行うぜっ!」
『なっ――!』
「……気づいてくれたんだ」
十代の宣言に驚愕する対戦相手と観客達。そして自分の言った言葉を理解してくれたコナミはどこか嬉しそうだ。
そして――十代は彼の真似をしながら、同じアクションを起こした。
「コナミのセッティングしたペンデュラムスケールは1から8! よってレベル2からレベル7までのモンスターが手札から特殊召喚可能だ! 行くぜ――ヒーローは遅れてやってくる! 仲間の力を借りて、登場だ! ペンデュラム召喚――レベル7、来い、【E・HEROエッジマン】!」
『トァッ!』ATK/2600 ☆7
十代の宣言した瞬間、上空から現れる金色の鎧をまとったヒーロー。自分でも未知な召喚である【ペンデュラム召喚】を成功した十代はどこか満足感を得られた表情をしており、次第に対戦相手である明日香はコナミの言っていた言葉に納得していく。
「……なるほどね。だからフィールドと墓地を共有する【タッグフォース】を提案したのね。ペンデュラムカードが二枚そろっていれば、味方もペンデュラム召喚できる事を利用したのわけ……!」
「そもそもこのデッキはタッグにも向いているからね。例え自分の【EM魔術師オッドアイズ】と遊城の【E・HERO】はシナジーは無いかもしれないけど――例外を除いてペンデュラム召喚はいろんなデッキと協力できるから」
「(そうなると、私の【推理ゲート】だと手札事故を起こしても、ボウヤのペンデュラム召喚があれば、手札の上級モンスターも一気に特殊召喚できるという事! あぁん……ボウヤと私のデッキは相性抜群じゃない……♡)」
コナミの説明を聞いてどこか恍惚とした表情を心の内で浮かべている雪乃だが、十代は気にすることなく、自身が現在抱いている感想をコナミに告げる。
「すっげぇ豪快で気持ちいいな、ペンデュラム召喚! 天から見参するヒーローとかかっこよすぎだろ!」
「それは良かった。でも、まだデュエルは終わってないよ、遊城」
「そうだな。じゃあ、俺はフィールド魔法【摩天楼―スカイスクレイパー―】を発動するぜ!」
一体彼のドロー力はどうなっているのだろうか。十八番のフィールド魔法を発動し、舞台は整ったのを確認し――行動を。
「バトル!【フレイムウィングマン】で【混沌の黒魔術師】を攻撃!」
「天上院さん、伏せカードを使わせてもらうわ! 罠カード【ドゥーブルパッセ】! モンスターに攻撃したモンスターを私へのダイレクトアタック扱いにし、攻撃対象にされたモンスターはヒーローのボウヤへにダイレクトアタックにできる! ――くっ」雪乃 LP7800→5700
「何っ――ぐあっ!?」LP7700→4900
混沌の黒魔術師はフレイムウィングマンの攻撃を躱して十代に向かって魔法攻撃を。フレイムウィングマンはそのまま雪乃へ攻撃を。この罠のおかげでお互いにLPは減ってしまったものの、LPは逆転した。
「なら、エッジマンで続けて攻撃だ!」
「カウンター罠【攻撃力の無力化】! 攻撃を無効にし、相手のバトルフェイズを終了させるわ!」
「くそー、破壊できなかったか……なら、コナミの【賤竜の魔術師】を守備表示に変更。リバースカードを一枚伏せてターン終了だ」
十代 LP4900 手札 0枚
場
ペンデュラム 星読みの魔術師 スケール1
時読みの魔術師 スケール2
【賤竜の魔術師】DEF/1400
【E・HEROフレイムウィングマン】ATK/2100
【E・HEROエッジマン】ATK/2600
伏せカード一枚
「……あれ? どうして藤原さんはあのタイミングで攻撃の無力化を……?」
彼女のプレイングに疑問を持っていた翔だが、ジュンコとももえがそれぞれの考察を。
「どう考えても明日香さんが伏せてくれた【ドゥーブルパッセ】でダメージを与えるためでしょ」
「【スカイスクレイパー】はあくまで相手の攻撃力の高いモンスターとの戦闘時に攻撃力を上昇させる。しかし直接攻撃に変わってしまった為攻撃力は変化せずの素のままの攻撃力として扱われますわ。それなら多少のダメージ覚悟で混沌の黒魔術師を餌にしたのでしょう。混沌の黒魔術師の戦闘破壊の除外効果は強力ですし」
だから兄貴たちのライフポイントが少ないのかと納得。そして、明日香のターンへ。
「私のターン、ドロー! 私は手札から融合を発動! フィールドの【エトワール・サイバー】と【ブレード・スケーター】を融合! 融合召喚! 来なさい、【サイバー・ブレーダー】!」
『フン――ハァッ!』ATK/2100 ☆6
今度は明日香が融合召喚を行った。場にいるモンスターと、手札のモンスターを融合し、赤いサングラスのようなものを掛けた長髪の女性に、スケート靴を履いたモンスターだ。
彼女のモンスターの出現に、ジュンコとももえはどこか勝ち誇っているような表情を浮かべているが――この理由を知ることになる。
明日香は、条件を満たしていたのか融合モンスターの効果を発動させる。
「【サイバー・ブレーダー】の効果を発動! 相手の場のモンスターが3体だけの場合、魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にする!【パ・ド・カトル】!」
「な、なんだって!?」
条件は厳しいものの、ほぼ全てのカードの無力化は絶大だ。現に十代の場にいるモンスター、そしてスケールとして扱われているペンデュラムモンスターもどこか覇気がない。
「そして私は装備魔法【フュージョン・ウェポン】を【サイバー・ブレーダー】に装備! このカードはレベル6以下の融合モンスターのみ装備可能! 装備モンスターは攻撃力と守備力を1500上げる!」
『ハァアア!』ATK/2100→3600
「バトル!【混沌の黒魔術師】で【E・HEROエッジマン】に攻撃!」
「くっ……」十代LP4900→4700
新たに力を得たサイバー・ブレーダーをよそに、黒衣の魔術師は金色のヒーローに攻撃され、破壊。十代の持つ【スカイスクレイパー】は相手のモンスターの攻撃宣言時でも攻撃力は上昇するが、現在は【サイバー・ブレーダー】により効果を発揮できない。
「【混沌の黒魔術師】の効果で【エッジマン】は除外される! さらに相手モンスターのモンスター数が変動した事により【サイバー・ブレーダー】の効果は変更! 相手のモンスターが二体だけの場合は、このカードの攻撃力は今の攻撃力を二倍にする!【パ・ド・トロワ】! そのまま【サイバー・ブレーダー】で【フレイムウィングマン】へと攻撃!」
『――ハッ!』ATK/3600→ATK/7200
「だが、これでスカイスクレイパーの効果が使える! よってフレイムウィングマンの攻撃力は1000上げる!」
『――』ATK/2100→3100
「それでも私のモンスターの攻撃力の方が上! 行きなさい!」
「――ぐぁああっ!」LP4700→600
膨大な攻撃力により、十代達のライフポイントは三桁へ突入する。コナミは「凄い脳筋だね……」と感心していたが、翔は「コナミ君も人のこと言えないっスよ」と軽いツッコミ入れていたが
「相手の場がモンスター一体の場合は、戦闘では破壊されなくなる――【パ・ド・ドゥ】。これで圧倒的に十代達は劣勢になったわ。次は辰上君のターンだけど……次でドローしても手札は2枚。伏せカードは攻撃反応みたいじゃないみたいだし、モンスターは【賤竜の魔術師】だけ。どう相手してくれるかしら? まぁ、念を入れて――カードを一枚伏せてターンエンド」
明日香 LP5700 手札0枚
場
【サイバー・ブレーダー】ATK/7200→3600
【混沌の黒魔術師】ATK/2800
装備魔法【フュージョン・ウェポン】対象→【サイバー・ブレーダー】
伏せカード一枚。
「さて――自分のターンか……ドロー!」
追い詰められたコナミは、勢いよくカードをドロー。それを確認したコナミは――かすかに笑みを浮かべ、伏せカードを確認し十代に視線を向けると、十代は相槌を打つかのように彼に言葉を。
「お、その様子はキーカードが来たんだな! それで、俺のリバースカードが必要か?」
「……まさか、渡したカードを自分で使うとは思っていなかったけどね……でも、確認のために聞くよ。良いかい?」
「もちろんだ! 俺がペンデュラムをしたように――コナミも融合を使ってくれ!」
『融合!?』
十代の言葉に、周りの人物は過剰に反応した。肯定をもらったことで、コナミは順番にカードを発動させる。
「うん、使わせてもらう! スタンバイフェイズ! 罠カード【
「融合!? ヒーローのボウヤが使ったのはあくまで【ミラクル・フュージョン】のはず――! まさか、【天使の施し】で墓地に!?」
まさか、十代がパートナーにカードを託していたのは思っていなかったのか、雪乃の言葉を代表に困惑しているが、次第に納得していく。
「その通りだね。これだから墓地確認は大事なんだ。それとまだ発動するものはある! チェーンして墓地より罠カード【ブレイクスルー・スキル】を発動!」
「墓地から罠ですって!?」
「墓地から罠!?」
「墓地から罠ッスか!?」
「墓地で発動する罠!?」
「墓地から先ほど使用したカードを発動ですって!?」
墓地から罠を発動させるカードは聞いた事が無いのか、対戦相手と翔を含めた観客が同じような表情を浮かべていた。それに対して十代はコナミに言われてちゃんと墓地確認をしていてので、どこか自慢げだったり。
それはともかくとして、処理の説明に入るコナミ。
「墓地で発動する場合、送られたターンには発動できず自分のターンしか発動できないけど……墓地からこのカードを除外し、相手一体のモンスターの効果を無効にする! 対象は勿論【サイバー・ブレイダ―】! これでモンスターが変動しても効果は発動できない!」
「し、しまった!」
予想外な場所から発動したカードに戸惑いを隠せない明日香。そして【融合準備】の処理へ移り、十代から墓地にあった【融合】を受け取り、【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】手札に加え、加えたばかりの魔法を発動する。
「そして遊城のカード【融合】を発動! 場にいる【賤竜の魔術師】と手札の【オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン】を融合! 世にも珍しい二色の眼を持つ龍よ。雷を纏いて、旋風と共に降臨せよ! 融合召喚!【オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン】!」
『――!』ATK/2500 ☆7
入試の時に、受験生に印象を残らせたコナミの雷の竜の融合モンスター。ようやくコナミの融合モンスターを見る事が出来たことに十代は「かっけー!」と興奮しているが、雪乃はその融合モンスターについて焦燥を浮かべて追及する。
「ボウヤ!? その融合モンスターはさっきの儀式モンスターと、小さい女の子のモンスターで融合できるモンスターのはずよ!?」
「【ボルテックス】の融合素材は【オッドアイズ】モンスターとペンデュラムモンスターだったらなんでも良い!」
「!? 融合素材がかなり緩い……!?」
該当するモンスターがどれだけいるのだろうと戦慄しているが、まだコナミの処理は終わらない。
「まだまだ! まずは【ボルテックス】の効果を発動! 相手の表側攻撃表示モンスターを手札に戻す!【サイバー・ブレーダー】を手札に! 融合モンスターをバウンスした場合、融合デッキへと戻る!」
「そんな……!」
「さらに自分は【EMドクロバット・ジョーカー】を召喚! 召喚成功時【EM】【オッドアイズ】【魔術師】ペンデュラムモンスターの内一体を手札に! 自分は【EM】カテゴリーでもある【EMオッドアイズ・ライトフェニックス】を手札に!」
『ヒャハッ』ATK/1800 ☆4
手札に上級モンスターが加わった。再び手札のモンスターをペンデュラム召喚をするのであろうと誰もが思ったが――正解なのだが、それは100%の答えではない。
「自分はセッティング済みのスケールでペンデュラム召喚! 来い、手札よりレベル5【EMオッドアイズ・ライトフェニックス】、レベル7【オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン】。さらにエクス――融合デッキから【相克の魔術師】!」
『――!』ATK/2000 ☆5
『――!』ATK/2500 ☆7
『――!』ATK/2500 ☆7
再び上空から現れるモンスター。手札からモンスターを特殊召喚するのはまだ良い。しかし――今、彼は融合デッキから、前のターンで戦闘破壊されたモンスターを抜き出し、特殊召喚を行った。
当然、異議があるのが普通だ。彼に怒りながら申し立てたのはジュンコ。
「ちょ、ちょっと! その魔法使い前のターンで破壊されたモンスターじゃない! 融合デッキになんで入れて、それでペンデュラム召喚しているのよ!?」
「ペンデュラム召喚の講座。【フィールドに存在するペンデュラムモンスターが戦闘破壊・効果破壊。生贄もしくは効果で墓地に送られる場合は全て融合デッキに送られる。そして、スケール内のレベルだったら融合デッキに溜まったペンデュラムモンスターもペンデュラム召喚できる!】」
「ぼ、墓地に行かず何度もペンデュラム召喚が出来るということですわよね!?」
「……まぁ、さすがに除外は論外だけどね。除外は普通に適用されるよ。だからそれを含めて【混沌の黒魔術師】の除外効果から守っていたわけだし」
次々明かされるペンデュラムのルールに、観客達も舌を巻く。本当にペンデュラムを封じるためには、スケールを何とかしないといけないのかと。
「これが、ペンデュラム召喚なのね……お姉さん、その召喚方法気に入ったわ……」
「それはありがとう藤原。じゃあバトル。【ライトフェニックス】で伏せモンスターに攻撃」
雪乃からの言葉を流し、淡々と進めるコナミ。だが、彼の選択にふとある事を思い出す十代。
「ま、待てコナミ! あのモンスターは確か――」
「ここでまさか辰上君のミスなんて……でも、手加減はしないわ! セットモンスターは藤原さんの【マシュマロン】! このカードは戦闘では破壊されず。裏側表示で攻撃された場合、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
伏せられていたモンスターは、マシュマロを模したモンスターであり。そのモンスターは攻撃に耐えた後、鋭い歯を出しながらコナミに襲い掛かる。
なんだかあっけない終わり方と思ってしまったが――コナミの表情を変えることはない。
「知ってる。効果にチェーンして【ボルテックス】の効果を発動。融合デッキのペンデュラムモンスターをデッキに戻し、魔法・罠・モンスター効果を無効にして破壊する!」
「そ、そういえばあのモンスターは無効効果を持ってたッス……!」
「戦闘破壊できないなら効果破壊をすればいいじゃない」
マシュマロのモンスターがコナミに襲い掛かる前に、雷の攻撃で破壊される。処理として融合デッキの【賤竜の魔術師】をデッキに戻し、完了する。
一瞬負けたと思った十代は、安堵の言葉を。
「び。ビビったぜコナミ。心臓バクバクしたぜ……」
「これもエンタメの一種だよ。周りの考えている事を上の発想で驚かす。そして【ライトフェニックス】の効果を発動! このカードを生贄にささげ、【EM】モンスターの攻撃力を1000上げる! 対象は【ドクロバット】!」
『ヒャハハハーッ!』ATK/1800→2800
「そのまま【混沌の黒魔術師】に攻撃!」
『ヒャッ!? ウソダロ!?』
コナミの指示により、力を得たドクロバットだが、同じ攻撃力で相打ちといえど、除外効果は適用される。そのまま【混沌の黒魔術師】と共に、フィールドから除外される。
「さて、後は――総攻撃。【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】から攻撃」
「まだよ! 罠カード【リビングデットの呼び声】! 自分の墓地のモンスターを攻撃表示で特殊召喚! 私は藤原さんの墓地から【天空騎士パーシアス】を特殊召喚!」
『――!』ATK/1900
「上手いわ天上院さん。パーシアスの攻撃力なら、そうダメージ量はLPは5600だわ。LPは100残る。まだ、次のターンに繋げれる!」
まだこのデュエルを終わらせたくないのであろう。墓地から特殊召喚したモンスターに安堵する雪乃だったが――まだ、彼女たちは知らない。【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】の効果を。
その効果を、無慈悲に伝えるコナミ。
「【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】のモンスター効果! モンスターとの戦闘時、与えるダメージは二倍になる――【リアクション・フォース】!」
「「……えっ」」LP5700→4500
初耳の効果に耳を疑う二人だったが――コナミは止まらない。
「残りの二体でダイレクトアタック!」
「「きゃーっ!?」」LP4500→0
異種の召喚方を交えたタッグバトル。勝者はオシリスレッドの二人となった……。
「――いやぁ、ペンデュラム召喚ってすげぇな! 使ってて気持ちよかったぜ!」
「自分としては、まさか遊城に渡したカードが自分が使う事になるとは思ってなかったけど……そのお陰で勝てた。ありがとう」
お互いに称賛しあいながら、褒めあう二人、そして思い出したかのように、十代は明日香に確認をとる。
「おっと、約束だ。翔を返してもらうぜ」
「えぇ、わかったわ。今度から気をつけなさい……それと、辰上君。そのペンデュラムカードって初めて見たけど……どこにあるの? そのカード」
約束通り翔を十代に引き渡した後に、コナミの持っていたカードの詳細を尋ねる明日香だったが、彼はどこか言葉を濁す。
「うーん……強いて言うのなら、自分のいたところでは使っていた人もいたけどね。ただ、ここでは普及していないみたい、としか言いようがないかな」
「一部しか広まっていないカード……?」
「ふぁ……そろそろ眠いから帰っていい?」
「え、えぇ……」
「そら、遊城、丸藤、帰るよ」
眠そうにあくびをしながら十代と翔を先導し、オシリスレッドへ帰っていく。そのまま帰っていくコナミ達の様子を見てジュンコとももえは納得がいかないようで明日香に抗議していたが、藤原雪乃はというと――
「(独特な雰囲気を持つペンデュラムと融合召喚を使う、博識のオシリスレッドのボウヤ――いえ、コナミ……面白い男ね)」
妖しそうに唇に指を軽く触れながら、その場から去って行った……。
……一方、近くにある川に身を隠していた一人の人物は、今のデュエルについて悩んでいた。
「(あのドロップアウトボーイを合法で退学にさせヨーとしたノーに、まさかあの弟のシニョール丸藤が来たノーネ!? そして、シニョール辰上のぺんでゅらむ召喚ってなんなノーネ!? 色々と考えきれないことがあって――ヘップシ!)」
……その人物は翌日に風を引いて休んでいたという……。
その後。昼休みにコナミはしかめっ面と浮かべていた。その理由は主に大勢の男子の妬みの視線だ。その妬みの理由はというと――
「ねぇ、コナミ? あなた、今度タッグの授業があったら私と組みましょうよ。その時はお姉さんの全てを晒してあ・げ・る♪」
「それはデッキ調整という意味合いだよね? それは、まぁ、別にタッグの授業があったら別にいいけど……それより、近い。体が当たってる」
「よくコナミは平静でいられるわね? これでも私、容姿には自信がある方だけど?」
「自分は見た目で判断しないからね。それと離れて」
「やっぱり、他の男子とは違う雰囲気がするのよねぇ……もっとコナミの事を知りたいわぁ。コナミの全てを晒してほしいわ?」
「多分デッキが特殊だから、それでデッキ内容が気になるだけだよね? それと離れて。視線が痛い」
『――辰上も藤原さんも距離が近いってば! 何があったの!? そ、それとボクも離れたほうが良いと思うよ!』
雪乃のべったりとした行動に近くにいたツァン・ディレは抗議の言葉をそれに対して雪乃は意味深な言葉を。
「ボウヤの(デュエル)テクニック、凄かったわぁ……! 私の知らない事を新しく知った時、凄い体がゾクゾクしたもの……!」
「へ、変態! アンタ藤原さんに何をしたの!?」
「……藤原が誇張しているだけだよ。ちょっと、天上院と遊城を交えてタッグをしただけ」
『呼んだ? 辰上君?』
理由を話していたコナミだったが、自身の名前が聞こえたのか明日香がコナミのいる場所へと近づく。ちょうどいいと思ったのか、現状について説明して答えを求めるコナミ。
「天上院……藤原が最近ずっとこの調子なんだよね。デュエルをして以来、ずっとぴったり着いてきて……」
「いや、気になるのは当然だと思うわよ? 辰上君の使うカードは見たことのないカードのうえに、【ペンデュラム召喚】を使うし。誰も気になるわよ」
「……ぺんでゅらむ? それって、過去にオシリスレッドで遊城とデュエルで使った謎の召喚方のこと?」
思い当たる節があったので会話に改めて参加したツァンだが、コナミにとっては彼女に説明した事がないはずと思い、追及。
「……ディレ? 君は【ペンデュラム】を知っているの?
「た、偶々よっ! 偶然オシリスレッドの寮に寄った時、アンタがデュエルしたのを見かけたの! ってか、そもそもコナミの使う【ぺんでゅらむ】って何!?」
「……君も見ていたのか……。まぁ、知っているのなら話した方が良いか。見晴らしのいい場所を知っているから、そこで話すよ。藤原と天上院はどうする?」
「そうね。私も同伴するわ。新しい事を知るって楽しいもの」
「私も復習がてら聞こうかしら? いつか辰上君と再戦した時の参考にでもね」
「……ん。じゃあちょっと行こうか」
三人のオベリスクブルーを連れながら、コナミは教室から出て行った……。
『――て、天上院君が他のオシリスレッドのドロップアウトに興味があるだと!? 十代だけじゃなく、あの特異な融合モンスターを出した赤帽子に……! これ以上、天上院君をオシリスレッドに引き込んではいけない……! 何とかしなければ……!』
……次から長すぎたら前編後編に分けます。
では。また。