では、どうぞ。
「……一つかそれ以上に聞きたいことがある」
少しだが威圧的な言葉を放つコナミ。彼の表情は第三者から見ても不機嫌と感じるが、楽天的な十代は気楽に言葉を。
「んあ? どうかしたのかコナミ? ……この大福うめぇ―!」
「……百歩譲って遊城と丸藤のアポ無し訪問はまだ許せる。そして三沢の事前予約はもちろん良いけど。でもね――何でここ最近自分の寮部屋はたまり部屋になってるの!? 便乗した天上院とディレもそうだけど、一番は君だ、藤原!」
「あら、コナミ? そう、私はコナミにとって一番なのね……♪」
「あぁ、面倒くさいな君は! タッグフォースでデュエルして以来、自分のパーソナルスペース及び自由時間が減っているんだよ!」
帽子越しだが、イラつくように頭を掻きながら不満をぶちまけるコナミ。
そう。今現在の場所はオシリスレッドのコナミの部屋。彼の部屋にはたくさんの学友達がリラックスしながら過ごしているのだ。
そして、各々の状況下はというと。
「俺あんまり和菓子って食べないけど、結構美味いもんだなー」←コナミの間食を食べながらデッキ調整している十代
「コナミ君! ここにあるブラマジとブラマジガールフィギュア(興奮気味)ってどこに売ってたんスか!?」←始めは乗り気じゃなかったが、少女の模型を見て興奮している翔
「成る程……ペンデュラムにはそのような利点があったのか……」「本当に改めて聞くとインチキな召喚よね……」「タッグフォースルールだとパートナーの恩恵が大きいわ」←ペンデュラムについて語り合う三沢、ツァン、明日香の真面目三人組
「コナミ、ボウヤの面白いものはどこかしら?」←コナミの私物を物色している雪乃
……コナミの遠い地にいるであろう親友が言うならば「カオスの集まりじゃねぇか。ワロス(mg^∀^gm)<ダブルプギャー!」と煽っていたところだろう。
「……平穏が欲しい」
コナミの呟いた言葉は、誰にも届くことはなかった。
先日でタッグフォースでデュエルをして以来、コナミは誰かしらと行動している事が多くなった。オシリスレッドにいたら、ほぼ毎日十代と関わる。翔はコナミの部屋にあった模型を見て以来、以前はどこかよそよそしかったが今では吹っ切っていた。
授業に出ている時は三沢、ツァン、雪乃、明日香のローテーションでお互いに話し合う事が多くなった。三沢は授業の感想をコナミに求め、ツァンは精霊を随伴させながらの他愛の雑談をし。雪乃といる時は大多数の男子の妬みの視線を受けながら、もしもタッグを組んだ時の話し合いをし。現在は明日香からの悩みの相談を受けていた。
「――口ではあぁ言っているけど、ジュンコとももえも良い子なのよ。ただ、あの二人は私に依存しているか何というか……」
「ここ数日、天上院と過ごしたけど、君は同性でも頼りになるって事でしょ。ただ……好感度が振り切れているんじゃない?」
「私としたら、もう少し友人として触れ合って欲しいのだけどね……」
学園に設置されている休憩スペースでお互いに缶コーヒーを片手に話し合う二人。雪乃ほどではないが、彼女と話していると妬みの視線をコナミはずっと感じている。
その視線に不愉快に感じつつも、コナミが抱えている悩みを明日香に打ち明けた。
「……ここ最近誰かと一緒にいることが多くなったんだよね。悪いことではないんだけどさ……」
「それはさっき辰上君が答えたことをそのまま返すことになるけど……頼りになるからじゃない?」
「……頼りに?」
彼女の言葉を復唱したコナミだが、明日香は自身の考察を述べる。
「何て言うか……兄貴肌って言うのかしら? 面倒見も良いし、知識の量も膨大で、一緒にいて損がないのよ。責任感が強く感じるから頼りにしている。そんな感じだと思うわ」
「……確かに自分は長男だけどさぁ。そういうもの?」
「そういうものよ……それと辰上君、兄弟がいるのね」
保留に近い感じだが、ひとまずは解決し。その中で興味のある事柄だったのか、尋ねてくる明日香。
「……ちょっと複雑な家庭だけどね。2歳年下の義妹に、10歳ほど年下の実妹がいるよ」
「義妹に実妹……?」
「あぁ、言っておくと仲はかなり良好だよ。それこそ本当の姉妹のようにね。天上院はいるの?」
「……えぇ、私は――」
兄妹の話へと変わり、明日香が答えようとしたとき――
『やぁ、天上院君! 気分はどうだい?』
彼女の苗字を呼びながら話しかける一人の男子。厳密にはもう二人ほどいるのだが……その二人は声を掛けた男子の取り巻きの印象を受けた。
コナミは「一部の生徒は取り巻きが付いてくるの?」という素朴な疑問が頭の中にで浮かべたが、声をかけられた明日香は返事を。
「あら? 万丈目君、どうかしたの?」
「なぁに、同じ優等生のオベリスクブルーのよしみだ。挨拶をしてもおかしくやいだろう。――おや? こんな所にドロップアウトボーイがいたのか。如何せん、帽子を目深で被っていた所為で気づかなかった。オシリスレッドはオレ達オベリスクブルーと比べると存在が雲泥の差だからな。は気にすることはない。それがオレ達と十代達のお前を含めた差だ」
いきなりだが、どこか嫌みっぽく言うオベリスクブルーの男子生徒。だが、コナミは「それが?」と言わんばかりに言葉を返した。
「少なくとも赤って結構目立つから、気づかなかったのなら色弱の疑いがあるから病院に行った方が良いよ?」
「バカか、そういう意味で言ったわけではないっ!」
「もしくは恋は盲目ということで自分に気づかなかったのなら、ある意味しょうがないけど……」
「ババババカかっ!? そそ、そういう意味でも言ったわけじゃないっ!!」
無意識に煽っていくコナミ。本人は冗談の意味合いで言ったのだが、後者の言葉では万丈目と呼ばれていた男子生徒は深く動揺していた。
……もしかすると、本当に一部は図星なのかもしれない。
コナミの言葉でさらに興味を持ったのか、明日香は興味津々で万丈目に尋ねた。
「え、万丈目君? 好きな人がいるの?」
「てて天上院君! この赤帽子の言うことをまともに聞くんじゃない! それと赤帽子貴様、オレを侮辱してからかっているのかっ!! ならばその罪、オレが断罪してやろうっ!!」
よほどコナミの言葉が癪に触ったのか、決闘盤を構え始める万丈目。しかし、当本人は乗り気じゃないようで。
「なんか流れるようにデュエルする流れになってるけど……パス。最近デュエルは決闘盤無しと言えど、テーブルでしてるから疲れた」
「なっ……!? 貴様、逃げるつもりか!? ……フンッ! 所詮はドロップアウトのオシリスレッドか。尻尾を巻いて逃げるとは臆病者め」
デュエルの拒否に信じられないといった表情を浮かべた万丈目だが、逆に冷静になっては挑発する。しかし、彼を擁護したのは明日香だ。
「万丈目君、ここ最近辰上君は暇があれば十代や藤原さんに勝負を挑まれているのよ。……実はさっきまで、辰上君と私はテーブル上とはいえデュエルしていたし」
「何っ!? 天上院君とデュエルだと!?」
やはりこの男、明日香が関わる話は敏感に反応している。信じられない視線をコナミに送る万丈目をよそに、思い出すかのように振り返るコナミ。
「藤原は自分の召喚に関するメタをしてきた所為か、かなり苦戦したけど辛勝。そして遊城はミラクル・フュージョンを囮にして【強欲なバブルマン】、【強欲な壺】、【貪欲な壺】、【融合回収】……何故手札一枚から初期手札の五枚に戻るんだ? それに【シャイニング沼地マン】を簡単に出してくるし……」
「せめて正式名称で呼びなさいよ……。でも、あのカードを渡したのも辰上君なんでしょう?」
「融合サーチ兼代用素材を渡した結果がこれだよ……!【相克の魔術師】がいなかったら負けてた……それと、君に渡した【地盤沈下】で長い勝負になって精神がゴリゴリ削れた」
「案外盲点だったのよね、この永続魔法【地盤沈下】。相手のモンスターゾーン二カ所を封じるのは【サイバー・ブレーダー】とシナジーがあるわ。【サイバー・ブレーダー】は相手のモンスターが四体以上だと、ほぼ通常モンスターなものだし……。永続魔法だからこそ途中で破壊される可能性があるといえ、三枚積んでも良いわね」
「ロックは止めてくれないかな……?」
「ま、すぐ三枚は積めないわよ。現状この辰上君がくれた一枚だけだし。でも、大切に使わせてもらうわね」
明日香は自身のデッキから一枚取り出し、改めて感謝の意を示す明日香。コナミは「ん……」と返事をした矢先――狼狽えている男が一人。
「な、な、ななな……!? 天上院君がオシリスレッドからカードを貰って、まんざらじゃないだと……っ!?」
「(……この人、やっぱりガチなんじゃないだろうか……)」
もはや隠しきれていない感情に、コナミは完全に察し。これ以上妬みの感情をぶつけられる前に、コナミなり彼をおだてる。
「じゃ、自分はこのへんで。後は同じオベリスクブルー同士仲良くやってね」
「き、貴様――」
すたこらさっさとコナミは退散。途中で言葉をかけられた感じがしたコナミだが気にせず寮に帰っていき。
本日は比較的に平和に終了した。
――と、思っていたのだが。
「――要約すると『オレとデュエルしろぉおおおっ!』ってことかな」
そろそろコナミが就寝しようとしていた頃。普段使っているデッキをネタ寄りに編集し終わったところに、各生徒に配られている携帯端末機器に一通のメールが届いた。
そのメール主が、本日で関わりを持った万丈目という男子生徒だった。メールの内容は前置きが長かったが、要点をまとめるとこうだ。
・すぐ決闘場へ来い
・オシリスレッドが明日香と関わるな
・今度は逃げるな
・互いのお気に入りカードをアンティだ
・おい、デュエルしろよ
「……ふむ」
要点を理解したコナミは、万丈目からメールを返信。内容はこうだ。
『とりあえずこの時間帯の決闘場の使用、アンティは校則で禁止されているからこのメールを証拠にして憲兵にでも報告しておくねε=ε=┏( ・_・)┛イッテキマース』
「……良しっ。送信っと」
『うわぁ。ますたー外道……』
打ち込んだ内容を確認して万丈目に返信するコナミに精霊である【調律の魔術師】は引いているが、彼は軽い弁明を。
「憲兵とかの報告は嘘だよ。流石にまだ明るいであろう未来は奪わないって。……よし、今日はもう寝よう」
自分には関係ないように振る舞いながら、コナミは部屋の消灯を消して就寝。すぐに彼の寝息が聞こえてくる。
そこで、当然の如く調律の魔術師が思ったこと。
『(……絶対相手、いろんな不安を抱えて就寝できないね……)』
『――辰上、貴様ぁあああっ!!』
「あぁ、万丈目。ぐっすり眠れた?」
「バカか貴様っ!? あのメールで逆に眠れる方がおかしいだろっ!? それと万丈目『さん』だっ!!」
始業時間前。コナミ本人はいつも通りの日常を――ということはなく。目元は黒い隈が印象的になった万丈目が怒涛にコナミに突っかかってきた。彼の行動に周りの生徒の視線が集まる。
その中、先ほどまでは机で突っ伏して寝ていた十代が跳ね上がるように起き、コナミに事情を求めた。
「うおっ!? なんだなんだっ!? ……って万丈目? 万丈目はなんでコナミに怒ってるんだ?」
「要約するとデュエルをしようとしないことに激オコな万丈目」
一瞬、コナミの理由を明かす時にヒヤリとした万丈目だが、単純明快な答えに安堵。その様子を見かねたコナミは彼に言葉を。
「……あ、そうそう万丈目。あの一件については公言するつもりはないよ。ただし、交換条件があるけど」
「……交換条件だと?」
「単純な話だよ。自分とデュエルした内容を他者に漏らさない。この条件が守れるならデュエルしても良いよ」
簡単な話過ぎる、と万丈目はコナミを怪しむ。先日挙げた自分の決闘条件と雲泥の差だ。まさかメールを証拠にしてまだ揺さぶろうというのかと考えが広まる。
しかし、彼の視線を察したコナミは、手元に携帯端末機器を片手に説明を続ける。
「これが気になるのかな。だったら心配いらないよ。ここをこうして――はい、削除。これで万丈目とのやり取りは消えたよ」
「……何故、目の前で消したんだ?」
「そうじゃないと君は不安で眠れないでしょ?」
……それでも、何かのためにバックアップは取っているコナミだが。
普通に考えればそのようなことは思いついただろうが、現状の万丈目は寝不足の為、判断力が鈍っていたのか単純に納得する万丈目。
「フン……なら、それで良い。それで、何時デュエルをやるつもりだ?」
「その予定だけど――」
その日のコナミの予定は、オベリスクブルーの万丈目とデュエルをすることが決まった。
なるべくは少しはやめに次話をあげたいなぁ……。
では、また。