彼は使い魔?   作:ヒタク

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お久しぶりです。
覚えている方がいるか、というか見てくださっている方がいるかわかりませんが、話ができたので投稿します。


第6話

「意外と覚えているものね」

 教科書を見ていたルイズが呟いた。あれから教室にたどり着くまで紆余曲折あったが、何とか俺たちは授業が始まる前に着くことができた。

 席に着くまでになぜか周りの生徒たちからルイズを揶揄するような言葉が飛んだのだが、ルイズは全く気にすることなく、席に着いた。

 そして、授業が始まるまで教科書を見ていたのだ。

 やはり、記憶を失っているために内容を覚えているのか心配だったのだろう。

「ねえ、ルイズ。ルイズったら!」

 いや、単にキュルケを無視するために見ていただけなのかもしれない。

 キュルケは近くに寄ってきた男子生徒を適当にあしらってから、ルイズのすぐそばに座っていた。

 必然的にキュルケも近くに座ったためか、俺に向かって放たれる怨嗟の念がやばい。

 男子からの嫉妬と怨嗟の念も強いのだが、何故かキュルケを見ていた青髪の女の子からの視線が強い。恨みでもあるのかというレベルだ。

 え? 俺なんで女の子にここまで恨まれてるの?

 理不尽な恨みの連鎖に俺がうなだれていると、教室の前から先生らしき人物が入ってきた。

 そして、その女性は俺たちのことを見ると口を開いた。

「皆さん、二年生への進級おめでとう。本年度からこのトリステイン魔法学院に赴任してきましたミセス・シュヴルーズです。属性は土。二つ名は赤土のシュヴルーズ。これから一年間、土系統の魔法を皆さんに講義します」

 隣に座るルイズを見てみると、意外にも何かノートのようなものにメモを取っているのが見えた。

 結構勉強家だったのかな、と俺が中身を見てみると……。

「……おい、それはひどくねえか?」

「いいのよ。別に」

 ルイズが書いてたのはキュルケにどんな対応を取るか、なんてことだった。しかも、内容がえげつない。真剣に前を向き、ミセス・シュヴルーズの話を聞いているキュルケがかわいそうになってしまうほどだ。

 しかし、今は授業中だ。

 いくらルイズでもキュルケに何かすることはできないだろう。

 そう思って俺が前を向くと、いつの間にか話は進んでいたようでミセス・シュヴルーズは周りを見回していた。

「そうですね。では、そこのあなたに錬金の魔法を実演してもらいましょう。あなたの名前は?」

 え? 俺が驚いているすぐそばでルイズが返答した。

「ルイズ。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールです」

「そう、あなたがミス・ヴァリエールですね。大変な努力家であると聞いていますよ」

 ミセス・シュヴルーズは優しそうな笑みを浮かべて言う。その笑みに答えるかのようにルイズは前に出た。

「頑張りなさいよ」

 キュルケが小さな声で応援する。

 しかし、ルイズは無視して前に進んだ。

 それに少しだけキュルケは落ち込んだが、すぐに気を取り直してルイズが出た前を見た。

 ルイズが前に出る時に周りの生徒が何故かひどくざわついていたのが気になる。

 ルイズに魔法を使わせるな。怪我人を作るつもりか。

 そんなことを言っているのが聞こえる。

 いったい、どういうことなのだろうか。

 青髪の女の子がキュルケを連れて教室から出ていくのを見ながら俺は思った。

 魔法使いなのだから魔法を使えるのは当然じゃないのか。

 俺はそうやって考えていくうちに少しずつ嫌な予感がしてきた。

 そういえばルイズって今までに魔法を使ったことってあるっけ。

 記憶を失っているから魔法の呪文を忘れていたと思っていた。

 しかし、言っていたではないか。ルイズは教科書を見ていた時に意外と覚えているわね、と呟いていた。つまり、魔法の呪文を忘れていたわけではない。

 あれ……? 本当にルイズって魔法を使ったことなかったっけ。

 そこまで考えて俺は思い出した。

 ルイズが窓の外に向かって杖を振り下ろした時に起こった爆発のことを。

「錬金したい金属を強く思い浮かべるのです」

「はい」

「ちょ、やめ――」

 俺の言葉がすべていい終わる前にミセス・シュヴルーズの言葉を聞いたルイズが勢いよく杖を振った。瞬間、教室内に巻き起こる爆発。

「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」

「俺のラッキーが蛇に食われた! ラッキーが!」

 爆発のために色々と惨状が広がっていた。

 そんな光景を見たルイズが呟く。

「予想以上だわ……」

 何とか机の下から這い上がった俺の見たルイズの顔はとても印象的だった。笑いをこらえるような表情だったのだ。

 そして、地獄が始まった。

 えい! とりゃ! それ!

 気が抜ける声が聞こえてきそうなほど気軽に杖を振るルイズ。しかし、そんな行動とは裏腹に次々と巻き起こる爆発の嵐。

 急いで机の下に隠れた俺は思った。

 本気で何をやってるんだこいつ、と。

 

 小一時間ぐらいやっていただろうか。

 いい汗かいたぜ、と言わんばかりの笑顔を浮かべて額の汗をハンカチで拭うルイズ。

 周りの生徒はもはや立ち上がる気力すらないようで、全員倒れこんでおり、時折誰かのうめく声が聞こえるだけの状態だ。

「ルイズ! 何のつもりなんだよ!」

 俺はルイズに駆け寄り、怒鳴りつけた。

 そして、俺の言葉にルイズがぼそりと呟いた。

「怒りはね。溜まるものなのよ」

「え、ああ……」

 確かにそうかもしれない。でも、今そのことがなんだというのだろう。

「だから怒りを発散しようかと思って」

「それでこんなことしたのかというのかよ……」

 いくらなんでもひどすぎるんじゃないだろうか。

 確かに教室に入ってきたルイズを生徒たちは揶揄していた。

 中には俺もそれはひどいんじゃないか、と言いたくなるような言葉も投げつけられていた。

 そんな言葉を聞いていた本人であるルイズの怒りがどれほどのものなのか分からない。

 しかし、あれだけの爆発を連発するのはいかがなものか。さすがにやりすぎだと言わざるを得ないと俺は思った。

「そもそも爆発は大したことないはずよ」

「え?」

 意味が分からなかった。ここまですさまじい爆発が起きたのだ。それなのに爆発が大したことないとはいったいどういうことだろう。

「さっき私が教科書を見ていたのを覚えている?」

「ああ」

 確かにルイズは教室に入った時からずっと教科書を眺めていた。キュルケを無視するために見ていたと思っていたが、そんなことはなく真剣に見ていたのだろう。

「そこには自身の系統は唱えた瞬間に分かると書いてあったわ」

「へえ。そうなんだ」

 魔法を使えない俺には分からないが、そういうものらしい。頷いた俺を見たルイズは話を続けた。

「私は記憶を失っているから当然、自身の魔法の系統なんて分からないわ」

「それはそうだろうな」

「だから、さっきの魔法は得意な系統を確かめるためにいくつも唱えたのよ」

 それで何度も唱えていたのか。確かに言われてみると呪文が異なっているように感じた。

 いや、でもそれであの爆発が大したことないってことにはつながらないんじゃないだろうか。

 それにそもそも呪文の系統ってあんなにたくさんあるのか? 軽く20回近くは唱えていた気がする。

「それに私は精神力と爆発の関係性を調べるために何回も唱えたのよ。結果的に精神力の強弱で爆発の強弱を操れることが分かったわ。それに向ける方向で爆発の位置もある程度操れることもわかったわ。その事実が早くから分かったから、爆発の威力を抑えつつ、生徒がいない方に向かって呪文を唱えていたのだから平気よ」

 なるほど。そのために何度も唱えていたのか。俺は納得し、頷こうとして思った。

「いや、それって普通に違うところで唱えたほうがいいだろ。こんな場所で唱えるとか迷惑にもほどがあるって」

 実際に生徒たちは全員倒れているんだし。

「そこはほら……」

「何かあるのか?」

 俺の言葉にルイズが横を向く。

「怒りは溜まるものじゃない?」

「そこにつながるのかよ!」

 結局、ルイズの理不尽な行動の理由はそれだったらしい。

 

         □

 

 爆発が収まった教室の廊下に二人の少女がいた。

「ありがとう。えっとあなたは……」

「タバサ。もしかして、記憶が……?」

 キュルケは青髪の少女――タバサの名前を聞こうとして、タバサが悲しそうに返答した。

「そうなのよ。とはいっても完全になくなっているわけでもないんだけどね」

「そう……」

 悲痛な表情を浮かべるタバサ。彼女を見ていたキュルケはタバサを抱きしめた。

「え?」

「ごめんなさい。あなたのことも思い出せないの。でも、これだけは思い出せるわ」

 そして、小さくキュルケが呟いた。

「あなたのことはとても大切なお友達ってこと」

「キュ、ルケ……」

 少しだけ目を潤ませたタバサが小さく呟く。そんな彼女がとても愛しく思え、キュルケは頭を優しく撫でるのであった。




魔法についての考察は作ったものです。本当かどうかはわかりません。

最近、TRPGのリプレイを投稿したので、そちらの方も見てもらえると嬉しいです。
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