「本当に良かったのかよ?」
「え? 何が?」
「何がってお前……」
俺の目の前でルイズがかわいらしく首を傾げた。
一見するとただのかわいい女の子だが、俺は知っている。こいつが天然外道だと。
「さっきの先生や生徒たちのことだよ」
「ああ。さっきの」
ようやくルイズは思い出したようだ。
先ほどの爆発を起こしたルイズは教室にいた皆が爆発で気を失っている隙に教室から何事もなかったかのように普通に出て行ってしまったのだ。
俺はそんなルイズを追いかけ、問いかけた。なぜ、教室から出ていくのか、と。
ルイズの返答は「どうでもいいでしょ」とだけでまともに理由を教えようとはしなかった。
その言葉に俺は納得したわけではないが、ルイズを一人にしておくと何をするかわからないと考え、一緒に教室から出たわけだ。
しかし、時間が経つにつれ、だんだんと罪悪感が増してきた。今更ながらに教室へ戻った方がいいのではないか。そんな思いからルイズに冒頭の言葉を何度か問いかけたわけだが、ルイズの返答はさっきから変わらなかった。
「そんなに気になるのならサイトが見に行けばいいじゃない」
「ルイズは行かないのかよ」
「いやよ。行きたくないわ」
心底嫌だとでも言いたげな顔をルイズはしている。これほど嫌がるなんて、何かあったとでもいうのだろうか。
確かにルイズは教室でひどくけなされていた。そんなルイズが教室へ戻れば先ほどの爆発もあり、余計にけなされるのだろう。
きっとルイズはそれが分かっていたからこそ――
「だって後片付けとか面倒じゃない」
「そういうことかよ!」
ひどい理由だった。
単に面倒というだけの理由であの惨状を何とかしようと考えないとは。
いや、俺やルイズが行ったとしても何か出来るとは思えないけど。本気で教室ボロボロになっていたし。
しかし、何かしようという意識が大事なのだ。
そう俺は考え、ルイズの手をつかみ、言った。
「やっぱり戻ろう!」
「えー」
身体全体で面倒だと表現するルイズを引っ張り、俺は教室へ戻ろうと――
「あら? あなたたち教室に戻るの?」
いつの間にか近くに来ていたキュルケに話しかけられた。近くに青髪の少女がいる。
青髪の少女がすっごい俺のこと睨んでるんだけど、俺って何かしたっけ。
「あれ? キュルケ、いつの間に外へ出てたんだ?」
俺は青髪の少女を気にしないようにしてキュルケに話しかけた。
「さっきよ。それよりもなぜか私が出て行ってからすごい爆発音が出ていたけど、何か知らない?」
「えっと……」
俺はルイズを見た。
ルイズは特に気にもしていないようだ。
気にし無さ過ぎて「面倒だし、もう部屋に戻ろう」なんてことを時々口にしているぐらいだ。
こいつは天然外道に加え、ものぐさも備わっているんじゃなかろうか。
「きっとルイズのせい」
青い髪の少女が大きな杖をルイズへ向けた。
「そうなの、ルイズ?」
キュルケが少しだけ不安そうに聞く。
何やかやでルイズではないと信じたいのだろう。
「そうとも言えるかもしれないわね」
「いや、普通にルイズのせいだろ」
思わず突っ込んでしまった。
いや、あれだけ爆発を起こしたのだから自分のせいだと認めろって。
俺が言いたいことを察したのかルイズが目を閉じ、意味深に頷いた。
「ええ、確かにあれは私のせいかもしれないわ」
「ほ、本当なの? ルイズ、あなたはそんなことしないわよね?」
うろたえるキュルケはこの際、無視しよう。
それよりもルイズが良心に目覚めつつあることが重要なのだから。
あの教室をなんとかするのは大変かもしれない。
でも、俺も手伝えば少しは片付く――
「でも、サイト! 見損なったわ!」
「――へ?」
ルイズから言われた言葉が理解できず、俺は間の抜けた返答をしてしまった。
「いくら私でもね。ああなった生徒や先生に止めを刺すなんて外道なことはできないわよ……」
「ちげえよ! そんなこと一切思ってねえよ! いったい、何でそんな考えをしたんだよ!」
「え? だってサイトの顔がそう言っていたじゃない?」
「言ってねえよ!」
「サ、サイト……。あなたって……」
「キュルケ。この男から離れて。危ない」
いくら話しても納得してくれないルイズに絶望の表情を浮かべたキュルケ、そこにキュルケをこの場から避難させようとする青髪の少女が混ざり、混沌とした状況を作り上げていた。
「いい加減にしろって! 冗談が過ぎるぞ!」
「そうみたいね。ごめんなさい、サイト」
「お、おう……」
急にしおらしく謝るルイズに毒気を抜かれてしまった。
しかし、同時に思う。
これは大嵐の来る前兆ではないかと。
「本当のことを言うとね。ちょっと怖いのよ」
「怖い?」
「ええ。だって、よく知りもしない人たちが私のことをけなしてくるのよ? 確かに実際に暴力をふるわれた訳ではないわ。でも、いつふるわれるかもしれない。いや、今戻ればきっとふるわれる。私はそんな場所に戻りたくないのよ」
「ルイズ……」
そうだったのか。ルイズのことをよく考えない物言いを俺はしていたのかもしれない。
俺は後悔した。ルイズのことを考えてやらなかったことを。ルイズは記憶を失っているのだ。
俺は記憶を失う恐怖を味わったことはない。しかし、いきなり多くの人からけなされる恐怖は想像に難くない。ルイズはその両方を味わっているのだ。そんな少女を俺は助けないで何を――
「そういえば、私が教室を出てから爆発音がすごかったけど、本当にルイズがやったの?」
「ってそうだよ! ルイズが爆発させまくったのが原因じゃないか!」
「……騙されなかったわね」
「聞こえてるからな」
もうルイズの相手をしているといつまでも教室に戻れる気がしない。
俺はルイズの腕をつかむと教室へ戻り始めた。
「ちょ、ちょっとサイト! 離して!」
「いいから戻るぞ。俺もみんなに謝るの手伝ってやるから」
「もう……」
ルイズは諦めたようで教室へ向かって歩き出した。
そんなルイズをキュルケが微笑ましげに見ながらついてくる。
そして、俺は後ろから青髪の少女からすさまじく怒りに満ちた目で見られながら移動するのだった。
……本当に俺何かしたのかな。
□
扉を開くと生徒たちはほとんど移動してしまったようで教室にほとんど人は残っていなかった。
しかし、まだ残っている人もいた。
「あら、よく来たわね」
ミセス・シュヴルーズが嬉しそうに声をかけてきた。
俺は周囲を見回す。
教室は爆発による甚大な被害から全く変化していなかった。
「俺たちに何か手伝えることが――」
「先にあなたたちに聞くことがあります」
「え?」
ミセス・シュヴルーズが真剣な顔をしている。
それはなぜかデジャブを覚えさせる顔だった。
「ここはどこなんでしょうか? それに私は誰なんでしょう? そして、人はなぜ生きているのでしょうか?」
「…………」
どこかで聞いたことのある言葉と妙に哲学的な言葉を聞いた俺は無言でルイズたちと共に教室を出るのだった。
深夜のテンションに任せて一気に書いてます。
色々とひどいところがあるかもですが、ご容赦ください。
TRPGの方はちょっと時間がなくてやれていないため、続きはかなり先になるかと思います。