艦これ〜クソ提督と副司令「艦」のブラック鎮守府細腕繁盛記〜   作:帰灰燼

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第二話の投稿までに散々お待たせしました
申し訳ありません


提督は早速「仕事」を始めるようです

 

 

 

 

「……なあ、提督」

 

「何だね?」

 

 

困惑気味の黒髪の女性の問い掛けに、男はごく自然に返事を返す。

 

 

「……貴様、今は業務時間の筈だが?」

 

「業務中だが?」

 

 

事も無げに答える男ーー城鉄提督。

 

その様子に、黒髪の女性ーー戦艦・長門は堪えかねたように叫ぶ。

 

 

「ならば! 何故、貴様は、「食堂」の玄関で「大工仕事」をしている!!」

 

 

その怒号に、提督は意外な事を言われたかの如く眉をひそめつつこう答えた。

 

 

「ーー何か問題でもあるかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前。

 

長門達「元第一艦隊」、長門、陸奥、妙高、那智、翔鶴、瑞鶴の六人は、前日に着任したという「副司令」に急遽呼び出された。

 

 

「くっ……私の一斉射で傷一つ無いとは、何者なのだ奴は……」

 

「長門の砲撃の直撃に耐えるなんて、鬼姫クラスだけだと思ってたけど……」

 

「殺れなかったんだから仕方ないでしょ。 せめて問答無用で解体されない事を祈りましょ?」

 

「不吉な事を言うな、陸奥」

 

「そうですよ。 大丈夫です、多分罰を受けるのは私だけでしょうから」

 

「いや翔鶴姉、こんな時まで被害担当に回らなくても……」

 

 

初日に行った「反逆行為」に対する罰が下されるのだろう。

 

最悪でも自分一人への罰で済むように……そんな悲壮とも取れる決意を胸に提督室を訪れた六人を出迎えたのは、

 

 

「おっ、早かったな。 まあ座れ。 コーヒーいるか?」

 

 

ジャージ姿でフレンドリーに接してくる「副司令」だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……戦技教官? 貴様が?」

 

「おう。 だってお前ら弱えし」

 

 

長門の問いにごく当たり前のように答える副司令。

 

 

「……お言葉ですが、貴方の「軍艦時代」の計画は耳にした事があります。 貴方の性能が初期案を基準にしているのであれば、長門の火力で貴方の装甲を抜けるとは思えないのですが」

 

 

妙高のその問いに、副司令は少々呆れたような口調で返す。

 

 

「それ以前の問題なんだよ。 この鎮守府がマトモに鍛錬出来る状態じゃなかったにしても、お前らの練度は話にならねえ。 あの間合いでヨンイチを全弾当てて俺が煤けただけって時点でな。 あいつの前の秘書艦なら同じ間合いから俺の装甲の隙間を抜くくらいの事はやってのけたぜ?」

 

 

その言葉が、長門達のプライドに火を点けた。

 

 

「ほう……言ってくれるではないか。 なら、先ずは貴様がその大口に足るだけの者かどうか見せて貰おうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。

 

 

「で、もう終わりか?」

 

 

大和型すら上回る巨大な艤装を背負った副司令の眼前では、全弾撃ち尽くし海面にへたり込む戦艦・重巡四人と、艦載機全てが燃料切れを起こし呆然とする空母二人の姿があった。

 

 

「ま……まさか、一撃も当てられんとは……」

 

「超弩級戦艦の動きじゃないわよ……」

 

 

長門達が愕然とするのも無理は無い。

 

何せ、軍艦時代は排水量98,600トンの巨体が戦艦二隻、重巡二隻、空母二隻の一斉攻撃をステップワークのみで全て回避する等想像すら出来ないだろう。

 

 

「これで分かったか? お前らは自分達のスペックを扱い切れてねえんだ。 まあ、こんなふざけた当番をお前らに強いてた前提督にも責任はあるけどな」

 

 

そう言って艤装から取り出したのは、前提督が作成したと思われる「慰安当番」なる一文の混ざった当番表だった。

 

 

「とりあえず、来週からお前らの面倒は俺が見てやる。 文句は無えよな?」

 

「来週……からですか?」

 

 

首を傾げる妙高に、副司令は溜息と共に言い放つ。

 

 

「艦娘をこんな扱いするくらいだ、どうせ最低限の補給しかして貰ってねえんだろ? 俺の目から見ても体力がまるでねえ。先ずは身体からしっかり作って貰わねえと話にならねえんだよ」

 

「身体から……つまり、当分は基礎体力作りから行う、という訳でしょうか?」

 

「ま、そんなとこだ。 つー訳で今日の訓練は終わり! 飯行くぞ飯!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、いざ食堂に来てみれば、着任したばっかの提督が軍服の上着を放っぽり出して日曜大工の真っ最中、と。 ま、確かに変っちゃ変だわな」

 

「君も同意見かね、副司令」

 

 

副司令の言葉に、無表情のまま心底意外そうに首を傾げる提督。

 

 

「大体、何故「提督」の貴様がそのような雑用をやる必要がある! そんなものは私達「艦娘」に命ずれば良かろう!」

 

 

その言葉に、表情を変える事無く答える提督。

 

 

「何を馬鹿な事を言うのかね。 貴重な「戦力」にこのような仕事をやらせて、無駄に疲労させてどうする? もし怪我でもしたらどうする? 大体、この食堂は君達の健康面を管理する為の施設だと言うのに、それを修理する為に君達の健康を無駄に消耗させる等、それこそ本末転倒では無いのかね?」

 

 

あまりにも予想外の返答に、提督と副司令以外のその場の全員が思わず固まる。

 

 

「あ、あの……ですが、せめて外から業者の方を依頼するとか……」

 

「本土からこの〈トラック第二泊地〉に業者が到着するまで、何日掛かると思っているのかね? 」

 

 

トラック泊地とは、名の通りトラック諸島ーーサイパンの南、ミクロネシアに存在する諸島に建造された、海軍最大の泊地である。

 

数年前の大規模作戦迄は深海棲艦との戦争に於いて最前線を支える拠点として機能し、現在でも南方方面からの敵勢力に睨みを効かせる重要な役目を担う重要拠点であるこの泊地ーーその守護を目的として隣の島に新たに設けられたこの第二泊地は、同時に大本営の目が届き辛いのを良い事に腐敗の温床となっていた。

 

その現状に堪え兼ねた艦娘達の反乱によって一時的に「提督不在」となった状況を何とかするべく、城鉄提督が派遣された訳なのだがーー

 

 

「で、ですが……」

 

 

尚も食い下がろうとする妙高に対し、提督もまた無表情のまま言い放つ。

 

 

「少なくとも、私は自分が使用していて不愉快と判断する施設で君達に食事を提供するつもりは無い」

 

 

その言葉に、固まったままだった天龍が思わず叫ぶ。

 

 

「待て待て待て!! アンタ今何てった!?」

 

「ふむ? 私が不愉快な施設で食事を提供ーー」

 

「ちょっと待て! 食事を提供、って……もしかしてアンタ、俺達のメシまで作るつもりかよ!?」

 

 

その問いに、提督は当然のように答える。

 

 

「当然だ。 私が君達の提督である以上、私が君達の体調管理を行わずにだれが行うと言うのかね?」

 

 

提督の返答に、再び場が凍りつく。

 

 

「う〜ん……でもぉ、それって海軍の士官としてどうなのかしら? 私達は海軍の一兵卒に過ぎないんだし、他に示しが付かないんじゃないのかな?」

 

 

ややあって、硬直から脱した龍田が薄笑いを浮かべつつ問い掛ける。

 

 

「そ、そうだ! 貴様は曲がりなりにも私達の「上司」だろう! それが「部下」の雑用係のような真似をして、恥ずかしくは無いのか!」

 

 

長門もまた慌てて龍田の言葉尻に乗る。

 

 

「ふむ……君達と私の間で認識に相違があるようだな」

 

「相違……だと?」

 

 

絞り出すような長門の問いに、提督は無表情のまま至極当然のように言い放つ。

 

 

「君達は自分を「軍人」だと認識しているようだが、そもそも海軍規律に於いては君達はあくまで「協力者」に過ぎない。 つまり、このような不条理極まりない命令に従う必要も無ければ、命令の為に命を無駄に張る必要も無い」

 

 

そう言って、傍に置いていた命令書ーー副司令か持っていた物と同じ命令書を破り捨てる。

 

 

「な……ならば、貴様にとって「提督」とは何なのだ?」

 

 

その問いに、何ら変わらない調子で答える提督。

 

 

「「軍人」だ」

 

「……は?」

 

 

あまりにも当然にして予想外の返答に、長門は大口を開けたまま完全に固まってしまった。

 

 

「あ、あの……それは、どういう意味でしょうか?」

 

 

提督と長門を交互に見つつ、遠慮がちに問い掛ける妙高に、提督はこれまた当然の如く答える。

 

 

「「軍人」とは、即ち軍の利益の為に動く者と私は認識している」

 

「は、はあ……」

 

「そして、「提督」にとって海軍の利益となる行動は即ち「深海棲艦の撃滅」に他ならない。 ならば、その為の「戦力」となる君達「艦娘」の性能を最大限発揮する為の「管理」もまた「提督」の仕事だと私は認識している」

 

「えっと……た、確かに、そう言われれば……」

 

「ならば、食堂の修理や君達の食事の管理もまた、「提督」として当然の仕事だとは思わないかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「思わないわよ、こんのクソ提督!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その台詞と共に、提督の側頭部に小柄な靴底が炸裂した。

 

 

「……え?」

 

 

思わず呆然とする妙高を余所に、派手に吹き飛ばされる提督。

 

 

「ったく……私達が到着するまで休んでろって言ったでしょ、このクソ提督!」

 

 

その台詞と共に一瞬前まで提督が立っていた場所に降り立ったのは、紫の髪をポニーテールに纏めた小柄な艦娘だった。

 

 

「ふむ、〈曙〉か。 早かったな」

 

「早かったな、じゃないわよ! 言ったわよね、余計な仕事すんなって!」

 

 

まるでダメージを受けていないかのように着地した提督に対し、曙と呼ばれた艦娘は心底不機嫌そうにまくし立てる。

 

 

「仕方が無いだろう、食堂がこの有様では衛生状況も望めないのだからな」

 

「だからって、アンタが大工仕事する理由が何処にあんのよ! 大体、アンタが提督室を離れたら誰が鎮守府の指揮を執るってのよ、このクソ提督!」

 

 

尚も説教を続ける曙の剣幕に、周囲の艦娘達も困惑した様子だ。

 

 

「あ、あの、副司令……彼女は一体……」

 

 

妙高の問いに、副司令は気まずそうに答える。

 

 

「あー……そういや言ってなかったな。 あいつは提督の秘書艦だ」

 

「秘書艦、ですか? 見た所、駆逐艦のようですが……」

 

「まあな。 まあ、あいつが来たって事は他の奴等も到着したって事だし、とりあえずは鎮守府としての体裁は整ったって所か」

 

 

そう言って、副司令はとりあえず未だに説教を続ける曙を止める為に歩み寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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