ブラック・ブレット ーガストレアとなった少年ー 旧作 作:ブロマイン
突如として現れた謎の生命体『ガストレア』その脅威は瞬く間に世界中へと広がった。そして10年前の第一次東京会戦、これは日本初の犠牲者の数が数えられた戦い、即ち日本で初めて全滅以外の結末を迎えた戦いである。そしてこの戦いの後、里見 蓮太郎は天童家の養子となった。御影 理玖、彼もまたこの日を境にいままで知る事のなかったこの世界の新たな一面を知ることになる。
ーーそして現在ーー
「初めまして、僕は御影民間警備会社の御影 理玖と言います。ガストレア被害の現場はこちらで間違いないでしょうか」
「民警……お前がか?」
出迎えた男が呟く。男には決して悪気があったわけではない。民警という職業は、俗に言う不良崩れのような人物が多い。したがって小柄な彼の容貌に驚いたのだろう。理玖もまた、そういった反応には慣れているようで特に反論することはなかった。
そこにキュィーという自転車の急ブレーキが響いた、かと思うと自転車に乗っていた男がこちらに向かってくる。
「ハァハァ……俺は天童民間警備会社所属、里見蓮太郎だ。現場に案内してくれ」
思わず顔を見合わす理玖と警備の男
「おいおいどういうことだよ。民警の要請は一組だけのはずだぞ」
「手違い、でしょうか。となると報酬は山分けですかね」
「そんな、また収入がへるのかよ」
がっくりと項垂れる蓮太郎
「ってお前らパートナーはどうした。民警は民警はイニシエーターとプロモーターの2人一組が原則だろうが」
「僕の方は別件の用事があるのでそちらに向かわせてます」
となんでもないように答える理玖、対する連太郎はというと
「あー……っと俺もそんな感じかな」
歯切れ悪くごまかすようにそう答えた。
「まあいい、現場へ案内するからついてこい」
そう言い男はマンションのエレベーターに乗った。移動中に2人は警備の男から、今回の事件についての説明を受けた。事件の現場はこのマンションの4階、下の階の住人が「争うような音がする」と警察へ通報。調査をしたところ、ガストレアに襲われた可能性が高いと判明、民警へ応援を要請したとのことだ。
エレベーターが開くと、数人の武装警官が警戒をしている扉が見えた、おそらくその先が事件現場なのだろう。理玖と蓮太郎はその扉へと向かおうとしたが、その前に警官の1人がこちらへと駆け足で来た。
「警部すみません、先程ポイントマン2人が懸垂降下して窓から突入、その後連絡が途絶えました」
警部と呼ばれたのは、先ほど理玖と蓮太郎を案内した男だ。彼は警官へと詰め寄りその襟首をつかむ。
「どうして民警の到着を待たなかった」
「こんな奴らに手柄を横取りされたくなかったんですよ」
そう答える警官からは警部とは違い、民警を下に見る思考が見て取れた。
「手柄を焦って突撃だと、それで失敗したら元も子もないだろうが」
そして警部は手を話すと2人の方へと向き直った。
「うちの奴が変なこと言ってすまないな、最近どうも民警に仕事を取られてばかりで気が立っているみたいなんだ。気を悪くただろうが、部屋の中の調査をお願いしたい」
「僕は構いませんよ」
「俺もだ」
その様子にほっと胸を撫で下ろす警部
「それで里見さん、これからどうしますか?」
「俺のことは蓮太郎で構わない、それと戦略は前後に1人づつが無難だろうな」
「でしたら僕が前衛を勤めましょう、基本的に僕は銃をつかわないのでね」
「なら前衛は理玖に任せる、行くぞ」
そして2人は扉の先、ガストレアによって襲われた部屋へと入っていった。
2人が部屋へと入り、目に映ったのは無人のリビング。それだけなら、無人の部屋と変わりない。しかし、この部屋からは血なまぐささが漂っていた。その匂いを嗅ぎ取った2人は急いで、けれども冷静に和室への扉を開け放った。そうした2人の目に映ったのは、無残にも殺された2人の警官。そして、タキシードを着て不気味な仮面を付けている奇妙な男だった。
「こいつらを殺したのはてめえか」
怒りを堪えるようにした、蓮太郎が尋ねる。
「おやおや随分と目ざとい民警くんだね。それでその事実を知った君はどうするのかね?私としては、すぐにでも此処を離れて感染源ガストレアを追いたいところなんだがね」
その男は、人を殺したことが信じられないほどに穏やかで、淡々としていた。
「ふざけんな」
怒りのままにそう叫ぶと、連太郎は男に向かって飛びかかった。彼の攻撃はとても鋭く、常人には捉えることすらできないだろう。しかし仮面の男はその全て受け流す。蓮太郎が何度仕掛けても、その結果だけは変わることが無かった。
「なかなかやるじゃないか」
男はそう言って蓮太郎に対してカウンターを放つ。感情のままに突き進んでいた蓮太郎にそれを防ぐ術は無かった。突き飛ばされた蓮太郎は起き上がろうとするも、男に銃を突きつけられてしまう。それにより、理玖も打つ術をなくしてしまった。暫く膠着状態が続いたが、それは男の携帯電話がなることで解かれる。
「小比奈か、ああこれから合流する」
そして電話を切った男は、こちらに向き直った。
「君たち2人には近いうちにまた会うことになるだろうね。名前はなんというのかな」
「御影 理玖です」
「里見 蓮太郎だ、それとあんたは何者だ」
「私は世界を滅ぼす者、誰にも私を止めることはできない」
そう言うと男は窓から飛び去って行った。