ブラック・ブレット ーガストレアとなった少年ー 旧作   作:ブロマイン

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第10話

「前方に何かいます」

パイロットがそう告げた先には確かにガストレアがいた。その姿は紛れもなく蜘蛛であった。ただし、それは奇妙なことに空を飛んでいる。いや、滑空していると表現したほうが正しいだろう。

「自分の巣をパラシュートのようにして、空を滑空する蜘蛛がいると聞いたことがある。おそらくそれと同じ原理だろう」

「オリジナルの能力ですか、それならば今まで誰も見つけられなかったことにも説明がつきますね」

といった具合に2人がガストレアを観察していると背後からいきなり風が吹き込んできた。思わずそちらを向いた蓮太郎は、その目に延珠が扉を開け放っているのを捉えた。

「おい、何をやってるんだ」

そう延珠に問いかける蓮太郎。しかし延珠はなんでもないかのように

「なんだ蓮太郎、妾は先に行っておるぞ」

とだけ言い残して飛び降りてしまう。そして延珠はガストレアに対して、落下の勢いを乗せた蹴りを入れるとそのまま森へと落ちていった。

「なっ……」

延珠の行動に呆気にとられてしまった蓮太郎だが、理玖に声をかけられると、思い出したかのようにパイロットに高度を下げるよう指示を出した。

「なあ理玖、今のもお前の指示なのか?」

「いいえ、今のはあくまでも延珠ちゃんが自分で判断した結果ですよ。自分に何ができるのか、それをしっかり判断していました」

「今のが判断できていると?」

「そしてそのフォローをするのも蓮太郎の役目ですよ」

そうして理玖がドアの外を指差した。蓮太郎は仕方ないなと言いつつ延珠のあとを飛び降りていった。

 

 

 

理玖が異変に気づけたのは、ヘリコプターを降りてからの警戒で、2人が戦っているであろう方向に特に注意を向けていたからであろう。それまでは重いものを地面に叩きつけるようだった戦闘音が金属の擦れるようなものにかわり、ましてや銃声まで混じりだしたのだ。そしてその銃声は以前見た蓮太郎の銃からは決して出ることの無い音である。

「紫月、おりてきてくれ」

そう叫ぶもプロペラの回転音に遮られて聞こえないのか、紫月は何度目かの呼びかけでようやく降りてきた。

「どうかしたの?」

「蓮太郎たちがトラブルに巻き込まれたようなので、様子を見てこようと思う。だからしばらく下で待機してくれ」

「わかった。気をつけてね」

紫月に断りを入れた理玖は先程から戦闘が行われているだろう場所へと走り出した。理玖が走っていると前方からこちらへと向かってくる延珠が見えた。しかし、その目は焦点があっておらず、ただまっすぐと走っている。そんな様子だ。理玖が大声で呼び止めると、初めて理玖の存在に気づいたように足を止めた。

「理玖、助けてくれ。れんたろうが……蓮太郎が」

「何があったのか教えてくれ」

そうして延珠から聞きした内容をまとめると、ガストレアの討伐は問題なく完了してケースもかくにんできた。しかし、蛭子親子の襲撃に遭ってしまい劣勢に陥る。蓮太郎が延珠を逃がすために2人を引きつけた。ただし蓮太郎はすでに傷を負ってしまっている。といった状況らしい、このままでは確実に蓮太郎は殺されてしまうだろう。

「延珠ちゃん急いで蓮太郎の元へ案内してください」

延珠はそのまま何も言わずに元来た方向へと走り出した。おそらく彼女にとっては返事をする一瞬でも惜しいのだ。理玖もそれに従い延珠のあとを追った。

 

 

2人が戦闘のあった場所へとたどり着いた。そこに蛭子親子の姿はなく蓮太郎が倒れていた。手足があらぬ方向へと曲がっていて、腹と胸には大量の傷。特に腹の傷は、放っておけばすぐに失血死しそうなレベルのものだ。

「蓮太郎、しっかりしろ蓮太郎聞こえるか」

必死に蓮太郎へと呼びかける延珠。理玖もこのままでは不味いと思い即座に行動した。

「僕はこれから蓮太郎をヘリコプターのところへ運びます。延珠ちゃんは先に行ってすぐに飛び立てるように準備をしてください」

延珠は理玖に背負われた蓮太郎を心配そうに見ていたが、理玖がもう一度促すと、言われた通りに先に走って行った。

「延珠ちゃんのためにも、木更さんのためにも、こんな所で死なないでくださいよ」

理玖の心の声でもあるその呟きは、誰の耳にも入ることはなかった。

 

蓮太郎がヘリコプターの中へと運び込まれると、患者の搬送という本来の役目を果たすためにドクターヘリは病院へと向かった。

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