ふと思いついたネタ集   作:茶々

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原作:IS
連載しなかった理由:所詮一発ネタ




山田太郎総理大臣

首相官邸の一室で、男は項垂れる様に顔を机に向けながら秘書の報告を聞いていた。

 

「……以上が、『白騎士事件』の顛末です」

 

締めくるる様に年若い秘書が言うと、男は大きくため息を零した。

 

「……よく戦争にならなかった、というより、よく死者が出なかったな」

 

男の言葉は安堵に満ちていた。

 

突如として日本を標的に襲来した各国のミサイル。その数2341。

国家存亡の緊急事態に各省庁が慌てふためいていた所に忽然と現れ、そしてミサイルの殆どを『単機で』迎撃せしめた謎の兵器。

更にはそれを捕縛、あるいは撃墜しようと国際協定も軍事境界線もお構いなしに領海、領空を侵して攻め込んできた各国の戦艦、戦闘機の大半を無力化し、悠然と消え去ったそれの正体を『知っていた』男―――現職の日本政府を取り仕切る内閣総理大臣、山田太郎は、深いため息を零した。

 

「この後、緊急の国会答弁と記者会見が控えております。また既に米、中、韓、露を始めとする各国からも会談要請がきておりますが……」

「日程の調整は一任する。それから公安と警視総監に連絡を取る様に伝えてくれ」

「畏まりました」

 

恭しく一礼すると、秘書は扉の向こうに消える。

その足音が遠のいていくのを確認した太郎は、唸る様な声を上げながら頭を抱えた。

 

それは、この後に控えているだろう海千山千の老人達の追求や、常日頃から重箱の隅をドリルで抉るマスメディア団体からの質問攻めを嘆いているのではない。

ましてや、存亡の危機に晒された国家を憂いている訳でもない。

 

「何でよりにもよって『IS』の世界なんだよ……!!」

 

漸く左団扇の勝ち組人生を歩めると思った矢先の原作開始に、心の底から憤慨しているだけだった。

 

 

 

 

 

 

山田太郎は転生者である。

前世の記憶を持ち、今生の世界が『違う』世界であるという事を認識したのは、彼が四歳の頃だった。

 

前世の■■■■としての人生は、取り立てて語る程のものではない。中産階級の長男として生まれ、特別何かに秀でていた訳でも劣っていた訳でもなく、二流大学の文学部に進学し、そうして気づけば自分は名前の違う四歳児となっていた。

 

それらの記憶を四歳児が一気に抱え込んだ結果、初期のパソコンに最新型並の演算処理を求めた様に知恵熱を出し、三日近く寝込んだ挙句に同期が終了した様に■■■■は山田太郎としての人生を歩み始めた。

 

その事に関して、何かしらの思う所が無かった訳ではない。ないのだが、全てを打ち明けられる程に語彙力に富んでいる訳でも老成している訳でもなく、支離滅裂な事を話した挙句精神疾患を患っていると誤解されるのは嫌だった為に、彼は■■■■としての人生を過去のものとして割り切る事にした。

 

今生の家庭は中々に富裕層なのか、父親は仕立ての良いスーツを着て毎日の様にテレビにその姿を見せ、自宅には父親と同じ様にスーツを着た中年や壮年の男女が訪れては、国策やら派閥闘争やらの談義を交わしていた。

 

自分の曾祖父が総理大臣であったと知ったのは、丁度この頃である。

 

間もなく、国内最高学府を卒業した自分は父に推薦される形で彼らと知り合い、時に議論を交わし、気づくと原稿を片手に選挙演説を行っていた。

 

直後の国政選挙において、野党数党が推薦する老練な御仁を退けて代議士に名乗りを上げた。国政選挙を目前に控え、現職の大臣であった祖父が他界した影響もあって世論が味方したお陰だろうと思っていたが、何故か周囲は「曾祖父の再来だ」と涙ながらに感激していた。

 

そうして、海千山千の長老達や諸々の派閥闘争等の荒波にもまれている内に、気づけば山田太郎は歴代でも五指に入る支持率で内閣総理大臣に選出されていた。

またこれと前後して、最大派閥を率いる長老の愛娘を妻に迎えている。中々の器量人であり二度の人生において初となる『自分の妻』に大いにハッスルした結果か否かはともかく、五人の子宝に恵まれた。

 

ここまでは、順風満帆だった。

直後の就任演説中に、うさみみをつけた巨乳美人のゆかりんボイスが耳朶を打つまでは。

 

「後はのらりくらりしながら老後の蓄えをするだけだったのに……!!」

 

ある意味、此処で思い出さなければ幸せだったのかもしれない。

あの魅惑のボディ……もとい、美声がなければ思い出せない程に過去の遺物と化していた前世、その当時■■■■がネットを媒体として大いにハマっていたとある作品に、この世界各国を巻き込んだ大事件は記されていた。

 

『白騎士事件』。

正体不明の高機動兵器が、二千を超えるミサイルを迎撃。更に各国既存の最新型軍事兵器の大半を無力化し、その圧倒的なスペックを世に知らしめた歴史の大転換期。

 

そして、この後訪れる女尊男卑の世界。

そんな中登場する一人の主人公と、その活躍を記した作品。

 

IS。

インフィニット・ストラトス。

 

一つ思い出すと、海馬がフル稼働し始めた様に次々と記憶が蘇る。

そうだ、もう四十年近く前の山田太郎少年は、二度目の人生が所謂『転生モノ』ではないかと思ってあれこれ調べていたのだ。そして憶えている限りの知識を総動員してもヒットどころか掠るワードもなく、ふてくされていた時期があった。

そしてどうでもいいが、確かあの辺りから微妙に不和だった両親の仲が見違える様に改善されていた気がする。いや、今はそんな事はどうでもよくて。

 

よもや原作開始の何十年も前に転生する等と誰が予測出来ようか。

いや、記憶を持っているのが自分だけだったら自分に予測できない以上誰にも予測できない訳であって。

 

「兎も角、今俺がすべき事は……!」

 

引退までの自分の保身の為に。

何より、老後の穏やかな日常の為に。

 

若かりし日に置き去りにした熱意を取り戻した山田太郎内閣総理大臣は、受話器を手に取る。

 

「―――あ、僕だけど。うん、今日は帰り遅くなるから……うん…………うん、頑張るよ」

 

―――そして、公安よりも警視総監よりも先に最愛の妻に一報を入れた。

 

 

 

 

 

 

―――日本におけるIS(インフィニット・ストラトス、以下ISに統一)の発展において、当時の首相たる山田太郎氏の尽力は特筆すべき点が多い。

 

世に『白騎士事件』と伝えられるISと既存の兵器との隔絶された性能差を受けた世界各国、並びに国内の首相反対勢力の追求に対しての「記憶に御座いません」という発言は当時大いに世論を賑わせたが、この時既にIS開発者として世界に顔と名が知られた篠ノ之束博士の家族を緊急的に保護し、また博士の行方を捜索するという迅速な行動がとられていた事実が知られたのは“かの事件”を経て、篠ノ之博士が国際IS委員会に全面的な協力を申し入れた先日になっての事である。

 

また、IS運用協定(アラスカ条約)と呼ばれる首脳会合においてもその辣腕は存分に振るわれ、俗に『焦らし太郎』とあだ名される事となる論戦を以て、情報開示や技術提供の見返りとして、日本の国家予算の五倍に相当する資金を調達し、世界最先端の技術を結集したIS学園の創設を行った事は賛否が分かれるが、これは評価されて然るべきである。もしこれが欧米列強の恫喝に屈し、日本政府単独の予算で行われていた場合、国家財政を逼迫させていた事は疑いようのない事実だからだ。

また、それまで世論の大勢を占めていた軍事的、兵器的なISの利用を一変させるモンド・グロッソ創設においても率先して主導するが、これが実現するのは数年先の事であった。

 

そして山田太郎氏の最大の功績は、彼が主導したモンド・グロッソ創設に至るまでのこの数年である。

当時のISは女性にしか扱う事が出来ず、それが伝播すると世界的に女尊男卑の風潮が高まった。その証左として、同時期の世界の首相及び政府要人における女性の比率は、有史始まって以来最高比率を記録している。無論それらの動きは日本にも波及し、国会議事堂包囲事件や首相宅襲撃事件で世間を騒がせた女性人権保護を自称した過激派宗教団体“女神”等に代表される様に、世論は女性を重視し男性を軽視すべしとの声が高まっていた。

そんな中で山田太郎氏が打ちだした政策は多岐に渡るが、代表的なモノはやはり十段階のISランク適性検査であろう。これは政府主導の元で年に一度(設立当初は四カ月に一度)数十から数百に及ぶ項目においてISの適正値を測定し、十段階に分かれたランク付けをするというものだが、此処において重視されるべきはその利用法である。

Aランク(測定限界値)を条件無しで国家代表候補生として召集、B+からD-までは条件付きの国家代表候補生からIS関連企業における段階的な優遇措置、そして「適正無し」のEランクを一般扱いとする事で、当時の爆発的な女尊男卑の風潮に歯止めをかけた。これは当時世論を大きく二分し、特に先の“女神”等の過激的な人権団体や野党、マスメディア等はこぞってこれを批判した。

こうした言動に対し、山田太郎氏は国会答弁で次の様に答えた。

 

『―――私は自らの研鑽と努力による選別は許しても、生まれによる差別は許さない』

 

これは、単純に「ISが使える」というだけで優位性に浸ろうとしていた女性のみならず、それまでの暗黙の男尊女卑的な社会そのものに対しての決別宣言である、というのが昨今の大勢である。

 

また、世論に配慮して山田太郎氏がこの適正検査を国民の権利と位置付け、同時に当初IS関連企業のみに認めていた優遇措置についても各種企業に一任するという事により、初代男子IS操縦者の織斑一夏氏を始め、後世に多くの優秀な日本IS操縦者並びに各分野における先進的な技術者を送りだした事も注目したい。

 

後世『日本史上最優の指導者』『やり過ぎ太郎』『選民思想の権化』等と評価が分かれる山田太郎氏だが、此処では彼とIS史の歩みに照らし合わせ、技術大国として今日にその地位を占める日本の近代史を振り返って行きたい。

 

                  『山田太郎とIS 技術大国のあけぼの』より抜粋

 

 




こっちはIS連載打ち切りを知った後にふと考えた代物。
当たり前の様にIS+オリ主=学生みたいな風潮に一理ないとひねくれて一発ネタとして考えたはいいものの、やっぱり政治ネタとか詳しくないし原作と絡めづらくなってしまったので一発ネタに終わる。
どうでもいいが、要素としては勘違いモノを大いに含み、保身に走っている筈がいつのまにか『日本史上最高の総理大臣』とか崇められる始末。

所詮自分如き貧相な想像力では世の流れに逆らう事は出来ないと知ったネタでもある。
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