【登場人物】
提督(46)
肉も魚もよく焼くタイプ、ちょっと焦げるぐらいがイイ
磯風(2)
グルメ駆逐艦、グルメ刑務所で懲役5万年を自主的に退所して来た
「この磯風、秋刀魚を焼いてみたぞ」
「いや、それ秋刀魚じゃねぇだろ」
磯風が焼いたと言い張る秋刀魚……いや、秋刀魚っぽい、秋刀魚の顔をしたそれはあきらかにデカい、しかも妙に長い手足がある
「なかなかの強敵だったぞ、まさか秋刀魚がバタフライ泳法で泳ぐ姿を見た時はこの磯風も驚愕した」
「いや、やっぱ秋刀魚じゃねぇよなコレ、彼●島近海とかにウヨウヨいる感じのヤツだよな」
磯風曰わく、鎮守府裏掲示板なるあきらかに怪しいアングラサイトでスンゴイ秋刀魚がウヨウヨしてるスポットがあるとの情報を聞き、獲ってきたそうだ
「さぁ、おあがりよ!」ドヤァ!
「食えるかァ!」
「何故だ?我ながら良い感じに焼けたと自信があるのだが」
「せめて普通の秋刀魚焼いて来い!普通の!」
「普通の秋刀魚では普通の味ではないか」
「普通でいいんだよ、普通で、金やるからスーパー行って買ってこいよ!」
「いや、それには及ばん、自分で釣りに行くとしよう…やはり魚は新鮮な死にたてが一番良いからな!」
「せめて釣りたてと言え」
全ての食に感謝とか敬意とあるのかどうか怪しい磯風は秋刀魚っぽい邪●を袋に詰めると席を立つ
「よし、では行こうではないか」
「…は?」
「は?ではない、提督も共に行くのだ」
「なんで俺も行かねばならん?」
「言っただろう?やはり新鮮な死にた……いや、殺したての魚は鮮度が命だからな、その場で調理しなければ食材の真の旨味を出し切れないだろう」
「大丈夫だ、ほら、クーラーボックス貸してやる」
「準備がいいな、よし行こう、すぐ行こう」
「行かねぇよ!1人で行って来いよ!」
「1人で行くと寂しいではないか?もし知り合いに見られたらアイツ友達いない寂しいヤツなんだと思われるかもしれんと考えると、この磯風のタフネスハートはズタズタになる」
「大丈夫だ、オマエのメタルハートはそうそう傷つかん」
どちらかと言えば剛毅な性格のくせに、なんでそんなしょーもない事を気にするんだコイツは…
「どうしても嫌か?」
「どうしても嫌だ」
「…仕方ない十七駆のブラザーに声をかけるか、この磯風、誰かと楽しくお喋りしながら釣りをしないと孤独で涙するかもしれんしな」
十七駆…だと?
「ちょっと待て」
「なんだ?」
「その…アレかな?うん、アレだ、浜風ちゃんも誘っちゃったりするのかな?」
「十七駆だからな、たぶん今日は朝から腕立て伏せしていたハズだが…」
「浜風ちゃんが行くなら俺も行こう」
「そうか!では、浜風の予定を電話して聞いてみるか、電話を借りるぞ」
磯風は机の上に置いた電話機を手に取り、1000‐10‐0とか言いながらダイヤルを回す
「あぁもしもし?ハマちゃん、今日ヒマ?」
なんだよハマちゃんって、釣りダイスキな人かよ!
「えー?マジでー?マジウケるー」
っーか磯風、オマエ身内相手だとそんなのなのか?その対応に俺は驚愕だよ
「わかった、じゃ後で空き地に集合なー……ふぅ」
「ふぅ、じゃねーよ」
「浜風は今日スーさんとカジキ釣りに行ってるそうだ」
「誰だよスーさんって!?っーかカジキ釣りとかワイルド過ぎだろォ!!」