不健全鎮守府   作:犬魚

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コミュニケーション能力が問われるルーキー回

【登場人物】

提督(73)
妖精さんが見えない心の汚れた大人、見えないけどなんとなくはわかる

山風(2)
改白露型のルーキー、コミュニケーション能力がちょっとアレ

明石(5)
野望の工作艦


提督と山風と奇妙なダンボール

そろそろクリスマスも近いのでクリスマスツリーでも出そうと考え、普段は使わない倉庫に来てみたら、見た事の無いダンボールが山積みしてあり、なんか緑色のファンキーな頭をしたチビスケが立っていた

 

「なんだコレ?」

 

「…あ」ビクッ!

 

後ろから声をかけた俺に、チビスケはビクーンと跳ね上がり挙動不審に視線をさまよわせていた

誰だっけ…?こんなヤツうちに居たか?

 

「なんだコレは?あと、キミは誰だ?」

 

「ダンボールは、知らない……あと、山風」

 

「山風?」

 

あぁ、そういやこないだうちに来たルーキーか、そういや五月雨からまだうちに馴染めず困ってるらしいからそれとなく皆の輪に入れるようにしてやれとか甘えた事を言っていたな…

 

「まぁそうビクビクするな、チョコレートをあげよう」

 

「……どうも」

 

俺はポケットに入れても大丈夫な溶けにくいチョコレートを山風に渡した、だが誤解してはいけない、ポケットにチョコレートが入っているからって俺はロリコンじゃあない

 

「しかし…なんだこの邪魔なダンボールは」

 

「…ここ」

 

「あ?」

 

「…ここに、アカシメイト宛って、書いてある」

 

たしかに、荷札にはアカシメイト宛と書いてあるな、とりあえずダンボールを1つ開封して中身を確認すると乙女がマジきゅん!するであろうイケメングッズが詰まっていた…

 

「あの野郎ォ…」

 

コレ全部店の商品か?売れるし需要があるからお願いしますと土下座されたのである程度は許してやっていたが、さすがにこの量は容認できんな

 

「チビスケェ」

 

「チビスケやめて…なに?」

 

「このダンボール、全部海に棄てるから手伝いたまえ」

 

「え゛?」

 

「そこの台車持ってきてくれ」

 

「え……あ、うん」

 

とりあえずアイツには一度痛い目をみせてやらんといかんな、あの変なスカートの横にあるスケベ穴から手を突っ込んでデモンズハ●ド喰らわせてくれる

 

ズッ…ズッ…

 

「ん?」

 

ダンボールに手をかける俺の腕に何か違和感のようなものを感じる気が……

 

パパパパパパパパ!

 

「な!?なにぃぃぃぃ!?」

 

俺の腕に突然痛みが走り、いつの間にか無数に空いた小さな穴から出血したッ!!

 

「なんだこれはァァァァァ!!ヤバい!なんかヤバいぞォォォ!!」

 

「…なにしてるの?提督」

 

台車をゴロゴロと押しながら山風が戻ってきた

 

「チビスケェ!!このダンボール!何かヤバいぞッ!」

 

「ヤバいって…?提督、周りに妖精さんがたくさんいるけど…?」

 

「妖精ッ!?」

 

さっきの不可解な攻撃は妖精かッ!?

 

『フッフッフ、カカッタナ阿呆メェ…コノ妖精サン達ハミンナますたー・明石ノシモベヨ!』

 

『我々ハますたー・明石カラコノだんぼーるヲ無断デ手ニカケル輩カラ守ルヨウニ依頼サレテイルノダ!』

 

『ソウ!自動的ニ!盗人ヲ攻撃スルヨウニナァ!』

 

「…って、言ってる」

 

とりあえず、妖精が見える系の山風から通訳して貰い状況は理解した、明石の野郎…なかなかヤるじゃねぇか

 

「チビスケェ、妖精はどのぐらいの数だ?」

 

「100…?100はいると、思う、うん…たぶん」

 

「明石の野郎がァ…コケにしやがって、たかが妖精ぐれー全部ブッ潰してや………ぐあっ!?」

 

「提督っ!?」

 

右足に激痛が走るッ!さっきの機関銃みたいなマメ鉄砲じゃあない!もっと重い大砲みたいな一撃ッ!!

 

「あ…足をやられたッ!!」

 

「コイツめ!コイツめ!あっちいけ!あっちいけ!」

 

『ギャース!』

 

『ギャース!』

 

山風は俺の足に憑いていたらしい妖精を追い払った

 

『商品ニ近寄ル者ニ死ヲ!』

 

『商品ニ近寄ル者ニ死ヲ!』

 

『消去セヨ!』

 

『消去セヨ!』

 

「うわ…なんか…いっぱいでてきた…」

 

「くっ!!」

 

コイツはなかなかヘヴィな状況だぜ、まさか明石のヤツがここまでヤるとはッ!!

 

「こうなりゃ本体を叩くか…チビスケ」

 

「…チビスケやめて、山風」

 

「その台車に俺を乗せて倉庫から脱出するんだ!」

 

「え~…」

 

「あとでチョコレートパフェ奢ってやるから早くしろォォォ!」

 

「…わかった」

 

俺を載せた台車を押し、山風は倉庫の出入り口へと走る、見た目はガキでもさすがは駆逐艦、大人1人を台車で載せてもなかなかのパワーだ

 

ぶーん……ぶーん……

 

「ん?」

 

なんかハチみたいな音が聞こえるような気が…

いや!!コレはッ!!

 

『ヒュー!ハンティングノ始マリダゼー!』

 

倉庫の上空から急降下してくるオモチャみてーな艦載機ッ!しかもあの機体は江草殿かッ!!

 

「チビスケェ!上だ!」

 

「チビスケやめて」

 

山風の意外と器用なコーナリングで江草殿の急降下爆撃をかわし、台車は更に走るッ!

 

『ヒュー!逃ガサナイゼ!カワイコチャ~ン』

 

正面にこれまたオモチャみてーな艦載機と友永殿ッ!?

 

「くっ!」

 

「くっ!じゃねーよチビスケ、ガンバレ!チョコレートパフェ以外に何が欲しいんだ!?プレ●テか?3●Sか?」

 

「……ケーキ、食べたい」

 

「ケーキかッ!?嗚呼わかった!クリスマスケーキのサンタの部分やるからガンバレ!な?」

 

「………チキンも、食べたい」

 

「焼いてやる!ドードーでもモアでも焼いてやる!クリスマスにはお誕生日席に座っていいから!な?」

 

「…………プレゼント交換とか、したい」

 

あーもう!面倒くせぇなコイツ!!どんだけコミュ障こじらせてんだ!?

 

「わかったわかった!オマエの望みは全部聞いてやるから!今はここから脱出するんだよォォォォ!」

 

「やくそく」ニコッ

 

◆◆◆

 

みんなの店、アカシメイト…

 

「ありがとうございましたー」

 

小さな紙袋を手に、古鷹さんがゴキゲンな様子で店を後にする、やはりうた●リ関連のCDはよく売れる、来月はDVDとブルーレイも出るし、予約も上々だ…

バカ正直に燃料とか弾薬とか売っている余所の真面目な基地や鎮守府に比べてうちの売上は常に上位をキープしている、今やこの明石こそ明石の中の明石、キング・オブ・明石となり全ての明石チェーンを支配する日は近いだろう

 

「笑いが止まらんとはこのコトですねぇ」

 

妖精さんの協力もあり、商品の管理も楽だし、もうちょっと入荷を増やしても…

 

「あ、いらっしゃま…」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

「明石ィ…」

 

「ヒッ!?」

 

て…提督ッ!!しかもこの様子はいつもの缶コーヒーやジ●ンプを買いに来た様子じゃあない、もっとヘヴィな内容だ…

まさか…?私がため込んでた在庫がバレた?

いや、私の“商品”を見たものは妖精さんが“自動的”に全て“消して”いるハズッ!!

 

「…俺の言いたいコトはわかるなァ…?」

 

「…た、煙草ですか?」

 

「いや…“商品”の交換をしてもらおーと思ってな、俺の“チケット”でなァ…」

 

「ヒッ!?ヒイイイィィィィィ!!」

 

‐‐‐

 

「実にすがすがしい気分だ、思わずマジL●VEレジェンドスターでも歌っちまいそーな気分だぜ」

 

“ゴミ”は“ゴミ箱”に捨て、俺は煙草に火を点けて煙を吐き出した

 

「ごほっ…ごほっ…!ケムい」

 

「む、それは悪かったなチビスケ」

 

「チビスケやめて」

 

「よし、ファミレス行くかファミレス!好きなモン食っていいぞ」


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