不健全鎮守府   作:犬魚

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提督の過去にメスを入れてるようで案外そうでもない話

【登場人物】

提督(77)
安定と安心のクズ物件

香取先生(10)
エレガント練巡、オンオフがわりと激しい

御影
提督の同期で友人、指揮官レベルと戦術眼が異常に高く、士官学校時代の仮想戦闘では負け無しの有望株だったが軍には入らなかった、現在は色々と複雑なストーリーの末に引き取った娘を溺愛するバカ親


提督と洋菓子店とたまには昔の話

注文していたケーキを取りに来いと電話があったので店に向かおうと駐車場に行くと、香取先生が見覚えの無い真新しい車をピカピカに磨いていた…

 

「これはこれは香取先生、新車ですか?」

 

「はい、先日納車されまして」

 

エレガントな香取先生によく似合うムースピンクパールの軽自動車、右隣にある足柄のDQNカーと左隣の大淀の鉄仮面が、そのエレガントな佇まいをより一層際立たせてくれる

 

「これから鹿島と街にドライブに行くんですよ」

 

「ほぉ、鹿島先生と」

 

「もし、御都合がよければ提督もご一緒にいかがですか?」

 

「あ~…いえ、自分はちょっと街の洋菓子店に行く用事がありまして」

 

「街の?あ、では、ドライブついでに提督の用事にご一緒すると言うのはどうでしょう?」

 

香取先生はエレガントに微笑み素敵な提案をしてくれる、まったく…なんて素敵な御方だ

 

◆◆◆

 

市街からやや離れた所に居を構える洋菓子店ナインテイル…

 

士官学校の同期である男が店主兼パティシエをやっているこの店は地域ではそれなりに人気の店らしい

 

「いくらだ?」

 

「4980円」

 

甘さとふわふわ感を売りにすべき洋菓子店にあるまじき凶悪な眼光と目ツキを持つ男、店主兼パティシエ、御影は俺から金を受け取り、釣り銭と領収書を出す

 

「なかなか繁盛してるじゃねぇかコノヤロー」

 

「まぁな」

 

この御影と言う男、士官学校を卒業したが軍に入らず、その凶悪なルックスに似合わず街の洋菓子屋になった変わり者で、学生時代はコイツと以前うちに来たホウオウくんと俺でよく夜の校舎窓ガラスを割って回った仲だ

 

「お前はどうなんだ?そろそろ海軍本部大将ぐらいになったのか?」

 

「なれるワケねーだろ」

 

「四皇のクビでもとって来いよ、四皇の」

 

この野郎、俺が相手してるのは海賊じゃねーっての

 

「そういや今年は1人で来たのか?去年は~…ほら、なんか青いのと来てたじゃねーか?」

 

「青い…?あぁ、五月雨か、アイツは置いてきた」

 

「俺は去年、てっきりお前がロリコンに目覚めたのかとビビって皿割りそうになったがな」

 

「誰がロリコンだクソが」

 

どこぞの子とも知れないガキを引き取って養子にしたコイツにだけは言われたくないな

 

「なかなか良いお店ですね、提督」

 

ざわっ……

 

御影は俺の肩に手を回し小声で舌打つ

 

「オイ!誰だこの超絶美形女教師ッ!」

 

「あ?俺のスケだよ、スケ、香取先生な」

 

「マジかッ!!リアル女教師か!毎日か?毎日個人授業ってヤツか!?」

 

フッ、さすがの御影も香取先生にはおっふせざるを得なかったようだな、ヤツの憎しみと歯軋りが聞こえてくる

 

「あ、コレ、美味しそうですね」

 

「そうね、お土産に買っていきましょうか?」

 

ざわっ…ざわっ…

 

「オイ!!なんだあのふわふわエッチ系超絶美女は!?」

 

「あ?俺のスケだよ、スケ、香取先生の妹で鹿島先生だ」

 

「マジかッ!!リアル女教師か!!え…?ナニ?課外授業?課外授業してんの?」

 

特殊な性癖持ち以外なら、ほぼ100%の男子がおっふせざるを得ない歩くザー●ンモンスター、鹿島先生

 

「バカな…ッ!まさかの女教師プレイ、いや!ダブル女教師プレイとは…ッ!大したヤツだと言わざるを得ないな」

 

「ハッハッハ、まぁそーゆーワケだ御影クン、キミはここで街の洋菓子屋として腐って死ね」

 

勝ったッ!!士官学校時代、同期の誰一人として仮想戦闘だけは勝つ事ができなかった不敗の男を今、この俺が沈めたのだッ!

 

「………いや、冷静に考えたらあり得んな、どうせただの上司と部下だろ?」

 

「そんなワケないだろう、毎日補習授業だよ、股人レッスンだよ」

 

「ないない、それはない、若手有能イケメン提督ならいざ知らず、よく考えたらお前にそんなエロ同人みたいな展開も度胸もないな」

 

この野郎、冷静に考えて全否定か!?

俺と御影がアツいプライドの戦いを繰り広げる中、香取先生と鹿島先生は商品を買おうと店のエプロンを付けた少女に声をかけていた

 

「こちらを頂きましょうか?」

 

「…む」

 

「あ、かわいい子、バイト……ではなさそうですね、お店の子ですか?」

 

「…そう」

 

「お家のお手伝いですか?小さいのに偉いですね」

 

香取先生はやたらと小柄な少女の頭に手を置いて撫でる

 

「小さいゆーな」

 

「あ、どーすっか?ウチの看板娘、かわいいっしょー?なんでしたら写真とか撮りますか?」

 

御影はヘラヘラと笑いやたらと気合の入ったカメラをカウンターから取り出した

 

「親バカかッ!」

 

「あ?うるせぇな、ウチの娘をバカにするヤツは軍だろーが将軍だろーが殺すぞ」

 

あかん、親バカじゃないでバカ親だった…

 

「…やめて、そーゆー恥ずかしいのホントやめて」

 

良かった、娘はわりとまともだった

 

「オマエ、変わったな」

 

「あ?」

 

士官学校時代は俺やホウオウくんと同じくバカのジェットストリームアタックとか言われたが…

今のコイツを見ると、俺より才能があったコイツがガキ1人の為に軍に入らなかった理由がなんとなくわかる

 

「まぁな」

 

「ま、今度飲みにでも行こうや、同期の集まりで」

 

「そうだな、あ、そう言えば姫島は?元気してんのか?まぁアイツはなかなか死なないだろうが」

 

「してるんじゃねぇの?」




次回は通常運転のクリスマス回

守護らねば…

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